外部からのアポイント要望を断ったり、仕事の締め切りに間に合わないとき、よく「議会用務」「予算用務」を理由に使ってしまいます。
これは自分に限った話ではなく、自分だけでなく地方公務員、とくに県庁職員であれば身に覚えがあるかと思いますが、外部の方からは「嘘くさいな」と思われているようで、たまに嫌味を言われます。
実際のところ、あまり忙しいわけではないのですが、急に絶対優先の仕事が飛び込んでくる可能性が高く、別の予定を入れるとドタキャンせざるをえない場面が多々発生します。そのため、極力フリーなままでいたいのです。
今回は「予算要求用務」について、大まかな流れを書いてみたいと思います。
11月に入ると、課内の調整がはじまります。まずは各担当アイデアを課長がヒアリングし、課長が課としての方針を決めます。
課としてまとまったら、次は部局レベルでの調整です。部長が各課の方針をヒアリングし、部としての方針をまとめます。
ここまでは純粋に「どうすれば最大の効果が出るか」を念頭に事業を考えます。
財政部局は、「一般論としてロジックが通っているか」「組織として一貫性があるか」「政治的に問題ないか」という観点から、事業案を検査します。
まずは各課の担当が財政部局担当に事業案を説明し、財政部局担当から財政部局内の上司へ諮っていきます。
ここからはマジレス・クソリプの応酬です。これらをうまくこなすことが必要になってきます。
こなせなかったら「効果が薄い」「実現可能性が無い」とみなされ、どんどん予算額がカットされていきます。そのため、財政部局からの指摘への対応は、優先順位を高くせざるをえません。
ここで上手なマジレスを繰り出せる財政部局担当は、例外なく出世しています。
首長に対しては、財政部局から全部局分まとめて説明し、反応を伺います。
すんなり了承してくれれば問題ないのですが、首長が私論を語りだしたら一大事。その私論が実現可能か、大至急確認が必要になります。
よほど政治的にグレーな問題でない限り、承認されます。
だいたいこんな感じですが、第三段階でのどんでん返しはほとんどありません。財政部局が首長の意向をだいたい把握しているので、第二段階を通り抜けるまでに、首長好みの内容に仕上がっています。
予算用務全般、とにかく期限がシビアで、時にはクソリプに付き合わなければならず、時間も精神力も奪われてしまうのです……
これは自分に限った話ではなく、自分だけでなく地方公務員、とくに県庁職員であれば身に覚えがあるかと思いますが、外部の方からは「嘘くさいな」と思われているようで、たまに嫌味を言われます。
実際のところ、あまり忙しいわけではないのですが、急に絶対優先の仕事が飛び込んでくる可能性が高く、別の予定を入れるとドタキャンせざるをえない場面が多々発生します。そのため、極力フリーなままでいたいのです。
今回は「予算要求用務」について、大まかな流れを書いてみたいと思います。
第一段階 課内・部局内調整
だいたい10月頃から、「来年度どれくらいの予算をかけて、何をするか」を各担当が考え始めます。11月に入ると、課内の調整がはじまります。まずは各担当アイデアを課長がヒアリングし、課長が課としての方針を決めます。
課としてまとまったら、次は部局レベルでの調整です。部長が各課の方針をヒアリングし、部としての方針をまとめます。
ここまでは純粋に「どうすれば最大の効果が出るか」を念頭に事業を考えます。
【イメージ】
(担当)
来年度は「声優ラジオ番組とのタイアップ」を強化したいと思います。リスナーだけでなく、内容がネットニュースに取り上げられるなど、副次的な効果も見込まれます。声優事務所に問い合わせたところ、300万円で通年プロモーションが可能です。
(課長)
安定した成果が望めるが、声優ラジオは成熟したメディア。再来年度に遅らせても支障ない。今やるべきはバーチャルユーチューバーの波に乗ること。こちらに予算を割きたい。声優事業は200万円以内に抑えたいから、通年でなくスポット的に実施することにして、いつやるか検討して、再度見積もりを貰ってくれ。
第二段階 財政部局調整
部局での方針がまとまったら、次は財政部局との調整です。財政部局は、「一般論としてロジックが通っているか」「組織として一貫性があるか」「政治的に問題ないか」という観点から、事業案を検査します。
まずは各課の担当が財政部局担当に事業案を説明し、財政部局担当から財政部局内の上司へ諮っていきます。
ここからはマジレス・クソリプの応酬です。これらをうまくこなすことが必要になってきます。
こなせなかったら「効果が薄い」「実現可能性が無い」とみなされ、どんどん予算額がカットされていきます。そのため、財政部局からの指摘への対応は、優先順位を高くせざるをえません。
ここで上手なマジレスを繰り出せる財政部局担当は、例外なく出世しています。
【イメージ】
(担当)
ウェブメディア活用事業は、これまではニコニコ超会議とのコラボなどコンテンツ提供プラットフォームとの連携が中心でしたが、プレミアム会員数の減少など、ユーザーのプラットフォームへの忠誠心が薄れています。
そこで来年度は、提供プラットフォームではなく、コンテンツの作り手との連携を強化します。具体的には、現在大人気で高い効果が望める「バーチャルユーチューバーとのタイアップ」に300万円、成熟したメディアであり安定した効果が望める「声優ラジオ番組とのタイアップ」に200万円を計上しています。それぞれの具体的内容は……(以下、タイアップ内容の詳細)
(財政部局担当)
本当にプラットフォームの力が弱まってるの?ネットフリックスとかアマゾンプライムビデオ、Spotifyなんかは絶好調じゃなかったっけ?単にニコニコが弱ってるだけじゃないの?
これまでずっと「プラットフォームとの連携」を続けてきたんだから、まずはコラボ先のプラットフォームを乗り換えるほうが自然じゃない?どうしてこれをしないで、いきなりプラットフォームを見捨てるの?
バーチャルユーチューバーのファンって本当に若者?統計資料あるの?こっちが用意した原稿通りに読んでくれる保証はあるの?そもそもバーチャルユーチューバーってアウトローさが売りだから自治体とタイアップした時点で魅力無くならない?もしこの事業のせいで人気落ちた場合の補填は?
声優ラジオは誰とタイアップするの?うちの自治体関係者のアニメ監督〇〇さんの意見は聞いた?〇〇さんの了解貰わずに進めても大丈夫なの?そもそも〇〇さん監督のアニメってラジオやってないけど、これって〇〇さんラジオ嫌いってことじゃないの?〇〇さんがうちにふるさと納税してくれてるって知ってるよね?機嫌損ねない?大丈夫?
(担当)
……確認します。
(財政部局担当)
明日の朝8時までにお願い。
第三段階 首長の一声
財政部局が認めてくれたら、首長に諮ります。首長に対しては、財政部局から全部局分まとめて説明し、反応を伺います。
すんなり了承してくれれば問題ないのですが、首長が私論を語りだしたら一大事。その私論が実現可能か、大至急確認が必要になります。
【イメージ】
(財政部局)
オタク振興部ウェブメディア活用課においては、従来のプラットフォーム活用の効果をさらに高めるため、プラットフォームと連携を保ちながら、コンテンツの作り手とも連携を強化していきます。具体的にはバーチャルユーチューバー及び声優ラジオとのタイアップを実施します。予算規模は500万円です。実施に当たっては、〇〇監督の意見を適宜聞きながら進めていきます。
(首長)
先日〇〇監督と会食したとき、彼が□□という新人の女性声優を推していた。来年秋に彼女を主役に起用して新たなシリーズものを始めるらしい。バーチャルユーチューバーは今年半ばには下火になる。□□を使って話題性をつくる側に回れ。500万円で足りるのか?成果を必ず出せ。
(財政部局担当)
□□という声優を知っているか?〇〇監督の次回作に起用されると首長が聞いたらしい。彼女を使ったタイアップ事業を作れ。声優ラジオに限らない。予算規模は最大2000万円まで認めるから、確実に成果が出る手堅いものを考えろ。明日6時までに必ず。
(課長)
マジかよ……(大至急〇〇監督に連絡して事実関係を確認、監督から□□に声掛けしてもらう確約をとり、2000万円の積算をでっちあげ、首長に「できます」と回答、)
第四段階 議会の承認
首長に了承されたら、最後は議会での審議です。よほど政治的にグレーな問題でない限り、承認されます。
だいたいこんな感じですが、第三段階でのどんでん返しはほとんどありません。財政部局が首長の意向をだいたい把握しているので、第二段階を通り抜けるまでに、首長好みの内容に仕上がっています。
予算用務全般、とにかく期限がシビアで、時にはクソリプに付き合わなければならず、時間も精神力も奪われてしまうのです……
コメント
コメント一覧 (4)
本省は、ブレインストーミングはそれこそ前年度末から始まっていて、夏に省内調整、9月に財務省とドンパチやるイメージで、11月にはほとんど片付いているかと。
そうなると、都庁と県庁って、思った以上に仕事の進め方に違いがあるんですね、、、、
国庫の補助裏だけで一般財源をほぼ消費する道府県とは大違いです……