これは僕の独断なのですが、2016年は「自治体フェイスブック元年」、2017年は「自治体インスタグラム元年」だったと思います。
新しいもの好きな自治体は従来から活用してきたのだろうと思いますが、全国各地で一斉に利用が始まったのが、2016年ないし2017年でした。
この時期に開設されたのは、主に「観光情報」「特定の農産品」「特定のイベント」など特定ジャンルに特化したアカウントです。
県庁・市役所としてアカウントを開設し、いろいろな行政情報をまとめて発信するわけではありません。
ちなみに、ツイッターは東日本大震災で「防災情報の共有に役立った」と大々的に報道され、これが印象強かったのか、気象情報や防災情報の発信目的で運用されていることが多いようです。
今年は動画コンテンツの活用が進んでいくと思います。ユーチューブでの公式チャンネル開設に始まり、先進的な自治体ではライブ配信も始まるのではないかと思います。
自治体にとってのSNSのメリット
特化型のアカウントが多いのは、自治体の広報系の部署がアカウントを管理しているのではなく、観光課や農政課などの情報発信したい部署がそれぞれ別個にアカウントを開設しているからです。
個別にアカウントを開設するメリットは、小回りが利くことです。関係者が少なければ少ないほど、内容確認に要する時間が短縮され、タイムリーな投稿が可能になります。
この「小回りが利く」「手軽である」という点が、自治体が考えるSNSの大きなメリットです。
加えて、基本的に費用がかからないことも、大きなメリットです。
新聞に公告を出すと、軽く100万円飛びます。チラシを印刷するのも、デザイン料含め20万円くらいは欲しいところ。
一方、SNSでの投稿は無料です。無料ですが、一定数の人間の目に触れます。
コストパフォーマンスは∞です。分母がゼロなので。
つまり、大半の自治体は、SNSを「無料で使える、手軽な情報発信ツール」として認識しています。
双方向メディアとして使っているわけではない
一方で、自治体には、SNSが双方向のメディアであること、つまり受け手から反応を得られるメディアであるという認識が薄いです。
炎上回避のため受け手からの反応を意図的・戦略的に無視するわけではなく、そもそも反応があるという前提が欠けていて、反応があることのメリット・デメリットを考えてすらいないのです。
自治体の総合アカウントよりも、特定のトピックだけを扱うアカウントのほうが、受け手にとってもコミュニケーションをとりやすく、発信側としてもコミュニケーションをとることで目的をより達成できるように思うのですが、自治体はまだその域に達していません。
管理職はSNSリテラシーが弱く、若手職員は節度に欠ける
僕は流行に無関心なオタクなので、同期職員との会話についていけないことはあっても、上司に対してジェネレーションギャップを感じることはほとんどありません。
しかし、SNSをはじめとしたインターネット文化への認識に関しては、すさまじいジェネレーションギャップを感じてしまいます。
個人サイト・サーチエンジン全盛期からインターネットに浸っているオタクなので、僕の感覚のほうは相当世間から乖離しているのも事実でしょう。それでも「えっ……」と言いたくなる場面がちらほらあります。
僕の部署の場合、観光系ということもあって「ツイッターは炎上リスクが比較的高い」等の知識は浸透しているのですが、「匿名性が高いから」「評論家的なユーザーが多いから」という周辺情報や、炎上しやすいツイートの特徴(主語が大きい、断定口調、言葉足らず)は、説明してもなかなか理解してくれません。
僕に比べて圧倒的にSNSを見ている時間が少なく、経験値(ケーススタディ)が足りないのでしょう。
一方若手の職員であれば、SNSの文化に即した運用ができるのでしょうが、今度は自治体の公式アカウントとしての「節度」が欠けてしまいます。SNSの運用も、全体の奉仕者としての仕事の一環です。受け手と双方向のコミュニケーションをとるにしても、適切な距離感や言葉遣いをしなければいけません。若手にはこのあたりの感覚がまだ育っていません。
つまるところ、自治体は、まだまだSNSを活用するには未熟な組織なんだと思います。
若手職員の役割
将来的には、管理職も含めて全職員がインターネットの流儀を身に着けることが望ましいのでしょうが、当面は若手職員がインターネットの流儀に外れないよう、上司を誘導しなければいけないと思われます。
ここまで長々と書いてきましたが、単純にSNS関連業務は若手職員が担当することが多いので、慣れておいたほうが無難です。僕も観光系部署に異動して、いきなり「インスタ映えを意識した仕事をしろ」と指示されました。
たいていの自治体は、SNSの運用を軽く見ており、若手職員に丸投げすることもあるようです。そうなったときに慌てないためにも、少しでも外に攻めていく仕事に関心があるのなら、SNS運用に慣れておいたほうがいいかなと思います。
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