4月から地方公務員として新たな一歩を踏み出した皆さん、おめでとうございます。
SNSを見ていると、この10日間で早くも絶望している方もいるようですが……人生は長いので、役所に順応するにしろ離脱を試みるにしろ、焦らなくてもいいと思います。
このブログを見ているということは、きっと何らかの困りごとや迷いごとがあって、ヒントを探しているのだろうと思います。
弊ブログ内の新人向け記事は、以下にまとめています。参考になれば幸いです。
「新人向け」タグで絞ってみても、役立つ記事が出てくるかもしれません。
例年この時期になると「新人地方公務員の役に立つ記事を書きたい!」という意欲が湧いてくるのですが、30代半ばになってくると、新人地方公務員のニーズがわからなくなってきます。
今の20代前半の価値観や考え方が全然わからなくて、一体何に困っているのか、どういうことが知りたいのか、想像できないのです。
そのため今回は、反対に、僕が新人地方公務員(大卒ストレートの20代前半を想定)に対して質問してみたい事柄を挙げてみようと思います。
この記事で例示する事柄は、きっと僕のみならず、僕世代の職員が共通して疑問に思っている(あるいは誤解している)と思います。
職場でのコミュニケーションの参考になれば幸いです。
超絶売り手市場の今、どうして地方公務員を選んだのか
まず真っ先に気になるのが、地方公務員になった理由です。
今や地方公務員よりも楽で高給で安定しててやりがいのある仕事がいくらでもあるのに、あえて地方公務員を選んだ理由が知りたいです。
僕が就職活動をしていた頃は、地方公務員はそこそこコスパ良くホワイトな職業と評されていました。
当時から「残業も休日出勤も当たり前」「残業代は出ない」「住民から罵声を浴びまくる」等々のネガティブな評価もありましたが、それでも民間企業よりはマシだと言われていました。
それくらい民間企業の待遇が酷かったのです。
そのため、僕世代の地方公務員には「待遇」目当てで入庁した人が多いです。
給料はそれほど高くないにしても、「リストラされない」「心身壊しても辞めなくていい」「失敗しても減給されない」あたりの条件を備えているだけでも十分魅力的に映りました。
なお、仕事内容には興味は無く、やりたい仕事なんて最初からありませんし、仕事にやりがいを求めていません。
(入庁当初は意欲ゼロだったものの、「働き始めてみたら意外と面白くてやりがいも感じている」という人もそこそこいます)
一方で今は、民間企業が全体的にホワイト化したために、地方公務員の待遇は相対的に落ちています。
そのため僕世代の価値観では、今の地方公務員という職業には、特に魅力を感じないんですよね……
少なくとも第一志望にはなりません。民間大企業がダメだった場合の「滑り止め」としてはアリですが、あえて第一志望にする理由が浮かびません。
そのため、今地方公務員になる若手の真意が純粋に疑問です。
仕事の中身に興味がある、「転勤が少ない」等の労働条件に魅力を感じた、民間企業が弱い地域なので役所が一番の高給取り……等々、「地方公務員になりたい」と思って就職したのか。
あるいは、民間就活に失敗した、学生時代に心身を壊してバリバリ働けない等、「地方公務員にしかなれなかった/ならざるを得なかった」のか。
事情は人それぞれでしょうが、どういう傾向があるのか、非常に気になります。
ボロカスに叩かれてる職業にどうして就こうと思えたのか
今の世の中、普通に暮らしていたら、地方公務員という職業に対して良い印象を持ちえないと常々思っています。
地方公務員という仕事は、とにかく叩かれて批判されます。
マスコミのような権威ある機関から堂々と批判されていますし、ちょっとSNSを覗けば住民からの生々しい批判がいくらでも見られます。
何より、現役or元地方公務員が、自らの職場や同僚をディスりまくっています。
それでも僕が就職したころは、「まともに仕事してないくせに高給を貰っている」という「妬み」が主訴でした。
見方を変えれば、嫉妬されるほどの「高い給料」がもらえるという意味で、魅力的に映る余地がありました。
しかし、民間企業の待遇が改善されていくにつれ、地方公務員を高給取り扱いする人は激減しました。
今の地方公務員叩きは、「地方公務員どもは無能で使えない」という能力批判・人格批判が中心です。
もちろん僕は、世間で言われるほど地方公務員は無能だとは思いません。
しかしこの認識は、僕自身がそこそこ長く役所で働いていて、地方公務員の実像を知っているからこそ持てるのであって、一般的に入手できる情報だけだと「地方公務員は馬鹿で無能」という認識を刷り込まれるのが自然ではないかと思うのです。
地方公務員に対するネガティブ情報が氾濫する中、どうしてそんなディスられる仕事に就こうと思ったのか。この点も非常に気になります。
公務員試験対策は大変なのか
僕が採用された年度の公務員試験は、最終倍率が10倍くらいありました。
うち筆記試験が8倍、面接が1.2倍くらいで、筆記試験を通過した時点でかなり安堵した記憶があります。
一方で、今は倍率がだいぶ下がっています。
最大手の東京都庁だと2倍を切っていますし、小規模自治体では定員割れするところも出てきています。
これだけ倍率が変わってくると、いくら試験科目が同じとはいえ、試験としては別物だと思います。
そこで僕は、今の地方公務員試験の常識が知りたいです。
特に、一般的な勉強期間と、捨て科目の有無が気になります。
僕の受験した自治体に限らず、当時の地方上級試験は「筆記試験でがっつり落とす」「面接はネガチェックでほぼ落ちない」というのが定説でした。
そのため、地方公務員になるにはとにかく筆記試験対策が重要で、地方上級試験の場合だと、大学3年生の4月から予備校に通い始めて、1年かけてじっくり試験勉強するのが王道でした。
また、捨て科目を作るという発想はありませんでした。
憲法や民法、ミクロ・マクロ経済学、数的処理あたりの問題数が多い科目は受験生全員ががっつり勉強して仕上げてくるので得点差が出ず、刑法や経営学あたりの2~3問しか出題されない科目で合否が分かれる……とよく言われたものです。
捨てるとしても教養試験の物理と化学くらいが限度でしたね。
一方で、今の低倍率なら、昔ほど勉強しなくても合格できるのでは?という気がしています。
こんなことが気になるのは、僕が資格試験全般が好きというのもありますが、退職していく若手職員の内心を探りたいという意図もあります。
僕世代の感覚だと、地方公務員を辞めることには相当なサンクコストが伴うと感じます。
地方公務員になるには、「大学3年生~4年生前半の貴重な自由時間」を、公務員試験合格のための勉強期間として費消しなければいけない……つまり地方公務員への就職には「1年間の自由」という対価を支払っているという感覚だからです。
そのため、退職していく若手職員は、大学生活1年分という膨大なサンクコストを回収できるくらいに良い転職先を見つけたのだと、直感的に思ってしまいます。
(あるいは、サンクコストなんてどうてもよくなるくらい地方公務員という仕事が嫌なのか)
いずれにしても、「地方公務員を辞める」という選択肢は、かなり大きな決断だと感じます。
しかし、もしさほど勉強せずに合格できるのであれば、今やサンクコストなんて存在しないわけであり、この感覚は時代遅れになります。
20代であれば、地方公務員並みの待遇を得られる仕事は他にもたくさんありますし、アルバイトを辞める程度の感覚で地方公務員を辞めていっているという可能性すら考えられます。
今の若手職員と、30代半ばの職員では、仕事に対するスタンスが全然違うと日々感じていますが、その根本原因のひとつが「試験難易度」のような気がしているのです。
もし暇な方がいたら、コメントで教えてもらえると嬉しいです。
コメント
コメント一覧 (15)
私の場合は民間転職より独立や経済的自由の方に魅力を感じてすぐそちらに舵を切りましたが、20代前半で将来の進路に悩むということは本当の自分探しをたぐり寄せ始めている証でもありますから、周りの人の意見を気にしないで己の道を極めて欲しいなとは思います。自力で生きるか?他力で生かされるか?の決断が迫られているということでしょう。
民法や行政法をきちんと勉強しなくても合格できるようになってきているのであれば、法令関係の国・地方間格差はますます広がっていくのでしょうか?
①なぜ地方公務員を選んだのか
大きく分けて二つあり、
仕事内容や働き方が性に合っていると感じたのが一点(「なりたい」寄りの理由)、
勉強が嫌いではなかったので、筆記試験がウェイトを占める選考プロセスに魅力を感じたのがもう一点です。(「ならざるを得ない」寄りの理由)
②なぜ叩かれる職業を選んだのか
この点は正直、あまり気になりませんでした。
合格を報告した際、家族からは安定した職業に就けることを喜ばれましたし、公務員志望の友人からも祝福されました。民間に内定した友人からの反応も(良くも悪くも公務員に興味がないからか)特段悪くはなかったです。
内心どう思われているかは分かりませんが、公務員を表立って敵視するような人は案外少ないのではないかと個人的には思っています。
③公務員試験対策は大変なのか
自治体によるとは思いますが、一昔前と比べると全体的に易化の傾向が強いと思います。
東京都や特別区を例にすると、直近では択一の足切りラインが5割未満にまで下がってきています。「2次面接=ネガチェック」という図式は変わらないので、大きなミスさえしなければ合格は難しくありません。SPI方式なども導入され、以前と比べても確実に裾野は広がっていると思います。
対策期間は人によりますが3ヶ月〜半年程度、捨て科目を作ることも受験戦略として大いにアリで、方針も「一点でも多く」というよりは「平均点さえ取れれば…」といった感じに変化しています。
従いまして、直近の公務員試験においては、退職するのをためらうほどの労力は求められていない、と言っても過言ではないと思います。
何か、あまりにも地方公務員に対して下げすぎ、ネガティブなのが気になりました。本当は悪くないって思っているのに、照れ隠しですか?
地方公務員は馬鹿で無能だと思っている人、本当に多いですか?そんなことないと思います。
合格者のうち、能力、意欲共に申し分ない層は少なくなってきています。競争率が低いんだから仕方ないです。優秀な人を獲るのではなくて、不可でない人を獲る時代ですから。
それでも、やる気や希望をもって志望している層も一定います。そこの裾野を広げたいと思って、採用担当は試行錯誤しているわけです。
民間大手入れなかったから、仕方なく公務員になったわ(笑)、みたいな人が多いというのは、少し違うと思います。モチベーションもって公務員なった人を何か信じられない、カッコ悪いみたいな論調は残念ですし、失礼かと思います。
現役の公務員の方のネガティブな発言は、プラスな発言より信憑性を持って受け取られます。良くみせようと話を盛ることはあっても、良いと思っていることをあえて悪く言うことは通常ないからです。
新人公務員さんには、キャリアを正解にしていくのは自分自身、とお伝えしたいです。
長文失礼しました。
私の職場では20代の若手職員が半数以上占めてますが、皆さん、真面目で意欲的ですよ。たしかに、昔に比べて時間外勤務をたくさんやって認められようとか、人から仕事を巻き取ろうなんて野心的な人が減ってきてる気はしますけどね。。
>お役所業界に入って絶望する人は、積極的な理由で志望して入ったというより消極的な理由(他己的なイメージ)で入った人が少なくないと思います。
僕のイメージ(地方公務員の場合)はむしろ逆で、積極的な志望理由がある人ほど、その志望理由が幻想であったと気づいて絶望していくように思っています。何となく派のほうが職場に対する期待値が元々低いので、なんだかんだ長続きする……という構図です。
「周りの意見を気にしない」というのは、まさにその通りだと思います。最重要なのは自分自身が満足できるかどうか、ここに尽きると思います。
ご懸念のとおり、ますます広がっていくと思います。民法にしろ行政法にしろ、知識として記憶する必要は無いのかもしれませんが、解説本を読んでちゃんと理解できる程度の「法令を読むリテラシー」みたいなものは、公務員試験勉強の過程で身につけておいたほうがよいのでは……と思います。
個人的には、「いかに削減・廃止・切り捨てるか」という今後の自治体のミッションは、これはこれで面白いしやりがいもあると思っており、特に地域住民と一定の距離感を保てる都道府県において、近々具体的な動きも増えていくのでは……と思います。住民との距離が近い市町村は、おっしゃるとおり苛烈なジレンマ(リソース不足vs住民ニーズ)が待ち構えているんでしょうね……
僕の疑問全部に、ご丁寧に回答いただきありがとうございます!
択一合格ラインが5割というのは衝撃です(僕が受けた頃は7割だった記憶)。
勉強期間が半年程度であるなら、民間就活と比べてもさほど長くもありませんし、退職を躊躇するほどのコストにはならなさそうですね……。
>内心どう思われているかは分かりませんが、公務員を表立って敵視するような人は案外少ないのではないかと個人的には思っています。
老婆心ながら申し上げますと、実際に働いていると、「公務員を敵視すること」自体に快感を覚える人と時折出くわすかと思います。あの手この手で貴殿の責任を問うてくると思いますが、変に罪悪感を覚えることなく、「相手が変なんだ」という意識を片隅に置いて、気に病まないでもらえればよいか……と思います。
まず最初に、不快な気分にさせてしまいお詫び申し上げます。
改めて読み返すと、主語が大きすぎたと反省しています。あくまでも僕の勤務先自治体の事情を(本当に叩かれまくってるんですよ……先般の議会でも批判を通り越して侮辱みたいな質問されてました)、地方公務員全体の傾向として敷衍したのは不適切でした。
また、採用担当者からの視点でのコメント、誠にありがとうございます。
中でも特に、
>地方公務員は馬鹿で無能だと思っている人、本当に多いですか?そんなことないと思います。
>やる気や希望をもって志望している層も一定います。
>モチベーションもって公務員なった人を何か信じられない、カッコ悪いみたいな論調は残念ですし、失礼かと思います。
このあたりのご指摘は、僕にとっても大変な希望になりました。
読者(特に若手の地方公務員)にとっても、大いに励まされるのではないかと思います。
>キャリアを正解にしていくのは自分自身
完全に同意です。本記事を読んで「この筆者みたいにはなりたくねーな……」と思ってもらうくらい、自分の軸をはっきり持って地方公務員人生を歩んでほしいなと願います。
僕も、指示されたことをそつなく早くこなせるという印象があります。一方で自分なりのアレンジを加えるとか、上司や先輩に意見具申する人は減ったかなという気もしています。なので僕世代の職員に軽く食ってかかるような勢いのある若手を見かけると嬉しくなります。
地元に戻って来ないかと親に言われたが仕事が全くなく、勧められて自治体を受けました。
家族には残業もないし良いじゃんと言われましたが実態はサービス残業の山で、軽く絶望しています。
ただ、田舎の小さな自治体ゆえに、近隣に同等の待遇の民間がないのも事実であり、公務員=勝ち組の風潮がまだあるような印象も受けます。
もう一つ、公務員に入ってから心底絶望するのはやはり最初の給料のあまりの安さ。学生の頃はあまりそこまで強く意識していなかったのですが、いざ就職して実際に手取り10万円台だったことについては周りの友達にも話せず、前から情報として分かっていたもののやっぱり本心からガックリしました。公務員でも大卒初任給が税込月30万円ぐらいになれば定着率が変わるとは思います。(30年前当時から公務員初任給がほとんど変わっていないのも驚き)
田舎だと今も地方公務員のほうが待遇的に優位ですし、「潰れない」というだけでも十分な魅力なのかもしれませんね……都市部と地方の格差拡大をひしひしと感じます。