今年4月に受験したITストラテジスト試験、合格していました。
元々は応用情報技術者試験を受けるつもりだったのですが、欲が出てしまい(もし落ちても秋に応用情報リベンジできるし……というバックアップもあり)、応用情報をすっ飛ばして高度試験に手を出してしまいました。


以下、地方公務員とは全く関係ない話なので、興味の無い方はブラウザバック(死語?)してください。

午前1:できれば免除

午前1は4択マークシート式で、同日開催の応用情報技術者試験の午前問題の一部がそのまま出題されます。
問題自体は応用情報技術者試験と同じ……ということは、応用情報技術者試験の対策をすればいいわけです。

しかしこれが非常に大変です。
出題範囲が広くて暗記事項が多く、計算問題もバラエティ豊富で、まともに対策しようとすればものすごく時間がかかります。
そのため、午前1試験は免除を狙うのが望ましいです。(免除の条件はIPAホームページを参照)




まともに午前1対策をするのであれば、応用情報技術者試験の参考書を参照しつつ過去問演習を繰り返すのがベストでしょう。

僕の場合、昨年の秋試験で応用情報技術者試験を受けるべく(試験日に急遽仕事が入り結局受験できず)昨年4月頃から地道に勉強していたおかげで、午前1を突破できました。

午前2:ひたすら過去問

午前2も4択マークシート式で、IPA試験の区分でいう「ストラテジ系」の知識が問われます。
出題範囲が狭いうえに過去問焼き直しも多いので、参考書を読みつつ過去問演習すれば、難なく突破できると思います。


午後1:ひたすら過去問

午後1は論述式で、ほぼ国語です。
そこそこ長い問題文があり、これを読んで20〜40字くらいで論述させる問が5つくらい用意されます。
(大学受験でいうと、全統記述模試みたいなイメージ)

ただ、大学受験の国語とは異なり、問題文全体を俯瞰して論述させるような設問は無く、問題文中の特定の一箇所にヒントが集中している設問ばかりです。
つまるところ、設問の出題意図を正しく理解し、問題文中からヒントを探り当てることができれば、容易に正答できます。
これはもう慣れるしかありません。


午後2:なるべくたくさんのパーツを準備しておく

午後1までは前哨戦のようなもので、本番は午後2の論文試験です。
2時間という試験時間の中で、少なくとも2,000字ほどの文章を書かなければいけません。
しかもテーマは毎回変わります。
さらには手書きです。ITとは……?

ちゃんと実務経験のある方なら、経験のストックからふさわしい事例を持ってきて即興で書き上げられるのでしょう(そもそもITストラテジスト資格は、こういう人のスキルを証明するための資格なのでしょう)。

しかし、経験値の低い受験生の場合は、そもそも論文に使えるストックがありません。
わずかな経験を無理やり転用してみたり、ゼロからストーリーを捻ろうとすると、到底時間が足りません。

そのため、IT素人が論文試験を突破するには、論文に使えそうな事例を「架空の経験」としてあらかじめ複数捏造しておくしかありません。
そして、いろんな角度から「架空の経験」を描写した文章を準備、つまり論文のパーツをなるべくたくさん準備しておいて、試験本番では問題文に応じてパーツを組み合わせて論文を作っていく……という作戦しかないと思います。

あとはとにかく実際に書くしかありません。
試験本番では、問題文を見て「どのパーツを使うか」「各パーツをどう組み立ていくか」「問題文に合わせためにはどういうチューニングが必要か」を考え、その結果を文章に落とし込んでいく……というプロセスを踏みます。
これをひたすら練習するのです。

パーツの作り方

あらかじめパーツを準備しておいて、試験本番ではパーツを組み合わせて論文を作る……という方法自体は、目新しいものではありません。むしろオーソドックスな手法です。
他にもいくつか流派があるようですが、僕は「パーツ流」で突破したということを、まずお伝えします。
 
パーツの作り方はこんな感じです。

1 論文試験の雰囲気を知る

まずは参考書を読んで、論文試験の全体像を把握します。

2 「架空の経験」の題材を決める

「架空の経験」として取り上げる題材は何でもいいですが、複数個用意しておいたほうが無難です。一つだけだと、問題文と相性が悪かった場合に詰みます。


少なくとも
  • IT技術を使った新サービスで売上を伸ばした
  • IT技術を使って業務プロセスを省力化してコストカットした

汎用性が高いこの2つは、必須だと思います。

また、できれば自分と馴染みのある題材を選ぶほうが、パーツを作りやすいですし、試験本番で行き詰まったときのアドリブにも効かせやすい(即興でエピソードをでっち上げたり)です。

重要なのは、IT技術導入の成果を定量的に測定できること、そして投資効果を金額で評価できることです。
お金に繋がらない題材(利便性を高めるだけ等)は、論文化しにくいので、避けたほうがいいでしょう。

僕は3題材を準備しました。
いずれもマンション管理ネタで、「新サービスで売上増」「省人化によるコストカット」「データ収集&分析で満足度向上」の3つです。
マンション管理士と管理業務主任者資格を活かせたのは、これが初めてです。

試験本番では「新サービスで売上増」を使いました。 

3 パーツを作っていく

題材が決まったら、その題材をいろんな視点から描写して、100〜300字程度のパーツを作っていきます。

描写すべき視点は、参考書(後述)にひととおり書いてあります。
あとは過去問の問題文や論文集を読んで、足りないものを補っていけばいいでしょう。
僕の場合、1題材あたり、全パーツ合計で1.5万字ほど準備していました。

「パーツを作る」と言っても、必ずしもゼロから作文する必要はありません。
書籍や雑誌、インターネット記事から、使えそうな記述を「探して」「収集」するほうが、むしろ重要です。
未経験者なのに全部オリジナルで書き切ろうとしたら、かえって現実味がなくなりかねません。

4 パーツの中身を定量化する

ITストラテジストの論文試験では、「何事も定量的に表現したほうがいい」という通説があります。
(定量的に表現したほうが現実味があり、説得力が生まれるということなのでしょうか?)

ひととおりパーツが出来たら、定量的に表現できるものは定量化していきます。
特に、投資コストと投資効果(売上増やコストカット)は、きちんと積算根拠付きで用意しておく必要があります。
そのまま出題されることもありますし、いざという時の字数稼ぎにも使えます。

僕が使った参考書類

 
・ALL IN ONE パーフェクトマスター ITストラテジスト



試験全体の参考書です。
午前2はこれだけで十分だと思います。
全体像を掴むため、最初に読みました。


・応用情報技術者 合格教本


午前1対策用に使用しました。
一応通読しましたが、全く記憶には残っていません。
とにかく詳しいので参照用に最適です。


・ITストラテジスト午後2 最速の論文対策

僕が師事した「パーツ流」論文作成法のバイブル。
パーツとして準備しておくべき視点項目は、この本にひととおり書かれています。


・ITストラテジスト 合格論文の書き方・事例集


前半が論文執筆法、後半が参考論文集になっています。
前半パートは正直あまり体系化されておらず、論文素人がこの一冊だけ回しても書けるようにはならないと思われます。
ひととおりパーツを準備して、経験値を積んだ状態で読むほうが、糧になると思います。


・業種別審査事典

いろんな業種の概略が掲載されている事典です。
パーツ作りにものすごく使えます。
(僕が本番で書いた論文の3割くらいは、業種別審査事典の丸写しだったり……)
大きい図書館に行けば、だいたい置いてあると思います。


・新版ITコンサルティングの基本
・新版SEの基本
この1冊ですべてわかる 新版 ITコンサルティングの基本
克元 亮
日本実業出版社
2021-05-20


新版 SEの基本 この1冊ですべてわかる
山田隆太
日本実業出版社
2022-02-28


そもそもIT業界とはどんなものなのかを知るために一読。
パーツの内容を補強するのに使えました。


・バランス・スコアカードの使い方がよくわかる本



目標や成果を定量的に評価して、投資効果があることを証明する……という、どんな題材でも必要になり、かつ合否を分つ重要な要素(という噂)を、しっかり書くための参考書です。
ちゃんと効果のある数値目標の設定方法がわかります。


個人的な工夫

午後1の問題文を参考にする

午後1試験の問題文では、まずは現状分析から入り、IT導入のプロセスを解説して、上司や経営層へのプレゼン場面で締められるパターンが多いです。
これはまさに、典型的な午後2の論文と同じです。
午後1の問題文は、見方を変えると、午後2論文のサンプルとも言えます。

僕の場合、ITの導入も上司へのプレゼンも経験したことがなく、どういう手法や手順があるのかすらよくわからなかったので、午後1の問題文がものすごく参考になりました。
午後1の問題文の論理展開を、題材だけ置き換えて、そのままパーツとしてストック使わせてもらいました。

「午後1はどうせ国語問題だから対策するだけ無駄」という説もありますが、未経験者ほど、午後1の問題演習が午後2対策にも役立つと思います。

設問アで伏線を張って、設問イ・ウで回収する

僕はIT業界の実務経験が無い代わりに、文章を書く経験は比較的豊富なほうだと自負しています。
このブログを含め累計7年くらいブログを書き続けていますし、SS(5,000〜10,000字くらいの短編)作家歴はもっと長いです。

経験則として、文章に一貫性・納得感を持たせるには、うまく伏線回収するのが鍵です。
特に短編の場合は、冒頭の設定をきちんと消化することが重要です。
「あの要素、せっかく字数を割いて描写されていたのに、全然活かされなかったな」と思われると、文章自体がまとまっていないように感じられるものです。

ITストラテジスト試験の論文でも、冒頭に張った伏線をきちんと回収することを意識していました。
具体的には、設問イ・ウで取り上げる内容を、設問アでも「業界動向」や「自社の課題」として、軽く触れるように心がけました。

具体的にいうと、マンションの共用部分管理のIoT導入というネタの場合、設問イとウで「点検業務を省人化できコストカットできる」ことをメリットとしてアピールするのに先立ち、設問アで「技術者不足と人件費高騰のため点検費用が高騰しており利益率を圧迫している」という伏線を貼りました。

未経験チャレンジには時間がかかる

ITストラテジスト合格までの勉強時間は、累計で約140時間でした。
しっかり実務経験のある方は50時間くらいで合格できるらしいので、かなり余計に時間を要してしまいました。
「コスパがいい」とも評されているITストラテジストですが、未経験者の場合はそう甘くはないと認識しておいたほうが無難でしょう。

このうち論文対策に要したのは約50時間です。
30時間はパーツの準備、20時間は実際に手を動かして論文を書いていました。(本番までに6本書きました)

パーツ流で論文対策する場合、実際に論文を書いてみて、試験本番で行う「パーツを組み合わせて論文を組み立て、ところどころ微修正して完成度を高める」というプロセスの練習が欠かせません。
論文を書いてみると、不足しているパーツにも気が付きます。
ある程度パーツが揃ってきたら、早い段階から論文を書く練習をしていけばいいと思います。