以前からずっと問題視されている「若年層の低投票率」。
若年層が投票に行かないせいで、高齢者向けの施策ばかり充実して、若年層が不当に虐げられている……というふうに、低投票率を世代間闘争の原因とみなす論調すらあります。
仮定の話として、もし若年層の投票率が向上して、若年層の政治力が高まったとしたら、果たしてどうなるのでしょうか?
僕個人的には、若年層全体が幸せになるとは到底思えません。
若年層の間でも「勝者」「敗者」がはっきり分かれて、かえって負担が重くなる人も少なくないと思います。
※本記事でいう「若年層」は、だいたい40歳未満をイメージしています。
「若年層内の闘争」という第二ラウンド
全員が得をする施策は存在しません。
年齢、性別、居住地、健康状態、就労の有無、就労形態、職種、収入の多寡、配偶者の有無、子の有無、両親の有無……などなど、個人を構成するあらゆる属性次第で、利害関係が変わってくるからです。
「好み」という主観的要素も大きいです。
とはいえ高齢者であれば、少なくとも「体力が衰えてくる」という万人共通の特徴があります。
そのため、医療負担の軽減やバリアフリーのような施策であれば、高齢者の大部分が得をします。
一方、「若年層」の属性は様々です。
少なくとも高齢者よりもずっと多様だと思います。
したがって、「若年層全員が得をする施策」というものは非常に作りづらいと言えるでしょう。
つまり、若年層の政治力が高まり、若年層向けの施策に充てられるリソースが増えたとしても、若年層全員が得をするとは限らないのです。
施策に費やせるリソースには限りがあります。
政治参加者は、自分(または自分の支持母体)が得をするような施策を実現させようと奔走します。
いわばリソースの奪い合いです。
現状は若年層vs高齢者という世代間でのリソースの奪い合いですが、もし若年層の政治参加が進めば、今度は若年層間での闘争が激化すると思います。
同じ若年層とはいえ利害関係が細かく分かれているために、自らの手にリソースを収め、自ら行使しなければ、恩恵にあずかれないからです。
他の人の勝利のおかげで自分も得をする……という「棚からぼたもち」的な展開を期待できないのです。
他の人の勝利のおかげで自分も得をする……という「棚からぼたもち」的な展開を期待できないのです。
闘争が起きれば、勝者と敗者が生じます。
若年層の政治力向上の恩恵にあずかれるのは、結局のところ若年層の中でも「勝者」側だけなのです。
「負担の押し付け合い」という第三ラウンド
若年層は、行政サービスの受益者であると同時に、供給者(負担者)でもあります。
納税によってリソースを涵養しているのです。
他の世代と比べても、負担者としての役割が色濃いと思います。
たとえ若年層の政治力が強まったとしても、税の負担割合を抜本的に変えるのは困難です。
金融資産(預貯金含む)に対する資産課税を導入でもしない限り、若年層の負担で高齢者向け福祉サービスを提供、という構図は変わらないでしょう。
せいぜい高齢者特有の負担軽減措置をなくす程度が限界でしょうか?
どれだけ頑張っても、若年層は負担者という立場から逃れられません。
つまるところ、若年層内の政治的闘争は、「リソースの奪い合い」であると同時に「リソース負担の押し付け合い」でもあるのです。
もちろん勝者の負担は軽減され、その分の負担が敗者にしわ寄せされます。
勝者はわからないが敗者は決まってる
若年層が政治力を持ったところでリソースそのものが増えるわけではありません。
リソースを配分する過程に、「政治闘争に勝利した」若年層の意見が反映されるようになるだけです。
「政治闘争に敗北した」若年層の意見は採用されませんし、むしろ負担が増えるでしょう。
いずれにせよ、若年層の政治力が向上した結果、一部の若年層はかえって損をする……という皮肉な結果が待ち受けているように思えてなりません。
若年層内の政治的闘争が現実に勃発したら果たして誰が勝利するのか?実際に起こってみないとわかりません。
ただ、独身者が勝利する展開はまずないと思います。
少なくとも子持ち世帯には絶対勝てないでしょう。
もしかしたら、インターネット上でもたまに話題になる「独身税」が現実になるかもしれません。
もしかしたら、インターネット上でもたまに話題になる「独身税」が現実になるかもしれません。
俗にいうDINKSとかFIREも危うい気がします。
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