毎年2月恒例、人事異動の噂話に花を咲かせつつ、夜な夜な予算業務の後始末と議会対応に明け暮れる日々を過ごしています。こういう時間を「無駄だ」と一蹴する人は地方公務員向いてないんだろうなと思います。僕は好きです。


敗北を認めることがスタート

高知県 “賢い縮小”人口減見越した社会目指す 当初予算案提出



県レベルの戦略で「いかに縮小させるか」を考えていること、より正確に言えば縮小を前提にした施策が許容されることに感動を覚えました。

これまでの役所界隈では、地域社会の縮小を是認するのはタブーだったと思います。
ゆえに、無駄金だと誰もが思いつつも、移住促進や子育て支援、よくわからない複合施設の整備、目新しさだけが売りの集客イベントのような、実らない施策に取り組まざるをえない、暗黙の強制力のようなものがありました。
ヒトモノカネ全てのリソースが減っていくのに「今後ますます発展していきます」という虚勢を張らざるをえないという空気が、本当に気持ち悪かったです。

「地方創生」なんかよりも「賢い縮小」こそ、今の地方自治体に必要な発想だと思います。

相次ぐ賃下げ(理由は色々)

八街市、財政難で職員の給与削減方針 次年度に若手除き半数が対象、特別職も



新庁舎整備のため職員らの給与を5年間減額…市長は30~20%、年間約5500万円の財源確保




来年度予算で給与カットをキメる自治体がちらほら出てきました。
やはり昨年の人事院勧告のプラス改定が強烈すぎたのでしょうか……

昨年の人事院勧告には、「若手の賃上げ」という目的がありました。
この目的を具体化するためには、低い号給ほど賃上げ幅を大きくすることになります。地方公務員の給料は年功序列で決まっており、若手ほど号給は低いからです。
そのため、「低い号給ほど賃上げ幅を大きくする」という対応で、「若手の賃上げ」という目的はきちんと達成されます。

このような措置は、別の見方をすると、若手職員に限らず「低い号給の職員」は誰でも手厚く賃上げがなされたともいえます。
例えば再任用職員や会計年度任用職員の方々です。これらの方々は、年齢に関係なく低い号給が適用されており、若手職員と同じく大幅な賃上げを享受しています。
例えば僕の勤務先県庁では、僕(30代半ば)よりも、会計年度任用職員や再任用職員の方々のほうが、金額では3倍、率では5倍ほど大きいです。

全国の自治体ではこれまで、正規職員を非正規職員(会計年度任用職員)に置き換えることで、人件費を削減してきました。
しかし今回の人事院勧告では、低い号給ほど賃上げ幅が大きくなったために、会計年度任用職員の人件費が大幅に増えることになりました。
特に、都道府県よりも会計年度任用職員の比率が大きい市町村ほど、給料プラス改定による財政負担増加が著しいのだと思われます。

給与のプラス改定がいつまで続くのかはわかりませんが、給与カットする自治体はこれからも増えていくのではないかと思います。

正直なところ、僕はある程度の給与カットは仕方ないと思っています。
ただし、「行政サービスの質も量も縮減してもなお財政が厳しいから、給与カットせざるを得ない」という前提がある場合に限ります。
島根県太田市のように、新しい施策を行うための財源として給与カットするのは論外です。

前掲の新聞記事を読んで「やべー!!」と思ったのは、「新庁舎整備のために給与カット」という判断よりも、市長のコメントです。


楫野市長は「財政が厳しい中、職員らに協力を呼び掛けて理解を得た。給与カットと併せて、様々な補助事業や有利な起債も活用していく」と話した。
【読売新聞】新庁舎整備のため職員らの給与を5年間減額…市長は30~20%、年間約5500万円の財源確保
https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20250219-OYO1T50025/

この言いぶりだと、主な財源調達手段は「給与カット」で、従たる手段が「補助事業や有利な起債」という趣旨になります。
普通、逆ではないでしょうか?
補助や起債を駆使したうえで財源が不足するのなら、その事業は背伸びしすぎなのであって、見直して縮小するべきです。
それでもどうしてもやらざるを得ない場合に限り、給与カットで財源捻出するという流れではないでしょうか……

地方公務員界隈のみならず、世間一般の関心も高いようです。
僕の課で来年度から始まる新規事業があり、つい先日新聞報道されたところ、さっそくご意見の電話(大半が苦情、無駄だから止めろという趣旨)が何件か入っているのですが、電話主たちが「この事業のためにどれだけ給与カットするのか」と問いただしてくるんですよね。
「新規事業の財源を給与カットで捻出」という発想が早くも浸透してるのではないかと不安になります。

地方公務員が「ブログで稼ぐ」のは違法っぽい

北海道の31歳女性職員「人気が出てしまい報酬を…」ネットショッピングの商品評価をSNS投稿し34万円報酬得る 匿名通報で発覚 減給の懲戒処分




地方公務員の副業に関してルールが整備されてくるにつれて、長らくグレーゾーンだった部分が徐々に白黒はっきりしてきています。
今回報道されたのはアフィリエイト収入です。
商品のレビューを投稿して収入を得るケースは違反だと判断され、減給の懲戒処分が下りました。

しかも、許可を得ていないからアウト(得ていればセーフ)というわけではなく、「申請があっても認められない事案」とのこと。
つまり、「地方公務員はアフィリエイト収入NG」という前例ができたわけです。

副業として認めるか否かは、各自治体の判断です。北海道庁では「アフィリエイト収入NG」という判断になりましたが、他の自治体では認められる可能性はあります。
とはいえ役所は先例を重んじる組織なので、この事例が参照され、「アフィはダメ」と判断する自治体が多数派になるのではと思います。

スエゾー

来庁者からつば、市職員がビンタ 加賀市、和解に10万円



顔に向かって唾を吐くのって結構難しくて、勢いよく吐き出したつもりでも重力に負けて相手まで届かないことが多いんですよね(経験談、もちろん吐かれた側です)。
息巻いて唾を吐き飛ばしたのに、床や机に墜落してしまった後のなんともいえない微妙な空気。地方公務員ならではの貴重な経験だと思うので、一度は体験してみてほしいです。

この来庁者の方はきっと慣れてるんだと思います。