このブログでは、よく僕の経験談をネタにしています。
過去の担当業務の内容、上司や同僚や住民の発言、印象的な出来事、残業時間や休暇取得日数のような数字……等々、これまでの経験は貴重なブログの題材であり、ふわっとしたアイデアをわかりやすく説明するための素材でもあります。
ひょっとしたら読者の中には「どうしてそんなに細かく覚えていられるんだ?都合よく捏造しているのではないのか?」と疑っている方もいるかもしれせん。
実際のところ、捏造ではありません。
ちゃんと覚えている……というか記録しています。
入庁当時から簡単な業務日誌をつけているので、いつでも過去を振り返れるのです。
一日一行で十分
僕が日々書き溜めている業務日誌は、本当に単純な「一行日誌」です。
- 日付
- 出勤時刻
- 退勤時刻
- 実残業時間
- 報告した残業時間
- 本日の主な業務内容
- 職場の雰囲気
- その他コメント
こういった項目を横軸にセットしたエクセルファイルを作り、一日一行、毎日書いていきます。
イメージはこんな感じです。民間企業だと、会社で決められた様式があり、個々人が業務日誌をつけるのが当たり前のところが多いでしょうが、地方公務員だと少数派だと思います。
僕がこの習慣を始めたのは、民間企業に就職した友人からの勧めがきっかけです。
彼が就職した会社は文字通りの大量採用・大量解雇方針で、新卒1年目社員にはとりあえず膨大な残業をさせて耐性を測るのが習わしでした。
彼曰く「1年間で西暦と同じ時間の残業をこなせればクリア(今年だと2021時間)」とのことで、「ハンター試験のほうがまだマシ」と愚痴っていました。
彼は早々に嫌気がさして退職しました。
さらには会社への個人的怨恨を晴らすため、労働基準監督署に訴え出ました。
その際に役立ったのが業務日誌です。
実際の残業時間と残業手当支給額との大幅な乖離、休暇取得を申し出ても平然と却下される現状などを証明する根拠として、業務日誌が活躍したのです。
この話を聞いた当時、僕自身も時間外勤務手当が全然支給されないことにまだ慣れておらず、少なからず職場に不満を抱いていました。
そこで、もしかしたらいずれ人事当局と戦う場面があるかもしれないと思い、その際の武器として使う目的で業務日誌を作り始めました。
「同じ一年を繰り返す」為の物差し
今のところ人事当局と戦う予定は皆目ありませんが、それでも業務日誌はすごく役に立っています。
ブログのため……は一旦置いといて、ちゃんと役所実務にも活きています。
地方公務員の仕事(特に本庁)は、議会や予算編成のような年中行事のウェイトが大きいです。
年中行事のスケジュールは毎年ほぼ同じで、年中行事への対応が必要な時期は他の業務にはなかなか時間が割けません。
そのため、年中行事以外の各担当者の個別業務は年中行事の合間にこなさざるを得ず、結果的に年中行事も個別業務も例年同じようなスケジュールで回すことになります。
そのため、昨年度のスケジュール感が分かれば、今年度の見通しがだいたい持てるのです。
具体的には
- どの時期にどんな業務をやっていたのか
- 業務の順序はどうなっていたのか
- 時間がかかる業務はどれか
- 繁忙期はいつなのか
こういったポイントが分かれば、大いに参考になります。
そのまま真似してもいいし、改善の余地を探すヒントにもなります。
一年分の業務日誌を作ってしまえば、二年目以降がかなり楽になります。
スケジュール感の把握に使えますし、業務の遺漏がないかを確認するチェックリストとしても使えます。
仕事熱心で優秀な方であれば、自ら担当した業務のスケジュール感くらいはきちんと記憶できていることでしょう。
しかし僕みたいな下位層は覚えていられません。記録しておかないと参照できないのです。
異動するときには、そのまま引き継ぎ資料としても使えます。
「報告した残業時間」のようなプライベート情報は消したほうが無難ですが、その他の項目は「日誌」以外の形態ではなかなか伝えにくい情報で、かつ後任者にとってもニーズのある情報だと思います。
ちなみに霞が関出向経験のある職員によると、本省勤務の職員はプロパーであれ出向者であれ業務日誌を作るのが一般的らしいです。
異動のスパンが短く、全国転勤が当たり前でなかなか前任者に質問しづらい環境なので、こういう日々の記録がものすごく重宝するとのことです。
「自分史」としての業務日誌
地方公務員のキャリアパスは「ジェネラリスト志向」と評されるもので、定期的な人事異動を通して色々な分野に広く浅く関わることになります。
「様々な業務を経験することで幅広い知見を習得する」ことが目的です。
ジェネラリスト志向そのものの是非は置いといて……この目的を達成するには、過去に経験した業務についてしっかり覚えていなければいけません。
業務日誌は、自分の地方公務員経験の蓄積を可視化したものです。
記憶だけでは保持しきれない知識やノウハウを保存できる媒体であり、ジェネラリストとして成長する助けになると思います。
さらに業務日誌は、過去の自分のスクリーンショットのようなものでもあるとも思っています。
過去の自分の感覚や感情といった主観的な部分が、業務日誌の中にはありありと残っています。
僕の場合だと3〜4年目の日誌が痛々しい感じになっており、恥ずかしくて人には見せられないポエムみたいなコメントが多数書かれています。
しかし当時は真剣でしたし、今でも日誌を読み返せば当時の感覚が蘇ってきます。
過去の感情は、なかなか記憶には留めておけないものです。
むしろ容易に上書きされてしまいます。
業務日誌の記述を通して、こういう若かりし頃の戸惑いや不安、驕りや勘違いのことを覚えていられれば、後輩や部下と接する際に役に立つのでは……とも思っているところです。
コメント
コメント一覧 (5)
私も業務日誌ではないですが、毎日やった業務や教訓、今後役立ちそうな仕事のやり方などをノートに記載して、入庁以来永年保存しています。
重要、テクニック、情報、反省など赤ペンで記載して、目立つようにして、時々読み直しています。
5年前にあの仕事やったけど、どうやったかなども振り返りが可能です。
記録しておくと便利ですよね。
自分が手がけた仕事であっても、異動してしまうとデータも紙資料も閲覧できなくなってしまうので、やはり手元に別途記録を残しておくと便利ですよね。
このため、あくまで個人のメモとして入力し、紙には絶対に印字せず、略語や隠語などで自分と引き継ぎ者しかわからないようにして、引き継ぎ時も文書でなく言葉で説明します。その後、私はメモを廃棄します。
(貴重な生データが情報公開制度によって逆に失われる悲しい瞬間・・・)
僕の県庁だけかもしれませんが、個人のノートとか手帳であれば開示対象外という整理なので、ナイーブな引継ぎ関係資料は手書きのノートを渡したり、手帳のページをちぎったり、口述して相手の手帳にメモしてもらったりしています。
本当に非効率だし、結果的に十全な引き継ぎができず行政サービス低下になりかねないと思いますが、制度上どうしようもないという虚しい実態だとも思います。
いわゆる「私的メモ」というものが行政文書の対象になるか、行政文書の管理に関するガイドライン(平成23年4月1日内閣総理大臣決定)の部分に答えがありました。
https://www8.cao.go.jp/koubuniinkai/iinkaisai/2015/20151028/20151028haifu1-5.pdf
要約すると
「原則として私的メモは行政文書にあたらないが、個人のメモは必要最小限にすべきで、重要な事項が書かれている場合などでは、適切に組織として保管すべき」となっていました。(おっしゃることはわかるんですけどね・・・)
まあ、実際にメモに対する情報公開請求があると、その内容如何によっては、争点となることも多く、案件によって注意が必要なのは間違いないですね。
ただ、私用のPCやタブレットに入れて、個人的に残しておくのは別にいいんじゃないかと思いました。それを業務用PCで見たり、メールや紙などで他職員と共有すると、すかさず行政文書になってしまうようです。
本当に非効率であり、虚しい現実です。