地方公務員界隈では、国家本省への出向は出世コースだと認識されています。
僕は個人的に、出世コースそのものというよりは、出世コース候補者たちをさらに選別する二次選抜過程の一部だと思っています。
本省出向を無事乗り切っても、出世コースに乗らない人が一定数存在するからです。
僕は個人的に、出世コースそのものというよりは、出世コース候補者たちをさらに選別する二次選抜過程の一部だと思っています。
本省出向を無事乗り切っても、出世コースに乗らない人が一定数存在するからです。
本省へ出向する(させられる)職員は、出向前時点では間違いなく評価が高かったはず。
そのはずなのに、実際に出世コースに突入する職員は、本省出向経験者ばかりではありません。
僕の勤務先県庁の場合、むしろ出向せずに庁内で頑張っていた職員のほうが多いくらいです。
つまるところ、本省出向の前後で評価順位の逆転現象が生じている……より直接的に言ってしまうと、本省出向したせいで相対的に評価が下がってしまう職員がいるわけです。
僕の同期職員や、年次の近い先輩後輩の事例を思い返しつつ、本省出向したのに出世コースに乗らない職員の特徴を考えていきます。そのはずなのに、実際に出世コースに突入する職員は、本省出向経験者ばかりではありません。
僕の勤務先県庁の場合、むしろ出向せずに庁内で頑張っていた職員のほうが多いくらいです。
つまるところ、本省出向の前後で評価順位の逆転現象が生じている……より直接的に言ってしまうと、本省出向したせいで相対的に評価が下がってしまう職員がいるわけです。
「割り揉め」の鬼
まず挙げられるのが、組織内の縦割りにこだわり、些細なことでも割り揉めする職員です。
どんな些細な仕事であっても「なぜ当課/自分が応じなければいけないのか」という理由や根拠にこだわります。
しかも往々にして、相手から理由や根拠を示されても徹底的に抗弁して、仕事を引き受けたがりません。
議会答弁とかマスコミ対応みたいな対外的業務で割り揉めするのは、むしろ正確に業務遂行するために必要なプロセスなのですが、
- 所管している法令の解釈について教えてほしい
- 過去の資料を見せてほしい
- 備品を貸してほしい
- 外部から問合せが来ているので対応してほしい
この程度の単発かつ単純な依頼であっても、法令や覚書のような根拠文書を要求してきたり、必要性について資料を作ってレクしに来いと指示してきたりします。
もちろん、割り揉めが必要な場面もあります。
責任の所在を明確化するのは勿論大切ですし、むやみやたらに他部署を巻き込んで仕事を増やす迷惑職員がいるのも事実です。
「なぜその仕事を引き受けなければいけないのか」という入口部分を徹底的に詰めることで、こういうトラブルを未然防止したい……という意図なのかもしれません。
しかし、ごく些細な仕事でもいちいち割り揉めされると、業務効率が激落ちします。
本人としては最適解なのかもしれませんが、組織の全体最適という意味では悪手としか思えません。
圧倒的に出世する職員に求められるのは、自分に危害が及ばないよう徹底的に割り揉めして守りを固める姿勢ではなく、むしろ快く引き受ける度量の広さ、姉御肌や兄貴分気質のほうだと思われます。
後輩・同僚に対して塩対応
本省出向から戻ってくると、若くても20代後半。
同じ係内に後輩がいることも多いです。
本省出向経験者の中には、後輩の面倒見が悪いというか、意図的に後輩を突き放す職員がいます。
後輩から相談されない限り一切助言しなかったり、助けを請われてもそっけなかったり……
こういう職員は大概、同僚に対しても非協力的です。あまりの塩対応を見かねて、他の職員がフォローに入ることも多いです。
僕自身、本省出向経験者と後輩との間に入り、緩衝材と化していた時期が何度かありました。
(自慢ではありませんが、僕がいなかったら退職してただろうな……と思われる後輩すらいます)
(自慢ではありませんが、僕がいなかったら退職してただろうな……と思われる後輩すらいます)
本人に「もうちょい干渉したほうがいいんじゃないの?」と促したことも何度かあります。
すると、「これくらい自力で出来て当然」と言い切る職員もいれば、「苦労させることが本人のためになる」と自慢げに語る職員もいました。
本省では「自力解決」が鉄則であり、出向者であれ他者の助力は得られないと聞きます。
そのような環境を乗り切った、つまり何事も自力でやり切ったという経験を、出向の成果・成長の証明と認識しているのかもしれません。
そして、本省のような「自力解決」を後輩に強いることで、自分と同じように成長させたいのかもしれません。
しかし、本省出向させてもらえる(させられる)職員は他の職員よりも優秀であり、誰もが彼や彼女のようにタフではありません。
ご自分では「当たり前」と思っていることが、他の職員にとっては「大変なこと」かもしれません。
この事実に気づかない、あるいは意図的に無視して自分が楽しようとする姿勢は、他の職員を傷つけます。
職員は能力的にも性格的にも様々であり、塩対応で十分な人もいれば、優しく丁寧に接しなければいけない人もいます。
このような多様性を気にかけず、自分に都合の良いコミュニケーションしか取ろうとしない職員は、いくら自身が優秀であったとしても、組織運営上は害悪になりかねません。
キレ芸を使う
地方公務員であれば誰しも、怒りの感情をぶつけてくる相手と対峙したことがあるでしょう。
こういう相手には、本気で怒っている人もいれば、怒っているふりをしているだけの人もいます。
怒声や攻撃的言動をちらつかせることでプレッシャーをかけ、自分に有利なように交渉を進めようという魂胆です。
本省出向経験者の中には、こういうテクニック、つまるところ「キレ芸」を平気で使う人がちらほらいます。
他部署や後輩に対してキレる姿を見せつけて、自分の意向に従わせようとするのです。
キレ芸は、相手と対等な立場であれば交渉手段たりえますが、格下の相手に対して用いればパワハラにほかなりません。
ある程度出世した後ならまだしも、若手の時点からキレ芸に頼るようでは、「調整能力なし」とみなされて出世コース候補者から落選して当然だと思います。
本省出向のせいとは言い切れないものの……
今回挙げたような特徴は、本省出向経験者に限った話ではありません。
出向していなくても該当する職員はたくさんいます。
出向していなくても該当する職員はたくさんいます。
ただ実際のところ、本省出向を経てこういう性質が身についてしまう職員が少なくありません。
出向前は気の良い同僚だったのに、出向から帰ってくると別人のように面倒臭くなっている……というケースが後をたたないのです。「〇〇課の▲▲さんってキモオタ君の同期(元同僚)だよね?あいつマジでなんなの!?」と現同僚からクレームを受けるたび、フォローしたくてもできなくて悲しくなります。
ここからは完全に推測です。
「徹底的な割り揉め」「後輩・同僚への塩対応」「キレ芸」いずれにしても、もしかしたら本省では当たり前の処世術であり、むしろ推奨されるスキルなのかもしれません。
本人としては、本省出向で習得したスキルを、職場に還元しようとしているのかもしれません。
これらのスキルは、本省のようなタフガイ集団であれば、効率的なコミュニケーション手法として有効な気もします。
しかし、本省と自治体では、職員の質が全然違います。
自治体職員は、本省職員のように皆が優秀で心身ともにタフなわけではなく、気弱な人もいれば無能な人もいます。
優秀な職員だけで組織運営できるほど人材が豊富なわけではなく、そうでない職員をうまく活用して、組織を回さなければいけません。
職員の質が違えば組織の雰囲気も異なってきますし、そうなると求められるコミュニケーションスキルも変わってきます。
つまるところ、本省出向で習得したコミュニケーションスキルを素直に自治体に導入しようとすると、組織の雰囲気・環境・条件の違いゆえに周囲との軋轢が避けられず、自身の評価を落としかねないのです。なんとも皮肉です。
本省出向を経て出世コースに到達するには、本省の雰囲気に感化されることなく、自治体組織運営でも使えそうな部分を「いいとこ取り」するくらいの度量が必要なのでしょう。
職員の質が違えば組織の雰囲気も異なってきますし、そうなると求められるコミュニケーションスキルも変わってきます。
つまるところ、本省出向で習得したコミュニケーションスキルを素直に自治体に導入しようとすると、組織の雰囲気・環境・条件の違いゆえに周囲との軋轢が避けられず、自身の評価を落としかねないのです。なんとも皮肉です。
本省出向を経て出世コースに到達するには、本省の雰囲気に感化されることなく、自治体組織運営でも使えそうな部分を「いいとこ取り」するくらいの度量が必要なのでしょう。
コメント
コメント一覧 (11)
霞が関界隈(本省・本庁)で働く人を大きく分けると主に4種類。
①真に優秀な人
②優秀と勘違いしている人
③無神経や鈍感な人
④神経質や繊細な人
組織が劣化してくると、まず④のカナリアやネズミ役が鬱などでダウンして逃げ始めます。それでもきちんとした対策が講じられないと次に①の大黒柱が逃げ始めます。その結果、最終的に残るのは②と③ばかりになると思います。
②はキャリア、③はノンキャリアに見られやすいタイプです。こうして組織は徐々に無能化と高齢化が進んで、最近ではいよいよ業務が回らなくなっていきます。(現在の厚生労働省や財務省などほとんどの省庁)
本来の過去での比率でいえば2:3:3:2ぐらいかもしれません。このバランスが大きく崩れることにより、「組織に変な奴しかいなくなる」という現象は今後はどの古い職場でも起こりえると考えています。若い人や真に優秀な人が次々辞めはじめたら、その組織の命運はもはや尽きています。余命10年未満かもしれません。
一方で「本省出向したのに出世コースに乗らない職員」と書いてありますが、同じ課にいた場合はわかりますが、わざわざ別の部署の同僚や先輩後輩までそのような視点(あの人は国に行っていた。しかも今は評価が高くない。)で見ますかね・・・?
管理人さんが本省出向を経験されていたなら、他の記事と同様に説得力があって面白いのですが、少ないサンプル数からの推測だと公務員こんな人いるあるあるなだけかなとも。本省出向者への変な偏見につながらなければ良いなと思いました。
地方自治体でも、出向先の省庁でも色んなカラーがあるはずなので、組織がどう、そういうルートに行ったからどうというより、一個人の性格とか元々の気質によるものが多い気がいたしました。
その分類だと、②のタイプに変に感化されてしまった結果、自治体組織と馴染まないキャラクターになってしまう、といえる気がします。③はむしろ自治体職員に向いているかもしれません……(優秀と言えるかは別として)
僕の勤務先県庁だと、国への出向は一大事です。そのため出向経験者は良くも悪くも注目(特別視)されがちで、「さすが〇〇省経験者」という好評も、「出向経験者なのに」という悪評も、どちらもよく話題に上ります……僕自身が評価しているというよりは、出向経験者の評判が自然と耳に入ってくるのです。ゆえにサンプル数は確保できてると思ってます。(文字に起こすと田舎くさくて悲しくなってきました……)
ただ、プラスマイナスいずれの評価にしても、「出向経験者」というステータスを重視しすぎてるのは間違いないです。もはや組織的に根付くバイアスかもしれません。
これは僕自身無意識で、今回コメントをいただいて初めて自覚しました。ありがとうございます……!
>僕の勤務先県庁だと、国への出向は一大事です。そのため出向経験者は良くも悪くも注目(特別視)されがち
2010年代に本省から脱出した人間からすると、霞が関で真に優秀な人の多くはもう既に外に出て(脱藩官僚)、志の高い人は多く残っていないかもしれません。今の時代、真に優秀な人は外資や民間を渡り歩くか、起業や投資をして成功するか、日本をあきらめ海外に出るなどしています。本省出向は圧の高い世界で生き抜く知恵だけは手に入れられるかもしれませんが....w
官僚(公務員)が人事で政治(既存勢力の代表)に操られている以上、どんなに人材が優秀であっても改革的な力は発揮できません。その政治も宗教組織や利害団体や海外勢力に事実上操られているわけです。それを理解し、失望し、脱藩官僚が増えているということで....(以下省略w)
「裸の王様」を地で行くのが日本の霞が関であり、その上にある永田町界隈だと思います。政治家が「腑抜け」・「腰抜け」とまではいいません....(以下自粛w)
中央ならともかく地方の係長級で割揉めしてたら悪目立ちしかしませんね
私は現在民間会社に派遣されているのですが、今回の人事異動で、私が籍を残してるいる課に同年齢の若手が倍増されることから、派遣期間が終わって戻るころには自分の戻るポストはあるのかなと不安で仕方がありません。上には上がいて、自分の力のなさを痛感しているはがりなので、派遣されたからといってエリートなんだと思うこともありません。今は与えられたところでしっかりと謙虚に頑張ろうと思います。ありがとうございます。
この一言が役所生活の全てだと思います。頑張っても頑張らなくても、組織から評価されてもされなくても、肝心の身入りはあんまり変わらないので、「自分が満足できるか/あとあと後悔しないか」が一番大事だと思います。
>本省出向したのに出世コースに乗らない職員の特徴
我が社の場合だと、暫くは本省で持ち前の能力を発揮していたものの、あまりの激務により後遺症が残るレベルの大病を患い、その結果地方出先に戻らざるを得なくなった…というパターンもありますね
在任中に脳出血を患った自分がそうです
もう自分も出世する気は一切ありません
僕も就活していた当時、このリスクが恐ろしくて、国家一般職よりも県庁を優先しました。