地方公務員という仕事は苦情から逃れられません。
僕はこれまでに複数の部署を経験してきましたが、どの部署でも業務とは関係ない公務員批判(無駄に給料が高い、人数減らせ、態度が悪い等)が過半数を占め、業務に関する苦情は半分未満にとどまります。
さらに業務関係の苦情でも、無理やり役所をこじつけているだけのイチャモンみたいな内容が多く、本当に役所に責任がある苦情は、全体の2割程度です。

業務と無関係な苦情を延々聞いていると、虚しくなってきます。
一個人の私的欲求解消のために地方公務員の時間が割かれているという意味で、間違いなく「税金の無駄」でもあります。
金額ベースで見れば、紙の無駄よりもよっぽど大きいと思います。

ただ、地方公務員に対しては誰でも気軽に不満をぶつけていいという風潮には、一定の意義もあると思っています。

地方公務員はどうして叩きやすいのか

地方公務員が悪感情の捌け口になっているのは、
  1. 「どれだけ罵詈雑言を浴びせようとも反論してこない」と思われている
  2. 「能力的に劣っている」と思われている
  3. 「悪事を働いている」と思われている
  4. 「税金で食わせてやっている」という負い目がある
  5. マスコミや偉い人が日々地方公務員を叩くことで「地方公務員は叩かれて然るべき」と正当化されている
  6. 電話一本でいつでもどこでもすぐに叩けるし、役所に行けば確実に叩ける
このあたりの理由が大きいと思います。
裏を返せば、このあたりの条件を満たせば、地方公務員でなくともサンドバッグ化しかねません。

2〜4を満たす層は地方公務員以外にも複数存在しますし、6は組織であれば大体当てはまります。

5を満たす層は、最近どんどん増えています。
インターネットの発展により、ヘイト系の主張が格段にやりやすくなったからです。
今やどのような層であれ、どこかの大学教授やメディア関係者、あるいはインフルエンサーから叩かれています。
誰かを叩きたいと思えば、ちょっと検索するだけで、叩くことを正当化する主張が見つかるでしょう。

地方公務員特有の事情は、今のところは1だけでしょうか。


サンドバッグ(=公務員)が無くなったらストリートファイトするでしょ? 

もし何らかの事情があって地方公務員を叩けなくなったら、日本全国津々浦々に充満している「地方公務員へのヘイト感情」は、どこに向かうでしょうか?
きっと先述した1〜6の条件のいくつかを満たす「叩きやすい層」に向けられるでしょう。

具体的には、子どもや高齢者、障害者、生活保護受給者、賎業扱いされている職の従事者あたりでしょうか。
いずれにしても、地方公務員よりも雇用や収入が不安定で、身体的にも強くはありません。
地方公務員よりも「打たれ弱い」といえると思います。
こういった方々が、今の地方公務員批判並みの頻度・強度で罵倒されたとしたら……悲劇的結末が待ち受けているでしょう。

というよりも、「大多数から見下されて公然と叩かれているのに雇用も収入も確保されている」という地方公務員の社会的地位が異質すぎるのでしょう。
僕自身、これまで何度も殺害予告されてきましたし、何度も「訴えてやる」と宣戦布告されてきましたが、それでも冷静でいられたのは、「どれだけボロクソに罵倒されたところで実害は無い」という安心感があったからです。
もちろんストレスは感じますが、それだけです。実害はありません。


地方公務員は圧倒的な「叩かれやすさ」を背負わされており、万人からヘイト感情を日々ぶつけられることを宿命づけられています。
この現状が地方公務員に多大なストレスをもたらし、職業満足度を損なっています。

ただ、見方を変えれば、地方公務員が悪感情の捌け口となることで、少なくない人々が救われているはずです。
「地方公務員は、大人しく叩かれることで、一定の役割を果たしている」
こう捉えることで、僕は苦情対応ストレスを和らげています。