僕が市町村役場ではなく県庁を志したのは、「窓口対応したくないから」の一心です。
それなのに今のところ、県庁にしては苦情対応の多い部署ばかり回っています。昨年度の対応件数は200件を超えました。
これまで十数年にわたり苦情対応を経験してきて、役所に対する苦情には2種類あると思うようになりました。
ひとつは、目的のある苦情です。役所に対して苦情を申し立てることで、何らかの利益を得ようとするものです。
もうひとつは、目的のない苦情です。不快感情をただぶつけてくるだけのものです。
つまるところ、目的(苦情主にとってのゴール)の有無で、苦情は大別できると思っています。
そして、目的の有無次第で、対応の方法も変わってくると思います。
まず、前者の「目的のある苦情」ですが、これは先述のとおり、何らかの利益を得るための苦情です。
モノやお金、マンパワー、特例的な優遇措置といった具体的な利益の場合もあれば、「職員に謝罪させてストレスを発散する」という無形の利益もあり得ます。
このタイプの苦情主は、役所側に何かをさせたいと思っています。
この「何か」こそが苦情の目的であり、自分が求めるリアクションを引き出すために、時間とエネルギーを割いて苦情活動を展開するのです。
そのため、苦情対応の基本である「傾聴」だけでは、このタイプの苦情主は満足しません。
むしろ傾聴されている途中でじれったくなってきて怒りが増幅してきます。
このタイプの苦情主に対しては、「目的が何なのか」を早く固めることが重要です。
一通り話を聞いたら、こちらから説明をする前に、「~をお求めということでよろしかったでしょうか?」などと聞き返して、論点をはっきりさせるのです。
苦情主からすれば、「自分の要求を役所側に伝える」のが、目的達成の第一歩です。
そのため、役所側から「あなたの目的は理解しました」と明示的に伝えることで、一定の手ごたえを感じてくれます。
役所側としても、「要求内容について認識を共有した」という実績があれば、たとえ要求自体を突っぱねたとしても、「ちゃんと聞いた」と弁明できるようになります。
怒声・罵声を浴びせられながらだと、苦情主の発言内容を冷静に分析するのは大変ですが、何回かやっているうちに慣れてきます。
「言葉遣いが悪いだけで怒ってるわけではない」と勝手に脳内で置き換えてしまうのも一策です。
「目的のある苦情」は、このように方法論を組み立てることができたので、個人的にはまだ楽です(それでも積極的にはやりたくないですが……)。
一方、後者の「目的のない苦情」は、ケースバイケースで対応が異なり、ものすごく疲れます。
「目的のない苦情」を申し立ててくる人の特徴は、苦情の中身が曖昧なところです。
○○はおかしい、ふざけるな、人でなし……等々、話題+否定的単語のセットをとにかく繰り出してくるばかりで、主張内容に具体性が欠けており、こちらとしてはどう反応していいのか戸惑います。
思うに、このパターンの苦情主は激情の赴くまま口や手が動いているので、自分が何に対してなぜ怒っているのか、はっきりと自覚できていない状態なのだと思います。
このような相手に対しては、ただただ傾聴するしかありません。
しゃべっているうちに相手の頭が整理されていくのひたすら待って、相手が何に苛立っているのかを自覚できたところで、こちらの話を始めます。
「相手の頭の整理を待つ」というステップが入るので、このパターンの苦情対応は時間がかかりますし、しかも罵声を浴びる時間が長いので精神的に疲弊します。
しかも、しっかり調べてたり考えたわけではなく、感情にとらわれて瞬発的に苦情申し立てをしているので、事実関係を誤認していることも多いです。(民間企業や私人がやっていることなのに、役所に事業だと勘違いしている等)
このようなケースでは、まずは正しい事実関係を伝えなければいけないのですが……この説明が非常に難しいです。
苦情主は気持ちが昂っているので、「自分は勘違いしていた」なんて到底認めてくれません。
俗にいう「拳を振り上げたら下ろせない」状態です。
とにかく役所が悪いことにしないと格好がつかないので、やたらめったらに反論してきますし、最後には「お前の態度が悪い」と個人攻撃に行きつくするのが恒例です。
このような苦情に対しては、どこかで落とし所を作らないと、相手を宥めることができず、対応を進められません。
落とし所とは、つまるところ「役所側の非」です。
相手の反論のうち、「非」として認めても支障のない部分を見つけて、そこに対してだけ限定的に謝罪したり、共感や同意を示します。「税金が高い」とか「社会保険料の負担が重い」みたいな一般論を「非」として設定するのが一番無難ですね。
少しでも謝罪や共感を差し挟むことができれば、相手の怒りは一気にトーンダウンします。
ここまでたどり着いてようやく、こちらの話を聞いてもらえるようになります。
本来は謝る必要は無いのですが……こうしないと終わらないので、仕方なくやっています。
本当、生産性皆無でストレスのかかる仕事です。
最近は「苦情対応は30分まで」のような、苦情対応を打ち切るためのルールが定着してきました。
そのおかげで、「ただひたすら罵詈雑言に耐えてタイムアップを狙う」という対応方法も採れるようになり、苦情対応は以前よりもやりやすくなっていると思います。
ただ僕自身は、「住民様の声は神の声」という時代の認識が刷り込まれているせいで、タイプアップを宣告するのをつい躊躇してしまいます。まだまだ修行が必要です。
それなのに今のところ、県庁にしては苦情対応の多い部署ばかり回っています。昨年度の対応件数は200件を超えました。
これまで十数年にわたり苦情対応を経験してきて、役所に対する苦情には2種類あると思うようになりました。
ひとつは、目的のある苦情です。役所に対して苦情を申し立てることで、何らかの利益を得ようとするものです。
もうひとつは、目的のない苦情です。不快感情をただぶつけてくるだけのものです。
つまるところ、目的(苦情主にとってのゴール)の有無で、苦情は大別できると思っています。
そして、目的の有無次第で、対応の方法も変わってくると思います。
目的のある苦情 →前向きな話し合いにさっさと移行する
まず、前者の「目的のある苦情」ですが、これは先述のとおり、何らかの利益を得るための苦情です。モノやお金、マンパワー、特例的な優遇措置といった具体的な利益の場合もあれば、「職員に謝罪させてストレスを発散する」という無形の利益もあり得ます。
このタイプの苦情主は、役所側に何かをさせたいと思っています。
この「何か」こそが苦情の目的であり、自分が求めるリアクションを引き出すために、時間とエネルギーを割いて苦情活動を展開するのです。
そのため、苦情対応の基本である「傾聴」だけでは、このタイプの苦情主は満足しません。
むしろ傾聴されている途中でじれったくなってきて怒りが増幅してきます。
このタイプの苦情主に対しては、「目的が何なのか」を早く固めることが重要です。
一通り話を聞いたら、こちらから説明をする前に、「~をお求めということでよろしかったでしょうか?」などと聞き返して、論点をはっきりさせるのです。
苦情主からすれば、「自分の要求を役所側に伝える」のが、目的達成の第一歩です。
そのため、役所側から「あなたの目的は理解しました」と明示的に伝えることで、一定の手ごたえを感じてくれます。
役所側としても、「要求内容について認識を共有した」という実績があれば、たとえ要求自体を突っぱねたとしても、「ちゃんと聞いた」と弁明できるようになります。
怒声・罵声を浴びせられながらだと、苦情主の発言内容を冷静に分析するのは大変ですが、何回かやっているうちに慣れてきます。
「言葉遣いが悪いだけで怒ってるわけではない」と勝手に脳内で置き換えてしまうのも一策です。
「目的のある苦情」は、このように方法論を組み立てることができたので、個人的にはまだ楽です(それでも積極的にはやりたくないですが……)。
一方、後者の「目的のない苦情」は、ケースバイケースで対応が異なり、ものすごく疲れます。
目的のない苦情 →感情を解きほぐす
「目的のない苦情」を申し立ててくる人の特徴は、苦情の中身が曖昧なところです。○○はおかしい、ふざけるな、人でなし……等々、話題+否定的単語のセットをとにかく繰り出してくるばかりで、主張内容に具体性が欠けており、こちらとしてはどう反応していいのか戸惑います。
思うに、このパターンの苦情主は激情の赴くまま口や手が動いているので、自分が何に対してなぜ怒っているのか、はっきりと自覚できていない状態なのだと思います。
このような相手に対しては、ただただ傾聴するしかありません。
しゃべっているうちに相手の頭が整理されていくのひたすら待って、相手が何に苛立っているのかを自覚できたところで、こちらの話を始めます。
「相手の頭の整理を待つ」というステップが入るので、このパターンの苦情対応は時間がかかりますし、しかも罵声を浴びる時間が長いので精神的に疲弊します。
しかも、しっかり調べてたり考えたわけではなく、感情にとらわれて瞬発的に苦情申し立てをしているので、事実関係を誤認していることも多いです。(民間企業や私人がやっていることなのに、役所に事業だと勘違いしている等)
このようなケースでは、まずは正しい事実関係を伝えなければいけないのですが……この説明が非常に難しいです。
苦情主は気持ちが昂っているので、「自分は勘違いしていた」なんて到底認めてくれません。
俗にいう「拳を振り上げたら下ろせない」状態です。
とにかく役所が悪いことにしないと格好がつかないので、やたらめったらに反論してきますし、最後には「お前の態度が悪い」と個人攻撃に行きつくするのが恒例です。
このような苦情に対しては、どこかで落とし所を作らないと、相手を宥めることができず、対応を進められません。
落とし所とは、つまるところ「役所側の非」です。
相手の反論のうち、「非」として認めても支障のない部分を見つけて、そこに対してだけ限定的に謝罪したり、共感や同意を示します。「税金が高い」とか「社会保険料の負担が重い」みたいな一般論を「非」として設定するのが一番無難ですね。
少しでも謝罪や共感を差し挟むことができれば、相手の怒りは一気にトーンダウンします。
ここまでたどり着いてようやく、こちらの話を聞いてもらえるようになります。
本来は謝る必要は無いのですが……こうしないと終わらないので、仕方なくやっています。
本当、生産性皆無でストレスのかかる仕事です。
最近は「苦情対応は30分まで」のような、苦情対応を打ち切るためのルールが定着してきました。
そのおかげで、「ただひたすら罵詈雑言に耐えてタイムアップを狙う」という対応方法も採れるようになり、苦情対応は以前よりもやりやすくなっていると思います。
ただ僕自身は、「住民様の声は神の声」という時代の認識が刷り込まれているせいで、タイプアップを宣告するのをつい躊躇してしまいます。まだまだ修行が必要です。

コメント
コメント一覧 (4)
ただし、粘着質な人や精神疾患がある人は別です。一部マスコミや動画編集者など取材で攻撃する人はこういうわけにはいかず、かなりの長期間で振り回されるのは昨今の常識になりました。やはりこれも90年代の半ば以降ぐらいからでしょうか?インターネットが始まった頃と一致していますね。
私が役所に入っていった90年代前半頃は「政治は三流で官僚は一流だ」と言う声もまだ少なからずはありましたし、一定のリスペクトもありましたが、それらが崩壊したのは細川護熙連立政権の時代辺り(1994)からですかね。あの頃を境に日本は一気に停滞してバッシングが増えてきたなと感じたりします。
苦情を申し立てる側の攻撃力は日々強化されていくものの、受ける側の防御力はなかなか向上しない様子を見ていると、戦場と大差ないなと思ってしまいます。
今度また記事にしようと思っていますが、最近はせ生成AIを使って物量で攻めてくる人が激増しており、ますます疲弊しています…
引っ込みがつかなくなってるのかなと思います。
傾聴の上手い職員がその分、事務が進まず残業を余儀なくされているのもなんだかなぁと思います。
ロボットとかがその役割をしてほしいと思うこの頃です。
「まぁお前らに言っても仕方ないけど」、頻出の捨て台詞ですね。自分の主張が的外れだと自覚してしまったものの自分否は認めたくないので、「職員の無能」に帰責するという、一種の折り合いなのだろうと思います。
役所的にはこれを言ってくれれば「勝ち」なので、異動後数ヶ月でこれを引き出せる貴殿は才能あるのだと思います。応援しています。