キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

カテゴリ: 時事ネタ

二地域居住は「手段」であって「目的」ではないのでは



若手国家公務員の二拠点居住を支援して、「国の職員が中小規模の市町村を副業的に支える仕組み」を構築するとのこと。
市町村にとってはありがたい施策のように見えますが、一方で国(省庁)や国家公務員側には全くメリットが無さそうで、実際に制度が始まっても利用者はごくわずかだろうなと思いました。

まず、自宅のほかに拠点を持つとなると、かなりお金がかかります。
いくら支援があろうと、全額補填されることはさすがに無いと思います。自腹を切らざるをえないでしょう。

さらに、市町村のお世話をする時間に対し、対価がちゃんと支払われれるのか危ういです。
「副業的」という書き方をして、ちゃんと報酬が出るような仄めかしはしていますが、自治体の現場を見ていると、報酬を払うまでのハードルはかなり高いと思います。
市町村の財政事情は常時厳しいですし、何より「公務員の副業に対して公金を支出する」ことに住民が賛同するとは思えません。いかにも地元メディアが叩いてきそうです。

つまるところ、ただでさえ超激務な国家公務員が、貴重な余暇と身銭を切って、さらに叩かれるリスクまで背負って、わざわざ市町村の支援に行くのだろうか……と思われて仕方ないのです。

国家公務員側にメリットがあるとすれば、転職に役立つかもしれないという点でしょうか。
自らの知見に基づいてコンサル的な活動をした実績が作れるので、転職市場での市場価値は上がるんじゃないかと思います。

そもそも、市町村の伴走支援は都道府県庁の役割のはずなんですが、すっかりスルーされているのが面白いですね。
国としても地方公務員の人材劣化(都道府県庁職員では市町村のサポート役は到底務まらない)を実感しているということなのでしょうか。

実際に地方公務員を大規模削減したらどうなるんだろうか



トランプ大統領が「政府職員を大幅削減する」と表明して以来、ネット上では「日本も公務員を減らすべき」との大合唱が続いています。
ほとんどの人は公務員叩き&ディスりの観点で「もっと減らせ」と主張していますが、中には「これから労働人口が減っていくんだから、真に人手が必要な業界とか成長分野に人を回すべき」との意見も見られます。この意見、僕は至極ごもっともだと思います。

役所の人手が足りないのは事実です。現在進行形で新しい仕事がどんどん増える中で、公務員を減らしたら、行政サービスの水準は間違いなく劣化するでしょう。
しかし世の中には、行政サービスよりも必要性の高い民間サービスがたくさんあります。例えば物流あたりでしょうか。
これからどんどん労働人口が減っていく中、役所よりもこういう業界に人を回したほうがいいと思います。

さらに、人材の質という意味でも、役所よりも優先すべき業界が多くあると思います。
そもそも民主主義というシステムを採っている以上、公務員はあくまでも主権者の道具、主権者が決めたことを粛々と実行する役割にすぎません。
ゆえに、(総体としての)主権者よりも賢い人が公務員になろうとも、その知性は埋もれます。主権者の意思決定に意見具申すらできないからです。
つまり、一般国民よりも優秀な人材が公務員になっても、その優秀さを全然発揮できないのです。

地方公務員界隈では「優秀な人材ほど役所を辞めていく」という嘆き節が後を絶ちませんが、これは一種の社会の自浄作用なのではないかとすら思えてきました。
民間企業でもやっていける優秀な人材はどんどん民間に流出していったほうが、社会全体にとってはきっと良いのでしょう。

そうなるともちろん行政サービスは劣化していきますが、もはや仕方ないと僕は思います。
劣化させてはいけないサービス(消防や警察)はなんとかして維持、それ以外は計画的に縮小・撤退していくのが、僕世代の自治体職員の責務なのだろうと思います。

クレーマーの喜びを垣間見た

普段は全くテレビを見ない僕ですが、1月27日のフジテレビの記者会見は視聴しました
僕はフジテレビに対して個人的な恨みがあります。以前とある部署でフジテレビのニュース番組から取材を受けたのですが、スタッフから無茶ぶりをされたうえ、オーダー通り対応したのに散々罵倒されたからです。
(フジテレビの名誉のために断っておくと、他のキー局からも同じような奴隷的扱いを受けた経験あり)

経営陣がしどろもどろに答える様子は、正直とても面白かったです。
いけ好かない連中が追及され、狼狽する姿を眺めるのは、ある種の溜飲が下がる思いでした。

しかし僕は途中で視聴を止めました。
フジテレビ経営陣が罵倒され詰られる様を面白がる心理は、公務員叩き&ディスりに励むクレーマー達と酷似していることに気づいたからです。

記者会見を見ながら愉快な気分になっていた自分は、彼ら彼女と何が違うのか。
安全圏から他者を叩くことの快感に、無意識のうちに囚われていたのではないか。
そう思ったとき、急に自分が怖くなり、視聴を止めたのです。

同時に、公務員に対する一般的な住民感情(=漠然とした反感や敵意)の正体を垣間見たような気もしました。
僕がフジテレビを好いていないように、多くの住民もまた公務員を好いていません。
そして、好いていない相手が追い詰められていると、たまらなく嬉しくなる──まさに僕が感じたのと同じ構図です。

「公務員叩き」が一大コンテンツとして長く愛されている理由がようやくわかりました。
国民の大半に刺さって、全国津々浦々から新鮮なネタが提供されてくるわけです。
コンテンツ制作者にしても、コンテンツを配信するメディアにしても、本当に便利なのだろうと推察します。

今月は地方公務員関係の気になるニュースが多かったので、まとめて言及します。

本当にこんなに賃上げできるのか?(人事院勧告)



過去最大の引き上げ幅になるということで、とてもありがたいです。
ただ、賃上げの財源はどこの自治体も厳しいと思われ、人事当局はなんとか骨抜きにして人件費総額を抑えようと工夫するんじゃないかと思っています。

期末勤勉手当の支給月数はごまかせないとしても、昇給昇格ペースを遅らせたりすれば、月給引上げの影響は少しは誤魔化せるんじゃないかと。
そのため僕は、自分自身の収入増にはあまり関心がありません。期待もしていません。

それよりも、政治家やメディアが「公務員の賃上げ」をどのように取り扱うのか、気になっています。

日本を牛耳る高齢者世代にとって、公務員の賃上げほど無意味な施策はありません。
自分たちに恩恵が無いどころか、自分たちに割ける財源の縮小とほぼ同義だからです。まさに百害あって一利なし。
そのため、政治家やメディアは、「公務員の賃上げなど言語道断!」と一喝すれば、高齢者世代の人気を簡単に獲得できると思います。
支持者を一気に増やせるわけです。

一方で、「賃上げが必要」という風潮もかなり強いです。
いくら嫌われ者の公務員とはいえ、うかつに「賃上げ不要」と主張すれば、主に現役世代から叩かれかねません。

教職調整額の引上げも相まって、来年度は公務員人件費が爆増すると思われます。
そのため、例年以上にニュースバリューがあるので、いろんな人や組織が公務員人件費に言及してくるのではないでしょうか?
百家争鳴のごとく議論が盛り上がるのはないかと期待しています。

地域手当があるところはギスギスしてそう(他人事)

地域手当の率の見直しも興味深いです。
  • 北関東各県の12~16%エリアが結構下がってる
  • 一方で神奈川県が躍進していて、これまで0%だった自治体も12%の最低保証へ。藤沢市は12→16に上昇
  • 群馬県では、県庁所在地の前橋市3%に対し、ライバル高崎市が6%でダブルスコアをつけていたところ、今回の見直しでどちらも4%に揃う
特にこのあたりは、当事者の方々には悲喜こもごもありそうで、内心どのように思っているのか気になるところです。
田舎県庁職員的には、地域手当が出るだけで嫉妬してしまいます。


男性激減による女性割合増(国家一般職の合格人数)



国家一般職の合格者に占める女性の割合が過去最高を記録したとのこと。
ここ数年、地方公務員でも、合格者に占める女性割合が上昇してきており、「女性職員割合の増加」は公務職場に共通する現象なのだと思われます。

ただ、よく見ると、女性の合格者の頭数が増えているわけではなく、単に男性の合格者が減っているだけなんですよね……

記事では「女性にとって働きやすい職場環境作りが進んでいる影響」と分析されていますが、これはあくまでも「男性と比べて女性の減少幅がなぜ小さいか」を分析しているものです。
「公務の職場は、女性にとって働きやすい環境なんだ」と理解するのは非常に危険だと思います。

そもそもの大前提として、公務員試験の受験者は激減しています。
男女ともに敬遠されつつある中で、あくまでも相対的に、女性のほうが残っているというだけなんですよね……

辞めたくなる気持ちはよくわかる



自治労が調査した結果、能登半島地震で大きな被害を受けた5市町で、なんと6割の職員が発災後に「辞めたい」と思ったとのこと。
僕も対口支援で現地入りましたが、辞めたくなる気持ちはよくわかります……
セルフネグレクトのような投げやり状態になっている方が少なくありませんでした。

総務省「定員管理調査」によると、調査対象になった5市町の一般行政職員は1,049人(R5.4.1時点)。
ネットの反応を見ていると、「自治労の調査はサンプルがおかしいしバイアスかかりまくりだから意味が無い」という意見も多いようですが、このアンケートの回答者は211人なので、自治労実施のアンケートにしては結構回答率が高いのでは?と思います。

果たして県庁は大丈夫なのでしょうか……


ネットでバズってる地方公務員がカスハラを助長している?

職場内回覧物の定番、時事通信社の「地方行政」。
僕はざっと目次を見て、興味のある記事だけ読んでいるのですが、先日の号に大変興味深い記事がありました。
【2024年08月01日 第11312号】掲載の「新時代を生き抜く公務員講座 (23)カスタマーハラスメント防止対策」という記事です


なんとなんと、「自治体職員の中に『カスハラ応援団』が存在する」とのこと。
詳しくはぜひ本文を読んでいただきたいのですが、「自治体職員がネット上で、国や自分が属していない自治体を一方的に批判する行為が、カスハラを助長している」という見解で、「単に私憤を表明しているだけなのに『自分は公務員である』という優位性を主張することで注目を浴びる行為」という何とも痛快な評価まで下しています。

X上に、こういう方いますよね……
己の知識と経験に基づいて持論を開陳するのは、確かに快感なので、やりたくなる気持ちはよくわかります。
ただ、怒りや批判で終わるのではなく、もっと生産的な形に落とし込めばいいのにと思います。

もしかしたら、本人としては「私憤」ではなく「義憤」だとか、怒っているわけではなく「正論」を説いているだけなんだと思っているかもしれません。
ただ、この思考回路こそハードクレーマーあるあるであり、全国の地方公務員を日々苦しめています。
地方公務員を苦しめる存在に、当の地方公務員が堕してしまう……これこそまさに「悪堕ち」だと思います。

僕は絶対に「カスハラ応援団」には堕ちないよう、気を付けていきます。

東京オリパラ2020、ついに始まってしまいました。

僕は今回のオリパラに対し屈折した感情を抱いています。
うまくいってほしいと思いつつも、国民がのうのうと観戦してるのが許せないというか……
地方公務員であれば、同じようなことを考えている方が結構いるのでは?

スポーツエンターテイメントとしては間違いなく世界最高峰のイベントであり、一旦始まってしまえば、エンタメの魔力によってこんなモヤモヤした感情も吹き飛んでしまうのでしょう。
だからこそ今のうちに思いの丈を書き残しておきます。

国民感情とかいうUMA

オリパラが始まってしまえば、よほど筋金入りのアンチスポーツ勢を除き、「開催してよかった」と思うに決まっています。
これがエンタメの魔力です。

ただ実際のところ、開催前の時点では、国民はどう思っていたのでしょう?
メディアが報じるとおりであれば「開催反対が多数派」らしいのですが、本当にそうだったのか?

国民感情なんてものはそもそも調べようがないのですが、もしメディアが報じるとおりなのだとしたら、あまりにも浮気性すぎてどうなの?と思う。

一方、本当は「開催反対が多数」なんて事実が存在せず、メディアが火に油を注ぐためにでっち上げたのであれば、やり口がダーティで腹立たしい。

いずれにせよ釈然としないのです。

とにかく行政末端職員が被害を受ける

どんなトピックであれ国民感情が荒立つと、役所にクレームが飛んできます。
今回のオリパラも同様です。
僕自身、昨年のうちから、賛成派・反対派の両方からクレームを受けてきました。
マジでどうしようもないのに、ただ感情の捌け口として利用されてきました。
教育委員会の体育教育担当係あたりは苦情処理に年中追われていたと聞きます。

つまるところ、地方公務員が「国民感情の調整弁」のように使われたのが腹立たしいのです。

誰かが意図的に役所叩きへと誘導したのか、自然発生的に役所を叩く流れになったのか、実態はわかりません。
とにかく「事実関係や原因を確認する前に、イラッとしたらまずは身近な役所に対して怒りをぶつける」というムーブが当然のように罷り通り、国民の間に広く浸透してしまったという事実が、本当に厳しいのです。

悪評はずーーーっと残る

エンタメの魔力の効果がどれだけ凄まじくとも、今回のオリパラに対し百点満点評価を下せる人はあまりいないと思います。
終了した後に、加点要素と減点要素の線引きが行われるでしょう。

この境界線をどこで引くのか、これは高度に政治的な問題だと思います。

少なくともアスリート達は確実に加点要素です。
演出を作ったクリエイター達も、加点要素側に入るでしょう。
競技会場などのハード面を整備した方々、ボランティアとして参加したスタッフも加点要素でしょう。

一方、事務方は、僕は減点要素扱いされるのではないかと思います。
事務方自体は、どちらかと言えば国民に負担を求める立場であり、自ら感動的なコンテンツを生成しているわけではないからです。

最終的には
  • 役所用語でいう「サブ」=コンテンツ制作に携わった方々は加点要素
  • 役所用語でいう「ロジ」=開催にあたっての段取りに携わった方々(事務方)は減点要素
言い換えると
  • 無能事務方のグダグダっぷりを挽回する勢いでアスリート達が頑張ってくれた

こういう整理で落ち着きそうな気がしているのです。

国民にとって、オリパラの事務方=行政です。
この整理はつまるところ、「今回のオリパラによって行政の無能っぷりが露呈した」
という理解にほかなりません。

『失敗の本質』あたりの本と絡めて、「今回のオリパラ運営も、太平洋戦争と同様、未だ兵糧軽視の玉砕戦を〜」みたいなことを論じる方が絶対出てくると思います。予言します。


「行政は無能」という理解は、オリパラの感動とともに、国民の心に深く根付くでしょう。
そしてこれから当面の間、行政不信・公務員蔑視の燃料として燃え続けると思います。
公務員を見下す風潮にお墨付きが与えられたと言っても過言ではないでしょう。

「どれだけ頑張っても戦犯扱い」、これが事務方の宿命なのかと思うとやるせなくなります。


『鬼滅の刃』人気がどんどん盛り上がっています。
時代遅れなことに定評のある役所内でも普通に話題に上るようになりました。
 
ただ実際に作品に触れている人はまだまだ少数派のようで、テレビでのコメントやネットニュースの中身がそのまま(あたかも賢明な批評であるかのように)繰り返されているような状態で、なかなかに悶々とさせられます。
 
とはいえ職場でガチ議論する度胸は無いので、ここにこっそり私見を置いておきます。
 

ジャンプ漫画には珍しく「世界を描かない」


週刊少年ジャンプの人気作品は、たいてい「キャラクター」というミクロな要素と、「作品世界」というマクロな要素の両面から読者を魅了します。
『ワンピース』や『NARUTO』あたりが典型です。
スポーツ漫画であれば、描写するスポーツそのものの魅力が「作品世界」です。

一方『鬼滅の刃』は、作品世界をほとんど描写していません。
大正時代で、人食い鬼がいて、鬼を滅するために呼吸法と特殊な剣を振るう鬼殺隊(政府非公認)がいる。この程度です。
読者の意表を突く斬新な設定があるわけでもなく、「この世界に住みたい」と思わせるような魅力溢れる世界でもありません。怖いわ。
 
つまり『鬼滅の刃』は、作品世界で魅せるタイプの作品ではなく、キャラクターの魅力が著しく強い作品なのです。
ここが他のジャンプ漫画とは大きく異なるポイントだと思っています。

「時代考証がしっかりしていればより良い」という意見をよく見かけますが、これはちょっとずれてると思います。
大正時代の雰囲気をもっと描写していれば、人間vs鬼の戦いは、「近代化していく人間vsずっと変わらない鬼」という味付けが可能です。これはこれで面白いと思います。
しかし、『鬼滅の刃』では、あえてこの要素を欠落させているのだと思います。
もし大正という時代をしっかり描きたいのであれば、主人公をわざわざ山奥出身にして近代化から遠ざけたりはしないでしょう。
近代化という要素をあえて落とすことで、あるがままの人間を描写するのです。
鬼を包括する上位カテゴリーとして「妖怪」がいてもおかしくありませんし、鬼殺隊のほかにも鬼狩りをしている組織がいても不自然ではありません。
外国には吸血鬼がいるかもしれません。大正時代であれば国交があるので、西洋のエクソシストと共闘してもいいのです。
日本政府をもっと話に絡ませることも可能です。組織としてはろくに機能していない鬼殺隊や鬼たちとの間に好対照を見いだせるでしょう。
宗教勢力が出てきてもいいし、あとは鬼を使って金儲けしようとする新興財閥とか…… 
作品世界を膨らませるヒントはいくらでもあります。

しかし本作では、あえて主人公近辺の限られた世界のみにスポットライトを浴びせます。
要素を減らすことで、人間個々人の描写に集中するのです。
「少女漫画っぽい」という感想を度々見かけますが、その由来は、この「世界の狭さ」にあるのかもしれません。
 

ひたすら感情をぶつけ合う戦闘シーン


『鬼滅の刃』コミックスの戦闘シーン、読むのにものすごく時間がかかります。
最初はどうしてなのかよくわからなかったのですが、10巻くらいでようやく「戦闘を通して感情のぶつけ合っている、つまり基本的には対話だから」という結論に至りました。
格闘漫画のように肉体どうしのぶつかり合いを描くわけでもなく、『ワールドトリガー』のように知略を描くわけでもなく、『BLEACH』のようにオサレを描くわけでもないのです。
 
もちろんこれらの作品も、戦闘シーンにおいて感情をぶつけ合っています。
しかし、描写における感情発露の割合は、『鬼滅の刃』のほうが圧倒的に大きいです。
ここも他のジャンプ漫画とは一線を画するポイントの一つでしょう。

感情の物語


つまるところ、『鬼滅の刃』は個人の感情を描いた作品なんだと思います。
個人の感情が絶対的な「主」であり、その他の要素(作品世界、戦闘シーンなど)は「主」を描写するための手段、完全な「従」です。

ややアングラな界隈では、『鬼滅の刃』原作をアレンジしたコラ画像が大流行しています。
この現象も、感情を描いているゆえに成立するものだと思います。
登場人物たちの感情がいきいきと伝わってくるために、台詞をいじっても「文脈」が生き残り、コラ画像としての新たなストーリーが生まれるのです。

「◯◯が足りない」という指摘は大概的外れなんだと思います。
あえて要素を削ぎ落とすことで、登場人物の感情に描写を集中させているのです
そしてこの感情描写が秀逸であるために、多くの人の心を掴んだのでしょう。

アニメ版は、声が加わることで感情表現がより一層際立つとともに、漫画では削ぎ落とされている戦闘シーンをもりもり盛られたことで、さらに万人受けする仕上がりになっているのだと思います。
上弦の鬼たちのキャスティングが今からものすごく楽しみです。 
本記事を書くために原作を読み返していたところ、妓夫太郎のセリフが藤原啓治さんの声で脳内再生されて悲しくなってしまいました。もう実現不可能なんですよね……

【2020/12/30追記】
社会現象を巻き起こすアニメ作品はこれまでいくつもありましたが、「鬼滅の刃」は演者が本職声優さんばかり(しかもベテランで演技の幅が広い方ばかり)という点が特徴的だと思っています。

僕みたいなオタクだと、声優さんの演技の幅を知っているので、どういう意図をもって演じているのかが自然と伝わってきます。
たとえば竈門禰豆子は大人っぽいですし、胡蝶しのぶは子供っぽいと感じます。(あくまで僕の感覚です)

こういう作劇の意図を味わえるのは、オタクならではの強みだと思います。


公務員・教員界隈で話題になっている「文部科学省の学校の情報環境整備に関する説明会」の動画を見ました。



学校のオンライン教育を充実させるため国でがっつり補正予算を組んでいるから自治体も付いてきてねという趣旨の動画で、いろいろな補助金メニューが紹介されているのですが、


IMG_0448

このスライド(だいたい22分〜28分あたりで登場)のように役所らしからぬ熱い説明が展開されます。


個人的にツボったスライド

IMG_0449


めっちゃわかる。特に回線の遅さは深刻と聞きます。

IMG_0450
やっぱ世界はGAFAMなんだねと痛感しました。
日本メーカー……

とはいえ実現性は薄いと思わざるを得ない

文部科学省の熱意に本物だと思いますし、教育環境を充実しなければいけないのも事実だと思います。
ただ、田舎役場職員の感覚では、実現はかなり難しいと感じてしまいます。

まず、住民の理解を得られるとは思えません。
 
教育への投資によってメリットを得られるのは主に若い世代です。
しかし田舎(特に有力者)はご高齢の方が多く、たとえオンライン学習環境が整ったところで恩恵は受けられません。
ありとあらゆる言い分を拵えて無駄金扱いして、別の用途に振り向けようとします。
 
環境整備がこれまで進んでいない大きな理由がまさにここ、自分に直接的なメリットが無いために教育への投資を無駄金扱いする層がものすごく分厚いためだと思います。


実際に運用する段階では、家庭間のITリテラシー格差が大きなハードルになると思います。
ボトム層は本当に機器の使い方を知りません。
 
例えばスマートフォンだと、電話・LINE・カメラ・ネットくらいの使い方しかできず、自らアプリをインストールすることすらできない人も実際います。
(LINEは販売店にインストールしてもらう)

家庭学習には親御さんのサポートが不可欠です。
しかしボトム層家庭だと、サポートは一切期待できません。
学校である程度端末の使い方を教えてもらった後でないと、そもそも使い方がわからず何もできないでしょう。

教育力のある家庭では、既に家庭にオンライン学習を取り入れていることでしょう。
そのため、行政による整備の恩恵も、さほど大きくないと思われます。
 
一方、自らオンライン学習環境を整備するだけの意欲・余裕のない家庭は、大いに恩恵を受けられることになります。 
しかしこういう層の多くは、IT機器に疎く使い方に不慣れです。
恩恵を受けるだけのリテラシーが追いついていないのです。
機器と教材だけ準備して「後は家で頑張って」というスタンスでは、格差がより広がるだけなのではと思います。

何より僕自身、オンライン学習のメリットがよくわかっていません。
そのせいかあんまり推したくなりません。冷暖房整備の方が先じゃないかと思ってしまいます。
自ら体験してみたら理解できるんでしょうか?
やはりiPadProを買うしかないのか……?

このページのトップヘ