仕事でやらかしてしまいました。

原因は、とあるステージイベントのプログラム。
とある地域の町おこしボランティア団体の演目に、「ーー(地域名)PR」という仮タイトルを設定してイベント資料を作成、その団体に送ったところ、その担当者の逆鱗に触れてしまい、電話越しに大声で怒鳴りつけられてしまいました。

相手方の意見は、「いくら仮タイトルとはいえ『地域名+PR』は酷すぎる、中身が全くわからない」というもの。
こんなタイトルをつけて宣伝しても、誰も興味を持たないぞ、本当に人を集めたいのか?という指摘でした。
ちょっとヒステリックじゃないかな……と思いつつも大いに勉強になりました。
確かに「ステージイベントで地域をPRします」と言われても、実際に何をするのかは全くわかりません。

小学館『デジタル大辞林』より引用します。
ピー‐アール【PR】[public relations]

[名](スル)《public relations》
1 官庁・団体・企業などが、みずからの望ましいイメージおよびその施策や事業内容・主義主張などについて多くの人々に知らせて理解や協力を求める組織的活動。
2 広告。宣伝。「新製品をPRする」



行政は、限定的な表現を極力避け、多義的な解釈ができる言葉を使いがちです。
その好例が「PR」でしょう。
PRという言葉には、具体的な意味が無いために、どんなこともPRの範疇に収まります
そのため、最高のリスクヘッジになるのです。

履行可能性のリスクヘッジ


地下アイドルのリリースイベントで考えてみます。
イベント名が「新曲リリース&お渡しイベント」だとしましょう。
お渡しイベントを名乗る以上、新譜を買ったお客さんに対し、メンバーが手渡ししなければいけません。
もし何らかのアクシデントがあってメンバーが急遽来られなくなったら、イベントが破綻します。

このイベント名が「新曲リリース&PRイベント」だったら、どうでしょうか。
具体的な中身はわかりません。何となく、単なる新曲CDの販売だけでなく、お祭り要素がありそうだと匂ってくるだけです。
メンバーが販売会場にいなくても、怒られることはありません。

少しでも履行不能リスクがある場合、安全側のタイトルを選びたくなってしまいます。

解釈違いのリスクヘッジ

イベント自体の失敗よりも起こりがちなのが、イベントタイトルの解釈違いです。

またリリイベの例に戻ります。
「新曲リリース&お渡しイベント」というタイトルで開催、無事メンバーも全員登場して購入者全員にCDを手渡しできたのですが……お客さんの一人が「リリイベなのにCDにサインが無い」と怒り出したとします。
通常のイベントであれば、「次回のイベントの参考にさせていただきます、この度はご期待に添えず申し訳ありません」と運営から一言伝えればいいだけですが、行政主催のイベントだと、そうはいきません。

一参加者に苦情を言われてもあまり痛くは無いものの、議員さんや団体トップのような有力者から「タイトルと中身が一致していない」なんて言われると大ダメージです。単なる先方の解釈違いでは済まされず、行政の不適切な言葉遣いが招いた誤解とされて、責められます。
場合によってはイベント自体よりも面倒な火消し作業に追われ、いっそのこと開催しない方がよかったという評価を下されることすらあります。

こんな事態を防ぐためにも、つい「PR」に逃げたくなってしまいます。
PRであれば、具体的な中身が無いために、解釈違いも起こりえません。
どんな内容でもPRであることには間違いありませんから。

対策:PR以外の表現をストックしよう


今回の教訓を経て、 PR以外の幅広解釈可能な言葉をストックしておく必要を感じました。
地域の人が遠方まで出てくるのなら、「出向宣伝」。
誰かがマイクを持って喋るなら、「トークステージ」。
新しいものを披露するのであれば、「お披露目会」。

多義的でありつつも、どんなことをするのか大枠を示せるような表現を心がけていきたいです。