明けましておめでとうございます。
昨年は結婚関連のイベントが立て続いて半年弱ほどブログ更新お休みしておりました。今年は(妻の目を盗みながら)こそこそ細々と更新していきたいと思います。

さて、毎年一発目の記事では、いつも「地方公務員界隈の今年のホットトピック」をお送りしています。
2025年は「バス狙いの活動家との戦い」を取り上げたのですが……我ながらそこそこ当たっていたと思っています。



昨年、僕が観測しているだけでも、2つの役所への苦情案件がSNSを賑わせました。
一つが京都市役所の課税ミス、もう一つが群馬県本庄市の土地境界トラブルです。
いずれも「役所の対応が間違っている気がする」という違和感を発端に、役所が発出した文書や職員の発言をSNSに掲載、バズったことを以て再度役所にアタックする……という「自力救済」案件でした。
どちらも最終的には苦情主の主張が叶ったようで、SNS上では「英断」「美談」として称賛されていました。

さらに本庄市案件のほうは、この苦情案件を通してフォロワーが5,000人も増えるという副産物も得られたとのこと。「役所と戦ったらフォロワー増えた」というポストもまたバズっていました。
今年も第二第三の金脈を狙って、役所にSNSバトルを仕掛けてくる人が現れるかもしれませんね。

嬉しいけど辛い「賃上げ」

ここから本題に入ります。
今年のホットトピックは……「地方公務員の給与カット」だと思います。

民間給与の水準アップに伴い、2022年(令和4年)から4年連続で、人事院勧告では月例給のアップが続いています。しかも上昇幅は年々拡大しつつあり、今年度は3%を超えています。
各地方自治体の人事委員会勧告も、人事院勧告に従うことがほとんどなので、多くの自治体でベースアップが続いていることと思われます。

国の月例給アップは、特に若手を手厚く引き上げており、多くの自治体も国に倣っています。
僕の勤務先自治体では、給料表でいう2級以下の上昇幅が大きい一方で、3級以上は微々たる上昇にとど
まっています。そのため僕はあまり恩恵を受けられていないのですが……少しであってもありがたいことに変わりはありません。感謝しかありません。

しかし、自治体の財政運営的には、ここ数年の賃上げの流れは地獄そのものだろうと思われます。

総務省調査によると、地方自治体の歳出に占める職員費(人件費)の割合は、約2割にも上ります。
「約2割」という数字の是非は置いといて、大きな割合を占めているのは間違いありません。
全体のうち2割を占める経費が、コントロールできない外的要因にとって数パーセント増えていくわけですから、財政的なインパクトは相当大きいはずです。



都道府県よりも市町村がしんどいか?

近年の給与アップによる財政的ダメージが大きいのは、都道府県よりも市町村のほうだと思っています。
なぜなら、職員数に占める会計年度任用職員の割合が大きく近年の「若手重視の賃上げ」による人件費上昇圧力が強いからです。

先述したとおり、国の人事院勧告は、初任給をはじめ若手の給与水準を特に手厚く引き上げており、多くの自治体も同様です。
実務的にいうと、給料表でいう1級や2級の引上げ幅が大きく、3級以上はわずか……という処理をしています。
役所は年功序列の給与体系なので、低い級の給与を引き上げれば、若手の給与改善になるのです。

一方、1級や2級に位置付けられている職員は、若手正規職員だけではありません。
多くの会計年度任用職員も、このあたりの級に位置付けられています。
(または、これらの級の給与を参照して、月給を決めています)

つまり、「若手=低い級の給与を手厚く引き上げる」ということは、「会計年度任用職員の方々の給与を手厚く引き上げる」ことと、ほぼ同義です。
しかも、会計年度任用職員の場合は、年功序列が効いておらず、年齢に関係なく1〜2級あたりの方が多いはずです。正規職員とは異なり、年齢を問わず全体に賃上げ効果が大きく働いているのです。

そのため、会計年度任用職員の割合が大きい自治体ほど、賃上げによる財政負担の増加もまた苛烈になると思われます。
そして、都道府県よりも市町村のほうが、会計年度任用職員の割合が大きいです(窓口業務が多いからだと言われています)。

正直、給与上げてる場合じゃない

さらに最近は、人件費以外の歳出も、上昇圧力を受けています。
  • 物価高によりあらゆるモノの価格が上昇
  • 民間給与の上昇により、民間企業に仕事をお願いする際の委託料や役務費が増加
  • 金利上昇で公債費も増加
パッと思いつくのはこのあたりですが、財政課の職員は他にもたくさんの歳出増加要因に悩まされていることでしょう。
つまるところ、これまでと同じ行政サービスを続けるだけでも、以前よりお金がかかるわけです。

僕はとある小規模事業課の庶務をやっていますが、来年度の予算編成がマジでしんどいです。
予算要求資料の材料として、例年やっている業務委託の見積もりを取ったところ、軒並み1割近く上がってるんですよね……。

担当者と相談して、業務内容をダウングレードして昨年同額に収めたり、増額要求するための理論武装をしたりと、例年以上に苦戦を強いられています。
正直、「期末手当をちょっとカットすればこんな苦労しなくてもいいのに……」と何度も頭をよぎりました。

歳出は平等、歳入は不平等

たとえ歳出が上昇圧力に晒されていようとも、その分だけ歳入が増えていれば問題ありません。
幸いにも、日本全体で見れば税収が好調とのことなのですが……個々の自治体を見ると、税収の増減状況には格差があります。
例えば、若い世代の多い自治体であれば、民間給与の増加(→所得税や住民税の増)の恩恵を受けられるでしょうが、高齢化が進んだ自治体ではこのような恩恵はありません。

一方で、歳出の増加要因である「賃上げ」「民間給与上昇」「物価上昇」「金利上昇」などは、どこの自治体にも同じように襲いかかっています。

「下がらないかもしれない」のが面白いところ

ここまで取り上げてきた状況は、ここ数年ずっと続いているトレンドであり、特に新規性はありません。
現に、島根県大田市や千葉県八街市では、今年度から給与カットが実行されています。

僕があえて「2026年のホットトピック」として取り上げたのは、これまで見られなかった、給与カットに反対する動きが活性化するかもしれないからです。

例えば先月、愛媛県西予市で、市職員の給与をカットする条例案が否決されました。



これまでは、議員はむしろ地方公務員の給与を「下げろ」と主張する側でした。
職員の給与をカットして、その分を住民に還元すれば、住民の懐も心も潤うからです。

地方公務員の賃上げを喜ぶのは地方公務員当事者だけ。そのほかのあらゆる人が賃下げを望んでいる。
賃下げの結果、職員の離職が相次いだり採用難になったり等の中長期的なデメリットが生じるとしても、それでも住民は賃下げによる短期的メリットのほうを選好する。

僕だけでなく多くの地方公務員が、このような認識だと思います。
「困ったときには職員の給与をカットすればいいだろ」と、あたかも切り札のように捉えている人もいると思います。

しかし今回の西予市の事例は、この常識に喝を入れました。
(ひょっとしたら、議会と首長が単に仲が悪いだけで、とりあえず何でも否決しているだけなのかもしれませんが……)

これまで住民から賞賛されてきた神施策「賃下げ」が、もしかしたら否定されるかもしれない。
こんな可能性を前にして、冷静にはいられません。
他自治体の状況を入念にウォッチしていきたいと思います。