キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

カテゴリ: 公務員の生き様


地方公務員という職業への評価は、外野と当事者で全然違います。

最近印象に残っているのは、3月下旬にXでバズっていた「Fランク大学卒にとって一番コスパ良い職業は地方公務員」という投稿です。

この投稿に対して、アンチ地方公務員の方々が賛同&公務員批判を展開する(Fラン卒をどうして税金で養わなきゃいけないんだ等)一方で、地方公務員を名乗るアカウントが反論のリプライを飛ばす……という光景が見られました。


ただ中には、外部と当事者で一致している評価もあります。
その一つが、「どれだけ頑張っても成長できない職業」という説です。


役所外部の方々は、
「そもそも地方公務員は仕事していない、ただ座っているだけ」
「思考停止状態で単純作業しかやっていない」
という理由を挙げて、地方公務員の成長を否定してきます。

そして地方公務員当事者も、
「業務に占める無駄な作業が多い」
「分野・職種をまたいで人事異動するせいで専門性が育たない」
といった現状をもとに、地方公務員としていくら頑張っても成長しないと嘆いています。

一方で僕は、地方公務員として経験年数を重ね、職位が上がるにつれて、確実に伸びていく能力があると確信しています。
それは「聞く力」、つまり幅広い層の話を正しく聞き取って理解する能力です。

この能力こそ、地方公務員固有の強みであり、社会的にも有用なスキルだと思っています。

顧客を選べない故の技能

役所が提供するサービスは、万人を対象としています。顧客の幅は、どんな業界よりも広いです。
そのため、地方公務員として働いていると、多様な人々とコミュニケーションをとることになります。
年齢や職業はもちろん、能力、経済状況、思想、健康状態や賞罰歴など、あらゆる面で異なる背景を持つ方々と接する機会があります。

もちろん部署によっては、施策の対象が限定されていて、特定の属性の人としか接しない場合もあります。 例えば、福祉系の部署であれば、高齢者や病気・障害のある方との接触が圧倒的に多く、学生や企業経営者のような活動的な層とはあまり接しないでしょう。


しかし、地方公務員は分野をまたいで人事異動を繰り返し、職業人生の中でさまざまな部局を経験していきます。
産業振興部局で経営者と日々意見交換していた職員が、次の部署ではケースワーカーとして生活保護受給世帯を訪問する……こうした変化は珍しくありません。
所属する部局が変われば、関わる人々の属性も変わります。 つまり地方公務員は、人事異動を繰り返すことで、社会の多様な層の人々と対面し、幅広い「聞く力」を培っていくのです。

「聞かざるを得ない」から成長する

地方公務員のコミュニケーションは、基本的には「受け身」という特徴があります。

民主主義という統治形態をとっている以上、公共サービスに対して誰もが意見を表明することができ、行政側もそれらの意見を尊重する義務があります。これが原則です。

実際に、役所には日々多様な意見が寄せられており、地方公務員はこれらの意見をまず正確に理解することが求められます。 きちんと理解したうえで、適切な返答を検討したり、採用の可否を判断したりすることになります。


広報のような能動的なコミュニケーションを担当する職種もありますが、全員がそうした業務を担当しているわけではありません。
一方で「受け身のコミュニケーション」は、どの部署でも発生する、地方公務員という職業に共通の特性です。
言い換えれば、「相手の意見・主張を聞き取って正確に理解する」という能力は、どんな部署で働くにしても必要となる地方公務員の必須スキルなのです。

さらに、あらゆる部署で日常的に使われるがゆえに、地方公務員として日々を過ごすだけでこの能力は着実に鍛えられていきます。
理論や技法を体系的に教えられるわけではありませんが、実践する機会が豊富で、かつ真剣に取り組まざるをえない状況が多いため、自然と身についていくのです。


行政機関には、各種カウンセラーや社会福祉士のような、クライアントの声を聞く訓練を受けた専門職の方もいます。
これらの専門職の「聞く力」は、一般の地方公務員とは比べものになりません。
ただし、これら専門職の方々の「聞く力」は、特定の属性の人に特化しているという特徴があります。

一方、老若男女問わず、健康な人から支援を必要とする人まで、あらゆる人に対してある程度対応できる地方公務員の「聞く力」は、他の職業ではなかなか育成されない貴重なスキルではないでしょうか。

市場価値は低くても「市場以外」のところでは役立つはず

地方公務員のキャリアパスについて、人事当局は「ジェネラリスト育成型」と説明していますが、当の地方公務員からは評判が芳しくありません。

「別分野の部局に異動したせいで仕事の進め方や必要な知識が全然違っていて辛い」というのは地方公務員の共通の悩みですし、冒頭にも挙げたとおり「部局をまたいで異動するせいでキャリアがリセットされる」ことも、地方公務員という職業のデメリットとして広く認識されています。

2~3年働いただけでその分野に精通し、人脈をしっかり築いて、次の部署の仕事に活かしていく……という、人事当局が理想とする「ジェネラリスト」になる職員もごく稀にいますが、大半の職員は「リセット」に悩まされているのが現実です。
僕自身も、なぜか1年スパンで異動することが多く、十分な知識や経験を積むことができないまま十数年働いてきました。

しかしそれでも、「聞く力」だけは確実に身についていると実感しています。
そして、この「聞く力」が、日々の業務に大いに役立っています。


ここ数年、地方公務員の広報スキルがやたらと注目されていて、書籍やセミナーも多数リリースされていますが、私は広報スキルよりも「聞く力」のほうがより本質的で重要だと考えています。
おそらく「聞く力」はノウハウ化しづらく、マネタイズに向いていないため、あまり注目されないのでしょう。

さらに、民間企業では十分に評価されにくいスキルかもしれません。もしこれが一般的なビジネススキルとして広く認知されるのであれば、地方公務員はもっと転職市場で高く評価されるはずです。

僕が住んでいる県は典型的な田舎で、いまだに「結婚したら戸建住宅を新築する」のが普通です。
特に地方公務員は、遠距離の転勤も少ないですし、一旦家庭を持ってしまうと転職することもほぼないので、ますます家を買うのが「当たり前」とされています。

僕が入庁したばかりの頃(10年ちょっと前)は、土地購入+家屋新築で2000万円台に収めるのがセオリーでした。3000万円のラインが「大台」と言われていて、ここを超えると豪邸扱いされていました。

一方、新型コロナが流行り始めた頃から、建設資材の高騰や人件費上昇の影響をモロに受けて、どんどんこのラインが引き上がっています。
今は土地購入+家屋新築で3500万円くらいが標準のようです。
というよりも4000万円を超えるとローンの返済がだいぶきついので、このくらいに収めざるを得ないとのこと。従前のように3000万円を切ろうと思うと、県庁所在地には到底住めず、鉄道が通っている地域にも住めず、自家用車で片道1時間通勤を検討しなければいけないレベルで離れた地域に住まざるをえなくなってきます。

そして最近は、新たな動きとして、4000万円以上のマンションを購入するケースがじわじわ増えてきています。
ローンを組むのも大変ですし、月々の返済負担もかなり厳しいと思われ、正直なところ身分不相応な気がするのですが……実際に購入した人から話を聞いてみると「案外ありなのかも」と思い直しました。


意外と売れてる(らしい)田舎ターミナル駅付近のマンション

ここでいう「マンション」とは、ターミナル駅近くの新築高層マンションです。
イメージはこんな感じ。






こういった物件の価格は、(東京の不動産価格と比べれば全然大したことありませんが)地元の他の物件と比べると、かなり割高に映ります。
そのため地元住民からすると「こんなの誰が買うんだよ……」と思いたくなりますが、案外すんなり売れていきます。
どうやら、都市部に本社がある大手企業の社宅用として、ニーズが一定数あるらしいです。

僕の勤務先県庁の若手職員が購入しているのは、こういうハイクラス物件のグレード低めな部屋です。
具体的には、低層階の不人気方角の部屋を、オプションはあまり付加せずに購入しています。

わずかでも資産価値をキープする目論み

こういった物件は、いくらグレード低めとはいえ、安くても4000万円を超えます。下手したら5000万円台にすら乗ります。
先述したとおり、新築する場合の目安が「3500万円」なので、2割以上も高くつくことになります。

それでもマンションを購入する理由……それは資産性と流動性です。

これから地方はどんどん人口が減っていき、土地も家屋も資産価値が激減していきます。
新築で家を建てても、ローンを払い終わるころに果たして資産価値がどれくらいなのか、全く期待できません。

実際、家を建てる職員は、土地も家も「資産」とは見ておらず、消費するものと捉えています。
一生かかって消費し尽くすようなイメージです。途中で売却したり賃貸に出したりはしないので、資産価値はそもそもどうでもいいという考えでもあります。

一方、マンションを購入する職員は、買ったマンションを将来的に手放す前提で考えています。
彼ら彼女らは、夫婦ともに実家の土地家屋を相続する見込みがあり、自分たちが更に土地や家を買ってしまうと、将来的に不動産を持て余す可能性を見ています。

田舎の不動産は、これから資産価値のみならず流動性も激減していくと思われます。
買い手がいないので売れない、売れないから価格が下がっていく……という流れになるでしょう。

つまり、今マイホームを持ってしまうと、合計3軒もの住宅を、いらないのに持たざるを得なくなり、いずれ維持管理の手間と費用で首が回らなくなる……という未来を想定しているわけです。
そこで、少なくとも自分達が購入するものについては、流動性と資産性を少しでもキープできるよう、どちらも低下しづらそうな駅近物件を選んでいるのです。

答え合わせは数十年後?

田舎在住の若者はこれから不動産とどう付き合っていくのがよいのか、まだ定石は出来上がっていないと思っています。

僕個人的には、田舎の不動産に資産性を求めること自体がナンセンスで、「自分が求める使用価値を、なるべく安く獲得する」という一点だけ考えればいいと思っています。

いくらターミナル駅至近の好立地だとしても、「人口減少に伴い田舎の資産価値が落ちていく」というトレンドには抗えず、これから相当に下落していくのではないかと。
何より、田舎の不動産は今でも流動性が低く、任意のタイミングで手放すことが困難なので、「資産」として捉えること自体に難があるとも思っています。

ターミナル駅付近に住みたい、リッチな共用部分を使いたい……等々、高級マンションの「使用価値」に魅力を感じているのであれば、背伸びして購入するのも大いにアリだと思いますが、資産性目当てに買うのは、リターンの小さい投資のように感じます。

もちろん、これから何が起こるかわかりません。今の判断の成否は、数十年後までわからないのでしょう。問題意識だけは常に持っていたいと思います。

そもそも僕の場合、他人の心配をする前に自分の心配をした方がいいんですよね……
僕はいずれ実家の土地建物を相続できる見込みです。結構古いので現時点で既に資産価値はありませんし、辺鄙な場所なので手放したくても買い手がつきません。

このまま独身であれば、この実家をリフォームして住めばいいかなと思っています。
問題なのは結婚できてしまった場合です。「自分が求める使用価値を、なるべく安く獲得する」という一点だけ考えればいいなどと先ほど軽々しく書きましたが、相方がいると合意到達するのがすごく大変そうです。

4月から地方公務員として新たな一歩を踏み出した皆さん、おめでとうございます。
SNSを見ていると、この10日間で早くも絶望している方もいるようですが……人生は長いので、役所に順応するにしろ離脱を試みるにしろ、焦らなくてもいいと思います。
 
このブログを見ているということは、きっと何らかの困りごとや迷いごとがあって、ヒントを探しているのだろうと思います。

弊ブログ内の新人向け記事は、以下にまとめています。参考になれば幸いです。


「新人向け」タグで絞ってみても、役立つ記事が出てくるかもしれません。

 
 
例年この時期になると「新人地方公務員の役に立つ記事を書きたい!」という意欲が湧いてくるのですが、30代半ばになってくると、新人地方公務員のニーズがわからなくなってきます。
今の20代前半の価値観や考え方が全然わからなくて、一体何に困っているのか、どういうことが知りたいのか、想像できないのです。
 
そのため今回は、反対に、僕が新人地方公務員(大卒ストレートの20代前半を想定)に対して質問してみたい事柄を挙げてみようと思います。
この記事で例示する事柄は、きっと僕のみならず、僕世代の職員が共通して疑問に思っている(あるいは誤解している)と思います。
職場でのコミュニケーションの参考になれば幸いです。

超絶売り手市場の今、どうして地方公務員を選んだのか

まず真っ先に気になるのが、地方公務員になった理由です。
今や地方公務員よりも楽で高給で安定しててやりがいのある仕事がいくらでもあるのに、あえて地方公務員を選んだ理由が知りたいです。
 
僕が就職活動をしていた頃は、地方公務員はそこそこコスパ良くホワイトな職業と評されていました。
当時から「残業も休日出勤も当たり前」「残業代は出ない」「住民から罵声を浴びまくる」等々のネガティブな評価もありましたが、それでも民間企業よりはマシだと言われていました。
それくらい民間企業の待遇が酷かったのです。
 
そのため、僕世代の地方公務員には「待遇」目当てで入庁した人が多いです。
給料はそれほど高くないにしても、「リストラされない」「心身壊しても辞めなくていい」「失敗しても減給されない」あたりの条件を備えているだけでも十分魅力的に映りました。

なお、仕事内容には興味は無く、やりたい仕事なんて最初からありませんし、仕事にやりがいを求めていません。
(入庁当初は意欲ゼロだったものの、「働き始めてみたら意外と面白くてやりがいも感じている」という人もそこそこいます)
 
一方で今は、民間企業が全体的にホワイト化したために、地方公務員の待遇は相対的に落ちています。
そのため僕世代の価値観では、今の地方公務員という職業には、特に魅力を感じないんですよね……
少なくとも第一志望にはなりません。民間大企業がダメだった場合の「滑り止め」としてはアリですが、あえて第一志望にする理由が浮かびません。
 
そのため、今地方公務員になる若手の真意が純粋に疑問です。
仕事の中身に興味がある、「転勤が少ない」等の労働条件に魅力を感じた、民間企業が弱い地域なので役所が一番の高給取り……等々、「地方公務員になりたい」と思って就職したのか。
あるいは、民間就活に失敗した、学生時代に心身を壊してバリバリ働けない等、「地方公務員にしかなれなかった/ならざるを得なかった」のか。
 
事情は人それぞれでしょうが、どういう傾向があるのか、非常に気になります。
 

ボロカスに叩かれてる職業にどうして就こうと思えたのか

今の世の中、普通に暮らしていたら、地方公務員という職業に対して良い印象を持ちえないと常々思っています。
 
地方公務員という仕事は、とにかく叩かれて批判されます。
マスコミのような権威ある機関から堂々と批判されていますし、ちょっとSNSを覗けば住民からの生々しい批判がいくらでも見られます。
何より、現役or元地方公務員が、自らの職場や同僚をディスりまくっています。
 
それでも僕が就職したころは、「まともに仕事してないくせに高給を貰っている」という「妬み」が主訴でした。
見方を変えれば、嫉妬されるほどの「高い給料」がもらえるという意味で、魅力的に映る余地がありました。
 
しかし、民間企業の待遇が改善されていくにつれ、地方公務員を高給取り扱いする人は激減しました。
今の地方公務員叩きは、「地方公務員どもは無能で使えない」という能力批判・人格批判が中心です。
 
もちろん僕は、世間で言われるほど地方公務員は無能だとは思いません。
しかしこの認識は、僕自身がそこそこ長く役所で働いていて、地方公務員の実像を知っているからこそ持てるのであって、一般的に入手できる情報だけだと「地方公務員は馬鹿で無能」という認識を刷り込まれるのが自然ではないかと思うのです。
 
地方公務員に対するネガティブ情報が氾濫する中、どうしてそんなディスられる仕事に就こうと思ったのか。この点も非常に気になります。
 

公務員試験対策は大変なのか

僕が採用された年度の公務員試験は、最終倍率が10倍くらいありました。
うち筆記試験が8倍、面接が1.2倍くらいで、筆記試験を通過した時点でかなり安堵した記憶があります。
 
一方で、今は倍率がだいぶ下がっています。
最大手の東京都庁だと2倍を切っていますし、小規模自治体では定員割れするところも出てきています。
これだけ倍率が変わってくると、いくら試験科目が同じとはいえ、試験としては別物だと思います。
 
そこで僕は、今の地方公務員試験の常識が知りたいです。
特に、一般的な勉強期間と、捨て科目の有無が気になります。
 
僕の受験した自治体に限らず、当時の地方上級試験は「筆記試験でがっつり落とす」「面接はネガチェックでほぼ落ちない」というのが定説でした。
そのため、地方公務員になるにはとにかく筆記試験対策が重要で、地方上級試験の場合だと、大学3年生の4月から予備校に通い始めて、1年かけてじっくり試験勉強するのが王道でした。
 
また、捨て科目を作るという発想はありませんでした。
憲法や民法、ミクロ・マクロ経済学、数的処理あたりの問題数が多い科目は受験生全員ががっつり勉強して仕上げてくるので得点差が出ず、刑法や経営学あたりの2~3問しか出題されない科目で合否が分かれる……とよく言われたものです。
捨てるとしても教養試験の物理と化学くらいが限度でしたね。
 
一方で、今の低倍率なら、昔ほど勉強しなくても合格できるのでは?という気がしています。
 
こんなことが気になるのは、僕が資格試験全般が好きというのもありますが、退職していく若手職員の内心を探りたいという意図もあります。

僕世代の感覚だと、地方公務員を辞めることには相当なサンクコストが伴うと感じます。
地方公務員になるには、「大学3年生~4年生前半の貴重な自由時間」を、公務員試験合格のための勉強期間として費消しなければいけない……つまり地方公務員への就職には「1年間の自由」という対価を支払っているという感覚だからです。
 
そのため、退職していく若手職員は、大学生活1年分という膨大なサンクコストを回収できるくらいに良い転職先を見つけたのだと、直感的に思ってしまいます。
(あるいは、サンクコストなんてどうてもよくなるくらい地方公務員という仕事が嫌なのか)
いずれにしても、「地方公務員を辞める」という選択肢は、かなり大きな決断だと感じます。
 
しかし、もしさほど勉強せずに合格できるのであれば、今やサンクコストなんて存在しないわけであり、この感覚は時代遅れになります。
20代であれば、地方公務員並みの待遇を得られる仕事は他にもたくさんありますし、アルバイトを辞める程度の感覚で地方公務員を辞めていっているという可能性すら考えられます。

今の若手職員と、30代半ばの職員では、仕事に対するスタンスが全然違うと日々感じていますが、その根本原因のひとつが「試験難易度」のような気がしているのです。


もし暇な方がいたら、コメントで教えてもらえると嬉しいです。


毎年2月恒例、人事異動の噂話に花を咲かせつつ、夜な夜な予算業務の後始末と議会対応に明け暮れる日々を過ごしています。こういう時間を「無駄だ」と一蹴する人は地方公務員向いてないんだろうなと思います。僕は好きです。


敗北を認めることがスタート

高知県 “賢い縮小”人口減見越した社会目指す 当初予算案提出



県レベルの戦略で「いかに縮小させるか」を考えていること、より正確に言えば縮小を前提にした施策が許容されることに感動を覚えました。

これまでの役所界隈では、地域社会の縮小を是認するのはタブーだったと思います。
ゆえに、無駄金だと誰もが思いつつも、移住促進や子育て支援、よくわからない複合施設の整備、目新しさだけが売りの集客イベントのような、実らない施策に取り組まざるをえない、暗黙の強制力のようなものがありました。
ヒトモノカネ全てのリソースが減っていくのに「今後ますます発展していきます」という虚勢を張らざるをえないという空気が、本当に気持ち悪かったです。

「地方創生」なんかよりも「賢い縮小」こそ、今の地方自治体に必要な発想だと思います。

相次ぐ賃下げ(理由は色々)

八街市、財政難で職員の給与削減方針 次年度に若手除き半数が対象、特別職も



新庁舎整備のため職員らの給与を5年間減額…市長は30~20%、年間約5500万円の財源確保




来年度予算で給与カットをキメる自治体がちらほら出てきました。
やはり昨年の人事院勧告のプラス改定が強烈すぎたのでしょうか……

昨年の人事院勧告には、「若手の賃上げ」という目的がありました。
この目的を具体化するためには、低い号給ほど賃上げ幅を大きくすることになります。地方公務員の給料は年功序列で決まっており、若手ほど号給は低いからです。
そのため、「低い号給ほど賃上げ幅を大きくする」という対応で、「若手の賃上げ」という目的はきちんと達成されます。

このような措置は、別の見方をすると、若手職員に限らず「低い号給の職員」は誰でも手厚く賃上げがなされたともいえます。
例えば再任用職員や会計年度任用職員の方々です。これらの方々は、年齢に関係なく低い号給が適用されており、若手職員と同じく大幅な賃上げを享受しています。
例えば僕の勤務先県庁では、僕(30代半ば)よりも、会計年度任用職員や再任用職員の方々のほうが、金額では3倍、率では5倍ほど大きいです。

全国の自治体ではこれまで、正規職員を非正規職員(会計年度任用職員)に置き換えることで、人件費を削減してきました。
しかし今回の人事院勧告では、低い号給ほど賃上げ幅が大きくなったために、会計年度任用職員の人件費が大幅に増えることになりました。
特に、都道府県よりも会計年度任用職員の比率が大きい市町村ほど、給料プラス改定による財政負担増加が著しいのだと思われます。

給与のプラス改定がいつまで続くのかはわかりませんが、給与カットする自治体はこれからも増えていくのではないかと思います。

正直なところ、僕はある程度の給与カットは仕方ないと思っています。
ただし、「行政サービスの質も量も縮減してもなお財政が厳しいから、給与カットせざるを得ない」という前提がある場合に限ります。
島根県太田市のように、新しい施策を行うための財源として給与カットするのは論外です。

前掲の新聞記事を読んで「やべー!!」と思ったのは、「新庁舎整備のために給与カット」という判断よりも、市長のコメントです。


楫野市長は「財政が厳しい中、職員らに協力を呼び掛けて理解を得た。給与カットと併せて、様々な補助事業や有利な起債も活用していく」と話した。
【読売新聞】新庁舎整備のため職員らの給与を5年間減額…市長は30~20%、年間約5500万円の財源確保
https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20250219-OYO1T50025/

この言いぶりだと、主な財源調達手段は「給与カット」で、従たる手段が「補助事業や有利な起債」という趣旨になります。
普通、逆ではないでしょうか?
補助や起債を駆使したうえで財源が不足するのなら、その事業は背伸びしすぎなのであって、見直して縮小するべきです。
それでもどうしてもやらざるを得ない場合に限り、給与カットで財源捻出するという流れではないでしょうか……

地方公務員界隈のみならず、世間一般の関心も高いようです。
僕の課で来年度から始まる新規事業があり、つい先日新聞報道されたところ、さっそくご意見の電話(大半が苦情、無駄だから止めろという趣旨)が何件か入っているのですが、電話主たちが「この事業のためにどれだけ給与カットするのか」と問いただしてくるんですよね。
「新規事業の財源を給与カットで捻出」という発想が早くも浸透してるのではないかと不安になります。

地方公務員が「ブログで稼ぐ」のは違法っぽい

北海道の31歳女性職員「人気が出てしまい報酬を…」ネットショッピングの商品評価をSNS投稿し34万円報酬得る 匿名通報で発覚 減給の懲戒処分




地方公務員の副業に関してルールが整備されてくるにつれて、長らくグレーゾーンだった部分が徐々に白黒はっきりしてきています。
今回報道されたのはアフィリエイト収入です。
商品のレビューを投稿して収入を得るケースは違反だと判断され、減給の懲戒処分が下りました。

しかも、許可を得ていないからアウト(得ていればセーフ)というわけではなく、「申請があっても認められない事案」とのこと。
つまり、「地方公務員はアフィリエイト収入NG」という前例ができたわけです。

副業として認めるか否かは、各自治体の判断です。北海道庁では「アフィリエイト収入NG」という判断になりましたが、他の自治体では認められる可能性はあります。
とはいえ役所は先例を重んじる組織なので、この事例が参照され、「アフィはダメ」と判断する自治体が多数派になるのではと思います。

スエゾー

来庁者からつば、市職員がビンタ 加賀市、和解に10万円



顔に向かって唾を吐くのって結構難しくて、勢いよく吐き出したつもりでも重力に負けて相手まで届かないことが多いんですよね(経験談、もちろん吐かれた側です)。
息巻いて唾を吐き飛ばしたのに、床や机に墜落してしまった後のなんともいえない微妙な空気。地方公務員ならではの貴重な経験だと思うので、一度は体験してみてほしいです。

この来庁者の方はきっと慣れてるんだと思います。


本ブログのアクセス数には明確に周期があり、毎年3月にピークを迎えます。
Googleアナリティクスによると、1月~4月にかけて20代前半のアクセス数が激増しており、4月から働き始める新規採用職員予備軍の方々が本ブログを読んでくれているのだろうと思われます。

就業を控えたこの時期は、多くの人が不安を感じるものです。
僕自身も俗にいう「内定ブルー」みたいな状態になっていて、ひたすらアニメを見て気を紛らわせていました。

数か月後に生活が激変するのは確実なのに、準備しようがないというもどかしさ。
できることといえば、情報収集くらいでしょうか。
もどかしさのあまり、本ブログみたいな信憑性の疑わしい情報すら目を通してしまうんですよね……

勤務開始目前の方々にとっての最大の関心事は、自分の配属先だと思います。
地方公務員界隈で「配属ガチャ」という言葉が罷り通っているとおり、どこに配属されるか発表まで全然わかりませんし、当たり外れの差も大きいです。

地方公務員人生には人事異動がつきもので、初任の配属先に骨を埋めるわけではありません。どうせ数年で別の仕事をすることになります。
全然興味が無い分野に配属されたとしても、数年我慢すればいいだけです。
逆に、希望する部署に行けたとしても、その幸運は数年限りです。

しかしそれでも、地方公務員人生における最初の配属先の影響は非常に大きいと思います。
業務内容はさておき、地方公務員という職業や、役所という職場に対する好き嫌いは、最初の職場での経験でかなり決まってくるからです。

初任配属先の業務内容や雰囲気、人間関係が合わなかったために、採用1年目にして仕事への意欲を失う職員は少なくありません。
意欲を失う程度ならまだマシなほうで、心身を壊して休職したり退職してしまう人もいるくらいです。

反対に、採用直後は全然やる気が無かったのに、周囲に感化されてモチベーションが上がったり、能力を開花させる人もいます。
僕自身、そこそこ楽しく地方公務員稼業を続けられているのは、初任の配属先がいいところだったからだったと思います。

また、役所を見限って転職するにしても、最初の配属先での経験を「自分の強み」としてPRしていかなければいけません。
転職活動の成否すらも、最初の配属先にかかっていると言えるでしょう。

では、実際に新規採用職員にとって働きやすく、キャリアにとっても有益な「当たり部署」とはどのようなものか。僕の経験をもとに、独断と偏見で考察してみます。

人数が多い

僕が最も重要だと思う要素は、配属先部署の正規職員数です。
初任の配属先は、正規職員が多ければ多いほうが良いと思います。

より正確にいうと、正規職員が少ない職場は心身の健康を損なうリスクが比較的大きく、最初の職場としてはなかなか厳しいと思います。

職員数の少ない職場は、人間関係も狭くなりがちで、一人でもやばい職員(パワハラ野郎など)がいると、その人の雰囲気に吞み込まれます。
分母が少ない分、全員に占めるやばい職員の影響力がどうしても強くなってしまうんですよね。

人数が多い職場であれば、善良な職員たちで集まって別コミュニティを作ってお互いを守りあうことが可能ですが、少人数職場ではこういう対処が難しいです。


加えて、何らかの事情で急に職場全体の仕事量が増えた場合や、職員が減ってしまった場合に、職員数が少ないと負担の分散ができません。

年度途中で急に業務が増えるケースは多々あります。
  • 首長や議員の発案で新規事業を立ち上げることになった
  • クレーマーに目をつけられて連日大量の公文書開示請求が舞い込んできた
  • 制度改正があった
  • 訴訟を起こされた
などなど、現役地方公務員の方であればどれか一つは経験があると思います。

このような事態が生じた際に、人数の多い職場であれば複数人で分担できますが、少人数の職場だと一人で対応する羽目になりがちです。
もっとシンプルに、分母となる職員数が少ないので1人あたりの負担増が大きいともいえるでしょう。

年度途中で職員が減ってしまった場合も同様です。
同僚が心身を病んで休職してしまったものの補充されず、欠員状態のまま年度末まで仕事を回すという事態はもとから常態化していますし、最近では若手職員がいきなり退職するケースも出てきました。
こうした場合、いなくなった職員の分の仕事を他の職員が引き継ぐことになります。
職員数が少ないほど、1人あたりの引継分が多くなり、負担が増えることになります。


役所内ルールを執行する仕事

業務内容では、庶務や部局内調整のような、役所内ルールを執行する仕事が「当たり」だと思います。

役所にはいろんなルールや作法があります。
代表的なものとして、会計経理や議会答弁の作成、契約手続き、補助金の交付手続きなどが挙げられます。
こういった業務にはマニュアルが用意されており、ある程度の年次になると『知っていて当然』とされますが、実際に担当しなければ細かな手続きを理解することは難しいものです。
早い段階でこれらの知識を身につけておくことは、公務員としてのキャリアを築く上で大きな助けとなるでしょう。

また、こうした行政の内部ルールを知っていることは、民間企業への転職においても強みになりえます。
近年、行政の業務を外部に委託するケースが増えており、役所内部の実務に精通した人材は、民間企業にとっても貴重な存在です。
例えば、役所相手のコンサルティング業務や、公共事業のプロポーザル参加など、行政経験を活かせる分野は少なくありません。

さらに、内部ルールの執行は、単なる事務作業ではなく組織運営の一環とも言えます。
転職活動の際には「マネジメント経験」としてアピールできるでしょう。
実際に、僕が過去に転職活動を試行した際も、エージェントからは「組織の管理に関わる経験があるか」と問われました。営業や経理のような実務スキルを持っていない地方公務員をあえて採用する場合、企業側はきっと「組織を動かす能力」を期待するのだろうと思います。

結局は人間関係

ここまで色々書いてきましたが、結局は人間関係が全てだと思います。
正直どこの部署であれ、新人の担当する仕事は大差ありません。




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