新規採用職員の方は、採用から半年が経過して、そろそろ「自分の実務能力」のレベルが見えてくる頃合いかと思われます。
中には「自分は仕事ができない……」と落ち込んでいる方もいるでしょう。
あくまで僕の体感ですが、役所の仕事は慣れるしかないものです。
どれだけ高学歴だろうと、地頭が良かろうと、輝かしい経歴を持っていようと、最初は通用しないと思います。(もちろん「慣れ」のスピードは地頭次第で大きく差が開くでしょう)
今はうまくいかなくとも、ひたすら数をこなして慣れるしかありません。
めげずに続けているうちに、いずれ慣れて楽になってくるはずです。
めげずに続けているうちに、いずれ慣れて楽になってくるはずです。
答えを出した「後」が重要
地方公務員の仕事(特に新人が担当する仕事)の多くは、法令や要綱などのルールを運用するものです。
何か疑問が生じた場合には、自分で考えるのではなく文書を紐解いて答えを探します。
ある意味、あらかじめ答えが用意されている仕事であり、答えに到達するだけなら、他の業界と比べても相当に楽だと思われます。
ただ、地方公務員の仕事は「答えを出す」だけではありません。
見出した答えを上司や役所外部の方々(住民など)に説明して、納得させるところまでが仕事です。
むしろこういう「答えを出した後のプロセス」のほうが、時間もエネルギーも消費します。
僕の体感では、ヒラ職員の仕事の約7割が「答えを出した後のプロセス」です。
上司にしても役所外部の方々にしても、基本的にヒラ職員のことを信用していません。
そのため、いくらヒラ職員が「法令にこう書かれています」と率直に説明しても、なかなか納得してもらえません。
「法令の読み方を間違えているのでは?」「見落としがあるのでは?」と疑られているわけです。
そこでヒラ職員は、過去事例や裁判例、法令制定時の考え方のような関連情報を収集して、説明を補強していく必要があります。
また、答えそのものがたとえ正しいとしても、感情的に受け入れ難いケースも多々あります。
この場合は、感情的に納得させるための工夫が必要です。
説明の言葉遣いを練り上げて感情的不和を緩和したり、感情的反発を押し切れるくらいにロジックを固めたり……などなど、方法はいろいろです。
こういった「答えを出した後のプロセス」には、ルールもマニュアルもありません。
他の職員から教わったり、見よう見まねで実践したりして、職員個々人が経験を積まない限り、なかなか習得できない領域です。
最初は出来なくて当然ですし、そもそもこういうプロセスの存在すらわからないかもしれません。
さらに困ったことに、先輩や上司からすると、このプロセスはとにかく教えにくいものです。
あまりに慣れきってしまっているために、なかなか言語化できないのです。
「地頭次第だから教えても無駄」だと認識しており、若手から請われても「自分で考えろ」と軽くあしらう職員も少なくありません。
教本無し、師も頼りない……となると、自分でなんとかするしかありません。
幸運にも教えてくれる人がいれば最大限利用しつつ、基本的に自分で試行錯誤するしかないのです。
知識よりも経験を補給
地方公務員の採用プロセスでは、民間企業と比べてかなり重い筆記試験を課されます。
そのため、「地方公務員は知識が重要な仕事だ」と考えている方もいるかもしれません。
しかし実際のところ、地方公務員の実務では、知識よりも経験のほうが圧倒的に重要です。
若手職員の中には「もっと知識を身につければ仕事がうまくいくはずだ」と考え、公務員本を買い漁ったりセミナーに参加しまくったりする人もいますが、それでうまくいくかは疑問です。
経験は一朝一夕で積み上げられるものではなく、それなりに時間をかけて場数を踏むことでしか得られません。
唯一の近道は、他者の経験を「他山の石」として活用する、たとえば
- 周囲の職員が何をしているのか(特に上司との打合せ)を盗み聞き
- 共有サーバーに入っている他人の資料を盗み見
こうやって他者の経験を追体験すれば、少なからず経験値の足しになると思います。
コメント
コメント一覧 (2)
もし、働きやすくて自分の性格に合っていたとしたら、今で役人を続けていたでしょう。しかし実際には私はサラリーマンを早期離脱することを目標に、20代前半にして初めて「人生の情熱」を傾けました。(実現までも20年近くかかった)
職場(仕事)に慣れるまでに年単位でかかるかもしれません。しかし、今の時代、一生公務員を続けていける時代かどうかも含めて先は不透明です。こういうネットもある時代、いろいろな人にも相談しながら、新人時代の危機を何とか乗り越えてほしいなと願っています。
この方↓(3年目限界公務員@haru_2117さん)も3年で力尽きて今年度限りで職を辞めるようです。1.7万人もフォロワーがいるのにアカウントが消えてしまうなんてもったいない!
https://twitter.com/haru_2117