キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

カテゴリ: 管理人おすすめ

地方公務員志望者にとって、「自分が本当に地方公務員に向いているのかどうか」は、非常に気になるポイントでしょう。

地方公務員になるには、筆記試験対策のために、貴重な時間とお金を投じなければいけません。
そのため、「せっかく就職したのに向いていなくて退職した」あるいは「向いていなくて毎日苦痛」という事態を避けたく思うのは必然でしょう。
楽しく働きつづけられなければ、いわば「投資に失敗」なのです。

地方公務員は部署によって業務内容が異なり、求められる能力も適性も異なります。
ある部署には向いていなくとも、別の部署にはピッタリ嵌ることも多いです。
「あいつ観光課は適任だったけど環境課には向いていないよね」みたいな会話は日常茶飯事です。

とはいえ、どんな部署でも影響してくる「普遍的な適性」も、僕は存在すると思っています。
なるべく網羅的に紹介していきたいと思います。


重要度★★★:心労祟って辞めざるを得ないかも……

まずは、役所という職場環境に致命的に向いておらず、休職・離職のリスクが高いタイプから触れていきます。

「地方公務員はガツガツしておらず穏やか」という印象を持っている方も多いかもしれません。
実際、地方公務員には穏健な人が多いと思います。

しかし、「働いている職員が穏やか」だからと言って、「役所という職場も穏やか」とは限りません。

役所勤務では、公務員以外の方々とも多々接触します。
「役所稼業で接触する公務員以外の方々」は、むしろ過激派・激情派が多いです。

「のんびりして穏やか」な職場を期待して地方公務員になった方は、面食らうと思います。
そして、意外と激しい職場環境に順応できなければ、働き続けられないでしょう。


粗暴な言動が無理

役所は常に外部からの暴力に晒されています。
形式は様々です。
窓口で暴れたり、電話越しで脅迫してきたり、出張先でモノを投げつけられたり……事例を挙げだすとキリがありません。

こういう粗暴な言動とは、どんな部署にいようとも遭遇します。
遭遇頻度は部署によってかなり異なるとはいえ、無縁な部署はありません。

たとえ役所外部とは一切関わりのない内部管理専門の部署であっても、「お前らが無駄な仕事を作るせいで現場の仕事が遅れるんだ、お前らは社会の癌だ!」みたいな罵倒が定期的に飛んできます。

実際に肉体的暴行を受けることまでは滅多にありませんが、
  • 怒鳴られる
  • 大きな物音を立てられる(机を叩く、椅子を蹴飛ばす等々)
  • モノを投げつけられる
  • 威圧的態度(机に足を乗せる、唾を吐く等々)
  • 暴行のポーズを見せられる(拳や杖を振り上げる、手指の関節をポキポキ鳴らされる、目の前で空き缶を握り潰す等々)
  • 睨まれる
  • 舌打ちされる
少なくともこのあたりの粗暴な言動とは、地方公務員として働く以上、新規採用時から退職するまで、ずーっと付き合わざるを得ません。



僕自身、就職前は「怖いなあ」と不安だったのですが、今のところはなんとかなっています。
役所には暴力対処のノウハウがきちんと蓄積されており、数をこなすうちにどんどん耐性が出来上がってきます。
暴力耐性という意味では、確実に成長できていると思います。



地方公務員として働き続けるには、暴力耐性は必須です。
普通に勤務していれば自然と身につきます。

ただ、物音にものすごく敏感だったり、暴力に対して強い忌避感がある方もいらっしゃると思います。
そういう方は確実に地方公務員に向いていません。
耐性が身につく前にトラウマを抱えてしまい、メンタルがもたないでしょう。
僕の勤務先県庁でも、これが原因で毎年1人は新人が辞めているようです。


感受性が強すぎる/共感しすぎる

行政サービスの主要顧客は「困っている人」「苦しんでいる人」です。
人生順調で健康でハッピーな方は、基本的に役所には用がありません。

この傾向は、部署を問わず共通します。
生活保護や国民健康保険のように「セーフティネット」として明確に位置付けられている行政サービスのみならず、産業振興や観光のような一見前向きな分野であっても、救済的要素の強い施策がたくさんあります。(制度融資あたりが典型でしょう)

そのため、地方公務員として働く中で出会う人は、何らかの苦悩を抱えている方が多いです。
彼ら/彼女らの苦悩を、施策を用いて解消することが、まさに地方公務員の仕事といえるでしょう。

他者の苦悩を解消するためには、まずその苦悩を知るところから始めます。
苦悩の原因となった哀しい過去、今まさに感じている負の激情、世の中の理不尽に対する怒りと嘆き……等々、たくさんの「暗い情報」をインプットしなければいけません。

というよりも、役所にいると「人々の苦悩」や「暗い情報」が自然と耳に入ってきます。

感受性が強く共感性の高い方は、日々舞い込んでくる「人々の苦悩」「暗い情報」を処理しきれない危険があります。
悲しいニュースを見聞きするたびに気が滅入ってしまうようなタイプの方は要注意です。
役所という職場は、その悲しいニュースを毎日無理やり聞かされるような環境です。

個々の案件に心を痛めていたら、どんな強者でも精神が保ちません。 
他者の苦悩に対して機敏すぎると、地方公務員は続けられないでしょう。


重要度★★:うまく仕事をこなせず辛いかも……

続いて、地方公務員の業務特性と能力的に合わないタイプに触れていきます。
「仕事ができない奴」との烙印を押され、肩身の狭い思いをしかねないタイプです。

文章を読むのが苦痛

公務員は毎日、大量の文章を読まなければいけません。
メール、法令、通知文、マニュアル、参考書籍、外部から提出された申請書などなど……文章の形式は色々、書き手も色々です。
読みやすい文章もあれば、小難しくてわかりにくい悪文もあります。

文章を読むのが苦痛であれば、地方公務員の仕事も苦痛そのものでしょう。
文章読解が苦手で時間がかかる方は、それだけ業務に時間がかかることになります。
文章が嫌いな方は、業務時間中ずっとストレスを感じるでしょう。
何より、文章の意味を理解できなければ、仕事が進みません。

地方公務員実務で触れる文章と比較すると、公務員試験の問題文のほうがはるかにわかりやすいです。
正解がひとつに定まるよう、細心の注意を払って作文されているからです。
「問題文を読むのが苦痛」と感じている方は、採用された後も苦労すると思います。


スケジュール管理(イレギュラー対処含む)が苦手

地方公務員の仕事の多くは、定量的な成果を求められません。
「やれば終わる」ものがほとんどです。
そのため、いかに「きちんとやる」か、無理なく無駄のない段取りを組むことが非常に重要です。

ここでいう段取りとは、一日または一週間程度の短期間の予定管理から、数年単位のプロジェクト全体の舵取りまで、あらゆる時間的スケールを含みます。
長期間の段取りスキルが必要な職員はごく少数でしょうが、短期間の段取りは職員全員に求められます。

段取りが重要……とはいえ、地方公務員の仕事はいつも他律的です。
役所の内(上司や他部署)からも、役所の外(住民やマスコミ)からも、急な案件がどんどん降ってきます。

そのため、どれだけ完璧な段取りを組んだとしても、すぐに崩されます。
たった1日でさえ目論見通りには過ごせません。予定の7割も達成できれば良い方でしょう。
当初の段取りが崩れても、柔軟に動いてリカバリーしなければいけません。

つまるところ、地方公務員であるなら、どんな部署に配属されようとも
  • 締切日から逆算して仕事の段取りを組み
  • それに従って仕事を進めていきつつ
  • イレギュラーが発生して段取りが崩れても臨機応変にリカバリーして
  • 締切には必ず間に合わせる
こういう一連の流れが連日発生します。

この流れを苦手に感じるタイプ、例えば
  • 計画を立てるのが苦手で万事行き当たりばったりなタイプ
  • 計画が狂うのが苦手で慌ててしまうタイプ
こういった方は、毎日強いストレスを感じるでしょう。
周囲からも、たとえ仕事の成果のクオリティが高くても、「困った人」扱いされかねません。


「外界をシャットアウト」しないと作業できない

役所という職場は、集中しやすい環境からは程遠いです。

まず何より雑音だらけです。
電話は鳴り放題ですし、常時誰かの喋り声(ときには怒鳴り声)が聞こえてきます。

視界にも余計なものがたくさん映ります。
周囲には他の職員が大勢いてお互いに挙動が丸見えです。
職員以外のお客さんもいらっしゃいます。

このような環境下のため、多くの地方公務員は「集中」をそもそも諦めており、せいぜい50%くらいの集中力で仕事をこなせるように最適化されていると思います。
集中せずとも、「ながら作業」で大抵の仕事を回しているのです。

「物音や他人が気になると集中できず、集中しないと作業が手につかない」というタイプの方は、役所だとかなり苦労すると思います。

集中力全開でバリバリ仕事をしたいのであれば、そういう労働環境がきちんと整っている民間企業に進んだほうが幸せだと思います。
喫茶店や図書館でイヤホンをつけて公務員試験の勉強をしている若人を見かけるたび、お節介ながらも「イヤホン外してノイズの中で勉強したほうが実務でも役立つんだろうけどな……」と心配になります。

重要度★:楽しい役所生活を送れなさそう……

「地方公務員はつまらない人間ばかり」とか「つまらない人間しかいないから役所組織もつまらない」みたいな意見をよく見かけますが、僕を含めて「地方公務員の生き様」や「役所組織のメカニズム」を面白がっている人は結構います。

役所そのものを面白がれなければ、地方公務員生活の充実度はかなり下がってしまうと思います。

他人に興味がない

役所はそれなりに大所帯の組織です。
人間観察が趣味というタイプにとっては動物園のように楽しめるでしょう。
特に「出世レース観戦」「キーパーソン観察」は、個人的にものすごく面白いです。

役所は年功序列の組織で、よほどのことがない限り年齢横並びで昇進していくのですが、それでも出世レースは確実に存在しています。
同じ役職の中でも明確に序列があり、例えば同じ「主任」であっても、主要ポストの主任とどうでもいい主任は、職責の重さも庁内発言力も段違いです。

そして役所は、少数の「主要ポスト」職員がモーターとなり、他の大多数の職員を歯車として回しているような組織です。
主要ポストに誰が就くか次第で、業務量も判断内容も雰囲気も一変します。

つまるところ、他の職員に関心を持てば持つほど、役所組織全体の仕組みが見えてくるのです。


この項を読んで「悪趣味だなあ」とドン引きした方はおそらく正常です。
しかし地方公務員人生では、その正常さがかえって仇になります。

地方公務員には人間観察愛好家が多いです。
アンチ人間観察派だと周りの職員が気持ち悪くて仕方ないでしょうし、何より役所組織最大の娯楽を享受できないわけで、非常にもったいないと思います。

政治的駆け引きに興味がない

役所のトップである首長は、選挙で選ばれた存在であり、紛れもない政治家です。
そして地方公務員は首長の部下、つまるところ政治家の部下です。
否応無く政治の片棒を担がされます。

実際、地方公務員の仕事には政治的動向がガンガン絡んできます。
最も典型的なのは「議員から無理強い」でしょう。
ほかにも様々な形態があります。

政治的駆け引きへの対応はかなり面倒です。
しかし、そこで一手間かけて、これまでの経緯や関係者のプロフィールを調べてみると、政治的駆け引きは「ショー」へと一変します。

役所が関わる分野は幅広く、持ち込まれる政治的案件数も多いです。
本来は役所は関係ないはずの、あくまでも民間人どうしの権力闘争ですら、様々な意図をもって役所を巻き込もうとしてきます。

だからこそ、政治的駆け引きを「ショー化」して見世物として楽しめるタイプは楽しいですし、単に「面倒だ」「薄汚い」と思うだけならストレスが絶えないでしょう。


重要度★:労働環境・働き方に不満を持ちそう……

役所の労働環境は、大卒者が就職するような民間中堅〜大手企業よりも劣ります。
働いているうちに慣れるものですが、中には許容できない人もいるでしょう。

バリバリ稼ぎたい

稼ぎたいのであれば民間企業に就職してください。
特に20代のうちは、バイトを詰め込んだほうが稼げると思います。



やりたい仕事がはっきりしている

これまでも散々言われているとおり、地方公務員の配属は完全に運です。
携わりたい分野があったとしても、その担当者になれる保証はどこにもありません。

加えて、もし念願叶ってやりたい仕事の担当者に着任できたとしても、自分の意向を実現できるとは限りません。

日本は民主主義国家であり、「何をどうすべきか」を決めるのは国民です。
国民が決めたことを粛々と実現するのが公務員の役割であり、公務員の意思によって「何をどうすべきか」を変えることはできません。

そのため、もし希望の仕事を担当できても、民主主義的決定の内容と自分の意向が一致しない場合は、むしろ「やりたくないこと」を強いられます。

例えば、「農産物のブランド化を進めたい、そのために研究開発を支援したい」という大望を抱いて地方公務員になり、幸運にも農業振興担当に着任した職員がいるとします。
一方、地元農家たちは「ブランド化しても競争激しいから、加工食品向けのノーブランド品目を大量生産していきたい、だから生産設備の補助が欲しい」という意見でまとまったとします。

この場合、優先されるのは地元農家の意見です。
職員は、「ブランド化」という自分の理想とは正反対の「大量生産」のために、仕事をしなければいけません。

地方公務員への就職には、「やりたい仕事に関われない」リスクのみならず、「やりたい路線とは真逆のことを強いられるかもしれない」リスクも存在するのです。

教育を受けたい

地方公務員には、体系だった教育を受ける機会が存在しません。
(税関係だけは例外で、中長期のがっつりした研修もあるみたいです)

とはいえ地方公務員は学ばなくてもなんとかなる仕事……というわけではなく、常に自学自習(自腹&業務時間外)が求められます。
  • 「何を学ぶか」という科目設定
  • 「何を使って学ぶか」という教材設定
  • 学びを継続するための自律心
こういった要素が求められます。

自学自習ではなく、しっかり教育を受けたいのであれば、大手の民間企業のほうが良いと思います。

残業は絶対したくない

「役所は9時5時、残業なし」という通説をいまだ信じている方はさすがにいないと思いますが、「残業が少ないから」という理由で地方公務員を志している人は少なからずいると思います。

地方公務員の残業事情は人それぞれです。
同じ課内でさえバラつきがあります。

「残業がほぼないポスト」もありますが、そこに座れるのは特殊な事情のある職員のみです。
乳幼児を抱えているとか、家族の介護とか、自身の健康の事情とか……
普通の職員が「残業のない部署に行きたいです」と主張したところで到底叶いっこありません。


一人で黙々と作業したい

「地方公務員といえば単純作業」というイメージを持っている方もいるかもしれません。
実際、書類の誤字を探したり、エクセルに延々と数字を入力したり……といった一人で行う単純作業も少なからずありますが、そういう仕事はどんどん外注したり非常勤職員にお願いするようになっています。

正規職員の仕事の多くは、なんらかのコミュニケーションです。
民間企業のように、高度な「トーク力」や「プレゼン力」が必要なわけではありませんが、少なくとも定時内は延々と他者とコミュニケーションを取り続ける必要があり、コミュニケーションが面倒だというタイプにとっては煩わしいことこの上ないでしょう。

「一人でコツコツ作業するのがメイン」という働き方を希望するのであれば、役所はおすすめできません。


ここ数年でいろんなサービスのデジタル化が進んでいます。
この流れは止まらないでしょう。有用なテクノロジーが次々出てくる、経費削減になる、人手が足りない……等々、追い風が吹きまくっています。

役所も同様です。
経費削減のために紙冊子の発行・配布をやめてPDFをホームページに掲載するようにしたり、リアルタイムの防災情報のようにウェブでないと提供不可能なサービスを始めたりと、デジタル技術の恩恵を受けています。
民間と比べれば遅々としてはいますが、それでも日々進歩しています。

しかし、サービスのデジタル化という社会的進歩が、役所の現場で新たな問題を引き起こしています。
「デジタル化についていけない人々」の存在です。

デジタル化についていけない人にも等しく対応が必要

デジタルリテラシーという言葉があります。
 
明確な定義は無く、色んな意味で使われていますが、本稿では「インターネットや電子機器を使う能力」程度のふわっとした意味合いで使います。

世の中のサービスの多くは多数派のデジタルリテラシーに合わせて作られます。
そのため、デジタルリテラシーが足らないために、サービスを使えない少数派が必ず発生します。
そもそも、誰もが確実に使えるサービスを作るのは不可能でしょう。

民間企業の場合、デジタルリテラシーの低い人は切り捨てればいいだけです。
少数派のためにわざわざコストを費やす必要はありません。利益を重視すればいいのです。

しかし行政は、デジタルリテラシーの高低に関係なく、住民全員にあまねくサービスを届けなければいけません。
デジタルリテラシーという一要素だけをもって、格差をつけることは断じて許されません。

ふるさと納税の場合

行政の施策でもインターネット利用前提のものが増えてきました。
例えばふるさと納税。どこの自治体でも多種多様な返礼品を用意しています。
返礼品はインターネットで検索して選んでもらうのが前提だからできる判断です。
紙媒体のカタログを作るのであれば、あらかじめ返礼品の種類数に上限を設けるでしょう。

前述のとおり、行政という立場は、デジタルリテラシーの高低に関係なく等しくサービスを提供しなければいけません。
少なくとも、求められたら断れません。行政である限り。

ふるさと納税の場合であれば、返礼品にどんなものがあるのかをアナログ媒体で提示しなければいけません。
インターネットサイトを全部印刷して見せて、その中から選んでもらうことになるでしょう。
ものすごく大変です。端的に言って地獄では? 

ふるさと納税に限らず、役所内のあちこちで、こういった案件が続々発生しています。

僕の場合(キレられた) 

観光部局にいた頃にはよく怒られました。
イベントの詳細を電話で聞かれた際に「会場図はホームページで閲覧してください」と回答すると、よく「最近の役所はすぐに『ホームページを見てくれ』って逃げるんだ、不親切にもほどがある!」と怒られました。

つい最近だと、とある補助金の募集説明会に参加したのですが、「申込様式はホームページからダウンロードしてください」という担当者の説明に対し、「ホームページなんか見れないんだが?ふざけるな!」という怒声が即時湧き上がり、他人事ながら背筋が凍りました。

弱者対策の重要性

ふるさと納税やお土産は富者の嗜みなので、対応しきれなくてもなんとかなります。
 
しかし、行政が提供するサービスには、福祉や防災など命に直結するものもあります。
これらのサービスは、デジタルリテラシー云々は抜きにして、住民全員に届けなければいけません。
例えば、「ネットが無いから最新のハザードマップが見られない」と言われたら、真剣に対応しなければいけません。リアルタイムの河川水位や雨量情報なんかも同様でしょう。

デジタル技術を活用してサービスの質・量を向上することは勿論重要です。
しかし、役所の場合はこれだけでは足りません。
向上したサービスをいかにしてデジタルリテラシー弱者にも届けるか、真剣に考える必要があります。

場合によっては、届けないという判断もあるかもしれません。

現状、職員をすりつぶして何とかやり過ごしてる状態です。長くはもたないでしょう。

デジタルリテラシー弱者にとって、世の中はどんどん不便になりつつある

サービスのデジタル化が進むにつれ、アナログなサービスがどんどん無くなりつつあります。

古い例では、携帯電話の普及につれて公衆電話が激減しました。
最近では、無人レジの導入、銀行の支店統廃合などなど……例を挙げればキリがありません。

デジタルリテラシー弱者にとって、ここ数年の社会の流れは、これまで使っていたアナログサービスの縮小・終了としか映りません。
慣れ親しんだサービスが次々と無くなり、どんどん不便になっていると感じています。

よくツイッターで「高齢者からデジタルサービスの使い方を教えるよう上から目線で要求された」というツイートを見かけます。
高齢者の立場からすれば、上から目線にもなりたくなるでしょう。
これまで使っていたアナログサービスがなくなってしまったので、嫌々ながら付き合わされているという意識だからです。

これから民間企業は、どんどんアナログなサービスを縮小して、デジタル技術で代替していくでしょう。
デジタルリテラシー弱者にとっては、ますます住みにくい世の中になります。鬱憤も溜まるでしょう。
怒りの矛先は、コンビニ店員、スーパーのレジスタッフ、コールセンター……役所も逃れられません。

僕の住む自治体では、銀行窓口が一気に減ったせいで、ATMを使えない層が現金難民になっていると聞きます。
役所に「現金を下ろさせてくれ、役所なら税金が溜まってるでしょ?」と通帳を持ってくる方もいるとのこと。
 
近いうちに「デジタルリテラシー弱者の救済は行政の仕事」という流れになるんじゃないかという気がしています。

デジタルだけでない「情報リテラシー格差」

デジタル云々に関係なく、情報リテラシー格差は近々に大問題になると思います。
このあいだの山手線休止へのクレームを見て確信しました。
東京まで片道3時間超の片田舎に住んでる僕ですら知ってたのに、東京に住んでいながら知らないって、どういう生活してるんでしょうか?正直理解できません。

「どうして知れなかったのか理解できない」という状況自体が、格差の根深さを証明しています。
情報リテラシーに関しては、よく言われる世代間格差ではなく、もっと本質的な問題が横たわっていそうです。

テレビや新聞の地位が落ち、「誰もが見ているマスメディア」がなくなったことが影響しているとか?
インターネットの発達で「情報源の偏り」が強化されてきているとか? 
既存の研究もありそうです。 


【2020.11.7追記】
総務省がリリースした資料に「インターネットを使いこなせていない人」への言及がありました。
その数およそ1247万人。個人的にはもっと多い気がします。


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本記事で取り上げた「デジタル化についていけてない人」そのものではありませんが、かなり重複すると思います。
国の有識者会議でもちゃんとデジタル弱者対応が議論されているようで、とりあえず一安心です。


【2020.9.22追記】
本記事で危惧しているとおりの案件が発生しました。
エクセル反対.001

文化庁補助金の精算書類としてエクセルファイルの提出が必要になり、エクセルが使えない事業主の方から強烈に反発されています。
たいていの炎上案件では「リツイート数=ツイート主を揶揄する人の数」なのですが、本件の場合はツイート主に賛意を示す方も相当数いて、まさに賛否が分かれています。

田舎の役所だと、このようなクレームは日常茶飯事です。
というより、どんな案件でもこういうクレームは想定済みで、抜け道としてアナログな手段も用意しておきます。
あまりに日常的光景なので、職員間の話題にすらなりません。

このブログにたどり着いているようなデジタルリテラシーの高い方であれば、領収書をいちいち管理して郵送するよりも、エクセルで一覧表を作ってメールで送るほうが楽だと感じるでしょう。

しかし世の中には、そうでない方も大勢います。
そして役所が関わるのは、どちらかといえば、デジタルが苦手な方のほうです。


<2019.3.2 おすすめ本を追記しました>

先日、友人から「地方公務員として働き始めるまでに、学生のうちに勉強しておくべきことって何かある?」と訊かれました。
弟さんがとある役所に採用されたそうで、気にしているらしいです。

以下、友人への回答をベースに持論を紹介します。


仕事(実務関連)の勉強は不要

正直、仕事に直結するような勉強は働き始めてからで十分です。
貴重な学生時代を割くほどの価値はありません。

どうしても勉強したいのなら、
  • 民法
  • 行政手続法
  • 行政事件訴訟法
あたりの基本書を読んでおくと、どういう部署に配属になっても役に立つでしょう。

一方、
  • 公用文の書き方
  • 決裁文の書き方
  • 資料の作り方
みたいな実務的な内容は、一般論よりも組織ルールや上司の意向のほうが優先されるので、就業前に勉強しても仕方ありません。

お金とメンタルの勉強をしては?

一方、正規雇用者デビューに備えるという観点でみると、お金とメンタルの勉強が必要だと思います。
目的はいずれも、自衛です。

むしり取られないために…お金の勉強

地方公務員の給与は常時狙われています。
生命保険をはじめ、銀行の積み立てや外貨預金、損保会社の自動車保険、ハウスメーカーの不動産営業、証券会社のリスク商品営業、寄付や協賛金募集……こういった類の営業さんが連日職場に来ます。

新規採用職員への営業は特に熱心です。
彼らにとって、新規採用職員は手つかずの鉱脈です。競合他社どうし激しく奪い合います。
「他社よりもうちがいい」「いや、うちのほうがもっといい」というように、比較優位性を強調して取り込みを図ってきます。

「競合他社どうしで競争するんだから、すぐに契約せずに時間をかけて競争させれば、自分にとって有利なものが残るのでは?」という期待は実現しません。彼らはトータルスコアで競争しているわけではなく、比較優位な部分だけを強調しているだけなので、自社にとってのメリット(=お客さんにとってのデメリット)は減少させなくてもいいのです。

お金の基礎知識と信念が無ければ、営業さんのいうがままに契約させられ、無駄なお金を払わされてしまいます。
ただでさえ少ない給料をさらに減らす羽目に陥らないよう、自衛しなければいけません。

自衛のためには、以下の両面からの勉強がおすすめです。
  • ファイナンシャルプランナーの資格を取る(基礎知識)
  • 生々しいお金の本(金融機関がいかにして顧客を養分にするか)を読む(営業さん対策)
ファイナンシャルプランナーの知識は、やや営業さん寄り(お客さんのことを考えつつも、しっかり利益をむしり取るための知識)なので、セカンドオピニオンとして生々しい知識が必要です。
自衛という目的では、生々しい話だけでも十分でしょう。

「生々しいお金の本」のおすすめを挙げたいところですが、不勉強のためわかりません。申し訳ない。
僕は元証券会社の先輩から勧められた以下2冊を読みました。今も手元に置いて参照しています。
資産運用実践講座I 投資理論と運用計画編
山崎 元
東洋経済新報社
2009-05-29


資産運用実践講座 II
山崎 元
東洋経済新報社
2009-09-18



やや古い本なので、これをおすすめするのは気が引けます。
現在でも通用すると思いますが……


【2019.3.2追記】お金の勉強用おすすめの書籍です。どちらも予備知識なしで読めます。

人生100年時代の年金戦略 [ 田村 正之 ]
人生100年時代の年金戦略 [ 田村 正之 ]

お金は寝かせて増やしなさい [ 水瀬ケンイチ ]
お金は寝かせて増やしなさい [ 水瀬ケンイチ ]


無理なく洗脳されるために…メンタルの勉強

組織の一員として働くためには、組織のルールに従い、組織のロジックに馴染まなければいけません。
こういった「組織への適応」は、自分の価値観や感覚を劣後させられるという意味で、洗脳と同義だと僕は思っています。
言葉遊びの次元でしょう。

特に採用直後は、周りも「仕事を教える」ことで洗脳しようとしてきますし、自分も「仕事を覚えよう」として進んで洗脳を受け入れます。

仕事をするうえでは、完全に洗脳されているほうが気楽です。
しかし、役所ルールは時代錯誤でローテクでつまらないです。完全に洗脳されてしまうと、役所外の生活に支障が出るでしょう。

かといって、洗脳を拒んでいる=適応を拒んだまま仕事を続けるのは、とてもつらいです。

そのため、「職場にいる間だけ洗脳状態になる」ような、切り替えが必要だと思っています。

どうすればうまく切り替えができるのか、僕も試行錯誤している最中です。
少なくとも、人間の精神を客観的に見るための基礎として、心理学や精神医学の知識が欠かせないのかと思います。
心理学 第5版
東京大学出版会
2015-07-27





こういった本を読んでいると、知識が身につくと同時に、人間の精神を客観的に見るスタンスのようなふわっとした感覚もつかめるように思います。


勉強よりも大事なこと

以前の記事でも書きましたが、損得抜きの友情を育めるのは、大学時代が最後だと思います。

参考;地方公務員業務に役立つサークル活動とは?

友人との時間を何より大切にしたほうが、就職後にも活きてくるでしょう。
今回紹介した勉強は、隙間時間に取り組む程度で十分成果が出ると思います。
とりあえず書店で立ち読みだけでもやってみてはいかがでしょう?

先日、仕事で都内の自治体アンテナショップを回ってきました。
山形のショップで大判焼きを食べたり、石川のショップで金箔ソフトクリームを食べたり、群馬のショップに内田彩さんのCDが置いてあるのを見つけてオタクスマイルをこぼしたり……楽しい出張でした。

Googleアナリティクスによると、本ブログ読者の約3割が東京都民らしいです。
都民読者向けの記事も書いてみたいなと思いつつ、田舎地方公務員という立場上どうしても田舎臭いネタばかりなのを申し訳なく思っていたのですが、アンテナショップネタなら都民の皆様に還元できるのでは?とようやく気がつきました。

アンテナショップは概して原価率が高い

原価厨という生き方。
僕には到底真似できませんが、こういう筋の通った生き方には憧れます。
 
意外かもしれませんが、アンテナショップは原価厨にぴったりです。
アンテナショップで提供している商品もサービスも、(広い意味で)原価率が高いからです。

原価の説明の前に、まずは一般的なアンテナショップの費用負担構造を紹介します。

スライド2

だいたいのアンテナショップは、家賃は100%自治体が負担、実際の運営は別の事業体(民間企業や第三セクター)に任せています。
 
家賃負担と店舗運営が別であることがポイントです。

通常の小売店は、店舗運営を通して獲得して粗利益の中で、家賃も賄わなければいけません。
一方アンテナショップは、家賃は自治体が負担してくれます。
家賃に加えて、販促費を補助している自治体も多いようです。
(ソースは各道府県の予算資料です。各自治体のホームページで公表されています)

とはいえ、家賃・販促費の分だけ粗利幅が増えるわけではありません。 
家賃・販促費支出が削減される分、仕入高が膨張しています。

小売における「原価」とは、まさに仕入高です。
アンテナショップで販売している商品は、販売価格に占める仕入高(=広義の原価)の割合が高い、つまり原価厨的にお得なのです。

スライド3


仕入高膨張の原因は、主に流通コストの肩代わりそもそもの商品原価高です。
以下、それぞれについて紹介していきます。

通常なら消費者が負担する流通コストを肩代わりしてくれる

どこでもいいので実際にアンテナショップに行ってみて、目についた商品名をググってください。
その商品のメーカー通販サイトが見つかったら、値段をチェック。
大半の商品が、通販サイトの価格と同一のはずです。

ごく一部の例外を除き、アンテナショップでの販売価格は、現地商店での販売価格と同額にするという暗黙のルールがあります。

本来、現地販売とは異なり、東京アンテナショップで販売する場合には、東京までの商品配送料という追加コスト、つまり流通コストが発生します。
 
この流通コスト、食品セレクトショップのような専門小売店では、販売価格にこっそり上乗せされることが多いです。
しかし、アンテナショップでは、行政が絡んでいるという事情からなのか、販売側が負担しています。消費者には一切負担させません。

多くのアンテナショップでは、この流通コストを店舗運営者が負担しています。
運営者ではなく商品メーカーが負担しているところもあるようですが、誰が負担するにせよ、利用者的にはどうでもいいことです。
本当なら消費者が負担するはずのコストを販売側が肩代わりしている事情には変わりありません。

通販サイトと比較してみれば、お得さがはっきりするです。
メーカー直販サイトと同じ価格で、いつでも送料無料で買い物できるのです。

原価率の高い商品(高原価商品)が集まってくる

狭義の原価(商品製造に要する費用のみ)だけを見ても、アンテナショップはお得です。

アンテナショップでは、地元でも比較的小さいメーカーの商品を多く取り扱っています。
小さいメーカーの商品は、概して効率的な大量生産ができないため、原価率が高いです。

原価率が高いと、その分だけ下代(仕入れ値)も高くなります。
下代が高い商品は、通常の小売店ではなかなか取り扱ってくれません。
 
こういう商品を優先的に取り扱うのが、アンテナショップの使命です。
とりあえず販売してみて、売行きやお客さんの反応をメーカーに伝えて商品改良を促したり、バイヤーに紹介して一般流通に乗せてあげるのが、俗にいうアンテナショップの「販路開拓機能」、アンテナショップの主要機能です。
 
つまり、アンテナショップの役割上、原価率の高い商品が続々と集まってくるのです。

原価厨垂涎の飲食メニュー

アンテナショップの中には、レストランを併設しているものもあります。
このレストランも、原価厨的にはめちゃくちゃ美味しいです。

アンテナショップレストランの役目は、地元食材の販路開拓です。
販路開拓ということは、現在は販路が無い、つまり首都圏では通常流通していない食材を使うことになります。 
アンテナショップレストランのために、わざわざ地元から入荷しなければいけないのです。
 
このため、アンテナショップレストランで使っている食材も、販売商品と同じく、追加的な調達コストがかかっています。

そもそも、一般流通に乗らない食材は、概してお値段が高いです。
高価な食材を、高いコストをかけて調達するのです。原価率が高くならざるを得ません。
 

そもそもアンテナショップとは何なのか(陰謀論)

以下、ネタなので気楽に読み流してください。

最初に掲載した図を、ちょっと拡幅してみます。

スライド1


お分りいただけたでしょうか。
アンテナショップを通して、地方自治体に流出していった地方交付税が東京都へと還流しています。

アンテナショップのサービスの源泉は、各自治体住民の税金であると同時に、都民の税金でもあるのです。
「アンテナショップはお得」というよりも、「アンテナショップを利用しないと損を取り返せない」と表現する方が正確かもしれません。

東京オリンピック・パラリンピックが近づくにつれ、各アンテナショップ間の競争もエスカレートしていくことでしょう。
エスカレートすればするとほど、東京都民は得をします。

アンテナショップ、マジで目が離せないと思います。

僕が就職活動をしていた頃には、典型的な就活弱者を指す言葉として「ノンバイサー」というものがありました。
「バイトもサークルもやっていない、非社交的な存在」という意味です。

アルバイトとサークル活動は、面接でもよく問われ、かつ就活生からもよく打ち出していく話題です。
特に地方公務員志望者は、今まさに「バイト・サークルの話題を面接でどう活用していくか」いろいろなストーリーを思い巡らせているところでしょう。

今回は、地方公務員になった後でも役に立つアルバイト経験について書いていきます。
 
面接でも、実際に働く場面を想定してを語るほうが、説得力が出ると思います。
面接でのネタ作りに少しでも役立てば幸いです。

何より接客系


地方公務員業務に直接活きるのは、何よりも接客経験だと思います。
特に、接客マニュアルがしっかりしている大手チェーン系で接客の基礎を仕込まれている職員には、地方公務員として何年働いても到底追いつけません。

地方公務員の仕事の中には、あまりたちの良くないお客さん相手のサービスが結構含まれます。
(常に揚げ足を取ろうと目を光らせています)
こういった方々から不興を買っても、良いことはありません。愛想よく、手際よく接客する必要があります。
もちろん、愛想が良いだけでは務まらず、締めるべきところではしっかり締めないといけません。

締め方と手際は、地方公務員として働く中でも習得できます。
しかし、愛想の良さはなかなか身につきません
スタバの店員さんみたいな接客ができれば、それだけで地方公務員上位5%に入ると思います。それくらい身につきにくく、貴重なスキルです。


一風変わったバイト全般


接客系以外は、正直思いつきません。
人生の奥行きを深め、話の持ちネタを増やすという意味で、地方公務員として働いているとなかなか出会えないような世界に身を置くことが何より大事かと思います。


自治体が募集しているアルバイト


役所の建物内にも、アルバイトさんがいます。
建物内の掃除、ごみ処理、のようなビルメンに近い仕事もあれば、正規職員が急遽不足したために電話対応や書類作成までも任せるパターンもあるようです。
これらのアルバイトは、採用後の業務には役立たないものの、役所の中の雰囲気を知るにはもってこいです。

僕も今度、人材派遣会社経由でイベントスタッフのアルバイトを数名お願いしています。
「◯◯県の職員ってあんなにキモいんだ…」と思われないよう、気をつけねば。


もしかしたら逆効果かも……


「塾講師経験は喋りが上手くなるから公務員稼業に役立つ」という意見を見たことがありますが、僕は賛同できません。
塾講師は、自分より知的に未熟な相手に対し、知恵を授ける仕事です。自分が上、相手が下。明確な上下関係があります。
 
一方、地方公務員として働く中では、自分が上に立つケースは稀です。
塾講師経験に基づくトークスキル(教えるスキル)を発揮しようとしたら、教え諭すような喋り方になってしまい、相手方を怒らせてしまうかもしれません。


こんな記事を書いておいて非常に申し訳ないのですが、僕はチラシをひたすら三つ折りにする作業と、某大手ショッピングサイトのレビュー代筆しかやったことがありません。
いずれも友人からの紹介で、個人事業主のお手伝いでした。
飲み会の話のネタとしては大活躍なんですけどね……実務では役立っていません。

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