いつの時代も「語学」は自己啓発の王道です。
公務員試験受験生の中には、己の語学力をアピールしたいと思っている方もいるでしょう。

ただ過去の記事でも取り上げたとおり、役所の仕事で語学力を活かす機会はほとんどありません。
語学力が必要な仕事は基本的に外注しており、職員は携わらないからです。




とはいえ、外注できないような仕事は職員が自ら片付けなければいけません。
政治的な揉め事とか、外注するための仕様が固められないふわついた仕事とか……

こういう仕事が降ってきたときには、語学の得手不得手に関係なく、外国語に向き合わなければいけません。
そしてこういう仕事は、たいてい「読む力」が求められます。

「海外かぶれ」対応という仕事

役所周辺には「海外かぶれ」の方が大勢います。
住民、議員、マスコミ、経済団体のお偉いさん、あとは怪しいコンサルの飛び込み営業とか……
こういった方々は、ことあるごとに「海外の成功事例」を導入するよう役所に圧力をかけてきます。

困ったことに、こういう方々は、自分が推している「海外の成功事例」の専門家ではありません。
テレビやネットニュースで見聞きした程度の知識しかなく、直感的に「いいな」と感じたから推しているだけです。
根拠の無い自信です。

海外の成功事例が日本でも通用するという保証はどこにもありません。
海外と日本では前提条件が違いすぎます。
そのため、いくら海外で上手く行っているからといって、すぐには導入できません。


こういうことを言うと「前提条件の違いを調整して日本風にローカライズするのが役所の仕事だろ!」「やらない理由ばかり考えるな!」って怒られるのですが……役所的には「海外の成功事例を真似すれば絶対うまくいく」と盲信することの方がむしろNGです。

「海外の成功事例の導入」もあくまで選択肢の一つとして、冷静に比較した上で、何をするか決めなければいけません。

「海外かぶれ」な方は、どうしてもここを理解してくれません。
とにかく「海外の事例を導入せよ」と強く迫ってきます。
しかも社会的にステータスの高い方が比較的多いので、無下に排除することもできません。

諦めさせるための説得、説得のためのリサーチ

「海外の事例」を却下する場合、役所側は「下調べ」をしなければいけません。
申入れをしてくる「海外かぶれ」の方よりも情報を集めて、判断の根拠・ロジックを固めるためです。

  • 法制度や人口、文化のような前提条件の違いを洗い出し、どれだけ自治体が努力してもローカライズ不可能な要素を探す
  • 当該海外事例に要したコスト(経費、人員、時間など)を調べて、「リソースの制約上実現不可能」と主張できるか確認する
  • そもそも本当に成功事例なのか、どこかで副作用が生じていないかを確認する


こういう作業が「下調べ」です。

基本的には書籍やインターネットで調べることになりますが、日本語の情報だけではどうしても限界があり、いずれ現地の言語で書かれたものを読み解かなければいけなくなります。

このような仕事の業務効率・成果のクオリティは、担当職員の語学力次第で激変します。
 

ちなみに、海外事例を導入する場合には一層入念な調査が必要になりますが、これは外注します。
職員が自ら調べるわけではありません。
あくまでも「断る」ための調査、つまり非生産的な調査を担うのが職員なのです。



僕の場合、これまでのところ2回経験しています。
詳細は秘密ですが、なぜか2回ともインド関係でした。

インドだと英語の文献が揃っているので、随分楽なほうです。
大変なのはフランスとかドイツでしょうか。
大学の第二外国語として受講していればまだしも、未修だと詰みそうです。