キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

カテゴリ: 公務員の生き様

昨年末、総務省から「地方公務員のメンタルヘルス対策の現況 ー令和2年度メンタルヘルス対策に係るアンケート調査の概要ー」という資料がリリースされました。

 

この調査、「調査を実施する」と発表されたときはニュースになったのですが、結果に関しては全然話題になりませんでした。
 
中身を見たところ、とても手堅いというか守りが硬い報告書になっており、センセーショナルに報じたくても報じられない一方で、当事者である地方公務員にとってはちょっと物足りない内容に止まっているように感じました。

他の資料も参照しながら、独自解釈していきます。

休務者の属性

この調査の対象は首長部局の職員、具体的にいうと、正規職員の地方公務員のうち、教育委員会(学校教職員など)、警察、消防、公営企業に勤務する職員を除いた人数です。
職種や勤務地は関係ありません。
 
地方公務員当事者としては「職種ごとの分布」「本庁と出先の分布傾向」が気になるところですが、この調査からは分かりません。

役職別…昇進するほど減少するが課長級は多い

まずは役職別の状況を見ていきます。
調査結果に掲載されている数字をベースに、役職ごとの休務率を算出してみると、以下の表のようになりました。
 
地方公務員休職調査.001

概要版本文のとおり、係員級で、休務者絶対数も休務率ともに高くなっています。
記載はされていませんが、どうやら役職が上がるにつれて徐々に下がっていき、課長級以上になると再度増加するようです。

あくまでも推測ですが……一度でも休務していたら課長級まではなかなか出世できないので、課長級の休務者の多くは再発ではなく初めての休務だと思われます。
課長まで上り詰めた屈強な方であっても調子を崩すくらい、課長職は激務ということなのでしょうか……?


年代別…30代以下がやや多い

同じ方法で年代別の休務率を算出してみました。
概要版本文のとおり、30代以下でやや休務率が高くなっています。
 
地方公務員休職調査.002


役職×年代…「40代以上係員」が重要?

自治体組織は年功序列なので、年齢と役職はかなり相関が強いです。
(もちろん昇進試験がある自治体は別ですが、割合的には小さいはず)

そのため、30代以下の休務者(9,301人)の大半は、役職だと「係員」に該当するでしょう。

一方、役職別休務者のデータを振り返ってみると、係員の休務者は15,724人います。
つまり、係員の休務者のうち、約6,400人は40代以上の職員です。

「〇〇級」という表記からして、この調査における役職とは、ポストではなく給料の号級ベースだと思われます(例えば係長級だと3〜4級)

年功序列式の自治体であれば、40代以降で係員級という職員は珍しいです。
毎年4号ずつ昇給していれば3号には到達しているはずで、それこそ育児休暇や病気休暇で長期間お休みしていなければ、係員級(2級以下)に据え置かれることはあまりないでしょう。

このことから、40代以降の休職者には、結構な割合で2回目以降の休務者が含まれているように思われます。
極端な言い方をすれば、たびたび休職しつつもなんとか仕事を続けている方が、40代以降に約6,400人(1%前後)いらっしゃる、とも言えるでしょう。 

部署別…ぼかされている

地方公務員当事者にとって一番気になるのは、部署別の休務者情報ではないでしょうか?
残念ながらこの調査では、部署別のデータは巧妙にぼかされています。
 
部署別の休務者数は掲載されているものの、分母にあたる「部署別の職員数」がわからないため、肝心の休務率を算出できないのです。

部署別の職員数は、総務省が実施している「定員管理調査」を見ればだいたい分かります。
本調査と「定員管理調査」の部署設定が同一であれば、定員管理調査の数字を分母に用いればいいのですが……本調査では、定員管理調査と部署の設定が異なっています。

例えば、概要版本文では「保健福祉と生活文化で求職者が多い」と説明されていますが、「定員管理調査」にはいずれの区分もありません。
そのため、分子にあたる休務者数はわかっても、分母にあたる部署別の職員数がわからないため休務率を算出できず、部署ごとの比較ができないのです。


とはいえここで退くのも悔しいので、可能な範囲で分母の数字を推計して、部署別の休務率を算出してみました。

スライド1 (1)
スライド2 (1)

どうやら「財務・財政」と「生活文化&保健福祉」の部署で、休務率が高いと言えそうです。

なお、「財務・財政」に分類される職員の大半は、都道府県も市町村も税関係の職員です。
そのため、税関係の部署は休務率が高いとも言えるでしょう。

これら2部署で休務率が高くなる理由は、果たして何なのでしょう?
強いて言えば住民対応が多そうではありますが……

復職後…民間よりも復職しやすい?

概要版p.6では、休務後の状況についても触れられており、令和2年度中に休務した職員のうち半数強が職場復帰、12.5%が退職しているようです。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構「メンタルヘルス、私傷病などの治療と職業生活両立支援に関する調査」(リンク先はPDF)によると、民間企業における「過去3年間でのメンタルヘルスの休職者の退職率」は、平均で42.2%とのこと(p.20)。
「1年で12.5%」と「3年で42.2%」だと、単純な比較はできませんが、民間企業よりもメンタルヘルス原因の退職者は少ないような気がします。あくまでも感覚です。





こういう調査は何らかの目的が無ければ通常実施しないので、もしかしたら近々、地方公務員のメンタルヘルス対策の新たな取組みが始まるのかもしれません。要観察です。 

「地方公務員=安定している」というイメージはいつも強いです。
こういう文脈で登場する「安定」が何を指すのかは定かではありませんが、おおよそ
  • 職を失うリスクが小さい
  • 給与などの待遇が保証されている
  • 業務内容があまり変わらない
  • 将来のキャリアプランが予想できる
こういった要素を含むと思われます。

「地方公務員=安定」論に対しては懐疑論者も多く、「地方公務員はAIに仕事を奪われて失職する」「現状並みの待遇はもう維持できない」という説は特に強いです。
元地方公務員の方には「役所は泥舟、だから脱出した」という方もいます。

未来のことは誰にもわかりません。
わかるのは過去と現在だけであり、未来は推測するしかありません。

過去と現在においては、地方公務員は確実に「安定した職業」と言えると思います。
少なくとも、先に示した具体的要素の全部を満たしていました。

地方公務員の安定性の理由は「制度」と「雰囲気」に大別できると、僕は考えています。
そして、「制度」「雰囲気」のいずれかに大きな変化が起きたら、「地方公務員の安定性」も揺らいでくると考えています。


法制面の安定性:解雇できない&各種休暇制度

地方公務員は、地方公務員法に定める場合を除き、解雇できません。
具体的な解雇事由は省略しますが、ざっくりいうと犯罪を犯した場合と定年以外の理由では解雇されません。
(職員数を減らしたい場合は、解雇ではなく採用者を減らすことで対処します)

 

地方公務員法

(分限及び懲戒の基準)
第二十七条 すべて職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない。
2 職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、若しくは免職されず、この法律又は条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して、休職されず、又、条例で定める事由による場合でなければ、その意に反して降給されることがない。
3 職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、懲戒処分を受けることがない。


 
そのため、いったん地方公務員になってしまえば、よほど悪いことをしない限り職が保証されると言えるでしょう。
業績が落ちたら整理解雇されるかもしれない民間企業と比べると、かなりの安定感です。

加えて地方公務員には、各種の休業制度が設けられています。
代表的なものは産前産後休業(産休)、育児休業、病気休業です。
これらのおかげで、一時的に働けなくなっても地方公務員としての身分が保証され、離職せずに済みます。

同種の休業制度は、大手の民間企業でも設けられていますが、中小企業ではまだ無いところもあります。自営業だともちろんありません。
地方公務員と民間(自営業含む)という比較軸であれば、明らかに地方公務員のほうが充実していると言えます。

雰囲気面の安定性:一度折れても残留できる風土

制度的に身分が保証されているとはいえども、運用方法によってはいくらでも骨抜きにできます。

さらに、組織構成員が「身分保証制度に頼るのはダメなことだ」と認識しており、誰も制度を使わない(使えない)雰囲気であれば、どれだけ制度的に身分が保証されていようとも、実質的には身分保証が無いのと同義です。



「年間20日間」という有給休暇をイメージすればわかりやすいでしょう。
制度的には20日間休めるはずなのですが、実際に年間20日間しっかり休む地方公務員はごく稀です。

これは、職員の大半が「休暇をとると周囲に迷惑をかけるから必要最小限に止めるべし」という認識を持っており、「有休消化は非常識だ」という雰囲気が蔓延しているためです。

まさに雰囲気のせいで制度が骨抜きになっています。




正直、身分保証に関する制度面では、地方公務員より大手民間企業のほうがずっと充実しているはずです。
しかし民間企業には、「制度をフル活用して組織に残る」ことを悪とみなす雰囲気が、多かれ少なかれ存在すると思われます。

コンサルタント業界には「UP or OUT」(昇進か退社か)という言葉があります。
保守的だと言われるメーカーでも最近は「45歳定年」という思想が登場しました。
これらは極端だとは思いますが、どんな民間企業であっても、少なからず「戦力にならない人は出ていってくれ」という雰囲気が存在すると思われます。

一方、役所には、こういう雰囲気がありません。
慢性病を患って十全に働けない人であっても、暖かく迎え入れらます。
無能であっても、後ろめたさを感じることなく、のうのうと定年まで在籍できます。

戦力になれないことを責める雰囲気が無いために、安心して各種休業制度を利用できますし、気に病んで自主退職したりすることも無いのです。

「雰囲気」は危うい

制度と雰囲気は密接にリンクしており、明確に切り分けられるものではありません。
ただし、それぞれの変化要因は、明らかに異なります。

制度は、民主主義的なプロセスによって社会全体が決めることです。
これからもっと制度が充実して地方公務員の安定性が高まる……という期待はかなり薄いですが、民主主義的プロセスは何事も時間がかかるので、すぐに劇的変化が訪れるとも思えません。

一方、雰囲気は、組織内有力者の影響が大きいです。
たとえば首長が「UP or OUTを徹底してポストを空け、将来性のある若手をもっと採用します」みたいなことを発案して、閑職ルートに入った職員を明らかに冷遇したり、職員間の対立を煽って閑職への風当たりを強くして自主退職を促す……ようなことを始めれば、すぐに雰囲気は変わってしまうでしょう。

最近は「生産性向上」という旗印のもと、「民間を見習って地方公務員どうしをもっと競争させるべき」という風潮が強まっている気がしています。

特にこれからは地方公務員の定年延長が始まり、特段対応しなければどんどん職員構成が高齢化していきます。
従来通りに若手職員を採用し続けるのは、職員総数を増やすことになり、世論的に困難でしょう。
かといって若手の採用を絞るのも、組織内の年齢構成が歪になるので、あまり良い方法ではありません。

定年延長と若手採用を両立するのであれば、既存の職員を辞めさせて定数の空きを確保するしかありません。

先述のとおり、地方公務員を辞めさせるのは、制度的には困難です。
ゆえに、これまでの雰囲気を一新して、自主退職を促す方向になる可能性も大いにあり得ると思います。

従来の「働けない人」をも受容する雰囲気、僕が思う「地方公務員の安定性」を支えてきた屋台骨は、今まさに危機を迎えているのかもしれません。

以前の記事でも少し触れたのですが、現役キャリア官僚の友人から転職相談を受けました。
その後も何度かやり取りして、結果的に今回は転職を見送ることで落ち着いたようです。

とはいえ彼の霞が関への落胆は相当なもので、かつ彼個人の問題というよりは本省勤務のプロパー国家公務員に共通するものだと思われました。

本人から「隠すような話でもないし」と了承もらったので、紹介します。

ひたすら「連絡調整」の日々

今回僕に相談をくれた現役キャリア官僚(以下「X氏」)は、現在は某省(本省)のとある課で課長補佐を勤めています。
国家総合職試験に合格して採用された後、1回だけ出先機関勤務を挟んでいますが、基本的にずっと本省勤務が続いています。

課長補佐に昇進してからは、国会対応と内閣府・内閣官房(以下まとめて「内閣周辺」)との連絡調整がメイン業務です。

具体的には、
  • 国会答弁を書く
  • 国会議員の要求に応じて個別にレクする
  • 内閣周辺からの指示(資料作成、レク、各種文章作成など)に対応する
といった業務を、自ら手を動かして処理したり、係長や事務官に指示して対応してもらったりしてこなしています。

いずれの業務も、とにかく「日本語を整えること」が最も重要です。
口頭であれ文章であれ、「隙が無く、かつわかりやすい」説明が求められます。


連絡調整やりたくて官僚になったわけではない

X氏は、こういう仕事がやりたくて官僚になったわけではありません。
X氏がやりたいのは、施策や制度そのものに関わる仕事です。

既存の制度を安定運営させることはもちろん、新たな課題に対して新規施策を打ったり、状況変化に応じて制度を改正したり、不要になった施策を廃して新陳代謝を図ったり……
いわば施策や制度という「コンテンツ」に関わる仕事です。

こういう仕事に生涯をかけて取り組みたいと思ったために官僚を志し、学生時代から勉強を重ね、入省後も経験を積み、人脈を作ってきました。

しかし実際のところ、年々どんどん制度・施策そのものから距離が開き、今となっては口出しすらろくにできない状況にまでなってしまいました。

「連絡調整業務ばかりで施策・制度そのものに関われない」という状況は、X氏だけに限った状況ではありません。
上を見ても下を見ても横(同年代の総合職採用職員)を見ても、皆同じように連絡調整業務に追われています。


加速する「連絡調整」シフト

「制度や施策に携われない」という不満そのものは、今に始まった話ではありません。
X氏を離職に駆り立てたのは、ここ数年でこの傾向が一層強まっているためです。

X氏いわく、2つの大きな流れが、プロパー職員を制度・施策からさらに遠ざけているとのこと。


省庁横断

ひとつは「省庁横断」です。

ここ数年、「官邸主導」や「縦割り廃止」のような掛け声を実現すべく、内閣官房や内閣府の職員がどんどん増えているようです。
職員は基本的に各省からの出向という形で賄っており、係長級〜課長補佐級の職員が中心。
出向中は「各省にオーダーを出す側」として、ひたすら連絡調整業務をこなします。

一方、各省のほうは、内閣官房や内閣府に出向した分だけプロパー職員が減ります。
そのため、少ない人数で、連絡調整業務をこなさなければいけません。

つまるところ、「省庁横断」実現のため「連絡調整業務の司令塔」がどんどん増強されており、連絡調整業務の総量も増えていく一方、各省の対応人員は減少しているため、各省の一人当たりの負担がますます重くなっているのです。

外部人材登用

もうひとつは「外部人材登用」です。
 
プロパー職員が連絡調整業務に追われる中、制度や施策に関わる業務は、プロパー職員以外が担うようになりつつあるようです。

特に民間企業からの出向者の存在感がどんどん増しつつあり、新規施策や大型制度改正のような目玉プロジェクトほど、民間企業出向者中心で進められているとのこと。

X氏から見れば「自分のやりたかった仕事が外部人材に奪われた」も同然の状況です。
「これまで積み上げてきたもの、学識も経験も人脈も無駄になっている」と嘆いてもいました。
「霞が関において、キャリア官僚は『裏方』になりつつある」という言い方もしていました。

悪いことではないものの……

「省庁横断」「外部人材登用」いずれの流れも、これから当分続くと思われます。
そもそも、どちらも悪いことではありません。
うまくいけば行政サービスの向上につながるでしょう。

しかし、これらの流れが進めば進むほど、プロパー職員はますます連絡調整役に徹することになります。
国家公務員、特に国家総合職の仕事の魅力である「制度・施策に携わって国を動かすこと」から、どんどん遠ざけられてしまいかねないのです。

X氏に離職を考えさせたのは、現状への不満ではなく、「このまま霞が関に残っていては『制度や施策を動かす仕事』に関われない」という将来への危機感でした。
転職先候補として自治体も視野に入れてくれたために、僕に連絡をくれたとのこと。

公務員のやりがいとは何か?と改めて考えさせられる一件でした。

2021年も終わりが見えてきました。
都道府県庁だと、そろそろ霞が関出向へのお声かけが始まる頃合いでしょう。

このブログでも度々触れているとおり、本省出向のお誘い=高評価の証です。
打診されたことを、まずは誇りに思って良いと思います。

いろいろ噂の絶えない霞が関出向ですが、自治体以外の環境で働ける貴重な機会であることは間違いありません。

しかも自治体勤務よりも圧倒的に多量の業務をこなすことになるため、否が応でも鍛えられます。
上昇志向のある方なら、ぜひ利用すればいい機会だと思います。

IMG_0021
「ひたすら雑用させられるだけ」という前評判もありますが、実際に経験した人からは「いい経験だった」と聞きます。

 
ただ、霞が関出向に多大な期待を寄せすぎると、かえってがっかりするかもしれません。
出向経験者から聞く限りでは、霞が関出向によって実務能力は大いに鍛えられるものの、
  • 法学や経済学のような基礎的素養が身につく
  • 出向先省庁に関係する専門知識が身につく
  • 霞が関内や業界関係者との人脈ができる

といった抜本的成長までは至らない、つまり地方公務員よりも上位存在に転生できるわけではないらしいのです。

※この記事の内容は100%伝聞です。僕自身の経験談ではありません。
実際のところは出向経験者の先輩に聞くのが一番手っ取り早くて正確だと思われますが、昨今の新型コロナウイルス感染症のせいでなかなかしっぽり話を聞く機会も設けられず迷う方もいそうだな……と思い、僭越ながら本記事をしたためた次第です。

ひったすら業務量が多いけど……

まずはじめに、霞が関出向の実態を整理していきます。

「これまで出向者が回せてきた仕事」を担当する

どの省庁であれ、出向者のポストは固定されています。
出向者の前任者は、基本的に出向者です。

ポストが固定されているため、担当する業務もほぼ固定されます。
出向者が担当する業務は「過去ずっと出向者が回してきた業務」です。
「出向者でもトラブルなくこなせている程度の業務」だとも言えます。

そのため、「主査の仕事を新規採用職員が引き継いだ」みたいな、自治体だとよくある身の丈に合わない業務を任されるケースはごくわずかなのだと思われます。

「答えのある業務」が多い

出向者は基本的に1年、長くても2年間しか在籍しません。
(退職派遣だと4年コースもあるらしいですが……)
 
国からすれば残業させてもいい臨時職員みたいなものです。
そんな職員に任せられる業務は自然と限られてきます。

新たな判断を要する業務は任せず
  • 前任者の記録を見れば大体こなせる業務(広義のルーチンワーク)
  • ルールががっちり決まっており、調べればわかる業務(制度の運用など)

といった答えのある業務が多いようです。

「答えのある業務」という表現だとなんだか楽そうに思われるかもしれませんが、分量がとてつもなく多く、中身も細かく、さらには要求水準も高いので、作業量はどうしても多くなりますし、労働時間も長くなります。

しかしそれでも「やれば終わる」ものが大半です。
「閃かないと進まない」とか「専門知識がないと手が付けられない」ものではありません。

「自治体相手の業務」が多い

前項の「答えのある業務」の中には、自治体相手の業務も多いです。
  • 毎年実施している全国調査
  • 制度運用の疑義回答

のような業務が典型でしょう。

「プライドを賭けた省庁間バトルこそ霞が関の本質」というイメージが強いですが、こういう仕事は基本的にプロパー職員の役目で、こういう仕事まで任せてもらえる出向者は少数のようです。 

処遇はかなり改善されてきている

霞が関勤務=超多忙という実態は、もはや公務員界隈のみならず全国民の共通認識です。
とはいえここ数年で、少なくとも出向者の処遇はだいぶ改善されているようです。

一昨年に某省へ出向した職員曰く、年間残業は900時間程度で、彼の歴代前任者たちと比べても過去最少でした。(ちなみにピークは平成24〜25年頃で約1800時間、東日本大震災直後はどこもえぐかったようです)

残業時間の減少傾向は彼だけでなく、ほかの出向者も同様だったとのこと。
「やたらと『本省出向はやばい』と騒ぎ立てる人がいるが、多分認識をアップデートできていない、県庁の繁忙部署のほうが残業してるしストレスでかい」と話していました。

最大のリスクは「クラッシャー上司」

僕の周りには、幸いにも出向でダウンした職員はいません。
出向経験の話題になると、皆さん口を揃えて「人に恵まれた、運がよかった」と話します。

実際のところ、出向先で潰れてしまう職員も少なからずいるようです。
その原因のほとんどは人間関係、特にクラッシャー上司です。

配属先の人間関係は完全に運であり、出向者にはどうしようもありません。


得られるもの:圧倒的事務処理能力とお金

霞が関への出向では、自治体ではなかなか味わえないレベルの多忙を経験させられます。
とにかく多くの仕事をこなし、仕事について考えまくることで、自らの「仕事観」「仕事の進め方」をアップデートする絶好の機会になるでしょう。

圧倒的事務処理能力

ひたすら多量の業務を遂行する過程で、自然と事務処理能力が鍛えられます。
  • タスク管理能力
  • エクセルスキル(マクロを身につける人も多いらしい)
  • イージーミスを減らすためのちょっとした工夫

特にこういったものは確実に鍛えられます。日々の仕事が高負荷トレーニングとなり、知らぬ間にどんどん成長していけるようです。
僕の同期は「精神と時の部屋みたいなもの」と話していました。

圧倒的パッション

出向経験者いわく、プロパーの本省職員は仕事への情熱が桁違いで、文字通り「国を動かしている」という自負と責任感がある、とのこと。
自治体勤務だと、こういう役所の仕事に対してパッションを燃やしている方、いわば公務ガチ勢にはなかなか出会えません。
(官民問わず「地域活性化ガチ勢」ならむしろ地方自治体の方が出会いやすいのですが……)

本省出向を終えて自治体に戻ってきた後にも延々と続いていく公務員人生において、公務ガチ勢の生き様は、きっと精神的な支えになると思います。

圧倒的収入

収入面への影響も大きいです。
出向期間中は東京23区勤務扱いになり、地域手当は20%で計算されます。
さらに残業代も(ちゃんと支給されれば)凄まじい額になります。

もし僕が霞が関に出向して900時間残業した場合、年収はだいたい600万円くらいになります。
昨年の年収が約440万円だったので、1.3倍強に増えます。凄まじいです。

かつての上司(当時41歳)は、「20代で出向したときの年収をいまだに超えられない……」とぼやいていました。そのくらい跳ね上がるらしいです。

得られないもの:いろいろ

霞が関出向者が自治体に戻ってきた後は、出向先省庁関係の部局に配属されるとは限りません。
僕の勤務先自治体の場合だと、どんな省庁に出向していても関係なく、総務系・調整系の部署ばかりに配置されます。

せっかくの出向が勿体無いような気がしていたのですが、改めて話を整理してみると、そもそも「勿体無がるほどの貴重な財産」を得ているとは限らない気もしてもいます。

本省とのパイプ(人脈)

プロパー職員にとって、出向者は「大勢のうちの一人」にすぎません。
ただ一緒に仕事をするのみならず、「相当な困難を一緒に乗り越える」とか「人間的に馬があう」といったプラスアルファの要素がなければ、印象に残らないと思われます。
印象に残らなければ、パイプの築きようがありません。

加えて、プロパー国家公務員は、地方公務員よりも異動が多いです。
出向期間中の1年や2年に頑張って人脈を築いたところで、そのときのメンバーがいつまでも本省に残っているとは限りません。
活用できるとしてもせいぜい数年なのでしょう。

専門知識

先述したとおり、出向者が担当する業務には必ずしも専門知識が求められるわけではありません。
単に出向期間中にミスなく仕事を回すだけであれば、知識がなくともなんとかなります。

ただ生き抜くだけでぐんぐん伸びる「事務処理能力」とは異なり、「専門知識」はただ目の前の仕事をしているだけでは身につかず、自発的に勉強しない限りはさほど伸びないのです。

コミュニケーション能力

地方公務員の仕事では、いろんな層の人と関わります。
大学教授のような知の頂点に立つ人から、文字の読めない人まで……とにかく幅広い層と意思疎通するためのコミュニケーション能力、いわば異文化コミュニケーション能力が求められます。

一方、霞が関出向で関わる人たちは、基本的に皆さん優秀です。
仕事において求められるコミュニケーション能力は、情報を早く・正確に・大量にやりとりすることに主眼が置かれると思います。

つまり、霞が関出向期間中は、地方公務員に必要な「異文化コミュニケーション能力」が必要とされず、ゆえに訓練されないのです。

霞が関的なコミュニケーションも勿論重要(むしろエリート界隈ではこちらが王道)なのですが、地方公務員実務に直結するとは思えません。

出向するか否かの判断基準

多くの方にとって、霞が関出向を受諾するかどうかの判断基準は、以下の二つに集約されると思います。
  • 耐えられるのか
  • 自分のためになるのか/何が得られるのか
前者に関しては、「業務内容が難しすぎてついていけない」という危険はかなり小さいものの、どうしても長期間労働は避けられないでしょう。

そのため、「これまで経験したことのない分野だから」などの業務内容的な懸念はさほど考慮する必要は無く、「残業に耐えられるか」「睡眠を削っても大丈夫か」といった体力面・健康面から検討すればいいと思います。


後者に関しては、「圧倒的な事務処理能力」という地方公務員人生において一生役立つスキルが確実に得られます。
これはどんな部署に配属されようとも、 どんな役職に就こうとも、必ず役立ちます。


ただ、事務処理能力以外の要素を開花させたいという希望、例えば
  • 人脈を作りたい
  • 専門性を身に付けたい
  • 視野を広げたい
といった期待は、叶う保証はどこにもありません。
これらを目当てに出向しても、肩透かしを食らうかもしれません。

むしろ出向期間中は、労働がハードなせいで生活に余裕がなくなり、こういった要素を伸ばす余力が残っていないかもしれません。

霞が関出向によって達成できるのはあくまでも「地方公務員としての成長」です。
典型的な地方公務員の枠に納まりたくない人、いわゆる「スーパー公務員」や「稼げるスキル」を志向する方は、出向するよりも独自路線を突っ走ったほうがいいと思います。
 

僕にとって弊ブログはあくまでも壁打ちみたいなもので、自分の考えを構成立てて文章化するのが楽しいから続けているだけです。

ブログを契機に有名になりたいとか人脈を広げたいとか、こういう野望は一切抱いていません。
お金になればいいなとは内心思っていますが……

そのため身バレは死を意味します。絶対特定されたくありません。
やましい内容を書いているつもりはありませんが、ただひたすら恥ずかしいのです。

ツイッターであれブログであれ、インターネット上で匿名で公務員ネタをしたためている方の中には、僕みたいに「絶対身バレしたくない」と思っている方もきっといると思います。
 
インターネットにおける個人特定回避のための心がけといえば、
  • ローカルネタに触れない(勤務先・居住地特定の回避)
  • 具体的な人名は絶対出さない
  • 私生活を見せない
あたりが一般的ですが、公務員の場合はこれだけでは足りません。
役所組織に関する単語のチョイスに細心の注意を払わないと、勤務先をかなり絞り込めます。

特に県庁職員の場合、43しか候補がありません。
些細なミスが身バレにつながりかねないのです。

役職名・役職の序列

多くの方が触れているとおり、地方公務員の役職(肩書き)は、自治体ごとにバラバラです。
役職名もバラバラですし、役職の序列もバラバラです。

そのため、自分の勤務先で使われている役職名や序列を堂々と披露すると、それだけで勤務先を特定されかねません。

どんな自治体でも共通の役職名といえば、「主事」と「課長」くらいかもしれません。
「係長」もだいたいの自治体で存在するでしょうが、いない自治体もあります。



例えば福井県では、「係長」という役職が無く、係長ポジションを「主任」と呼称しているようです。

「副部長」「副主幹」「課長代理」あたりは、名前を出しだだけで相当絞りこめそうです。

「部」「局」の位置づけ

それなりの規模の自治体であれば、課よりも一段階大きい組織区分として「部」や「局」があると思います。
「部」と「局」の関係も、自治体ごとにバラバラです。

東京都庁のように「部」よりも「局」が上にくる自治体もあれば、どちらもほぼ同じ力関係の自治体もありますし、「局」よりも「部」のほうが上の自治体もあります。

「部」と「局」のいずれか片方しか無い自治体もあります。



総務省ホームページに、都道府県の組織区分の一覧が載っています。
都道府県の内部組織の数に関する調 PDFというPDFファイルです)

これを見ても、「部」と「局」の上下関係が見事にバラバラです。
つまり、「部」と「局」の力関係に触れる際には書き方を工夫しないと、特定されかねないのです。

課の名前

個々の「部」「局」「課」の名称は固有名詞であり、うかつに出すと即特定されます。
そのため僕は基本的に「〇〇部局」「〇〇担当課」のような曖昧表現を使っています。
 
ただ、この〇〇に相当するワードのチョイスが結構難しいのです。
一般的な単語を選んだつもりでも、実はマイナーだったというケースがままあります。
実は僕もたびたび過去記事を修正しています。


地雷その1:企画担当課

企画担当課の名前には、似たような単語を使いつつも自治体ごとに微妙に異なるという面倒な特徴があります。

かつて内閣府ホームページ内に「都道府県のリーサス担当部局一覧」みたいなページがあり(もう見られない)、そこを見れば全国の企画担当部局の名称がわかりました。
確か「企画」のほか「政策」や「調整」という単語がよく使われていました。

企画部局はメジャーな出世コースであり、役所組織全体を左右する部局でもあるため、公務員ネタを扱ううえではどうしても触れたくなります。
だからこそ注意が必要です。例えば「長期計画を作っている『企画政策課』」のように企画担当部局の名称を書いてしまうと、それだけで特定のヒントになってしまいます。

地雷その2:各部局の総括担当課の名前

それなりの規模の自治体であれば、部局横断的な業務の窓口役になる「部局の総括担当課」が存在します。

例えば三重県だと、部ごとにある「〇〇総務課」です。


このポジションの名称は、自治体ごとにかなり異なります。
ここも出世コースであり、ついつい触れたくなるトピックではありますが、よくよく注意が必要です。
安易に自組織の名称を使うと、あっさり特定されかねません。
 
本記事では「総括担当課」という表現を使いましたが、正直これもかなりリスキーだと思っています。


固有名詞を一切排して、抽象論・一般論ばかり書いていれば、特定は避けられます。
とはいえそれでは説得力が生まれづらいですし、ニーズがあるのも固有名詞もりもりの生々しい情報です。
ここぞという時に限って個別具体的な単語を使うのが匿名情報発信のコツだと思います。



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