あくまでも僕の観測範囲内の話ですが、ここ数年で「新規採用職員に占める予備校利用者の割合」が高まってきています。
出題傾向が変わって独学だと合格しにくくなっているのか、予備校費用を惜しまないくらいに公務員志望度が高い人が増えているのか……理由はわかりませんが、とにかく予備校利用者が増えて、独学合格者が減っているようです。

僕はこれまで半ば趣味で色々な資格試験を受けてきましたが、地方公務員試験はかなり難しい部類に入ります。
凡人が努力でなんとかなるレベルの限界だと思います。



「公務員になりたい」のであれば、予備校に通うのが確実でしょう。
僕自身は予備校に通っていませんが、予備校利用者達からは「講義をサボらず受けて与えられた課題をきっちりこなせば合格できる」と聞きます。

一方、独学の場合だと、使用する教材、スケジュール、到達地点(完成度)の設定など、すべてを自分で管理しなければいけません。
予備校であれば最初から用意されていた「課題」を、自ら設定するところから始めるのです。

予備校利用にせよ独学にせよ、目的は同じ「公務員試験突破」です。
ただしプロセスはずいぶん異なります。
どちらのプロセスにもメリット/デメリットがあり、好き嫌いがあるでしょう。
いずれにせよ合格すればいいのです。

ただ、公務員試験に合格した後、つまり地方公務員として実際に働くにあたり役立つのは、圧倒的に独学経験だと思います。
地方公務員人生には「独学」がつきものだからです。

「教えてもらえる」環境ではない

過去の記事でも触れましたが、地方公務員の研修は適当です。

他人に仕事を懇切丁寧に教えるだけの余裕がありませんし、そもそも教えられるだけ詳しい職員がいないケースも多々あります。

「公文書の書き方」「議会対応」「出納規則」みたいな全庁共通のルールであれば、他の職員から教わることができますが、地方公務員の仕事(特に本庁)には「庁内でも自分しか携わらない仕事」がたくさんあります。
制度の運用や許認可業務あたりが典型でしょう。

こういう仕事の中身は、同じ係内の同僚や、直属の上司であっても、全然わかりません。

唯一わかるのは前任者ですが、前任者も全知全能というわけではなく、せいぜい数年担当していただけです。
教わるにしても基本的事項程度が限界で、予備校講師やテキストみたいに全幅の信頼を寄せることはできません。

誰も知らない「新要素」がどんどん増えていく

旧態依然というイメージの強い役所仕事ではありますが、それでも日々変化しています。
法令や制度が改正されてルールそのものが変わったり、新任の上司が業務フローを自分好みに変えたり……
理由はどうであれ「これまで通り」が通用しなくなるのです。
民間企業では当たり前の事象なのでしょうが、役所でもよくあります。

こういう場合は、誰からも教わることができません。
誰もが自分と同レベルの知識しか持っていないために、講師役が存在しないのです。

ルールを知る=インプットはされど重要

地方公務員の仕事はルールに基づくものが多く、「調べればわかる」「どこかに答えがある」仕事が多いです。
センスに従って判断するとか、ロジカルシンキングを駆使して答えを導出するのではなく、ルールをインプットすることがまず必要です。

つまり適切なインプットさえできればこなせるものが多いですし、反対にどれだけ地頭が良くてもルールのインプットを怠ればこなせないのです。

インプットの方法は様々です。
中でも「教わる」のは、誰もが義務教育にて経験しているインプットであり、馴染み深いものでしょう。
 
しかし前述のとおり、地方公務員という仕事においては、「教わる」がうまく機能しません。
そのため、否が応でも独学せざるを得ないのです。

独学によるインプットは、地方公務員人生においてずっと続きます。
少なくとも異動のたびにみっちり独学しなければいけない時期がやってきます。

最初にも触れたとおり、地方公務員試験はかなり難しい部類であり、独学合格には相当高度な「独学力」が必要でしょう。
逆にいえば、独学で地方公務員試験を突破できた方は、予備校利用者よりもハイレベルな独学力が備わっているのです。


そのため、やる気さえあれば、予備校利用者よりも高効率でインプットが可能なわけであり、インプットの重要性が高い地方公務員という職業においては、それだけ有利だと言えるでしょう。

もちろん、地方公務員の仕事は、ルールに基づく業務だけではありません。
むしろコミュニケーションに属するもののほうが多いと思います。
とはいえ「ルールの独学」は基礎中の基礎であり、「教わらないと理解できない」というタイプの方は、試験を突破できても実務で苦労するかもしれません。