久々に本を衝動買いしました。


公務員男性の服 普通の服で好印象・信頼・清潔感は出せる
古橋香織
ぎょうせい
2021-11-23


タイトルを一目見た瞬間に「これ絶対面白いやつだ」と確信しました。

公務員関係の本って、タイトルがふんわりしたものが多いです。
よく言えば包括的、悪く言えば総花的というか……まるで自治体総合戦略のキャッチフレーズみたいな印象があります。

一方で本書は明らかにワンイシューです。
しかも公務員男性の服装といえば、「クレームを避けるべく地味に徹しましょう」という定説が確立しており、今更議論する余地は無さそうに思われます。
僕がこのテーマでブログ記事を書くとしたら、多分2,000字に届かないと思います。

こんなにニッチな、しかも定説が確立しているテーマで、どうやって書籍1冊分も中身を膨らませるのだろう?
期待が溢れるあまり、すぐに購入してしまいました。

ちなみに、僕のファッション知識は10年前で止まっています。
大学デビューすべく脱オタクファッションガイド2ちゃんねるのファッション板で勉強して以来、アップデートされていません。
(勉強方法がおかしい点は一旦スルーで……)

  • チェックシャツやめて無地の白シャツに
  • ジーンズをやめてチノパンに
  • レザースニーカーを履く
この辺が鉄板だった記憶があります。

無難≠ダサい

本書の中身は基礎基本に徹しています。
ファッション知識に乏しい僕ですら、見聞きしたことのある事柄ばかりです。

とはいえ何事も「基本=簡単」というわけではなく、僕を含めて実践できていない人が大勢います。

情報としては知っていても、それを実践できるほど具体的に理解できていないか、実践するほどにモチベーションが湧いてこないのか、外的要因により実践したくてもできないのか……理由は何であれ、ファッションが基本すら守れていない地方公務員男性が大勢いるのは事実です。

基礎力が問われる「無難」スタイル


地方公務員の服装がダサい最大の原因は、住民の目だと思います。

地方公務員は、普通にスーツを着ているだけでも「調子に乗るな」と言われる職業です。
(20代前半の頃、よく高齢の方から言われました)
身に付けるものは何であれ配慮しないと、すぐにトラブルになります。

住民から打たれ続けた結果、アラサーになる頃にはほぼ全員が「無難な服装をしなければいけない」と刷り込まれます。

そしてこの年代になると、外見に絶望的なほどに格差が生じます。
「無難だけどおしゃれな人」がいる一方、僕みたいに「ただダサい人」が発生するのです。

「無難な格好をしよう」という趣旨は全員共通なのに、どうして仕上がりに格差が生じるのか。
これは確実にファッション基礎力の差です。

ファッション強者は「無難だけどおしゃれ」に仕上げられますが、僕みたいな無知な人間は「無難」と「ダサい」の区別がつかず、うまくまとめられないのです。

地方公務員男性に密着している、タイトルに偽りなし

本書は僕みたいなファッション弱者にも理解できるレベルまで噛み砕いて説明してくれるので、「無難だけどダサくない」というゴールがどんなものなのかがわかります。

かつ本書のすごいところは、実際に改善してみる意欲を湧かせてくれるところです。
本文中の至るところで地方公務員男性の境遇とメンタルが徹底的に観察・分析されているおかげで、結論に説得力があります。
ベースとなる「地方公務員男性の現状」に完全同意できるために、論理展開にも結論にも納得できるのです。

何よりも本書は、ファッションという切り口で役所を分析するという観点がとにかく面白いです。
地方公務員あるあるネタをファッションのボキャブラリーで再構築するのは、役所実務とファッションの両方を知る著者ならではの技だと思います。

最後の部署別鉄板スタイルは声を出して笑いました。
特に「農業政策課はスニーカー履き」「福祉課はグレーのカーディガン」が解釈一致すぎてたまりません。

もし本書の女性編が出たら、きっと買ってしまうと思います。読み物として絶対に面白い。

着用時間が長いんだからお金をかけてもいいのでは?

「仕事道具にお金をかけるのはもったいない」と考えている方も多いでしょう。

僕は常々「モノの時間単価」を考えるようにしていて、使用時間の長いものは何であれこだわったほうが人生トータルで豊かになると思っています。

職場で過ごす時間は、残念ながら人生の中でも結構長いです。
そのため僕は職場で使うガジェット類には惜しまず投資しています。

仕事着も同様です。
否が応でも長時間着なければいけないので、何回着られるのか不確定な私服よりも投資効率は高いはず。

ガジェット類と比べるとスーツは高価なので、これまでは躊躇してきましたが、本書を読んで投資意欲が湧いてきました。
来シーズン前くらいにオーダースーツに挑戦してみようかと思っています。