役所批判のテンプレートの一つに、「近視眼的」というものがあります。
「中長期的視点の欠如」という言い方もされますが、とにかく中長期的なビジョンが無くて行き当たりばったりな施策ばかりやっているという批判です。
この批判は実際当たっていると思います。
大規模なインフラ整備を除けば、実施した年度のことしか考えていない施策が多く、5年後10年後を見据えた施策はかなり少ないです。
このように役所が近視眼的な理由は、世間的には「公務員が無能だから」で片付けられがちです。
ただ実際のところ、公務員個々人の能力というよりは、役所組織の問題だと思っています。
とにかく「4年間」に集中する首長
まず、役所組織のトップである首長が、最長でも4年先の未来までしか考えていないことが多いです。
首長という仕事は、(よほどご高齢でない限り)人生におけるゴールではなく、次のステップがあります。
次の任期も首長を続けたり、国会議員に転身したり、より大きい自治体の首長へとランクアップしたり、民間企業や大学で「地方自治の専門家」ポジションに就いたり……人によって様々でしょうが、首長としての任期である4年間は、いずれにしても「次のステップ」の準備段階ともいえます。
次のステップに進むためには、任期のうちに成果を出すことが欠かせません。
そのため、4年間という任期の間にどれだけ成果を出すかが最大の関心事になりがちのようです。
加えて、首長の中には、そもそも5年以上先のビジョンを描くことを越権行為と考える人も少なくありません。
あくまでも信託されているのは「現任期の4年間」だけであり、それ以上の時間的スケールの問題は、自分の役割ではないと捉えているのです。
県主導で市町村との連携事業を始めようとすると、よくこういう理由で断ってくるんですよね。
「1年先」しか見ない財政部局
役所組織を牛耳っているのは、たいてい秘書・財政・人事・企画部局です。
この中で最も近視眼的なのは、間違いなく財政課です。
彼ら彼女らは、基本的に一年スパンで物事を考えます。
財政課の主要業務は予算編成ですが、地方自治法において「会計年度独立の原則」が規定されている以上、財政課としてはこれを遵守し、単年度で完結する予算を編成しなければいけないからです。
財政課が近視眼的であること自体は問題ではなく、むしろ近視眼的でいることが役割なのだろうと思います。
一年スパンで見た費用対効果最大化が、彼ら彼女らのミッションです。
問題なのは、財政課が王道出世ルートであり、役所内幹部の多くが財政課出身者という点です。
つまり、一年スパンでの費用対効果最大化に特化した職員ばかりが偉くなり、発言力を持ち、意思決定を行なっているのです。
そのため、たとえボトムアップで中長期的な施策を提案していったとしても、たいてい部局長級の幹部を突破できずに撃沈していきます。
「単年度でしっかり成果を出さなければいけない」という意識自体は、間違いではありません。
議員やマスコミ、住民を納得させるためにも、施策の効果がすぐに現れること(即効性)が重要です。
1年周期では遅いくらいです。
一方で、「単年度では成果が出ないけど、中長期的には成果が見込まれる」という考え方も、同じく間違いではないと思います。
しかし財政課的な感覚では、このような説明は言い訳に過ぎません。
このような感覚が組織内の要人の大半に刷り込まれているために、組織全体が近視眼的……より端的にいえば単年度ベースで思考・判断しがちなのだと思います。
「単年度でしっかり成果を出さなければいけない」という意識自体は、間違いではありません。
議員やマスコミ、住民を納得させるためにも、施策の効果がすぐに現れること(即効性)が重要です。
1年周期では遅いくらいです。
一方で、「単年度では成果が出ないけど、中長期的には成果が見込まれる」という考え方も、同じく間違いではないと思います。
しかし財政課的な感覚では、このような説明は言い訳に過ぎません。
このような感覚が組織内の要人の大半に刷り込まれているために、組織全体が近視眼的……より端的にいえば単年度ベースで思考・判断しがちなのだと思います。
地域の5年後10年後を見据えた仕事って、果たして誰が担っているんでしょうね?
ハード面にしてもソフト面にしても、少なくとも行政はほぼノータッチです。
都市部であれば民間企業がしっかり考えて街づくりや再開発をしているのでしょうが、田舎では誰も何も考えていないんじゃないかと思われます。ひょっとしたら政令市・中核市レベルでも……
もちろん地域によっては、行政がしっかりと中長期的に物事を考えているところもあるでしょう。
このような中長期的ビジョンの有無が、今後さらに地域間格差を拡大させていくんだろうなと思います。
コメント
コメント一覧 (6)
しかし、関西国際空港は今やインバウンドではなくてはならない重要施設ですし、伊丹空港では騒音問題が解決できないから、もはや関空が無いと捌ききれずに困るでしょう。だったら最初から神戸に作れば良かったという意見も多々ありましたが、やはり六甲山などに近過ぎることや、伊丹空港にも近いことから、地域振興バランスで見ても和歌山県側に持っていったのは私はうなづけます。ま、いろんな政治的駆け引きがあったことは言うまでもない話ですけどw
東京湾アクアラインにしても、森田健作知事の値下げ以降は毎週末に大渋滞を引き起こし、最近は木更津や袖ヶ浦の地価が上がりアウトレットやコストコ本社やポルシェや物流倉庫も多数進出してきましたので、千葉県民とすれば全く無用の長物とまでは言えないはずです。房総に二拠点移住する人も増えましたし、地域イメージも多少は変わりました。
本州四国連絡橋については三本も果たして必要だったかと言われることもよくありますが、淡路や徳島を結ぶ明石海峡と岡山と香川を結ぶ瀬戸大橋は私はあっても良かったかな?と。しまなみ海道はよく分かりませんw 後の評価は非常に難しいですね。
地方空港などは評価として何とも言えない面もありますが、キモオタク様の自治体にもきっとあると思われる地方の◯◯空港など、果たして経済効果はどうだったんでしょうかねえ?
首都圏民としては近所なら茨城空港と静岡空港、関西なら神戸空港などは、まあ正直あってもなくても変わらなかったというネガティブな感想を個人的には持っていますが、地元の評価はまた違うものになっていそうですかねw
長期的視点というのはギャンブル的要素が高いからビジネスセンスが高くないお役人にはかなり難しいんだろうなと思いましたw
政治学とかでこういう議論を真面目にやっていそうな気もします。
「支持者」の要求を右から左に役所に流し事業化の圧をかける「思考停止型使い走り」が多いです。
役所としては何の役に立つか分からない近視眼的な事業を強要されますが、首長周りや定年の近い上級幹部は議員と揉めることを嫌いますので、抗弁することはありません。
地方役人など年功序列と異動で市場価値が無く役所も辞められない存在のため、議員からも舐められて当然なのでしょう。
結果、一部の声の大きい人物しか使用しない施設や補助事業だらけになっています。
「税金がー」など掛け声だけで、政治行政というのは極めて合理性に欠ける存在価値の無いセクターだと思ってしまいます。
個人的にはもっと議員が責任を負ってほしいんですよね……一部住民の我儘を横流ししてきた事業を嫌々役所が実施して、要望した一部住民から感謝されるのは議員なのに、その他の住民から「無駄なことしやがって」と怒られるのは役所という。盾にするなと常々思っています。
30代以降だと、どちらかといえばまったりコースなのかなと……