僕はこれまで、県庁(本庁)にいながらも結構クレームの多い部署ばかり回ってきており、本当に申し訳なくて心苦しい案件から、呆れるばかりのいちゃもん案件まで、幅広に経験してきました。

その中でも特に印象に残っているキワモノ事例を紹介したいと思います。
一つでもクスリとしてもらえると嬉しいです。

胸糞悪い事例が知りたい方は、こちらの記事がおすすめです。


なめるなメスブタァッ

これは僕に対してではなく、後輩の女性職員が食らった暴言です。

40代半ばの酒臭いおじさんがいきなり執務室に入ってきて、一番入口近くに座っていた女性職員に話しかけてきたんですよね。
最初は公務員全般に関する一般的な愚痴を独り言のようにこぼしていたのですが、次第にどんどんボルテージが上がっていって、急にキレて発したのがこの言葉です。

ご存じの方も多いと思いますが、これは『高校鉄拳伝タフ』という漫画に登場する有名なセリフです。
ネットミームとしてもよく使われるので、元ネタは知らないけどSNS上などで見かけたことはあるという方も多いでしょう。



漫画から引用したのか、たまたま一致したのか、おじさんの内心はわかりません。
ただ僕含め元ネタを知っている数人は、おじさんの叫びを聞いて吹き出してしまいました。

おじさんはその後も居座って「あばずれ」「ビッチ」「売女」などの汚い言葉を大声で連呼していたので、警備員さんを呼ばれ、連行されていきました。

被害を受けた女性職員は、傷ついたというよりはポカンとしていました。
どうやら「あばずれ」と「売女」の意味がわからなかったらしく、その後上司に対して「『ばいた』ってなんですか?ばい菌みたいな意味ですか?」と質問していました。


川崎ではその理屈は通用しません

川崎市在住の女性から宣告された一言。
僕の住む県内のとある市役所と、ふるさと納税の返礼品絡みで揉めたらしく、
  • 市役所の態度が悪いのは県庁の日頃の指導が足りないせいだ
  • 市役所が対応しないなら、県庁が責任を持って対応すべきだ
  • ゆえにあんたが川崎市の私の家まで来て謝罪しなさい
  • 返礼品を倍量持ってくれば損害賠償請求はしない
という無茶苦茶な理屈を振りかざしてきました。

当時僕が勤めていた部署は、ふるさと納税とは全然関係ありませんでした。
そもそもこんな無茶苦茶な要求に担当課なんて無いよなーと思いつつ、「市役所のことなら市町村課に電話してほしい」と伝えたら、「もう電話したけど対応してくれなかったから、あんたに電話してる」と逆ギレ。
それで「うちに言われてもできません」と返したところ、「できないとはなんだ、川崎ではその理屈は通用しません!」と金切り声を上げられました。

その後も30分くらい怒鳴られて、結局「あんたの県のアンテナショップに低評価レビュー書いてやる」と言われて電話を切られました。

この一件以来、「川崎市は魔境」だと思っています。

ちなみに、このときの経験をもとに書いたのが以下の記事です。



お前の息子、〇〇小に通ってるんだろ

コロナ禍真っ盛りの際、電話にて「うちは仕事が減ってボーナス出なかったのに、公務員はなんでボーナスが出るんだ、ふざけるな」といういちゃもんをつけてきた中年男性が発した一言です。

僕が電話に出る前に、県庁内の別部署にも同じいちゃもん電話をかけていたようで、そこで一方的に電話を切られたことに大層腹を立てており、序盤からひたすら大声で怒鳴り立ててきます。
発言も過激かつ具体的で、「県庁近くの〇〇交差点は薄暗いからちょうどいい」とか「県庁〇〇階のトイレは執務室から遠いから助けが来ない」とか、不気味な発言を繰り返してくるので、これはまずいやつかなと思い、先輩や上司をジェスチャーで呼び集めて6人くらいで聞いていました。

途中から僕個人を攻撃する流れになり、「お前が同和特権で採用されたことバラされたいのか?」とか「両親の職場にも電話してやる」などと詰め寄ってくる流れの中で、僕の息子のことに触れてきました。

この発言自体、普通に脅迫です。

そっくりそのままドラマに出てきそうなくらい教科書的な脅迫です。

ただ僕は独身で、当然ながら息子もいないんですよね……
ゆえに脅迫カウントとして処理できず、そのまま電話応対を続けざるを得ませんでした。
30分くらいずっと一方的になじられていました。

電話を終えた後、課長は「隠し子がいるのか?」と真顔で心配してくるわ、先輩は「息子って下ネタ的な意味なんじゃない?」と提唱してくるわ、他の先輩も流れに乗って「『息子が通う小学校』って高度な下ネタだな〜」と茶化してくるわ……職場は大爆笑に包まれました。 

当時は「なんだこの無責任な人たち!?」と驚いたのですが、今から思えば、疲弊した僕を元気づけようとしてくれたんだと思います。



これまでは、今回紹介したような論外なハードクレームであっても、「行政だから」という理由でなかなかお断りできるませんでした。
しかし最近は「カスハラ」という概念が浸透してきて、こういう手合いは早々にシャットダウンできるようになりつつあると思います。良い流れです。

とはいえ、たとえ短時間であっても、暴言を吐かれると心が傷つきます。
僕自身はそれなりに年次も上がってきて、あまり外線電話を取らなくなり、外部からの苦情を聞く機会も減ってきました。
その分、暴言を吐かれた後輩をケアするのが、僕の世代の役割なのかなと思っています。