弊ブログを以前から読んでいる方は薄々勘づいているかもしれませんが、僕の勤務先自治体には「昇進試験」なるものがありません。
そこそこの年齢になると、ほぼ全員が横並びで昇進していきます。
よく出世ネタを取り上げているわりに、昇進試験に関して一切言及していないのは、昇進試験がどんなものなのか全然わからないからです。
「昇進試験対策本」みたいな書籍も、実物は見たことがありません。
昇進試験制度を有している自治体が県内には(多分)存在しないので、需要が無いのでしょう。
実態を全然知らない身からすれば、昇進試験は良いものに映ります。
「試験の出来不出来と実務能力は関係無いから、やるだけ無駄」という意見があるのも承知していますが、昇進試験という制度が存在するだけで相当メリットがあるように思われるのです。
昇進試験最大のメリットは、昇進試験を受けないことで「昇進しない」という選択肢をとれる点だと思っています。
昇進したくないと思っている若手職員は少なくありません。
僕の周囲だと、20代のうちは単に「苦労したくない」「割に合わない」という甘ったれた理由が多かったのですが、30代も半ばに差し掛かってくると、自分の心身に変調をきたしたり、親御さんの介護などの家庭事情のために、労働強度を落としたくなる職員がちらほら出てきます。
昇進試験が無い場合、職員本人の意向とは関係なく、年齢や年次が一定程度に達すると自動で昇進します。
昇進しないためには、再起不能なほどに心身を壊して頻繁に休職するしかありません。
つまり、普通の健康な人生を送るのであれば、昇進は避けられないのです。
もちろん、昇進しても楽なポスト(係長級だけど業務内容はヒラ職員並み)は存在していて、運良くそこに配属されれば労働強度を落とせますが、そういうポストはごくわずかです。
さらに、これから定年延長が始まると、61歳以降の役職定年してきた職員がそういうポストにどんどん着任していくだろうと思われます。
やや皮肉ですが、昇進試験があれば「昇進しない人生」を選択できるようになります。
昇進試験が無い自治体では、そもそもこの選択肢が存在しません。
この違いはかなり大きいです。
試験には試験勉強がつきものです。
昇進試験の場合も、相当の時間とエネルギーを試験対策に注ぎ込むことになるでしょう。
過去の記事でも何度か触れていますが、地方公務員は試験勉強というインプットが比較的得意な人種です。(得意でなければ、公務員試験を突破できていないはずです)
現状、採用後の研修は配属先でのOJTが中心で、「見て学べ」「慣れて覚えろ」というスタイルです。
配属先固有の知識や技能のみならず、コミュニケーションやマネジメントのような一般的スキルも、全てOJTです。
本来ならテキストを使って「読み書き中心」でインプットする機会を設けたほうが効果的に研修できる気もするのですが、現状そのような運用をする余裕が無く、せっかくの人材的な強みを活かせていないと思われます。
昇進試験は、仕事に必要な実務的知識を、試験勉強という地方公務員の得意分野で習得させるという、効率的な職員育成手段なのではないかと思われます。
職員個人レベルで見ても、昇進試験対策でみっちり勉強することで、自身の成長を実感できるのではないかと思われます。
昇進試験を受けて主任になった職員と、僕みたいに何もせず自動的に主任になった職員では、相当の能力差がついていることでしょう。
昇進試験が無い自治体だと、こういう危険分子も自動で昇進していきます。
もし昇進させないとしたら、相当の理由が必要です。
一人二人潰しただけでは、単に相性が悪かったとか、潰れた側に非があるという可能性も否定できず、昇進させない理由としては弱いでしょう。
一方、昇進試験があれば、こういう危険分子を「試験不合格」を理由にして昇進させないことが可能だと思われます。
一旦昇進を保留して、本当に昇進させても問題ないのかをもう1年かけてチェックするという時間稼ぎができるのです。
組織運営上、これは相当なメリットなのではないかと思っています。
最初に触れたとおり、昇進試験制度が存在する場合、あえて昇進しないことが可能になります。
昇進試験を受けるかどうかで、仕事に対する自分のスタンスが可視化されるわけです。
しかも、昇進試験を受ける/受けないという単純明快な二分法です。
つまるところ、昇進試験を受ける職員と受けない職員の間で断絶が生じて、職場の人間関係がギスギスするのではないかと思われるのです。
国家公務員のように総合職と一般職で最初から住み分けされているわけではなく、最初は対等の立場だったのに昇進試験時期を境に分断されると、余計に人間関係で揉めそうです。
昇進試験のメリットを3つ、デメリットを1つ挙げてみましたが、いずれも完全に推測です。
「他にもメリットありますよ」「実際そんなにうまくいきませんよ」みたいな実体験コメント、お待ちしています。
そこそこの年齢になると、ほぼ全員が横並びで昇進していきます。
よく出世ネタを取り上げているわりに、昇進試験に関して一切言及していないのは、昇進試験がどんなものなのか全然わからないからです。
「昇進試験対策本」みたいな書籍も、実物は見たことがありません。
昇進試験制度を有している自治体が県内には(多分)存在しないので、需要が無いのでしょう。
実態を全然知らない身からすれば、昇進試験は良いものに映ります。
「試験の出来不出来と実務能力は関係無いから、やるだけ無駄」という意見があるのも承知していますが、昇進試験という制度が存在するだけで相当メリットがあるように思われるのです。
「昇進しない」という選択肢が生まれる
昇進試験最大のメリットは、昇進試験を受けないことで「昇進しない」という選択肢をとれる点だと思っています。昇進したくないと思っている若手職員は少なくありません。
僕の周囲だと、20代のうちは単に「苦労したくない」「割に合わない」という甘ったれた理由が多かったのですが、30代も半ばに差し掛かってくると、自分の心身に変調をきたしたり、親御さんの介護などの家庭事情のために、労働強度を落としたくなる職員がちらほら出てきます。
昇進試験が無い場合、職員本人の意向とは関係なく、年齢や年次が一定程度に達すると自動で昇進します。
昇進しないためには、再起不能なほどに心身を壊して頻繁に休職するしかありません。
つまり、普通の健康な人生を送るのであれば、昇進は避けられないのです。
もちろん、昇進しても楽なポスト(係長級だけど業務内容はヒラ職員並み)は存在していて、運良くそこに配属されれば労働強度を落とせますが、そういうポストはごくわずかです。
さらに、これから定年延長が始まると、61歳以降の役職定年してきた職員がそういうポストにどんどん着任していくだろうと思われます。
やや皮肉ですが、昇進試験があれば「昇進しない人生」を選択できるようになります。
昇進試験が無い自治体では、そもそもこの選択肢が存在しません。
この違いはかなり大きいです。
成長の機会になる
試験には試験勉強がつきものです。昇進試験の場合も、相当の時間とエネルギーを試験対策に注ぎ込むことになるでしょう。
過去の記事でも何度か触れていますが、地方公務員は試験勉強というインプットが比較的得意な人種です。(得意でなければ、公務員試験を突破できていないはずです)
現状、採用後の研修は配属先でのOJTが中心で、「見て学べ」「慣れて覚えろ」というスタイルです。
配属先固有の知識や技能のみならず、コミュニケーションやマネジメントのような一般的スキルも、全てOJTです。
本来ならテキストを使って「読み書き中心」でインプットする機会を設けたほうが効果的に研修できる気もするのですが、現状そのような運用をする余裕が無く、せっかくの人材的な強みを活かせていないと思われます。
昇進試験は、仕事に必要な実務的知識を、試験勉強という地方公務員の得意分野で習得させるという、効率的な職員育成手段なのではないかと思われます。
職員個人レベルで見ても、昇進試験対策でみっちり勉強することで、自身の成長を実感できるのではないかと思われます。
昇進試験を受けて主任になった職員と、僕みたいに何もせず自動的に主任になった職員では、相当の能力差がついていることでしょう。
「昇進させない」合理的理由になる
アラサーになる頃には、「こいつを昇進させたら危険なのでは……?」という職員がちらほら出てきます。
典型的なのがパワハラ上司予備軍です。20代のうちから後輩を潰しだす職員はざらにいます。昇進試験が無い自治体だと、こういう危険分子も自動で昇進していきます。
もし昇進させないとしたら、相当の理由が必要です。
一人二人潰しただけでは、単に相性が悪かったとか、潰れた側に非があるという可能性も否定できず、昇進させない理由としては弱いでしょう。
一方、昇進試験があれば、こういう危険分子を「試験不合格」を理由にして昇進させないことが可能だと思われます。
一旦昇進を保留して、本当に昇進させても問題ないのかをもう1年かけてチェックするという時間稼ぎができるのです。
組織運営上、これは相当なメリットなのではないかと思っています。
人間関係がギスギスしそうな気も若干する
最初に触れたとおり、昇進試験制度が存在する場合、あえて昇進しないことが可能になります。昇進試験を受けるかどうかで、仕事に対する自分のスタンスが可視化されるわけです。
しかも、昇進試験を受ける/受けないという単純明快な二分法です。
つまるところ、昇進試験を受ける職員と受けない職員の間で断絶が生じて、職場の人間関係がギスギスするのではないかと思われるのです。
国家公務員のように総合職と一般職で最初から住み分けされているわけではなく、最初は対等の立場だったのに昇進試験時期を境に分断されると、余計に人間関係で揉めそうです。
昇進試験のメリットを3つ、デメリットを1つ挙げてみましたが、いずれも完全に推測です。
「他にもメリットありますよ」「実際そんなにうまくいきませんよ」みたいな実体験コメント、お待ちしています。
コメント
コメント一覧 (18)
一般職(ノンキャリア)は総合職(キャリア)がいるおかげ?で幹部に抜擢される例が極めて稀です。しかも多くの一般職がそこまで昇進したいとも考えて入っていないので、昇進試験があったとしても受ける人は少ないでしょう。ましてや総合職を差し置いて一般職が幹部になったら、それはそれで(人柄次第ですが)ちょっとやりにくいでしょうね。政治家でも民間登用なんて話がたまに出ますが、よほどの人でない限りは登用は厳しいのも現実。
昔のように昇進を希望する人はかなり減ってきており、昇進試験制度での幹部登用というのはどこの組織でも難しくなりつつあるようです。これからの時代は収入源も多角化していく必要もあることから、組織での出世より副業・資格取得・自己投資に力を入れる人の方が(私の周りでは)多いです。
よくよく考えてみると、そもそもの話として、どうして国家公務員には無い「選抜試験」という人事評価制度を、わざわざ地方自治体が始めたのか……という点も気になります。
さて、昇進試験ですが、私の自治体にもありません。主任は年齢で自動発令、係長以上は選考のみとなります。昇進試験を実施しているところも受験率低下の問題もあるようで、頭を抱えているところもあると聞いたことがあります。
ご指摘のとおり、「受験さえしなければ絶対に上に行くことはない」わけですから、ずっと担当職員でいられるわけですね。「ライン職登用?何それおいしいの?」という人種にはありがたい制度なわけで、試験制度そのものはあってほしかったなぁというのが本音ではあります。学生時代にそんなところ調べませんよね、普通・・・
弊勤務先も昇進試験が無いので、「主任級/係長級だけど比較的楽なポスト」へといかに到達するか?を日々考えています。昇進試験さえあればこんな余計なことを考えずに済むのに……
そもそもどうやって試験問題を作ってるんでしょうね……職員では到底作れそうになさそうですし、出版社とかに外注してるんでしょうか……
ほぼすべての政令指定都市では昇任試験がありますね。
今回の記事に御記載のメリット・デメリットは大方お見込み通りかなと思います。
ただ、人間関係のギスギスというのはそこまで無いように感じますね。
むしろ、個人的には試験が無いほうが猟官任用的な昇任でギスギスするような気もしています。
現代の若者として出世忌避する身としては、今後もあったほうが嬉しいですね笑 神戸市なんかは廃止しちゃいましたが……
僕の勤務先自治体(昇進試験なし)だと、昇任のタイミングはガチ出世コース(財政・人事に幽閉)でも閑職コースでも、ほぼ同じ年齢です。庁内での立場とか影響力とかは勿論全然違うのですが、「昇任」という点では実質ほぼ差が無いので、ギスギスしてる感じはありません。
試験がないと、昇任のタイミングも同じなんですねえ……出世コースか否かでタイミングは違うものだと思っていました。
ある場合ですと、早い人は30代前半で昇任、遅い人は50代半ばで昇任と、かなりの差がつきます。
勤務成績も加味しての判定なので、必然激務部署を経験している優秀な職員が早く出世する傾向にあり、なんであいつが……ということが少ないのもギスギスしていない要因かもしれませんね。妬み嫉みはあるかもしれませんが表面上平和です笑
早くに受かる(一発合格なら部長級の可能性もあり)と激務部署に行って、出世コースとなります。
これに合格しないと昇進しないので、定年まで2級の人も結構います。
特に受ける人ウケない人の対立というのは聞いたことないですね。
逆に、昇進試験のないところがどうやって昇進するのかこちらはよくわかりません…
出世コース突入の条件が明確でいいですね……
僕の勤務先自治体だと完全に年齢ベースで昇進していきます(育休等でブランクが無い限り)。
出世コースも閑職も、昇進(級が上がる)年齢は変わりません。ただ級は同じでも号は全然違うので、給与的にはしっかり差が出てるんだろうと思います。
私のところも昇任試験はなく、2級の主任までは一斉昇任(大卒1類で5年、大卒2類で6年)、3級の主査には36~42歳までの選抜となっています。
主査になる年齢でその後が決まっているようなもので、
36歳主査:超出世コース(副知事候補)
37歳主査:出世コース(副市長出向有り)
38歳主査:普通
39歳主査:少し劣り
40歳主査:問題児
となっており、昇任試験はないですが、この年齢で微妙な空気が出来ます。
ここから先に昇任したくない場合は所属長面談や職員調書の自由記述欄に書くことによって配慮されます。「私は昇進したく有りません。理由はかくかくしかじか」と。
ダメ人間判定を貰い閑職に回されても、4級のライン係長相当の企画主査には57歳でなれるので出世を割り切ればワークライフバランス的には良いものです。
なお、私は技術系職員ですが、技術職は技術職の不文律があります。
昇進ポストが限られている関係(9級の部長や7級の次長枠は一つ等)で、
自分の前後の年齢で出世コースに乗っているものが居ると自分はどれだけ頑張っても出世出来ない、歳上・先輩を差し置いて昇進出来ないです。
その結果三十後半で将来が見えてくるので昇進試験はなくとも人間関係的には微妙な影を落とします。
なお、技術職の場合、前後の年齢で37歳主査に挟まれている38歳主査がそれでも諦めずに頑張ると、御褒美で本庁の6級課長(技術職枠は大体激務か敬遠される仕事)を賜り、定年前に7級次長と同格の副理事がつきます。
そこそこ普通にしていると通勤が大変な地方の4級係長から5級課長(本庁課長補佐級)か参事補佐係長で暑い中、寒い中、足場が悪い中、住民の罵声を浴びてヤクザに注意しながら定年を迎えます。
正直言ってこれなら形だけでも昇任試験を行い、昇進したい奴は受験して昇進し、そうではない人間は受験しない方が良いというものです。
技術職こそ、事務職とは違って知識・経験の積み重ねが重要でしょうし、管理職になるコースのみならず専門性を極めるコースもあって良い気がします。
うちでは昇進試験を採用しています。
学科は実力、面接は出来レースって感じですね笑
本当に優秀な人でも、上長へのゴマスリに失敗していれば平気で不合格にさせられますね。
結局お友達人事って感じになってるのが現状です。
ごく稀に役職者の定年退職者が多い年に仕方ないかって感じで、私みたいな学科を奇跡的に合格した者が数名運良く昇進したりします。
技術職は事務職と違い人数が少なく競争率は低いので、学科さえ受かれば昇進の道はあるかなと思います。
2年単位で異動するからこそ、5,6年目のポストが将来を占うとか。
当事者にはなりたくありませんが、側から見守るぶんには相当面白そうです(出歯亀)