僕は以前から、地方公務員の出世競争は採用直後からスタートしているという説を提唱しています。

具体的にいうと、
・採用から3年間ほどで有望な職員をまずピックアップし(一次選抜)
・彼ら彼女らを忙しいポストに配置して能力や激務耐性を測る(二次選抜)
・二次選抜に通過した職員を、人事課・財政課・企画課といった圧倒的出世コースに配置し、帝王学教育を施す
という流れです。



この記事を書いた頃は、僕の世代はちょうど二次選抜の真っ最中で、まだまだ勝敗が固まっていませんでした。
それから4年が経過して、とうとう僕の世代も2次選抜が終わったようで、圧倒的出世コース(部長候補)である人事・財政・企画部局に腰を下ろす面々が固まってきました。

出世競争第一幕の結末として、どういう職員が圧倒的出世コースに乗ったのか、細かく見ていきます。

教科書的リア充のA君 →人事課

  • 学歴 県内2番手進学校(バスケ部主将) → 首都圏上位私大
  • 異動遍歴 出先の庶務担当 → 観光部局の予算担当 → 育休 → 土木部局の予算担当 → 人事課
  • 外見 高身長(185cmくらい)、モデル体型のイケメン
  • 性格 いじり上手なムードメーカー(いじれる相手だけ、とことんいじる)
  • 家族 20代半ばで結婚、3児の父
  • 仕事 必要最低限しかやらないスタンス。必要最低限の見極めがとても上手いので、スマートに仕事をこなしつつ年休もがっつり消化。

外見も性格も公務員らしくない、良い意味で異色の存在です。
廊下ですれ違うと「うーっす!」と気さくに挨拶しながら肩を小突いてきて、甘めの香水の残り香を漂わせて、颯爽と去っていくような。

大手民間企業から大量に内定取れそうなスペックなのですが、労働への興味が皆無で、「最低限のことさえやっていれば普通に昇給していくから」という理由で県庁を志望したらしいです。

実際、熱心に仕事に打ち込んでいるわけではなく、残業は極力せず、隙あらば年休を取得しています。
それでも要領が良く、必要十分に仕事をこなしていますし、何よりコミュニケーションが上手いので人望はとても厚いです。

後述するメンバーのように、「めちゃめちゃ仕事ができる」という高評価を受けているわけではないものの、それなりに忙しい部署でもサクッと仕事をこなして年休を取得し、3人の子育てにも熱心に取り組んでいる……ということで、要領のよい優秀な若手職員という評価を受けています。


教科書的エリート公務員のB君 →財政課

  • 学歴 県内トップ進学校 → 関西圏最上位国立大
  • 異動遍歴 厚生福祉部局の制度担当 → 教育委員会の予算担当 → 厚生福祉部局の総括調整担当 → 財政課
  • 外見 特筆すべき点なし
  • 性格 真面目で凝り性、昔はポケモン対戦ガチ勢だったらしい
  • 家族 独身
  • 仕事 常人の1.5倍の労働時間で、10倍の仕事量をこなす

性格も仕事ぶりも「公務員の鑑」。
採用1年目から明らかに有能だったらしく、「彼は財政課に行くだろう」とずーっと言われ続けていました。
管理職達からの評価は非常に高く、僕の世代で一番有名な職員だと思われます。

国家総合職に落ちて県庁に来たという、超高学歴層にありがちな不本意入庁組です。
筆記試験は余裕で通過したらしいのですが、官庁訪問で落ちてしまったとのこと。
当時はちょうど東日本大震災の直後で、国家公務員の採用はだいぶ絞られていました。
しかも彼は難関人気官庁ばかりチャレンジしていたそうです(財務・総務自治・警察庁だったはず)
不人気な官庁も受けていたら、普通に内々定出ていたんじゃないかと思います。

仕事は正確かつ、とにかく速い。そして残業を厭いません。
目の前の仕事はもちろんのこと、過去の懸案事項にも果敢にチャレンジして、実際にいくつも片付けていきます。
さらに「仕事を作る」のも上手いです。
彼が自主的に調べたことや整理したデータが後々活きるケースがとても多く、上司としては本当にありがたい存在なのだろうと思います。

ただ、他人にも自分並みの完成度・作業量を求める傾向があり、自分にも他人にも厳しいタイプです。
ひょっとしたらこれからパワハラ上司に化けてしまうかも……

マイペース趣味人のC君 →企画課

  • 学歴 県内2番手進学校 → 関東圏最上位国立大
  • 異動遍歴 産業振興部局の事業担当(部内で何度か異動) → 国 → 企画部局(総合調整担当)
  • 外見 ヒョロガリ
  • 性格 オタク
  • 家族 独身
  • 仕事 完全自立型、ゴールと納期を設定したら自主的に段取りして進めていく

カタログスペックだけ見ればB君と大差無いのですが、性格が全然違います。
非常に温和で、あまり物事に執着せず飄々としているので、非常に付き合いやすいタイプです。
(職場の人間関係にあまり関心が無いのかもしれません)
僕がオタク趣味を明かしている数少ない一人でもあり、それくらい信頼できる人間です。

出身大学のレベルが近似していることから、庁内には勝手に「B君とは互いにライバル視しあっている」などと評する人もいます。
こういう下馬評に対し、B君は露骨に嫌な顔をしているのですが、C君は「俺らの関係性、傍目に見るぶんにはめっちゃ面白いんだろうなー」などと笑って流すような感じです。

入庁依頼ずっと本庁の産業振興部局の事業担当として、結構裁量も与えられて好き放題に仕事していたのですが、30歳過ぎでいきなり国に出向して、戻ってきてからは企画課に配属。
(僕の勤務先県庁では、国出向はたいてい20代半ばの職員が選ばれるので、異例の高齢出向です)

今度は産業振興関係だけでなく、いろんな分野において、次々降りてくるミッションをこなしているようです。


典型的「優秀な公務員」人材の枯渇

ここまで読んだ大多数の方が、C君みたいな人が出世コースに乗ることに違和感を覚えたと思います。
圧倒的出世コースを歩む職員には、庁内調整能力が欠かせません。
まさにA君のようにコミュニケーション巧者だったり、B君のようにロジカルに他者を従わせる強さが必要です。
ただC君には、彼らのような庁内調整能力が備わっていません。

実際のところ、二次選抜に突入した時点では、もっと庁内調整に長けた典型的出世コース人材がいたのですが……途中でドロップアウトしてしまいました。
多忙すぎて体調を崩したり、パワハラ上司に潰されたり……有望だと目をつけられなければ安穏とした公務員人生を送れたかもしれないのに。本当に気の毒です。

完全に推測ですが、有望な人材のタマが足りなくなったので、カタログスペック的に上位にくるC君を繰上げで圧倒的出世コース入りしたのではと思います。

過去の記事で、人事課や財政課の出世コースの中でも企画課は異色と書きましたが、やはり異色のキャラクターを充てたということなのでしょうか。




これまでの世代はB君みたいな人が同期に複数人いるのが普通だったので、僕の世代を指して「やっぱ平成生まれはダメだ」などと評する人も少なくありません。
本当に人材劣化しているのか、それともむしろ「多様性」が生まれて良い方向に向かうのか、彼らのこれからの活躍に期待です。