前々から「公務員or民間のどっちが向いているか」を判定するフローチャートみたいなものを作ってみたいと思っており、最近はよく就職対策本を読んでいます。

たびたび触れているとおり、僕は民間就活で惨敗して地方公務員に逃げ込んだタイプの人間です。
そのため就職対策本を見かけるたびに当時の恐怖が蘇ってきていたのですが、最近になってようやくトラウマを克服しつつあるのか、手に取ることができるようになりました。

今回紹介するのも広義の就職対策本で、公務員試験にチャレンジする本人「以外」を対象にした公務員試験対策本というユニークな位置付けの一冊です。

「公務員になる」と決断した後のプロセスではとても有益

現役の予備校講師の方が著者であり、公務員試験対策の部分はおおむね当たっていると思います。
特に第5章の人物試験対策のパートは、エントリーシートに書くネタの調達方法から面接本番対策まで、幅広く基本事項が紹介されていて、ものすごく参考になります。
僕が就職活動をしていた頃は、こういう基本的事柄を知らないままに面接に臨んで玉砕していたんですよね……

タイトルに「親の本」と冠している本書ではありますが、公務員試験対策に伴走する役割を担う人であれば、教師であれ先輩であれリクルーターであれ、どんな立場の人にも役立つでしょう。


一方、「公務員をすすめる」という観点、つまり「役所は良い就職先だ」という前提に立っているからなのか、公務員の魅力を誇張しすぎに思われます。

例えば、地方公務員の平均給与月額や平均年収の例として、東京都庁のデータを用いている点。
東京都庁は、全国で最も高い20%の地域手当が支給され、給料(基本給)や期末勤勉手当(ボーナス)、時間外勤務手当(残業代)などが田舎自治体よりも20%高いです。

この圧倒的地域手当のために、東京都庁の平均給与月額や平均年収は、全国平均よりもかなり高いです。
しかし本書では、地域手当加算に一切言及することなく、東京都庁のデータを用いています。
現役地方公務員(特に田舎民)がこの部分を読んだら、僕でなくとも違和感を抱くでしょう。
「アニメ映画の標準的興行収入」として「鬼滅の刃 無限列車編」のデータを提示されてるかのような……

また、「承認された残業代はすべて支払われます」と断言している部分にも違和感があります。
この表現、裏を返せば「残業したところで『承認』されなければ残業代は支払われない」ということにほかならず、これは間違いありません。
ただ、一旦承認された残業であったとしても、予算制約のために支給されないケースがままあるのが現実であり、この記述は誇大に思えてしまいます。

「親からすすめられて」公務員になることの危うさ

本書のコンセプトとは逆行してしまいますが、僕は個人的に、親から勧められて地方公務員を選択するのは悪手だと思っています。
地方公務員という職業は、「どうしてなりたいのか」を徹底的に自分で考えて、自分なりに納得できる理由を見出した上で選択肢すべき職業であり、「親から勧められてなんとなく良さそうだから」という軽い理由で選択してしまうと、後々苦しむと思うからです。

地方公務員として働いていると、いずれ必ず「民間のほうがよかったかも……」という迷いが生じるものです。
民間勤務の友人知人と自分を比較したり、役所叩き・公務員叩きを食らいすぎて気分が萎えたり、民主主義の都合で理不尽な仕事をやらされたりすると、かつての決断を呪いたくなってきます。

こうなったとき、自分が地方公務員を選択した理由、つまりは職業選択にあたっての価値観がはっきりしていれば、冷静に状況を考察して判断を下せます。
続けるにしろ辞めるにしろ、判断基準が明確なわけです。


一方、「親に勧められたから」みたいな理由で深く考えずに地方公務員になってしまうと、職業選択の価値観がうまく確立できません。
そのため、苦境に陥ったときに依るべき判断基準がなく、ゼロから悩む必要があるでしょう。
もちろん、親から勧められた後にしっかり自分で考え抜けば問題ないのですが……