先日の記事で、本格的に地方公務員を目指すと決断する前に
地方公務員の特異性のうち、僕が特に重要だと思うのが「他律性」です。
「他律性」を受容できるかどうかが地方公務員適正を測る指標になりますし、これに魅力を感じられるかどうかで、地方公務員人生の満足度は大きく左右されると思います。
民主主義という統治体制をとっている以上、役所が他律的になるのは必然です。
かつ、昨今は社会全体が「ユーザー優位」に傾きつつあり、役所の他律性もどんどん強まっているように思われます。
このような他律性に縛られた職業人生は、ストレスまみれです。
地方公務員に嫌気が差して離職した方の発言を読んでいると、離職理由の多くが他律性に由来しています。
ひとつひとつ列記していくとキリが無いのですが、
加えて、「他律的に働く」という経験しか積めないために、将来の職業選択の幅が狭まると思っています。
他律性に縛られたまま仕事をしているばかりでは、「職業的な自立性」が身につきません。
民間企業であれば当然の「自分で考えて行動する」経験、現状分析→目標設定→手段検討→実行→反省、という一連の流れを自分で考えて実践する経験がなかなか積めないせいです。
結果的に、民間企業で必要とされる基礎的能力を育めないまま、年齢を重ねてしまいます。
転職市場における「地方公務員は使えない」という評価は、専門的知識やトーク力のような個別具体的なスキルの欠如ではなく、もっと基本的な「自分で考えて仕事する」ことができないせいなのでは、とも思っています。
他律性な働き方は、たいていの人にとって苦痛だと思います。
ただ、地方公務員として働くことに意義を感じている方々は、苦痛を感じつつも、魅力を見出しているはずです。
- 地方公務員という職業は、民間勤務とどう異なるのか(=地方公務員の特異性)
- 地方公務員の特異性に対し、魅力を感じるか
地方公務員の特異性のうち、僕が特に重要だと思うのが「他律性」です。
「他律性」を受容できるかどうかが地方公務員適正を測る指標になりますし、これに魅力を感じられるかどうかで、地方公務員人生の満足度は大きく左右されると思います。
他律性=従たる立場に立たされること
ここでいう他律性とは、役所が「何を」「どのようにするか」を決めるのは住民であり、役所(地方公務員)に自己決定権は無い……という性質です。
僕の造語ではなく、役所界隈では一般的に使われています。民主主義という統治体制をとっている以上、役所が他律的になるのは必然です。
かつ、昨今は社会全体が「ユーザー優位」に傾きつつあり、役所の他律性もどんどん強まっているように思われます。
社会全体における役所の立場が他律的であるために、地方公務員個々人の業務も他律的にならざるを得ません。
決められたルールを淡々と運用する業務が多かったり、担当職員の裁量が著しく制約されるのは、まさに他律性の現れだと思います。
他律性は、顧客との関係性にも大きく影響します。
民間企業であれば、提供側と顧客は、原則的には対等のはずです。
(もちろん実際には優劣関係が生じますが、法的には対等です。)
一方役所の場合、原理原則からして対等ではありません。
提供側=役所のほうが圧倒的に劣位に立たされ、顧客=住民のほうが強いです。
住民の意見は、たとえどんな突飛な理想論であれ、合理性に欠ける「お気持ち」であれ、尊重しなければいけません。
そもそも役所(地方公務員)には、住民から寄せられた意見が「突飛だ」とか「合理性に欠ける」と評価する権限がありません。
判断基準すら住民に委ねられています。
民間企業であれば、提供側と顧客は、原則的には対等のはずです。
(もちろん実際には優劣関係が生じますが、法的には対等です。)
一方役所の場合、原理原則からして対等ではありません。
提供側=役所のほうが圧倒的に劣位に立たされ、顧客=住民のほうが強いです。
住民の意見は、たとえどんな突飛な理想論であれ、合理性に欠ける「お気持ち」であれ、尊重しなければいけません。
そもそも役所(地方公務員)には、住民から寄せられた意見が「突飛だ」とか「合理性に欠ける」と評価する権限がありません。
判断基準すら住民に委ねられています。
他律性はデメリットだらけ
このような他律性に縛られた職業人生は、ストレスまみれです。地方公務員に嫌気が差して離職した方の発言を読んでいると、離職理由の多くが他律性に由来しています。
ひとつひとつ列記していくとキリが無いのですが、
- 荒唐無稽な意見に対して真剣に向き合わなければいけない徒労感
- 意見調整ばかりでなかなか前進しないもどかしさ
- 自分の裁量があっさり踏み躙られて尊厳破壊
加えて、「他律的に働く」という経験しか積めないために、将来の職業選択の幅が狭まると思っています。
他律性に縛られたまま仕事をしているばかりでは、「職業的な自立性」が身につきません。
民間企業であれば当然の「自分で考えて行動する」経験、現状分析→目標設定→手段検討→実行→反省、という一連の流れを自分で考えて実践する経験がなかなか積めないせいです。
結果的に、民間企業で必要とされる基礎的能力を育めないまま、年齢を重ねてしまいます。
転職市場における「地方公務員は使えない」という評価は、専門的知識やトーク力のような個別具体的なスキルの欠如ではなく、もっと基本的な「自分で考えて仕事する」ことができないせいなのでは、とも思っています。
デメリットの中に光明を見られるか?
他律性な働き方は、たいていの人にとって苦痛だと思います。ただ、地方公務員として働くことに意義を感じている方々は、苦痛を感じつつも、魅力を見出しているはずです。
他律的に与えられた仕事、つまり住民が「やらねば」と決めた仕事は、間違いなく誰かが必要としている仕事です。
決められたとおりに粛々とこなすだけで、確実に社会貢献できます。
(自分が決めたわけでないので、責任感をあまり背負わずに済むという利点もあるでしょう)
最近はひたすら自己決定が重んじられていて、他律的に思考・行動する人は容赦無く無能扱いされます。
しかし、他律的に働く人がいなければ、世の中は回りません。誰かがやらなければいけない。
「具体的にやりたい仕事は無いけど、なんとなく地方公務員に関心がある」という方は、こういう役割に魅力を感じているのかもしれません。
僕自身、他律的に働くことに一定の意義を感じているので、今も地方公務員を続けられています。
もちろんストレスも溜まりますが、僕がストレスに耐えた分だけ誰かの幸福に繋がるんだと整理して処理することにしています。
あとは趣味で思い切り自律性を発揮してストレスを発散できているのも大きいです。
僕自身、他律的に働くことに一定の意義を感じているので、今も地方公務員を続けられています。
もちろんストレスも溜まりますが、僕がストレスに耐えた分だけ誰かの幸福に繋がるんだと整理して処理することにしています。
あとは趣味で思い切り自律性を発揮してストレスを発散できているのも大きいです。
他律的という特質は、地方公務員の宿命です。
どんな部署に配属されようとも付き纏います。
これに魅力を感じるのであればどこでも楽しいでしょうし、逆に厭わしく感じられるのであれば、たとえ「やりたい仕事」を担当できたとしても苦痛でしょう。
コメント
コメント一覧 (8)
ただ、半分以上のものは失敗に終わったり、中途半端なものになったこともありましたし、税の無駄遣いだとも強く批判されました。そもそも経済成長していない今の日本の中、そういったクリエイティブな自治体間の開発大競走はもはや過去の産物ともなってしまいましたね。
今や格差社会と高齢化の進行により、公務員がその後処理を任される場面が激増して、いわゆる底辺を支える仕事や予算が多くを占めるという現実は間違いなくあるでしょう。公務員の仕事は未来価値創造ではなく社会保障化したのです。
これは民間企業も似たようなものです。他律的な働き方をするサラリーマンが経営幹部に上り詰めることで、新たなリスクを取れなくなり、今のような低成長により、海外から政治的・経済的に支配される現体制ががっちり固まってしまった現実があると思います。その犠牲は低賃金の非正規雇用の人たちが負っているということになっています。
他律的に生きる(自らリスクを取らない)というのは、結果的には何かに支配される道を自ずと選ぶことになってしまうので、その辺りをよくよく考えて、官であれ民であれ、法人であれ個人であれ、今後の人生を何とか大きく踏み出していく必要がどんどん高まるのだろうと思います。
決裁回議による決定のスピード感のなさ、担当レベルでの裁量権のなさ、企画の没個性(前例踏襲・他自治体の事例踏襲)でストレスをすごく感じます。
特に筆者の方のようなストレス発散法もないのですが、この場合は民間企業等に転職を考えた方がいいでしょうか?
市場価値が低いことは重々承知しています。
名無しの若手公務員さま、お疲れ様です。私も入省当時は全く同じようなことを考えてました。民間に目が向くのは当然だと思います。
公務員の仕事のやり方が時代遅れなのは間違いないのですが、とはいえ民間でもピンキリですよね。テレワーク一つでも企業でその対応方針がまるで違います。
転職するなら若いうちだと思いますが、仕事体制や雰囲気が嫌になって辞めるだけだと、転職先でも似たようなことになるかもしれません。公務員世界は日本の縮図ですし、日本のサラリーマンは基本的にほぼそういうものだと思うからです。
それに絶望して外資やベンチャーに行く霞が関役人も多いです。私は独立する道を選びました。自分がより強く思う職業やライフスタイルについてたくさん学び、それらを実践している人と親しくなることで、少しずつ人生が変わっていくかもしれません。
若いうちに大きな夢が実現できますように、祈っています。
>公務員の仕事は未来価値創造ではなく社会保障化したのです。
その通りだと思います。むしろ戦後復興期という民間が異様に弱っていた時期だからこそ行政が主体的に前向きな役割を担っていただけで、本来はもっと後ろ向きな仕事をやるセクターのはず……
(こんなこと言ったら怒られるんですが)行政に地方創生だの地域振興だのの責任を押し付けてくる民間セクターは、まさに他律思考にあぐらをかいていると思っています……今や役所も民間も大差ないのかもしれません。
心中お察しします……「スピード感の無さ」「企画の没個性」あたりは上司次第で改善されるかもしれませんが、「裁量の無さ」はずっと付き纏うと思います。
まずは「転職」という選択肢が現実的なのかどうか(拾ってくれそうな会社はあるのか、どういう待遇が待ち構えているのか)冷静に把握することをお勧めします。転職サイトに登録してエージェントと相談してみて、公務員を辞めた場合の未来をなるべく具体的に掴んだうえで、転職するかどうかを検討すればいいと思います。
転職がダメそうなら、仕事以外に楽しいことを探すのも一案でしょう。僕みたいに趣味で発散している人は少数派っぽいですが、家庭(家族)を生きがいにしている公務員は結構多いと思います。
(市役所会計年度任用職員)
私の場合、上官や御同輩が良かったんでしょうね。
皆実に良い人ばかりで、「もっと、もっと仕事をこなそう」と思えるんですよ。
それに、職場全体の士気も高いですし。
後は「公僕として働く時どういう働きぶりが市民から見て好ましいか、自分が市民の立場に立てばどうか」を問いかけた時、同じ金額の税金をその人につぎ込むなら沢山の事務量をこなせる人の方が良いに決まっていますしね。
市民の目(こっちはあくまで私の想像)と上官や御同輩といった職場の人的環境が相まって充実した毎日を過ごしております。
何しろ私の一番にして唯一の職場への不満が「名札の紐がコピー機での紙補充の時等に引っかかって邪魔だから安全ピンか何かに変えてほしい」というものですので、如何に職場環境が良いかお判りいただけると思います。