今年度から庶務担当になり、出世コースの職員と関わる機会が増えました。
特に、財政や企画部局からは、毎日のように色々と依頼や照会が飛んできます。
怒られることもしばしばあり、もうすっかり歳下から怒られるのにも慣れてきました。
入庁年次や年齢が下であろうと、出世コースを邁進する彼ら彼女らのほうが、役所内では圧倒的に格上です。
僕のような閑職コースの人間が意見具申するなんて、烏滸がましいにも程があります。
ただそれでも、僭越ながら思うところがあります。
いくら優秀でも完全上位互換ではない
出世コース職員が優秀と言われるのは、汎用的なスキルや知識が高水準だからです。具体的には、コミュニケーション能力や事務処理能力、ロジカルシンキング、数字のセンス、読解力、文章力のような一般的スキルや、民法や行政法などの汎用的知識が挙げられます。
このようなスキルや知識に長けているからこそ、出世コースに抜擢されているわけです。
このように、各課担当者と出世コース職員の間には、れっきとした能力差があります。
そのため、両者の間で見解の相違が生じたとしたら、たいてい出世コース職員のほうが正しいです。
ゆえに、出世コース職員にありがちな「まず相手の否定から入る」というコミュニケーションスタンスは、非常に合理的なのでしょう。
だいたい相手の方が間違っているので、いち早く間違い箇所や原因を見つけられ、効率が良いのです。
とはいえ、役所の仕事は、汎用的なスキルや知識だけで回っているわけではありません。
各分野に特有の専門知識や、経験を通して得られたノウハウのようなものも重要です。
こういった知識や技能は、それぞれの部署で働いているからこそ身につくものです。
(以下、「専門性」と表現します)
いくら優秀な出世コース職員であっても、専門性の領域では各課の職員には敵いません。
専門性を欠いているために、間違った認識を抱いているケースも少なくありません。
正確な判断をするためには、持ち前の普遍的スキルに頼るだけでなく、各課の担当職員から専門性を借りる必要があると思います。
しかし出世コースの職員は、こういった専門性を軽視しがちです。
専門性よりも一般論のほうが優先される前提で話を進めてくるのは日常茶飯事で、ひどい時には「その専門性は間違いだ」と頭ごなしに否定してくることすらあります。
専門性は一朝一夕で身につくものではなく、簡単に言葉で説明できるものでもありません。
担当者に説明してもらったところで、出世コース職員の優秀な地頭を持ってしてもなかなか理解が進まないでしょうし、不愉快に思うのは尤もです。
しかし、各課が持つ専門性を聞き取って吟味して、その専門性をいくつも掛け合わせて活用していってこそ、組織なのだと思います。
このように各課の強みを統合して活用していくことが「内部調整能力の第二形態」であり、幹部に上っていくために必須の技能なのだろうと思います。
所詮は地方公務員
先述したとおり、出世コースの職員は、他の職員よりも優秀です。ただし、あくまでも役所内という限られた世界で相対的に優秀というだけで、社会全体で見れば所詮は地方公務員、ビジネスパーソンとしては下流です。
役所内で出世コースと言われる「財政・人事・企画・秘書部局」は、いずれも役所の内部調整役です。ひどく偏っています。
普段から役所外部と関わる部署(特に産業振興や観光のような民間企業と関わる部署)であれば、公務員よりもはるかに優秀な民間サラリーマンと日常的に交流があり、自分の至らなさを自覚できます。
しかし、内部調整メインの出世コース職員は、自分よりも格下の職員ばかりを相手にする日々を送っているわけで……社会全体で見れば自分は大したタマじゃないことを忘れがちなのではないかと思います。
出世コースを歩まれている立派な方々はこんなブログ読んでないと思いますが、もし気分を害されたらごめんなさい。完全に私怨です。
冒頭に「怒られるのにも慣れてきた」と書きましたが、慣れてきたせいで一層ストレスが溜まるんですよね……
コメント
コメント一覧 (17)
企画は財政人事と違って強制力を持つ武器に乏しく、言わば手足の無い状態でアレコレ指示をしなくてはならないので、原課の方の協力が必要不可欠だと日々感じています。でも嫌な顔されてるんだろうなあ…
ちなみに最近原課からこの界隈に来たのですが、この辺りは本当に、財政人事秘書企画その他官房系…をずっとぐるぐるしてる人がまあ多い印象です。
そんな原課知らずな人たちばかりが出世していくのを見ると、この組織に未来は…と思います。
役所内は本局も地方部局も価値観がどこも内向きで、利益アップや収益力などの価値判断や要素が直結しにくい分野でもあることから、政治力や口八丁手八丁な人たちが陰に陽に跋扈しやすいもの。
とはいえども、イメージ戦略や将来の慧眼力といったソフト面での重要な責務(風見鶏)を担っていることもあり、企画部門に元気があり、やり手で快活な職員が多い組織や職員だとやはり周囲から一目置かれることがよくありました。
勘違い人間は組織に必ずいるものであり、その勘違いを理詰めで冷静に問える言霊のある人は凄いなと思います。私も過去には度々そのような政治力に振り回されましたが、いかんせん立場が低ければあえて正論を言ったところで全く相手にはされず、役所の世界では「何を言ったかより誰が言ったか」が重要視される組織構造。
役所組織が歪む原因の一つにはそんな勘違い野郎の偏った世界観や価値観・政治力や情勢の読み違いが組織の行く末に影を落としてしまうことも珍しくありません。この辺りの事情は硬直した官僚制の限界へともつながっていきます。ここは地方も中央も、日本も中国も大差無いと思います。
このブログでいう二次選抜過程で振り落とされるかもしれないのに、庁内で敵を作っていては先々苦労するだろうなと思ってます。
当方は30代後半まで事業課を巡り、なぜか今さら企画部門に配属されたこともあり、極力周囲とは円滑に関わるように心がけてます。
企画部局の若手を見ていると、武器が無いのを人当たりなどの人間力でカバーするか、一方的に理屈でねじ伏せるか、くっきり分かれるように思います。ここが地方公務員としての分岐路なんでしょうね……そして組織内で高評価なのは後者のロジハラタイプという……
>役所組織が歪む原因の一つにはそんな勘違い野郎の偏った世界観や価値観・政治力や情勢の読み違いが組織の行く末に影を落としてしまうことも珍しくありません。
今まさに、勘違い野郎の読み違いに振り回されています(笑)
組織内部の事情のみならず、将来性や実現可能性を踏まえた意思決定をしてもらいたいです……
僕の勤務先県庁でも、不思議なことに、若手ほど威圧的なんですよね……戦略的に威圧しているのか、そういうコミュニケーションしか取れないのか。これが俗にいう「人材の劣化」なのか、そもそも世代的なものなのか。謎は深まるばかりです。
採用試験の面接重視→低偏差値増→前頭葉の未発達増
みたいなことが起きてるのかもしれません…
まあ自分が最近の面接重視に批判的なだけかもですけどw
僕も今年はマジでやらかしまくっており、とうとう本庁から追放されるか?とソワソワしています。というより周囲の視線が冷たいので脱出したいです……
僕の勤務先だと、今のアラフィフ世代はちょうど人数少ないので、影響が相殺しあって、管理職登用が遅れる事態にはならないかな?と思っています。
個人的には、役職定年制度がちゃんと機能するのか(役降りした人たちがどんなことをするのか)気になるところです。
コメント消しておきました。どうか心安らかにお過ごしください……
内部で敵を作るほど恐ろしいものはないのに
本省と県庁両方の経験がありますが、県庁の方がそういうタイプの若手が多いとも思います
地方だと特に天狗になりやすいのかも
完全に同意です。組織内で敵を作らない(味方を増やす)ことがどれだけ重要か、身をもって知る頃には手遅れという……
本省だとこういう若手はすぐ打たれて丸くなれるのかもしれません。県庁だとみんな優しすぎるのでしょうか?
これまで原課を転々とする30代後半県職員です。
企画、人事、財政といった部門に必要な能力というか、バランス力がないのは自覚しており、特に同部門へのあこがれも嫉妬もないものの、日頃なんとなく感じていた同部門職員への違和感は原課への軽視の視線だったのかと、腑に落ちました。ありがとうございます。
一方で、自分も団体を所管していますが、記事の中の一般論的なものさしで団体側の専門的な事情を軽視しているかもしれないと自省したところです。
いつも思いますが、筆者様の分析力、言語化能力、そして継続力には感服いたします。
これからも楽しみにしております。