最近少しずつ「定年延長で採用者数が減少するぞ!!!!」という煽りを見かけるようになりました。
ただ、具体的にどれだけ減るのかは、今のところ見つかりません。
そこで、現時点で入手できる情報を用いて、果たしてどれくらい減りうるのかを考えてみました。
あくまでも人事エアプによる試算です。
地方自治体の採用は、基本的に退職者補充です。
退職者見込み数と同数を採用します。
例えば2022年度中に100人退職する見込みだとすると、2022年度中の採用者(2023年4月から勤務スタートの人たち)は、100人がベースになります。
2022年度中に100人減る代わりに、2023年4月1日から新たに100人を雇い入れることで、総人数をキープするわけです。
定年延長期間中は、2年に1度のペースで定年退職者が発生しない年度、つまり退職者数が激減する年度が挟まります。
退職者数の減少が確実であるために、採用者数の減少も確実視されているのです。
以下、表現をシンプルにするため、全退職者に占める定年退職者の割合は約5割と置きます。
さらにシンプルにするため、職員の年齢構成は均一(どの年齢でも職員数は同一)と仮定します。
定年が延長されようとされまいと、定年退職以外の退職者数には、直接の影響はありません。
ひょっとしたら「老いぼれを優遇する組織に未来は無い!」と若手の離職が増えたりするかも知れませんが、現時点では定量的に予測できないのでスルーします。
超単純に考えると、定年が引き上げられる年度(令和5,7,9,11,13年度)は、退職者数が最大で約5割減少するわけです。
先述したとおり、地方自治体の採用は基本的に退職者補充です。
退職者数が5割減るということは、採用者数も5割減ることになります。
つまり、またまた超単純に考えると、定年が引き上げられる年度(令和5,7,9,11,13年度)は、採用者数が最大で5割減少するかもしれないわけです。
ただし、その前後の年度(令和4,6,8,10,12,14年度)は、定年退職者が発生するので、新規採用者数は減りません。
新規採用者数は、令和4→5にかけて半減、令和5→6にかけて倍増、令和6→7にかけて半減……というサイクルを繰り返します。
めちゃくちゃ単純に考えるとこんな感じになりそうなのですが、実際の運用はもっと複雑になると思われます。
この方法だと職員の年齢構成が歪んでしまい、組織運営に支障が出るからです。
採用試験に関しても、「1年ずれるだけで倍率が全然違うのは非効率・不公平だ」という批判が上がるでしょう。
そこで、多くの自治体では、採用者数の減少幅を平均化するだろうと思われます。
「2年に1度のペースで新規採用者数を半減させる」のではなく、例えば「2年続けて新規採用者数を25%減少させる」ことで、年度間の採用者数の増減幅を縮小するのです。
僕がこれまで「令和4年度の新規採用者数は減りそう」と呟いているのも、この発想がベースです。
令和5年度に新規採用者数を5割減らす代わりに、令和4年度と5年度に25%ずつ減らす……という人事戦略を採る自治体がそこそこあるのでは?と勘繰っています。
この作戦では、令和4年度は退職者>採用者となるため、令和5年度は欠員が生じます。
この分は会計年度任用職員で穴埋めするのでしょう。
反対に、令和4年度の採用数は減らさず、令和5年度〜14年度にかけて25%採用数を減らす、いわば採用枠を前倒しするような運用も考えられます。
こちらだと令和6,8,10,12,14年度は定員をオーバーしてしまうので、自治体としてはあまり気が乗らない気がします。
ここまでの妄想は、満60歳を迎える職員が全員定年延長を受け入れる前提で展開してきました。
これまで定年退職してきた職員が「全員」残留するために、採用者数が圧迫されるという前提です。
しかし実際は、定年延長を受け入れず、満60歳で退職する人も存在するはずです。
つまり、定年延長年度(R5,7,9,11,13)であっても、退職者数が5割も減るとは限らず、ひいては採用者数の減少幅もより小さいかもしれません。
「定年延長を受け入れず、満60歳で退職する人」の割合が高ければ高いほど、退職者数が増えるため、採用者を減らさずに済みます。
極端な話、この割合が100%であれば、定年延長は完全に形骸化して、これまでと全く変わらないわけです。
反対に0%であれば、全員が定年延長に従うことになり、5割の退職者減・採用者減が現実化するでしょう。
「定年延長を受け入れず、満60歳で退職する人」の割合は、現時点では全然読めません。
かつ、自治体によっても大きく差があるでしょう。
自治体の職員の定員(職員数の上限)は、条例で決められています。
条例上の定員には、フルタイム勤務の再任用職員も含まれます。
(短時間勤務の再任用職員は含まれない)
つまるところ、現時点でも「61歳以上の職員」は、定員の中に存在するのです。
今回の定年延長は、この「フルタイム勤務の再任用職員」が「61歳以上の正規職員」に置き換わっていく過程だともいえます。
退職者補充という考え方は、職員数(定員)を一定に据え置くことが前提です。
定員を一定にするために、退職者数が少ない年度には、採用者数を減らすわけです。
定年延長のせいで採用者数が減るのは、これまで定年退職していた職員が退職しなくなり退職者数が減る、つまり61歳以上の職員が増えて定員を圧迫するからです。
ただし実際のところ、既に定員の中には「フルタイム再任用職員」という形で、一定数の61歳以上の職員が存在します。
定年退職しているものの、実は定員の中には残っているわけです。
そのため、定年延長が始まっても、フルタイム再任用職員の人数分はもともと定員に含まれているので職員数増とはならず、定員を圧迫しないのです。
職員数が増えないのであれば、採用数を減らす必要もありません。
つまるところ、フルタイム再任用職員が現状で多い自治体ほど、定年延長による採用者数の減少幅が小さいと言えるでしょう。
定年後にフルタイム再任用勤務へ移行する職員の割合は、自治体ごとにまちまちですし、同じ自治体の中でも年度によってばらつきがあると思われます。
これも不確定要素の一つです。
現時点で入手できる公表数値ベースでは、
までしか言えません。
あくまで「最大」であり、 実際はここまでは減らないと思います。
定年延長期間中の採用戦略は、今まさに各自治体の人事部局で真剣検討している最中でしょう。
そもそも使えるデータが少なく、悪戦苦労しているところなのではと思われます。
人事通な方が書いたガチ解説が読みたいところなのですが、今のところ見つけられていません。
人事に詳しいほど、不確定要素がありすぎるために、確たることを発信できないのでしょうか……?
ただ、具体的にどれだけ減るのかは、今のところ見つかりません。
そこで、現時点で入手できる情報を用いて、果たしてどれくらい減りうるのかを考えてみました。
あくまでも人事エアプによる試算です。
採用者数=退職者数
地方自治体の採用は、基本的に退職者補充です。退職者見込み数と同数を採用します。
例えば2022年度中に100人退職する見込みだとすると、2022年度中の採用者(2023年4月から勤務スタートの人たち)は、100人がベースになります。
2022年度中に100人減る代わりに、2023年4月1日から新たに100人を雇い入れることで、総人数をキープするわけです。
定年延長期間中は、2年に1度のペースで定年退職者が発生しない年度、つまり退職者数が激減する年度が挟まります。
退職者数の減少が確実であるために、採用者数の減少も確実視されているのです。
約5割が定年退職者
総務省の「令和元年度 地方公務員の退職状況調査」(リンク先はPDF)によると、全退職者に占める定年退職者の人数は、54.5%とのこと。以下、表現をシンプルにするため、全退職者に占める定年退職者の割合は約5割と置きます。
さらにシンプルにするため、職員の年齢構成は均一(どの年齢でも職員数は同一)と仮定します。
定年が延長されようとされまいと、定年退職以外の退職者数には、直接の影響はありません。
ひょっとしたら「老いぼれを優遇する組織に未来は無い!」と若手の離職が増えたりするかも知れませんが、現時点では定量的に予測できないのでスルーします。
超単純に考えると、定年が引き上げられる年度(令和5,7,9,11,13年度)は、退職者数が最大で約5割減少するわけです。
先述したとおり、地方自治体の採用は基本的に退職者補充です。
退職者数が5割減るということは、採用者数も5割減ることになります。
つまり、またまた超単純に考えると、定年が引き上げられる年度(令和5,7,9,11,13年度)は、採用者数が最大で5割減少するかもしれないわけです。
ただし、その前後の年度(令和4,6,8,10,12,14年度)は、定年退職者が発生するので、新規採用者数は減りません。
新規採用者数は、令和4→5にかけて半減、令和5→6にかけて倍増、令和6→7にかけて半減……というサイクルを繰り返します。
不確定要素①:年度間で平均化するか?
めちゃくちゃ単純に考えるとこんな感じになりそうなのですが、実際の運用はもっと複雑になると思われます。この方法だと職員の年齢構成が歪んでしまい、組織運営に支障が出るからです。
採用試験に関しても、「1年ずれるだけで倍率が全然違うのは非効率・不公平だ」という批判が上がるでしょう。
そこで、多くの自治体では、採用者数の減少幅を平均化するだろうと思われます。
「2年に1度のペースで新規採用者数を半減させる」のではなく、例えば「2年続けて新規採用者数を25%減少させる」ことで、年度間の採用者数の増減幅を縮小するのです。
僕がこれまで「令和4年度の新規採用者数は減りそう」と呟いているのも、この発想がベースです。
令和5年度に新規採用者数を5割減らす代わりに、令和4年度と5年度に25%ずつ減らす……という人事戦略を採る自治体がそこそこあるのでは?と勘繰っています。
この作戦では、令和4年度は退職者>採用者となるため、令和5年度は欠員が生じます。
この分は会計年度任用職員で穴埋めするのでしょう。
反対に、令和4年度の採用数は減らさず、令和5年度〜14年度にかけて25%採用数を減らす、いわば採用枠を前倒しするような運用も考えられます。
こちらだと令和6,8,10,12,14年度は定員をオーバーしてしまうので、自治体としてはあまり気が乗らない気がします。
不確定要素②:定年延長を受け入れない職員の割合
ここまでの妄想は、満60歳を迎える職員が全員定年延長を受け入れる前提で展開してきました。これまで定年退職してきた職員が「全員」残留するために、採用者数が圧迫されるという前提です。
しかし実際は、定年延長を受け入れず、満60歳で退職する人も存在するはずです。
つまり、定年延長年度(R5,7,9,11,13)であっても、退職者数が5割も減るとは限らず、ひいては採用者数の減少幅もより小さいかもしれません。
「定年延長を受け入れず、満60歳で退職する人」の割合が高ければ高いほど、退職者数が増えるため、採用者を減らさずに済みます。
極端な話、この割合が100%であれば、定年延長は完全に形骸化して、これまでと全く変わらないわけです。
反対に0%であれば、全員が定年延長に従うことになり、5割の退職者減・採用者減が現実化するでしょう。
「定年延長を受け入れず、満60歳で退職する人」の割合は、現時点では全然読めません。
かつ、自治体によっても大きく差があるでしょう。
不確定要素③:現時点のフルタイム再任用移行率
自治体の職員の定員(職員数の上限)は、条例で決められています。条例上の定員には、フルタイム勤務の再任用職員も含まれます。
(短時間勤務の再任用職員は含まれない)
つまるところ、現時点でも「61歳以上の職員」は、定員の中に存在するのです。
今回の定年延長は、この「フルタイム勤務の再任用職員」が「61歳以上の正規職員」に置き換わっていく過程だともいえます。
退職者補充という考え方は、職員数(定員)を一定に据え置くことが前提です。
定員を一定にするために、退職者数が少ない年度には、採用者数を減らすわけです。
定年延長のせいで採用者数が減るのは、これまで定年退職していた職員が退職しなくなり退職者数が減る、つまり61歳以上の職員が増えて定員を圧迫するからです。
ただし実際のところ、既に定員の中には「フルタイム再任用職員」という形で、一定数の61歳以上の職員が存在します。
定年退職しているものの、実は定員の中には残っているわけです。
そのため、定年延長が始まっても、フルタイム再任用職員の人数分はもともと定員に含まれているので職員数増とはならず、定員を圧迫しないのです。
職員数が増えないのであれば、採用数を減らす必要もありません。
つまるところ、フルタイム再任用職員が現状で多い自治体ほど、定年延長による採用者数の減少幅が小さいと言えるでしょう。
定年後にフルタイム再任用勤務へ移行する職員の割合は、自治体ごとにまちまちですし、同じ自治体の中でも年度によってばらつきがあると思われます。
これも不確定要素の一つです。
暫定的結論:最大25%?
現時点で入手できる公表数値ベースでは、- 2年に一度、最大で50%減少させる
- 多くの自治体では、採用者数を平均化するため、10年間にわたり最大で25%減少する
- 令和4年度採用から減らす自治体もあるかもしれない(最大25%減少)
までしか言えません。
あくまで「最大」であり、 実際はここまでは減らないと思います。
定年延長期間中の採用戦略は、今まさに各自治体の人事部局で真剣検討している最中でしょう。
そもそも使えるデータが少なく、悪戦苦労しているところなのではと思われます。
人事通な方が書いたガチ解説が読みたいところなのですが、今のところ見つけられていません。
人事に詳しいほど、不確定要素がありすぎるために、確たることを発信できないのでしょうか……?
コメント
コメント一覧 (11)
だいぶ前(2002年)の頃の話ですが、本省にいた時、地方局の幹部が集まり、所管内の様々な問題について議論や意見交換をする会合に出席(様子見)をさせてもらったことがあります。
その時、会合ではどんな政策課題が議論されるのかなあ・・・と思いきや、一番の課題は自局の定員(人件費)管理と定年前人事の諸問題が真っ先に議論されたのに非常に驚きました。
その当時から、50代以上の職員の人事(異動先)をどうするかで幹部は頭を悩ませていたようで、(もっと昔に定年前人事をどうしてたか詳しくは知りませんが)その当時さえ関係機関や関連業界に人事を強引に押しつけるというわけにもいかなくなり、アラカン職員の飼い殺しのような状況が発生していたもようです。
当時の私はまだ若くて「公務員は定年まで勤め上げて、その後は関連業界に転籍(一方通行)するのは当然の話」と疑いもなく考えていましたが、もうその当時から高齢職員の扱いで難儀するのをそこで初めて知りました。(公務員の早期退職制度は当時まだ無かったです)
組織としては、定年を待たずに早めに巣立っていってくれるのが、どれだけありがたいことなのかを、その会合を通じて身を持って知れた貴重なキッカケとなり、「早めに独立できるように今から自分も考えといた方がいいな」と真剣に悩む転機となりました。
定年延長の若手採用の補完性は、専門家でも意見が別れているようです。
公務員のような組織は利潤を追求しないので、高齢者も新卒者もどちらも大切にするでしょう。その補完性を高めてうまく活用できれば、組織にはプラスに働くとされているようです。(詳しくは以下の記事が参考になるかもしれません)
高年齢層の雇用拡大は新卒採用にどう影響するか?(ニューズウィーク)
https://www.newsweekjapan.jp/kim_m/2020/09/post-22_1.php
総務省の統計を見ていると、自治体でも退職勧奨が普通に行われているようで、僕が見えていないだけで案外「定年退職」は難しいのかとも思えてきます。
いずれ別途記事にしようと思っていますが、「職員数を増やさない」という観点ではなく、「総人件費を増やさない」という観点から見ると、これから新規採用数を抑えていかないと厳しいみたいです。
新規採用数が多かったH26〜R2採用くらいの世代が、昇給幅の大きい30代を迎えて、一人当たり単価がどんどん上がってくるとか…
組織活力の観点だけでなく「費用面」の制約も強く受けるので、人事担当者は大変だと思います。
総人件費はどうしても増やせないので、新卒者・現役層・高齢層でそれぞれに抑制をかけることで、等しく負担をしてもらうやり方です。
イメージだと新卒1割減、現役層給与1割カット、早期(or定年)退職者1割増みたいな感じですかね?
その案だと40代で昇給停止みたいなことにもなりかねず、人事院の絡みもあり、その答えはうやむやになっていたような・・・。
新卒者25%はもう少し負担を減らして現役層と高齢層が配慮してあげるべきでしょうね。もう先送りはできない事態に入りました。
さすがに25%削減は若手に不憫でかわいそう😢な気がしました。人事の悩みは深いです。
定年延長後に係長のようなポストにつく人も出てくることが想定され、若手のポストがさらに絞られるでしょう。
さらに、定年延長後の職員は基本的に体力が落ちているので本庁のような最前線の業務はできません。
おそらく出先期間は定年延長の高齢職員、新人、育休等職員が多くなり、厳しい行政運営が予想されます。
残念ながら、再任用職員の様子を見ていると、定年延長はあまりうまく機能しないです。
>とある関東の県庁職員さま
「高齢職員しかできない仕事」みたいなものがあれば、組織にとっても職員本人にとってもハッピーな気がしています。
とはいえ高齢職員の方々は皆さん個性的なので、画一的に「高齢職員向け」な仕事があるわけでもなく、かといって個性に合わせた仕事を割り振る余力もなく、とりあえず「年齢に関係なくできそうな仕事」を割り振るしかない…といった状況にならざるを得ないのでしょうね…
組織内がギスギスしないか、今から不安です。
キャリア官僚、出世望めなくても…「定年まで勤務」急増(朝日)
https://www.asahi.com/articles/ASLBL5VL6LBLULFA02F.html
記事1つ見つけました。このデータを見る限り、定年延長はなかなかの劇薬。参考になりましたら幸いです。
定年延長が招く就職“再”氷河期の恐怖(ニュースイッチ)
https://newswitch.jp/p/21112
記事拝見しました。ありがとうございます。
定員がぎちぎちに決まっている公務員界隈だと、「新卒採用で調整」するしかありませんし、「公務員氷河期」ができるのは避けられないのでしょうね…
民間就職の氷河期とはズレそうなのが不幸中の幸いでしょうか?
インターネット上にたくさんいらっしゃる「人事通」地方公務員の肌感覚も気になります。
これまで以上に「人事ガチャ」次第で天国と地獄が分かれてしまうのかも……