先日の記事にも書きましたが、今年度の定期人事異動で、同期入庁職員がついに出世ポストである「財政部局の予算編成担当」に配置されました。
このことは同期入庁職員の間でも話題になっています。
同期入庁職員からは専ら肯定的です。入庁当時から人望厚かったこともあり、予定調和とも言われています。

一方、「自分でなくてよかった、出世ルートには乗りたくない」という声も、同じくらいよく耳にします。
僕らの世代、いわゆるゆとり世代の若者は、上昇志向が無く、責任ある立場に就きたくない、安定志向が多いと言われています。
出世ポストはもれなく激務です。「出世ルートに乗りたくない」という発言は、激務を避けたいという意味合いであることは間違いありません。

ただ、僕の勤める県庁の場合は、別のニュアンスも含まれます。
今回は、「出世したくない」という若手職員の真意について、自分含め周囲の職員のケースを紹介します。

出世ルート=調整業務

出世ポストに一度就いてしまうと、余程のことがない限り、30代の初めから40代半ばまでを管理部門で過ごすことになります。
40代半ばを過ぎる頃に、事業部門に管理職として出て行くパターンが多いです。

管理部門での仕事は、組織内の調整業務です。
組織内のいろいろな人の意見を取りまとめ、幹部の意向に沿う形に磨き上げていきます。
扱う話題は様々なのでしょうが、やることは変わりません。
いろいろな部署から話を聞いて、まとめて、幹部に報告。幹部の指示を聞いて、各部署に伝達。
これを10年強続けることになります。

一方、出世ルートから外れた職員の場合、30代〜40代前半という年代は、各部局のメインプレイヤーにあたります。

30代の地方公務員=夢がようやく叶う世代

以前の記事で、地方公務員という職の志望動機について書きました。
その中で「純粋に地方公務員の仕事をしたい」という層がいることを紹介しましたが、この層にとってのやりたい仕事とは、管理部門の仕事ではなく事業です。少なくとも、若手のうちは。

30代になると、熱意に経験が加わり、自分の意思をより政策に溶け込ませられるようになっていくと聞きます。
管理職ではないので、立場を機にする必要も薄いです。一番「やりたいこと」を追求できます。
この意味で、入庁前の志望動機を叶えやすいのは、30代と言っても間違いではないでしょう。

しかし、出世ルートに乗って管理部門に回ってしまうと、この時期を事業ではなく、管理業務に費やすことになります。
管理業務では、自分の意見は主張できません。幹部の意向が全てです。

事業部門に戻る頃には管理職になっていて、立場を重んじ、色々な制約のもと、物事を進めなければいけません。
端的に言うと、「やりたい」ではなく「すべき」の発想で動かざるをえません。

つまり、出世ルートに進むことで、地方公務員としての夢を諦めることになりかねないのです。

上昇志向≠出世意欲

はっきりとやりたいことを持っている職員は、やはり上昇志向が強いです。
やりたいことを実現に近づけるために、自己研鑽に励んでいます。

上昇志向とは言っても、組織内での出世意欲とは結びついていません。人間としての資質向上、または行政マンとしての能力向上です。
こういう職員にとって、管理部門で10年超を過ごすことは、苦痛以外の何物でもありません。
管理部門に勤めることで、組織内における調整のスキルは身に付くでしょうが、それが人間としての普遍的なスキルかどうかと言われると……かなり怪しいです。


結局のところ、管理部門のやりがいは、実際にやってみないとわからないのだと思います。
見ているだけでは、やりがいがあるようには見えません。そのため、仕事へのモチベーションが高い若手ほど、管理部門=出世ルートを敬遠します

ちなみに僕も、出世ルートには乗りたくありません。
忙しいのも勿論勘弁なのですが、何より口下手コミュ障なので調整業務が務まりません……