外部団体に出向中の今なら人事課にバレないだろう……という目論見のもと、ここ1年半ほど細々と転職活動をしています。
※今のところ地方公務員を辞めるつもりは一切ありません。単なる社会勉強です。

ここまで、転職サイトに登録してオファーを待ってみたり、転職フェアに参加してみたりしてきたところですが、今回は転職シリーズの総仕上げとして、キャリアアドバイザーと面談してみました。

市場価値の低さに定評のある地方公務員、しかも僕は30歳を超えています。
果たしてどれだけ酷評されてしまうのでしょうか……?
これまで獲得してきた資格たちは、僕を助けてくれるのでしょうか……?


<これまでの転職シリーズ>







準備〜作戦編

僕が今回利用したのは、某大手転職エージェントの無料面談サービスです。
エージェントへの登録自体はだいぶ前に済ませており(求人情報を見るため)、そこで提供されているサービスを利用しました。

このエージェントからは、電話やメールで「面談しませんか?」というお誘いを何度も受けており、「転職するかどうか検討中段階でも是非面談しましょう」とプッシュ営業を仕掛けられています。
向こうから誘ってくるくらいなので、生煮え段階の僕が面談しても怒られはしないだろう……と思い、面談を申し込んでみました。

僕がキャリアアドバイザーから引き出したい情報は、転職市場における地方公務員の位置付けです。
一般論を聞き出すのはもちろんのこと、他の転職事例も聞いてみたいところ。
僕が喋る時間は最小限に抑え、キャリアアドバイザーになるべく話させたいです。

そこで、「これから自分のキャリアやスキルを棚卸しする手がかりにすべく、民間企業は元地方公務員をどう見ているのか把握したい」というスタンスを取ることにしました。
こういう理由であれば、「相談する」というよりは「教えを乞う」感じで進めても自然なはず……。

面談本番

面談はオンライン会議アプリ経由で、30分ほど行いました。
アドバイザーの方は僕と同年代くらいの女性で、新人らしさは全然無く、この道でそれなりに経験を積んでいるオーラが出ています。期待大です。

まずは簡単に自己紹介をした後、履歴書の中身についていくつか先方から質問されました。
具体的には、転職先の条件の優先順位、興味のある業界、転職する場合の就業見込み時期あたりです。

あとは地方公務員としての業務経歴についても色々聞かれました。
特に観光部局での経験を深掘りして尋ねられ、
  • 課内でどういうポジションを務めたのか
  • 特に印象に残っているエピソード
  • 役所外部との折衝経験
このあたりを結構詳しく話しました。
今から思い返してみれば、こちら側の喋りやすい話題を振ることでアイスブレイクする目的だったのかもしれません。

「転職するとしたら来年4月以降」と伝えたところ、先方から「半年以上先となると、現時点で具体的な求人をお示しするのは困難です。志望企業を固められない以上、履歴書の添削もできませんし……今回の面談は、お客様の疑問にお答えして自己分析を深める機会にしたいのですが、よろしいですか?」と提案されました。

こちらとしては願ったり叶ったりの展開です。早速用意しておいた質問を投げかけていきます。
(以下、アドバイザーさんからの回答は 斜字体 で表記します)


地方公務員から民間企業へ転職する場合、どういう業界が人気なのか?

コンサルティングファームシンクタンクを志望する方が多いですし、実際に多くの方が転職に成功しています。
公務員の業務と比較的似ていること、確実に収入アップが見込めることが人気の理由です。

また、こういった企業では、パブリックセクターから業務を受注するケースが近年増えており、「行政組織の内部事情を知っている元公務員を雇用したい」という人材ニーズがあることから、公務員から転職しやすい業界ともいえます。

ここ数年は、うまく需要・供給のマッチングが成立している状況です。


1問目から興味深い回答をいただけました。
コンサル転職といえばキャリア官僚の独壇場かと思っていましたが、地方公務員からでも転職できるんですね……。

「政策立案したくて役所に入ったのに、調整業務や住民対応、肉体労働ばかりやらされて、頭を使わせてもらえない」という不満を抱える若手職員は少なくありません。
こういう不満を解消したくて、バリバリ頭脳労働のコンサルやシンクタンクに光明を見出すのかもしれません。

地方公務員の人材面での強みは何か?

強みとしては、「地頭の良さ」「組織内調整スキル」「セルフマネジメントスキル」が挙げられます。

まず、公務員には地頭の良い方が多く、物事の理解力や論理的思考力に長けています。
たとえ未経験分野であっても、学習が速く早々に戦力化できるという意味で、ポテンシャルが高い人材として認識されています。

また、公務員は日常的に、様々な利害関係者間の調整業務を担っていることから、同年代の民間人材と比べても組織内調整の経験が豊富です。
大規模市役所や県庁クラスであれば、大手民間企業に引けを取らないスケールの組織であり、調整能力に関しては即戦力として期待する企業様もいます。

このほか、公務員は一人あたりの業務量が多く……大変失礼な言い方になりますが上司によるマネジメントが機能していないので、若手であってもしっかり自立している方が多いです。
業務の目的やスケジュールを自力で設定して、自分で進捗管理するというセルフマネジメントの技術は、民間企業ではなかなか身につかない、公務員独特のスキルともいえます。


「ありません」と即断されるかと思いきや、丁寧かつ具体的に教えてくれました。
いずれのポイントも、地方公務員ならではというよりは、国家公務員ともかなり共通します。
転職市場では、地方公務員はキャリア官僚の代用品みたいな扱いなのかもしれません。

若手地方公務員を悩ませる「不毛な調整業務」や「放置系上司」が、まさか人材力向上に資しているとは……


地方公務員の人材面での弱みは何か?

弱みとしては、「利益感覚の欠如」「マネジメント経験の欠如」が挙げられます。

民間企業では、どんな業種であれ「売上を確保する」「利益率を高める」といった観点が不可欠ですが、公務員でこういった感覚をお持ちの方はごく稀です。
また、民間企業と比べて公務員は出世のペースが遅く、部下を持ったりチームを率いたりといったマネジメント経験が不足している傾向にあります。



こちらは予想通りの回答です。納得。

民間転職したい地方公務員が準備すべきポイントは?

企業様が地方公務員に期待しているのは、先にも述べたとおり「地頭の良さ」「組織内調整スキル」「セルフマネジメントスキル」です。
これらのポイントをわかりやすく企業様にアピールできるよう、まずはこれまでの業務経験を棚卸しして、使えそうなエピソードを探してみてはいかがでしょうか。

特におすすめなのが、新規事業の立上げに携わった経験です。
自然と調整能力をアピールでき、かつ企業様としてもイメージしやすく、面接でも高評価を得られています。

また、弱みである「利益感覚の欠如」を補うため、簿記資格の取得を推奨します。
(FPはどうでしょう?という僕の更問いに対し)FPよりも簿記ですね。FPはあくまでも個人資産の運用に関する資格なので、転職ではさほど重視されません。

あとは
MOSITパスポート資格を取得していれば、社会人としての基礎能力を証明できるので、時間があれば取り組んでもよろしいかと思います。
そのほかの資格は……キモオタクさんのようにITストラテジストを取得している地方公務員の方は結構いらっしゃいますね。あとは中小企業診断士も多いかと。
これらの資格、地頭の良さを証明する材料にはなりますが、合否を左右するほど重要というわけでもありません。


ITストラテジスト地方公務員、転職市場では希少価値無いんですね……ショックです。
中小企業診断士も若干興味あったのですが、すでに地方公務員のホルダーがたくさんいると知らされて萎えてしまいました。


「優秀な若手」は民間でも通用しそう

もっとボロクソにこき下ろされるのかと思いきや、地方公務員をそれなりに高く評価しているように思われました。
お世辞も混じっていたのかもしれませんが、ここは全部真実だとして話を進めていきます。

とりあえず簿記

わずかでも転職に関心があるのなら、まずは簿記の勉強をしてみるのが良さそうです。
「簿記は大事」という話は、今回のアドバイザーさんのみならず、以前転職フェアに参加した際にも複数の企業から聞きました。
複数の情報源から推されるということは、かなり重要度が高いと言えるでしょう。


「優秀さ」の物差しは官民でさほど変わらない

地方公務員の強みとして挙げられていた「地頭の良さ」「組織内調整スキル」「セルフマネジメントスキル」は、地方公務員なら誰しもが備えているわけではありません。
この3点を備えた地方公務員は、職員の中でも相当の上位層です。

つまり、役所内で「優秀だ」と高く評価されている職員と、民間企業が求める元地方公務員人材は、かなり共通していると言えるでしょう。
僕はこれまで「公務員らしくない人ほど民間企業では活躍できる」と思っていましたが、どうやらそうとも限らないようです。

逆にいえば、役所内でパッとしない人は、民間企業からも需要が無い……とも言えます。
厳しい現実です。

固有技能よりもポテンシャル

インターネットで地方公務員の転職情報を調べると、「地方公務員は転職市場では無価値」という前置きからの
  • 地方公務員が転職するならプログラミングスキルが必須!
  • ブログを書いて文章力を磨こう!
みたいな、何らかの殊技能を身につけるべきという主張がたくさんヒットします。
しかし今回の面談では、こういう個別具体的なスキルに関しては一切言及されませんでした。

語学に関しても全然触れられませんでした。
(こちらから更問いしようと思っていたのに、すっかり忘れていました……)


アドバイザーさんの回答を余すところなく文章化しようとした結果、弊ブログ最長の約4,400字に到達してしまいました。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。

もし転職を考えている方がいたら、僕みたいにとりあえず無料相談サービスを使ってみればいいと思います。
地方公務員は、引く手数多な「転職強者」ではありませんが、ゴミ扱いもされるわけでもありません。
怯える必要は無いでしょう。