去年いろいろあってペンディングになっていた公務員の定年延長関係の法案が、今の国会で再度提出されています。
地方公務員に関しては、「地方公務員法の一部を改正する法律案」の中で、国家公務員に準じて定年が延長される形になるようです。
定年が何歳になろうが、僕には直接関係ありません。
僕が定年退職するのはずっと先であり、今後もっと大きな改革がなされていくでしょう。
不利な方向に……
ただ、「61歳以上の職員が増える」という事象からは、ものすごく影響を受けると思っています。
マイナスの影響です。当たりのポストが奪われてしまいます。
単なる「後ろ倒し」ではない
まず定年延長の具体的な中身に触れておきます。総務省ホームページに昨年度の資料が掲載されていて、これを見ればだいたい中身がわかります。
報道されている限りでは、施行日が一年遅れて「令和5年4月1日」になる以外は、ほとんど中身は変わっていないようです。

役職定年制(管理監督職勤務上限年俸制)の導入
定年が61歳以上に延長されても、管理職手当がもらえるレベルの職位に就いていられるのは60歳までで、61歳以降は非管理職のポジションでないと原則働けないようです。役所みたいなガチガチ年功序列な組織で単純に定年が延長されるだけだと、出世のペースがそのまま後ろ倒しになりかねません。
このような状況を未然に防止し、組織の新陳代謝を確保し「上が詰まる」状況を避けるための規定なのでしょう。
定年前再任用短時間勤務制の導入
61歳以降も役所で働きたいけど、フルタイム勤務は体力的に厳しい……という職員は、希望すれば65歳までは短時間勤務のポジションに就けるようです。フルタイムではなくとも、年金支給開始まではちゃんと雇用を確保するという意味合いなのでしょう。
情報提供・意思確認制度の新設
事前にちゃんと情報提供しますよ、という規定です。具体的な話をどこまでするのか(担当業務や待遇まで示すのか)気になるところです。
給与に関する措置
給料月額(俗にいう基本給)は、60歳までの額の7割まで落ちるようです。つまり3割減少します。60歳時点の給与月額がどんなものなのかは知りませんが、3割減は相当痛いと思います。
ちなみに僕の場合、今の給料月額が約25万円なので、3割減ったら17.5万円になります。
初任給と同じくらいの水準です。8年分の昇級が吹き飛ぶわけですね……
定年延長後の世界(想像)
現状でも「再任用」という仕組みがあり、定年退職した職員は「再任用職員」として65歳まで働けます。定年退職した職員全員が再任用で働き続けるわけではなく、結構な割合がすっぱり役所と縁を切っています。
そのため、定年が65歳まで延長されたとしても、全員が定年まで勤め上げるとは思えません。
60歳段階でそれなりの割合が退職し、役所に残った職員も途中で辞めていき、65歳まで残る人数はあまり多くないでしょう。
つまり、現状の「再任用職員」が「61歳以上の正規職員」に置き換わり、今よりも人数が若干増える程度で、役所組織が激変するまでは至らないと思っています。
閑職ポストが奪われ、若手は全員激務に回される……?
しかし、僕みたいな楽したいタイプにとっては、「61歳以上の正規職員」は脅威でしかありません。彼ら彼女らは競合相手であり、わずかでも増えられたら困ります。
「61歳以上の正規職員」が就くポストは限られます。
残業上等の激務ポストや、主要施策担当、内部調整役のような重要ポジションには、まず充てがわれないでしょう。
体力的な懸念がありますし、若手職員の成長機会を奪ってしまいます。
となると、「61歳以上の正規職員」の職員が担当するのは、それほど忙しくないルーチンワーク中心の業務になると思われます。(現状の再任用職員も、たいていこのような仕事をしています。)
僕みたいな楽したいタイプは、こういうポスト(業務)を常に狙っています。
しかし、「61歳以上の正規職員」が増えるほど、このポストを彼ら彼女らに当てなければいけなくなり、若手〜中堅職員の取り分は減って行きます。
美味しい(=暇な)ポストが「61歳以上の正規職員」に奪われて、はずれ(=忙しくてきつい)ポストを引くリスクが高まるわけです。まさに脅威というほかありません。
さらに、こういうポストは、新規採用職員を置いたり、産休や病休明けの職員に「ならし運転」してもらったり……などなど、調整弁としても利用されています。
しかし、こうしたポストを「61歳以上の正規職員」に割り振ってしまうと、従来のように調整弁として使えなくなります。
つまり、「バリバリ働かせられない若手〜中堅」向けのポストを「61歳以上の職員」に明け渡してしまうことで、これまで配慮されていた方がいきなり実戦投入されてしまいかねなくなるのです。
僕の勤務自治体だけなのかもしれませんが、本庁課長以上に出世した職員は再任用を選択しません。
俗にいう「天下り」していくのか、別の働き口を見つけているのか、疲れ果てて完全リタイアしているのか……とにかく役所からは離れていきます。
そのため、「元上司が再任用職員になり部下として配属された」という複雑な関係が生じません。
再任用職員になる方は、たいてい部下を持つポジションを経験せずに定年まで勤め上げます。
定年が伸びて、「管理職経験者」も役所内に残るようになったら、「元上司が部下」みたいなややこしい関係が増えて、職場の雰囲気が変わるかもしれません。
人間的にも役所思考に染まった方が増えて、もっと堅苦しくなるのかも……
他のブログやSNSでは「再任用職員が仕事してない」みたいな愚痴も見かけますが、僕はそういう経験が一切無く、むしろ再任用の方に大変お世話になってきました。
このブログの中身も、再任用の方から聞いた話がかなり盛り込まれています。
特に苦情対応関係はほぼ受け売りみたいな状態です。
新規採用者数は減るのでは?
新規採用にも少なからず影響があるのではないかと思っています。法案によると「2年に1歳ずつ」段階的に定年を伸ばしていくようですが、この延長期間中(10年間)は、2年に1回、定年退職者が発生しない年度があります。
この年度も通常通りに新規採用していたら、一時的に総職員数が増えてしまいます。
辞めないのに採用するからです。
公務員への風当たりが強い昨今、「公務員総数が増える」という事態を、世間が許すでしょうか?
「公務員が増えるのはけしからん!」という住民の怒声を予想して、あらかじめ採用数を減らすのが、自然な対応のような気がしてなりません。
定年延長に関して、公務員試験界隈の方が沈黙しているのが不思議でなりません。
「定年延長で採用減!公務員になるなら今しかない!」みたいな触れ込みで
コメント
コメント一覧 (4)
私の知っている定年間際職員(管理職手当支給対象)は定年延長賛成派で、某氏の賭け麻雀騒動に苦虫を噛み潰したような顔をしていました(本当は61歳が定年になるはずだったのに…と)。
一方、同じく公務員の両親は定年延長を「とんでもない、さっさと役所から逃げ出したい」と言い、賭け麻雀騒動にバンザイ(?!)していました。
以前、出先で再任用職員(元主幹級)と働いていましたが、当時入庁2年目の私が手取り足取り業務を教えねばならず、とても苦労しました。
もともとずっと土木・事業畑にいた方なので、庶務や会計・契約事務はサッパリという状況だったようで、肩書きは「専門員」なのに「全然専門じゃない」と落ち込んでいました( ̄▽ ̄;)
回ってくる決裁文書も色々間違っていることが多く、いちいち指摘するのも何だか憚れたのでコッソリ私が差し替え、顔を立てて(?)いました。
性格がすごく良い方だったので助かりましたが、もしモンスター職員だったらと思うと背筋が凍ります。。
ちなみにその再任用職員は昭和50年代前半に入庁した生き字引みたいな方で、色々と悪知恵を教わりました。これまでそうやって乗り切ってきたんだなぁとひどく感心しました。
定年延長になると、こういう悪知恵が営々脈々と受け継がれていくのかも。
自分の経験が活かせない再任用勤務、かなりつらいものがありそうですね……
定年が伸びて61歳以上非管理職が増えたら、こういうミスマッチが増えてしまう懸念もありますね。
去年まで上司でいたような人が、今年からは係員になってる世界なんて想像がつかず、テクノロジーも進化していて、何もかもが変わっていく今の時代、ロートル(失礼)再任用職員が即座にうまく適応できるとは正直思えません。(本人も本音じゃ辛いと思います)
まあ、現場を見ていないので言うのはアレですが、仲の良い元同僚は「60歳過ぎてまでこの世界にいるつもりなんか無い!」って毛嫌いしてますから、まあ、推して知るべしといったところでしょう。
年寄りと若手がうまく連携できれば理想なんでしょうが、それは机上の空論なのでしょうね・・・。
とはいえ高齢職員の方々は皆さん個性的なので、画一的に「高齢職員向け」な仕事があるわけでもなく、かといって個性に合わせた仕事を割り振る余力もなく…といった状況が、当面続くと思っています。
本当に悩ましいポイントだと思います。