札幌市が公費で名刺を作成するとのニュースがあり、SNS上で盛り上がっていました。
自治体職員の名刺自腹問題は、弊ブログの開設当初に取り上げています。
自治体職員の名刺自腹問題は、弊ブログの開設当初に取り上げています。
この記事、書いてから6年経過するにもかかわらず、いまだに安定して閲覧されています。
それだけ多くの職員が「名刺の自腹負担」に違和感を抱いている現状がうかがえます。
それだけ多くの職員が「名刺の自腹負担」に違和感を抱いている現状がうかがえます。
仕事で名刺を使う、つまり名刺が公務に必要なツールであるのなら、その作成費用を個人が負担することには合理性がありません。民間企業では名刺は会社負担が一般的であり、自治体においても公費で作成するのが自然な流れでしょう。
札幌市以外でも公費負担に切り替える自治体が増えていますし、今後ほかの自治体でも、積極的に見直す動きが生じるのではないかと思います。
一方で、僕の勤務先自治体では、過去の監査(某士業団体が主導した外部監査らしい)で「名刺の公費負担は認められない」と判断されたことを根拠に、公費負担しない方針が維持されています。
公費負担への方針転換=士業団体の権威を損なうことにつながりかねず、当面は舵を切れないんだろうなと思います。
公費負担への方針転換=士業団体の権威を損なうことにつながりかねず、当面は舵を切れないんだろうなと思います。
今回の札幌市の取り組みが、他の自治体にも波及し、公費負担が当たり前になる日を心待ちにしています。
しかし一方で、名刺を公費負担で作成するようになった場合、新たな種類の住民トラブルが発生するのではという懸念もあります。
求められると断れない?
近年、職員のプライバシー保護やカスハラ対策のため、普段身につけている名札を簡略化する動きが広がっています。
とはいえ住民の立場からすれば、後々トラブルになった際の保険として、職員のフルネームは是非とも把握しておきたいと思うのが当然の心理です。
実際、公文書開示窓口や図書館で職員録の開示を求めたりして、別の方法でフルネームを調べる方が増えているとも聞きます。
このような背景を考えると、今後は職員のフルネームを把握するための手段として、住民から名刺を求められるケースも増えていくと思われます。
名刺には、フルネームの名前よりも明かしたくない情報(メールアドレスや直通電話番号)まで記載されていますし、さらにはSNS等に晒されて個人攻撃につながるリスクも孕んでいます。
そのため、名刺を渡す相手はなるべく選別したいのが本音です。相手から名刺を差し出されて「交換」するならまだしも、職員側から一方的に名刺を渡すのは極力避けたいところです。
名刺を差し出すよう要求された場合、私費負担(作成するかどうかは職員の判断)であれば、「作っていません」「あいにく今切らしています」で逃げることができます。
しかし、公費負担になるとこの言い訳は使えません。
特に、いくつかの先進自治体のように、名刺を「広報ツール」として位置付けてしまうと、名刺は公共施設のパンフレット等と同じく「積極的に配布すべき公式な印刷物」になるわけで、「作っていません」「切らしています」という回答は、行政の不手際とみなされる可能性が高いです。
かといって正直に「お渡しできません」と返答する、つまり「渡さない」という判断を職員が下す形になると、間違いなく住民の反感を買うと思います。
公費で印刷している以上、「なぜ渡さないのか」を説明する責任も発生するでしょう。
公費で印刷している以上、「なぜ渡さないのか」を説明する責任も発生するでしょう。
いずれにしても、名刺を渡さないことで、さらなるトラブルを招くおそれがあると思います。
杞憂であることを願うばかり
自治体における名刺の公費負担は、公務の効率化や公平性の確保という観点から重要な施策だと思います。
その一方で僕は、住民とのトラブル増加を懸念しています。
僕自身、これまで幾度となく、怒れる住民から名刺を出すよう要求されてきました。
「お前の態度が気にくわない、SNSに晒すから寄越せ」と明示的に言われたことすらあります。
そのたびに「うちの県では名刺作ってません」という弁明で逃げてきました。
もしこの言い訳が使えなくなったらと思うと相当厳しいです。
既に公費負担に踏み切った自治体では、こういうトラブルは発生していないのでしょうか?
実際のところどうなのか気になるところです。
実際のところどうなのか気になるところです。
先述したとおり、僕の勤務先貴自治体ではまだまだ名刺自腹負担が続きそうなので、他自治体の動向を注視していきたいと思います。
【2025/2/11追記】
もし公費で名刺を作成するとなった場合、もしかしたら名刺も公文書扱いになるんでしょうか……?
少なくとも、名刺を発注するために印刷会社に渡したデータは公文書になるはずなので、わざわざ職員に名刺を要求しなくても、「印刷会社との間で作った入稿データ」を公文書公開請求すれば、職員のフルネーム・直通電話番号・メールアドレスが簡単に一式揃うのでは……?
【2025/2/11追記】
もし公費で名刺を作成するとなった場合、もしかしたら名刺も公文書扱いになるんでしょうか……?
少なくとも、名刺を発注するために印刷会社に渡したデータは公文書になるはずなので、わざわざ職員に名刺を要求しなくても、「印刷会社との間で作った入稿データ」を公文書公開請求すれば、職員のフルネーム・直通電話番号・メールアドレスが簡単に一式揃うのでは……?