キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

カテゴリ: 公務員の仕事術

僕は現在、X(旧ツイッター)のアカウントを2つ持っています。
かれこれ15年近く使っているオタク趣味アカウントと、このブログ開始と同時期に作った公務員関係者しかフォローしていないアカウントです。

Xの仕様が変わったのか、昨年夏頃から、自分がフォローしているアカウントのとは関係なく、バズったツイートが「おすすめ」としてよく表示されるようになっています。

その結果、オタクアカウントのほうに、おすすめされるツイートとして地方公務員の愚痴が頻出するようになりました。
多分、X全体で見ても、地方公務員の愚痴ツイートがバズっていると認定されているのだろうと思われます。

中身は「電話で長時間クレームを受けた」とか「てにをは直すだけで一日が終わった」「我儘老人の相手ばっかりで生産性皆無」みたいな地方公務員あるあるネタで、だいたい1000fav、1000RTくらいを達成しているものです。

「変な客がいた」とか「上司からハラスメント受けた」みたいな、どんな仕事にも共通する仕事の愚痴ツイートは、ほかにもよく流れてくるのですが、特定の職種の「あるあるネタ」がバスって流れてくるのは、今のところ地方公務員と公立学校教員だけです。

このような現象が生じているのは多分自分だけではなく、他の方にも生じているようで、「愚痴ツイートが頻繁にバズるという」現象を捉えて、「地方公務員/教員という仕事はクソだ」と評価を下すツイートがまたバズる……という派生系まで見られるくらいです。

地方公務員にしても教員にしても、手放しに「素晴らしい仕事だ」と褒め称えることはできないと思います。
とはいえ、他の職種と比べて極端に悪いかと言われると、そうでもないと思います。

どうして地方公務員や教員の愚痴ツイートがバズりやすいのか、考えてみます。


母数が多い

まず、地方公務員や教員の人数を見ていきます。
他の業界と比べて母数が多いのであれば、その界隈のツイートがバズっても不自然ではありません。

国の統計によると、正規職員の地方公務員(一般行政)の人数は約94万人、教員は約100万人です。

※一般行政職員は総務省「定員管理調査」、教員は文部科学省「学校基本調査」より

この人数は、他の業種と比べても大して多くはありません。
例えば製造業や卸売業・小売業には1000万人以上が就業しています。


この数字には非正規雇用の人数も含まれていますが、正規雇用の人数だけを比較しても、地方公務員よりも多いです。
例えば製造業の正規雇用率は76.7%なので、正規雇用の人はだいたい760万人くらい存在することになります。やはり地方公務員・教員よりも圧倒的に多いです。

ということは、製造業あるある愚痴ツイートを投稿すれば、従業者=当事者が7倍存在するために、地方公務員の愚痴ツイートの7倍バズってもおかしくなさそうですが、実際のところ製造業ネタはそれほどバズっていないと思います。

逆にいえば、製造業の1/7しか従業者がいないのに愚痴ツイートがバズる地方公務員という仕事は、製造業よりも圧倒的にブラックな仕事、ということなのでしょうか?
僕は違うと思います。

実際、地方公務員の愚痴ツイートがバズりやすいのは、母数(=当事者)が多いのがひとつ理由として存在すると思います。
地方公務員の約94万人は、(一部技術職も含まれていますが)大部分が「いつどこに異動させられるかわからない」事務職の職員です。つまり同類であり同じ穴の狢です。
同じ境遇に置かれていて、似たような仕事をしているわけで、琴線も近似していて、刺さるツイートの傾向も近しいと思われます。
教員の約100万人も言わずもがな、教壇に立って児童生徒を教えるという仕事をしている同一集団です。

一方で、製造業の約760万人には、いろいろな職種の方がいます。
工場の現場の方はもちろん、経理だったり営業だったり……しかも地方公務員とは異なり、職種間での人事異動は稀です。そのため、いくら同じ製造業に従事している人とはいっても、感覚はだいぶ異なると思います。
別の言い方をすれば、約760万人の中に、業務内容や勤務条件が大きく異なるクラスターが複数存在していて、それぞれのクラスターの人数は、地方公務員よりも小さいのだろうと思われます。

つまるところ、地方公務員や教員の愚痴ツイートがバズりやすい理由のひとつは、同質的な人が他職種と比べても多いから、だと思います。

環境が同じ

同じような仕事をしている人がたくさんいたとしても、就業条件が異なれば、愚痴の中身も変わってきます。そうであれば、愚痴ツイートがバズるという現象は生じないでしょう。

愚痴ツイートがバズる、つまり共感されるのは、地方公務員や教員が、全国どこでも同じような境遇にいるからなのだと思います。
愚痴ツイートに頻出する「クレーマー住民」とか「高圧的な上級官庁」、「横柄な高齢者」、「サービス残業」あたりの要素が全国どこの役所にも遍在していて、全国どこの地方公務員も同じような不満を抱いているから、その不満を言語化した「愚痴ツイート」がバズるのです。

このような点も、他の業種には見られない特徴なのだろうと思います。

個人的経験が救いになりうる

今回、地方公務員や教員の愚痴ツイートがバズりやすい理由として、2点の特徴をピックアップしてみました。
正直、どちらも改めて考えなくても当たり前のことで、この記事を読んでいる皆様も、特に新鮮には感じなかったと思います。

地方公務員や教員の愚痴ツイートがバズりやすいのは、全国の同類たちが同じような悩みや不安、苛立ちを抱えているからに他なりません。
つまり、自分が今苦しめられている状況には、他の人もきっと同じように苦しめられているはずです。


精神が参ってくると、「これは自分だけの問題だから他の人にはどうしようもない、自分でなんとかするしかない」と、他者に頼るのを諦めようとしてしまいがちです。

しかし実際のところ、地方公務員や教員が抱える悩みはけっこう類型化されていて、SNSを覗いてみれば、同じように苦しんでいる人が見つかると思います。
「一人じゃない」とわかるだけでも気が楽になりますし、いざとなれば相談することもできます。

同時に、もし自力で何か困難を解決したことがある人は、その経験談を発信すればいいと思います。
その困難もまた自分固有のものではなく、きっと他の人も直面しているはずだからです。
経験談を披露することが、きっと誰かの助けになるはずです。


地方公務員にしても教員にしても、常に四面楚歌の環境で仕事をせざるを得ません。
周囲が敵だらけだからこそ、仲間内では助け合う必要があると思います。

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
例年であれば暇すぎてブログ記事の書き溜めをしていた年末年始ですが、今回は婚活のせいで非常に忙しく、年始の挨拶すらできないまま10日も経過してしまいました。

毎年、新年1発目の記事は「地方公務員界隈の今年の展望予測」をお送りしております。
ちなみに去年は「地方公務員の給与は高すぎるとの批判を浴び続けそう」でした
当たらずも遠からず、といったところでしょうか?

今年は……インターネット上の住民運動が活発になり、その対応に手を焼く一年になると思っています。

ネットの力が(今更ながら)注目を浴びた2024年

2024年10月に実施された兵庫県知事選挙と衆議院総選挙では、どちらもインターネット上での選挙戦が結果に大きく影響したと報じられてます。
選挙区ごとに事情は様々なのでしょうが、全体としてこのような特徴があるのは間違いないと思います。

もちろん、「インターネットを使ったから勝った」という単純な話ではなく、インターネットをうまく使いこなしたから勝利したのだと思います。しかし、具体的にどのような使い方をしたのかまでは報じられていません。
そのため、少なくない人(特にインターネット文化に親しみのない人)が、「ネットを使えば世論を動かせる」とシンプルに理解しているんじゃないかと思います。

ここ最近、婚活の話題作りのためにテレビドラマを見るようにしているのですが、現代が舞台のドラマだと、あらゆる作品で「SNS上でバズる」シーンが出てきます。
そして大抵の作品で、SNSでのバズシーンは起承転結の「転」にあたります。バズることによって事態が好転したり暗転したりします。

実際のところ、インターネットの活動を通して世論を動かすには、膨大な人手・お金・ノウハウが必要です。テレビドラマのように、多少バズった程度で激変するわけではありません。
しかし、インターネットを使って現に世論を動かしている人たちが具体的に何をしているのかは明らかにされておらず、一般的には「バズらせる」以外の方法がよくわからないのも事実です。

そのため、「ネットを使う=バズらせることが重要」「とにかくバズらせれば世論を動かせるかもしれない」と認識している人が大多数なのではと思います。
そして、2024年の選挙戦の結果を見て、「バズらせることの威力の大きさ」を確信したのではないかと思います。

バズ狙い連中との戦いが激化

地方公務員という立場では、「ネット上でバズらせれば役所に勝てるかも」というワンチャン狙いの戦いを仕掛けられることが、これまで以上に増えると思います。

例えば、ホームページ上の記述を恣意的に切り取ってSNS上で晒したり、特定の人にしか渡らないはずの資料を公表されたり……でしょうか。

実際、僕が所属している課でも、似たような事案が昨年末に発生しました。
政策研究家を名乗る方が、ホームページ上で公表している補助金要綱の一部を抜粋して、あたかも補助対象が特定地域にだけ限定されているかのように見せかけ(実際は県内全域が対象)、ツイッター上で「こんな欠陥制度は許されない」と投稿したのがそこそこバズり、翌日には10件ほど苦情メールが届きました。
この事案のせいで、部局長に報告するための資料を作ったり、広報担当課と対策を相談したりする羽目になり、1.5営業日を奪われました。ただでさえ予算業務で忙しいのに……

このような事案が、今年は増えていくような気がしています。

僕が経験したこの案件は、役所側に全く非が無かったので、堂々と対応できました。
しかし、役所側にわずかでも非がある場合には(誤解を招きそうな紛らわしい文面だった等)、対応は難しいと思います。

「世の中は悪意に満ちている」という認識を常に忘れず、ガチガチに守りを固めていくことが、これまで以上に重要になるのだろうと思います。

正社員でもアルバイトでも、働いたことがあれば一度は「できない理由を考える暇があったら、どうすればできるのか考えろ」という叱咤激励を受けたことがあるでしょう。

「できない理由、禁止」という標語は社内教育用のポスターとしても販売されているようで(しかも人気上位)、どれだけ世の中に浸透しているか窺えます。


この標語は、民間企業のみならず、今や役所内でも定番です。
「無能なくせに『できない理由』を取り繕うことだけは得意」という地方公務員叩きの常套句がありますが、同じような指摘が上司から部下にも度々下されます。

「できない理由」を考えるのは時間の無駄であり、どのように実現するか具体的に方法を詰めていくかを考えていくほうが前向きで有意義だというのです。

ただ僕は、役所においてこの標語に金科玉条のごとく掲げるのは非常に危険だと思っています。
「できない理由」を考えることは非常に重要ですし、ひたすら「できる方法」を追い求めていると、単にトラブルを招くだけだと思います。

「できない理由」を考えることは生産的な営み

そもそも、何か新しいことを実施・実現するための正攻法は、「できない理由」をひとつひとつ潰していくことだと思います。
「できない理由」をしっかり考え抜いたうえで、どうすれば「できない理由」を解決できるのか具体的な方法を考えていく……これこそが正攻法であり、「できない理由」を軽視して「できる方法」だけを考えるのは、一休さんの「とんち」の現代版を作ろうとするかのような、抜け道的な手法だと思います。

「できない理由」とは、表現を変えると「課題」です。
何かを実施しようとする際に、まず「できない理由」の分析整理、つまり「課題の洗い出し」から始めることは、果たして無駄なのでしょうか?

また、ビジネス書などでは、解決すべき致命的な課題のことを「イシュー」と表現して、イシューを正確に捉えたうえで対策に移るべきだと指摘しています。
「できない理由」を考えるのは、まさに「イシューを設定する」ことに直結すると思うのです。

「できない理由」を顧みずに「できる方法」を探して実施するのは、現状存在している課題を放置することに他なりません。
いわば「臭いものに蓋」をして、目を背けるわけです。

このような物事の進め方は、柔軟で機動的な行動が許容される個人や民間企業ならまだしも、役所という敵だらけの組織体が行うにはリスクが大きすぎます。
見出した「できる方法」が奏功して何か新しい価値を実現できたとしても、課題を放置したことに対して激しい非難が寄せられるに決まっています。

もちろん、「できない理由」を放置したままで、即効性のある「できる方法」に着手するケースもたまにはあるでしょう。
しかしこれには非常にリスクの高い判断であり、それなりに責任を持てる人でないと下してはいけないと思います。

「できない理由」で論破するために

下っ端の地方公務員の職責は、「できない理由」を徹底的に考え抜き、「できない理由は聞きたくない」と唱えてくる方々をを説得することだと思います。
ただ実際のところ、この説得がうまくいっていないがために、役所内でも「できない理由、禁止」という風潮が罷り通っているのでしょう。

「できない理由」不要論者の方々の多くは、「できない理由」のことを「言い訳」だとみなしてきます。
できない理由が言い訳じみてしまうのは、2パターンあると思っています。

一つは単純に深掘りが足りないパターンです。
即座に反論できるような理由しか提示されなければ、受け手側には「言い訳」のように映ってしまい、「できない」と納得することもできなくて当然です。

「できない理由」を突き詰めていくと、お金、時間、人手、法規制、倫理、過去のしがらみ、住民感情あたりに行き着くと思います。
どのような類型に該当するのかを意識しながら現状を整理していけば、理路整然として説得力のある「できない理由」を構築できるのでは?と思っています。

もう一つは、「本当はできるけどやりたくない」ことを、「できない」と言いたいがために、無理やりこじつけているせいで、説得力が損なわれているパターンです。
文字化すると大変不誠実な姿勢なのですが、実際このような状況に陥るケースはとても多いです。

この場合でも、「やりたくない理由」を深掘りしていけば、どこかで「できない理由」との接点が見えてくるはずで、こうやって炙り出した「できない理由」を整理していくしかないと思います。

例として、住民から「A公園の草刈りをもっと頻繁にやってくれ」と要望が来たケースを考えてみます。
この場合、草刈りを増やすこと自体は不可能ではありませんが、実現するためには
  • 財政課に対して予算の増額要求
  • 草刈り業者の確保
  • 別の公園についても「草刈りを増やせ」と言われた際の対応を考える
  • A公園を地盤とする議員への事前説明(要望主がこの議員の反対勢力だったりしたら、実現してはいけないので)
  • 草刈りをしないことで恩恵を受けている人がいないかの調査(別の住民がヤギを飼っていて定期的にA公園の草を食べさせており、除草されると困る など)
などの面倒な作業が色々必要になり、実施したくないとします。

こうやって「やりたくない理由」をリストアップしていくと、まず「お金が無い」「人手が無い」という「できない理由」がすぐに見つかります。
さらにそれぞれを突き詰めていくと、もっと別の「できない理由」にも至れるはずです。


明かされざる「地道な準備」こそ「スーパー公務員」の真髄?

僕の勤務先県庁では、「ボトムアップ提案」とか「若手主導の事業」という触れ込みで始まった新規事業が、半年も経たないうちに頓挫してしまうケースが続出しています。
その理由がまさに、これまで実施してこなかった事情や背景の分析、つまり「できない理由」の検討不足です。
「どうして今まで実現できなかったのか」を冷静に分析することなく、「この方法ならできるかもしれない」という一筋の希望だけを頼りに事業化してみた結果、うまく回っていないようなのです。

彼ら彼女らは「スーパー公務員」の事例を参考に意気揚々と取り組んできているようなのですが、見事に足元を掬われています。

「スーパー公務員」の方々の成功事例が紹介される際、たいていは「とんち」みたいな斬新な手法ばかりが着目されていますが、きっとその斬新な手法を実行する前に、きちんと「できない理由」を整理して、その手法で問題ないことを確認しているだと思います。
このような地道な下準備を経ているからこそ、成功を収めているはずです。

今年のゴールデンウィーク、読者各位は何日ほど出勤しましたか?

僕は前半三連休・後半四連休合わせて3日間出勤で済みました。
庶務系の仕事をしていると、前年度分の支払い処理にラストスパートをかけたり、決算額をまとめたり、6月議会の準備に向けて資料を準備したり……等々、この時期はどうしても出勤せざるを得ません。

今年の4月に採用されたばかりの職員の中にも、さっそくこのゴールデンウィークで休日出勤デビューした方もいるでしょう。
ゴールデンウィークみたいな大型連休であれば、多少出勤してもストレスを感じる程度で済みますが、普通の週末土日に出勤すると、身体にも負担がかかります。
労働時間が増えると同時に回復時間が削られるわけで、まさにジリ貧です。

もちろん休日出勤せずに済むように効率的に仕事をこなすのが重要なのですが、地方公務員という仕事はどうしても休日出勤から逃れられません(詳細は後述)。
そのため、誰もが休日出勤のコツを習得する必要があると思っています。

こういう知恵こそ、先輩や上司からOJTで学ぶ経験知のひとつなのですが、運悪く(運良く?)休日出勤とは無縁の環境に置かれた新人職員向けに、僕なりの休日出勤のコツを紹介します。

※本稿で取り上げる「休日出勤」は、行事やイベント業務ではなく、平日の残務処理です。

何をするのか事前に決めておく

休日出勤において最も重要なのは「計画性」です。

休日出勤している時点で計画性が無いのでは?という至極ごもっともな指摘は置いといて……
  • 休日出勤してどのような仕事をするのか
  • 何時に出勤して何時に帰るのか(何時間働くのか)
あらかじめ決めておくことを強く推奨します。

平日と同じように仕事できるわけではなく、いろいろな制約があります。

まず、休日出勤では、他人の手を借りることができません。
よほどの繁忙期でもない限り、休日出勤してくる人は少数派です。
休日の業務は、基本的に一人でやらなければいけません。

見方を変えると、休日にこなせる業務は、一人で完結する範囲に限られます。
例えば、疑問点を上司に相談したり、別部署から資料を貰ったりすることができません。

加えて休日は、設備面でも制約が課されるケースがありえます。
例えば、庁内システムがバッチ処理のために使えなかったり、倉庫や会議室が使えなかったり……等々。

せっかく出勤してきたのに作業できないと「詰み」です。
僕にも苦い思い出があります。
かつて観光部局にいた頃、大量のパンフレットの袋詰めを土曜日にやろうと思い出勤してきたら、パンフの在庫を仮置きしていた会議室が休日は施錠されていて中に入れず、結局作業できずに帰る羽目になりました……(結局月曜日徹夜して作業しました)

休日出勤する場合は、遅くとも前日の午前中くらいにはタスクを洗い出して、
①平日のうちに絶対やらなければいけないこと
②休日でもできること
③無理に休日中にやらなくてもいいこと
に分類したうえで、①はその日のうちに優先的に処理、②は休日に回す、③は先送り……というふうに計画を立てておけば、「やろうと思っていた作業ができない」という窮地に陥ることなく、かつ無際限に休日勤務してしまう事態にも陥らずに済むと思います。

6時間が目安

休日出勤の時間はもちろん短ければ短いほうがいいのですが、時間外勤務勤務手当が支給されるのであれば、6時間以内を目安にすればいいと思います。
労働基準法上、勤務時間が6時間を超えると休憩時間を入れなければいけなくなり、実質タダ働き時間が生じるからです。



労働基準法
第三十四条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。



例えば6時間1分の残業だと、45分間の休憩をとったことにしなければならず、時間外勤務手当が支給されるのは5時間16分だけ。
休日出勤中に45分もしっかり休憩取っていれば損はしないものの、そんなに休憩するくらいならさっさと帰りたいと思うのが自然な心情であり、しっかり休む人はいないと思います。
その結果、休憩分の45分はタダ働きになってしまいます。

6時間以内であれば休憩時間も不要で、ただ働きは発生しません。

シングルタスクを心がける

先述のとおり休日出勤にはいろいろな制約がありますが、一方でメリットもあります。
他者からの邪魔が入らず、集中できる点です。

役所の執務室は、集中できる環境とは到底言えません、
  • 誰かのしゃべり声(ときには怒鳴り声)で騒がしい
  • 鳴りやまない電話
  • メール通知(最近であればチャットも)
  • じろじろ見てくる来庁者
などなど、集中を乱す要素で満載です。

加えて、上司や別部署から急件が仕事が降ってきて、作業を中断させられるケースも多発します。
いわば終始マルチタスクを強制されている状態であり、ひとつのことに集中するのは本当に難しいです。

集中できない環境になっている原因は、ひとえに他者の存在です。
職員であれ来庁者であれ、他者がたくさんいるせいで騒がしくなりますし、新しい仕事が生まれて自分の元へ飛んできます。

休日になれば出勤してくる職員が激減しますし、来庁者も来ませんし、電話も基本的にかかってきません。
集中を乱す原因が一斉に排除されるわけです。

このメリットを最大限に活かすべく、休日出勤はシングルタスクに徹するべきだと思います。
あらかじめリストアップしたタスクを、一つ一つ潰していく。
ある意味、当たり前のことなのですが、地方公務員稼業でこれを実践できるのは、休日出勤時だけです。

週明け以降の業務負担見込み次第で短距離走・持久走モードを使い分ける

休日出勤すると、平日の出勤以上に疲れます。
上司も住民もいないので、職場環境的にはずっと楽なはずなのですが、やはり集中できるぶんだけ脳が疲れるのだと思います。

当然のことながら、休日に出勤した分だけ休みが減るわけで、翌週は疲れを残したまま平日5日間の勤務を乗り切らなければいけません。

特に、予算編成時期のような長丁場になると、何週間も休日出勤を続けなければいけません。
よほどの鉄人でもない限り、ペース配分を考えないと途中でバテてしまいます。
(財政課のような休まない人たちは、このへんの調整がものすごく上手です)

翌週はさほど忙しくないのであれば、全力で休日出勤しても特に問題ないでしょう。
ただし、平日もずっと残業せざるをえなかったり、次の週末もまた休日出勤しなければいけないようなハードな日々が続くのであれば、一度の休日出勤で体力を使い果たすわけにはいきません。
労働時間も集中度合いもセーブして、疲労の蓄積を抑えていく必要があります。

長時間残業は地方公務員の宿命

地方公務員という仕事の性質上、夜間休日を問わず働き続けなければいけない場面があります。
災害発生時なんかはまさにその典型ですし、新型コロナウイルス感染症みたいな謎の脅威が生じたときもこうなります。

能登半島地震では、非管理職の1/5相当にあたる約500人が、月100時間以上の残業をしたようです。


このように、本人の意向にかかわらず、誰しもがいきなり長時間残業を強いられるかもしれないのです。
これは地方公務員の宿命と言えるでしょう。

自分の長時間労働耐性は、やってみないとわかりません。
いきなり緊急事態に突入する前に、自分がどれくらい耐えられるか、試す機会があればいいと思います。

新型コロナウイルス感染症が一段落して、送別会や歓迎会が解禁された職場も多いと思います。
僕の勤務先では「能登半島地震に応援に行っている職員がいる」という理由で、送別会も歓迎会も中止でしたが……多分単なる言い訳です。管理職が飲み会嫌いなんだと思われます。

一般に、地方公務員はあまり飲酒をしない人が多いように思われがちです。
確かに、民間企業で営業職として酒を酌み交わす機会の多い方と比べれば、そういった印象は否めません。
地方公務員に就職した理由に、「民間のように酒を酌み交わす必要がない」ということを挙げる人もいるでしょう。

実際、実際、地方公務員として働くにあたり、頻繁に飲み会に参加する必要はありません。
ただ一方で、お酒を飲むこと自体は、地方公務員家業をやっていくにあたり必須だと思います。

主要顧客の気持ちがわかる

近年、日本人の飲酒量は着実に減少傾向にあります。
厚生労働省によると、日本の成人一人当たりのアルコール消費量は平成4年度の101.8lがピークであり、2019年度には78.2lまで減少しています。

しかし、これは飲酒者の減少を意味するものではありません。
厚生労働省の国民健康・栄養調査(2019年)によれば、生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者の割合は、男性で14.9%、女性で9.1%となり、過去10年間で男性は横ばい、女性は有意に上昇しています。



こうした"ハイリスク飲酒層"は、役所でもおなじみの存在です。
窓口業務を担当したことのある人ならもちろんのこと、普段は住民対応をしない職員であっても、役所内で酩酊した人が大声をあげているシーンに一度は出くわしたことがあると思います。

行政サービスの利用者は、社会的に弱い立場の方々が多いです。
そのような方々の中にはアルコール浸りの人々も多く、お話を伺っていると「今抱えている問題の根本原因は、酒だな……」と思わざるを得ない人も少なくありません。

例えばこんなことがありました。
先月、ある男性がふらふらとカウンターに現れ、大声で「仕事をくれ!」と怒鳴り散らしました。
よくよく話を聞くと、酒に手を染めたことがトラブルの発端で、妻子と離れ離れになり、職を失っていたのです。

このような案件、役所側にできることはありません。
聞くだけ聞いて帰ってもらうしかありません。
強いて言えばアルコールを抜いて冷静になるよう勧めるだけです。

このような事案で、こちら側も酒飲みであれば、お酒を飲んだときの感情の高ぶりや身体的変化がわかります。
つまり、酒飲みの地方公務員は住民対応で重宝されると言えるのです。


「酒を語る」のは地方公務員の重要な仕事

日本は、地域ごとに様々な名産のお酒に恵まれた国で、清酒、焼酎、ワイン、ビールなど、その種類は豊富です。
役所の仕事でも、地酒を宣伝する機会は少なくありません。
特に広報部局や観光部局の職員であれば、地酒ネタは必須の知識です。

各地域では原料や製法にこだわり、風土や気候風土に適した味わいを作り上げてきました。
役所側が宣伝するときも、このような観点で説明することが多いです。

しかし、消費者が知りたいのは、そうした原料や製法の詳細よりも、美味しさ、つまり「味」そのものです。
日本酒造組合中央会の調査によれば、消費者が日本酒を選ぶ際の最重要ポイントは「おいしさ」で71%にものぼります。
「原料米の種類」や「製造方法」を挙げた人はわずか4%にすぎません。

お酒の味は、絶対的なものではなく相対的なものです。同じ酒を飲んでも、人によって「美味い」か「まずい」かで感じ方は異なります。
しかも、個人の体調や気分によっても味の感じ方は変わってきます。
だからこそ、本当においしいお酒を見つけるには、様々な銘柄を飲み比べる必要があるのです。

私にはそのよい例があります。大学3年の春、同級生数人と地元の酒蔵を巡る「酒廻り」をしました。
朝から夕方まで10軒以上はお酒を飲み歩きましたが、正直最初の数軒では味の違いがよくわかりませんでした。
しかし、4、5軒目を過ぎた頃から、ようやく舌が酒の味に慣れ、それぞれの個性が口に広がるようになってきたのです。
結局、仲間内でも一番おいしいと感じた銘柄は人によってバラバラでした。

このようにお酒の美味しさを語るには、豊富な飲酒経験が何より大切なのです。
原料や製法をいくら熟知していても、実際に舌で味を知らなければ通用しません。
だからこそ、地方公務員にとって、日々お酒を飲んで舌を肥えさせることが必須といえるのです。

酒は文化の重要なパーツ

お酒は、単なる飲み物ではありません。
全国各地に根付く伝統的な食文化や祭事、芸能など、様々な文化と深く結びついてきました。

まず食文化との関係です。
沖縄の泡盛は、沖縄料理に欠かせません。
泡盛に漬け込んだ豚の三枚肉や、泡盛を使った煮魚など、泡盛なしには成り立ちません。
また、新潟の日本酒は越後味噌と相性抜群で、日本酒で味噌を割ったり、日本酒で煮詰めた味噌を使うなど、相互に影響を与えあってきました。

お酒と祭り事の関係も深いです。
全国の神社仏閣で行われる「酒初め」は、新酒を神前に供え、製造者や信徒に振る舞う重要な神事です。

さらに、酒造りと伝統工芸品との関係も指摘できます。
焼物や漆器には、必ず酒器がラインナップされています。
お酒の香りや口当たりを活かすような形状になっていたり、その地域でお酒をふるまう祭事用にことが多いです。

このように、お酒は食や祭り、工芸など、地域の文化と密接に関わってきました。
地域の文化を解説した資料や書籍は(役所が自ら作っているものも含め)多数ありますが、真に文化を理解するには、自分自身が文化の「当事者」として、文化の中で生きるしかありません。

つまり、お酒によってはぐくまれた食文化や祭事、工芸を理解するには、自分自身もお酒を飲まなければいけないのです。

土地の文化を理解して継承していくことも、地方公務員の責務です。
地方公務員がお酒を嗜むことは、単なる嗜好を超えた意味があるのです。
「酒好き」「アルコール耐性」という属性は、ガタイが良いとか強面であるとかと同じく、地方公務員適正の一つだと思います。

このページのトップヘ