どれだけ成果を上げようとも、どれだけしくじろうとも、待遇にはさほど反映されないのが地方公務員という仕事です。
より正確に言うと、業務実績に応じて人事評価が上がったり下がったりはするものの、人事評価と待遇があまり連動していません。せいぜいボーナス(勤勉手当)の支給額が数万円増減する程度です。
自分みたいな無能閑職にとっては非常にありがたい仕組みなのですが、優秀な職員の皆様はさぞかし憤っていることでしょう……
 
ただし、役所の中には、人事評価とは別に「評判」という評価軸も存在します。
大いに実害をもたらすのは「評判」の方です。
「評判」が低下すると、庁内の協力者が減ってしまって業務の手間が増えますし、職場でのストレスも激増します。


「人事評価」と「評判」を別物として考えたほうがすっきりする

我々は普段から、他の職員に対して評価を下しています。
  • 部下のみならず上司のフォローにも奔走している苦労人だ
  • 事務作業は得意だけどコミュニケーションが下手
  • 若いのにパワハラの気がある
  • いい歳して気配りが全然できていない……などなど。
こういう他者評価の集合体が「評判」です。
人事課が決めた基準に沿って行われる統制的な評価(=人事評価)とは全く別物の、自生的・民主的・多面的な職員評価といえるでしょう。

ここでいう「評判」は、あくまでも仕事面を評価しているもので、人間的な「好き/嫌い」とは関係ありません。
「業務能力の評価だって主観的な好き嫌いに影響されるだろ……」と思うかもしれませんが、実際我々は普段から
  • 仕事はできるけど嫌いな人
  • 仕事はできないけど人間的に好きで憎めない人
という評価を、他者に対して下しているはずです。
こういうカテゴリーが存在する以上、主観的な好みと業務能力をある程度分離して思考できていると考えて問題ないと思います。

評判は絶対評価ですが、人事評価は相対評価です。
そのため、評判と人事評価は相関していると思われますが、実態はよくわかりません。
(後述しますが、評判が良いほど、高い人事評価を獲得しやすいはずです)

評判が良いけど人事評価は高くない……という職員は少なくないでしょうし、反対に評判が悪いのに人事評価が高い職員も存在します。
「パワハラで後輩を潰しまくっているのに出世コースに突入する職員」なんかは、まさに「評判は悪いが人事評価は高い」というケースなのでしょう。

評判次第で役所生活が激変する

役所生活に影響してくるのは、人事評価よりも評判のほうです。

評判が良い職員には、役所組織が味方をしてくれます。
組織内の人望が厚く協力者がたくさんいますし、初対面の相手からも好意的に接してもらえます。

別部署の全然知らない人からいきなり電話がかかってきて、「資料ください」と依頼された場面を想像してみてください。
相手方の評判次第で、多少なりとも対応が変わるのではないでしょうか?

役所の仕事のほとんどは、一人では完結しません。他の職員とのコミュニケーションを伴います。
評判の良い職員は、組織内のコミュニケーションが円滑に進められますし、一度のコミュニケーションから得られるものも多いです。
ゆえに仕事を進めやすく、成果も出しやすいと言えるでしょう。
ひいては人事評価も高めやすいはずです。

何より、役所組織内に味方がたくさんいる、つまり職場の人間関係が良好であれば、仕事のストレスがかなり軽減されるはずです。
総務省資料によると、メンタルヘルス不調による休職に至った理由のうち最多なのが「職場の対人関係」です。
人間関係によるストレスの影響がいかに大きいかを物語っています。



何より評判は、部署異動してもリセットされません。
一度築きあげてしまえば、どこの部署に異動しようとも有用な資産になります。

逆に言えば、一度落ちた評判もずっと引き継がれていきます。
人事異動によって人間関係自体はリセットされようとも、評判が悪い職員は色眼鏡をかけた状態で見られてしまい、マイナスからのスタートになります。

果たして僕の評判はどこまで落ちるのか?

評判を高めるにはどうすればいいのか、いろいろ考えてみましたがよくわかりません。
生来のコミュニケーション能力によってほぼ決まるような気もしつつ、「口下手だけど評判の良い職員」も少なくないことを思うと、その他の要素も少なからずありそうです。

「人事評価は高くないが評判は悪くない」というポジションを確立できれば、役所生活はかなり楽になると思います。
評判のおかげで仕事しやすく、人事評価が高くないおかげでハードな部署には配属されません。
仕事がさほど忙しないおかげで精神的なゆとりを保てて、いつも朗らかでいられるので、「あの人はいつも接しやすいね」とさらに評判を高めていけます。

民間企業であれば、こういう社員は年齢問わずリストラの対象なのでしょう。
しかし役所はこういう職員を切れません。少なくとも勧奨退職年齢までは安泰です。
地方公務員の特権を活かせる生き方だと思います。

僕もこの路線を目指していたのですが、あまりに庶務の仕事が不出来すぎて、日々「評判」が落ちていくのを実感しています……
本当、僕に対する表情とか口調がどんどん冷たくなってきてるんですよ。
このままいけば、忘年会スルーしても全くお咎めねさそうです。