地方公務員は、「成果を上げても評価されない」「頑張っても報われない」仕事だとよく言われます。
金銭面でいえば、たとえ大きな成果を上げようとも、ボーナスが0.1ヶ月ほど増える(+2万円くらい)とか、定期昇給で2号上乗せされたり(年収ベースで+5万円くらい)程度の見返りしかありません。
仕事をたくさん引き受けて長時間残業しようとも、残業代が満額支給されるとは限りません。
成果を上げれば出世できるというわけでもありません。
役所で出世するのは内部調整が上手いタイプです。
個人として有能だったり、役所の外に圧倒的人脈を持っていたりして、しっかり成果を残せたとしても、内部調整が今ひとつだったら出世できません。
しかし実際のところ、地方公務員の中には、待遇以上に頑張って働いている人が大勢います。
職位以上のプレッシャーを引き受けたり、サービス残業を日々続けたり……いわば「損をする」職員がいなければ役所は到底回りません。
このような現実を踏まえ、「地方公務員は頑張るほど損だ」と考える方も多いと思います。
(早々に地方公務員を辞めた方は、特にこう考えていると思います)
ただ僕は、「頑張るほど損だ」とまでは思いません。
目の前の仕事に興味があるのなら、頑張りに応じた「自己満足」というリターンが得られるからです。
自己満足はリターンたりうる
冷静に振り返ってみると、我々は自己満足を得るためだけに相当な投資をしています。旅行なんて自己満足の典型ですし、美食やファッションなんかも自己満足要素が強いでしょう。
自己満足は、仕事以外の面においても、実際すでに強力なインセンティブになっています。
しかも自己満足は、単なる一時的快楽ではありません。
うまく構築できれば、「思い出」という形で、一生涯楽しむことが可能です。
地方公務員であれば、ことあるごとに過去の武勇伝を語ってくる高齢者と接触する機会も多いでしょう。
彼ら彼女らにとって、自分の武勇伝(=思い出)は、まさに自分のアイデンティティそのものであり、生きる支えでもあります。
電話や窓口で武勇伝プレゼンが始まるたび、僕は人生における「思い出」の重要性を痛感します。
適当に相槌を打ちながら、「もしこの人にこの武勇伝が無かったら、果たしてこんなにいきいきしていられるのだろうか?」なんてことも考えたり……
自己満足という要素を考慮せず金銭面だけで損得を考えるのは、精緻なようで現実離れしているとすら思えます。
仕事はコスパの高い自己満足手段
自己満足を得る手段は、仕事だけではありません。いろいろな手段がありますが、地方公務員はさほど高給ではないので、なるべくコストパフォーマンスに優れた方法で得るほうが望ましいです。
地方公務員の場合、仕事で自己満足を得るのは、かなりコスパのよい方法だと思っています。
仕事は、時間というコストを投じる必要があるものの、費用はかかりません。
むしろ投下した時間に応じてお金が返ってきます。
モノやサービスを消費して得る自己満足よりも、かなりコストが小さいと言えるでしょう。
特に地方公務員の場合、副業規制という制約があり、仕事以外から収入を得られませんし、経費は全部自腹です。
何をしようとも仕事よりもコストが高くついてしまうので、得られる自己満足がよほど大きくない限り、コストパフォーマンスでいうと仕事を下回ってしまうでしょう。
「公益」という自己満足ブースター
仕事から自己満足を得られるのは、公務員に限った話でありません。民間勤務でも同様です。しかも民間の場合、頑張れば頑張るほど、自己満足のみならず金銭的な見返りも期待できます。
ただし、地方公務員の仕事は、何であれ名目上は「公益のため」という高邁な目的を持っています。
誰かの私利私欲のためではなく、みんなのための仕事であり、「利他」とか「自己犠牲」のような高尚な理念を持った仕事です。
地方公務員の仕事は、このような世間的に高く評価される理念に直接貢献できる仕事ということで、自己満足を感じやすいと思われます。
実際のところ貢献できているかと問われると非常に微妙なところですが……
案外、トータルリターン(自己満足+金銭的報酬)でみれば、たとえ金銭的報酬では惨敗していようとも、公務員にも分があるかもしれません。
頑張りたいと思うなら素直に頑張ってみれば?
つまるところ、「頑張りたい」と思える環境に巡り会えたなら、素直に頑張ってみるのも悪くない選択だと思います。金銭的には損かもしれませんが、それを補う自己満足というリターンを獲得できるかもしれないからです。
「頑張るだけ損だから」などと斜に構えて意図的に手を抜くと、サビ残が減って金銭的なコスパは良いかもしれませんが、かえって不完全燃焼感が残ったりして自己満足面ではマイナスが勝るかもしれません。
それならいっそのこと、コスパ度外視で思いきり頑張ってみたほうが、長期的には幸せになれるでしょう。
僕自身、観光部局にいたころ、サビ残まみれ&自腹切りまくりの日々を送る羽目になり、金銭的にはかなりしんどかったです。
しかし今となってはぼちぼち良い思い出です。
(将来「若い頃は自腹で東京出張したもんだ」みたいに武勇伝語っちゃいそう……)
自己満足をどれだけ重視するかは人それぞれですし、自己満足の感じやすさも人それぞれです。
自己満足に価値を見出せない人、自己満足を感じにくい人にとっては、まさに地方公務員は「頑張るだけ損」に違いないと思います。性格的に向いていないと言えるでしょう。
コメント
コメント一覧 (2)
地方公務員(特に県庁レベル)の場合は、広くいろいろな仕事やいろいろな人々と良くも悪くも出会える職場であり、稼ぐことに関して公務員は二流以下の扱いではありますが、出会いという意味ではかなりのメリットがありそうです。その出会える人との仕事や価値をメリットとして感じつつ、それを満足と感じられるようであれば、公務員も多少は面白いかなとは思います。(人にもよりますが)
公務員には意外にも先祖代々でお金持ちだったり、地元の名士のご子息さんなどいらっしゃいますし、お金だけに囚われない目的で入る方もそれなりにいるので、金銭とはまた違う異次元の価値感に満足を感じられる感性のある方であれば、意外と続けられるのかもしれません。(お金が好きな人や自己顕示欲が強い人は、公務員には絶対に向いていませんw)
役所内の人間関係もそうですし、「公務員です」と言えば(嫌な顔をされつつも)たいていの人と会えるのは、確かに強みとも言えそうです。