キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

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僕が地方公務員になってから2年くらい経った頃から、役所内でも「傾聴」という言葉をよく聞くようになりました。

 

傾聴とは、相手のいうことを否定せず、耳も心も傾けて、相手の話を「聴く」会話の技術を指します。意識すべきなのは、相手に共感し、信頼していると示すこと。経済産業省が「職場や地域社会の中で多様な人々とともに仕事するうえで必要な基礎的な能力」として提言している「社会人基礎力」の要素にも、「傾聴力」が含まれています。(引用元




要するに、相手の話をしっかり聞き、受容することなのでしょう。

僕自身、本庁勤務の県庁職員にしては住民対応が多い仕事ばかり回ってきており、日々の仕事でもとにかくまずは傾聴するよう意識してきました。

ただ最近は、地方公務員の傾聴には良し悪しあると考えています。 
誰に対しても公平にサービスを提供しなければいけないという役所の性質上、むやみやたらと傾聴していると、コストが無限に膨らんでいくのです。

さらに傾聴は、受ける側(喋る側)にとっては、快感にほかなりません。
傾聴してもらうこと自体を目的に役所に来られたり、電話かけてくる方は、今や大勢います。

「役所の傾聴」はコスパが良い

傾聴はもともと高級品です。お金を出さないと得られないサービスです。

傾聴だけを単品で提供するサービスであれば、カウンセリング、法律相談のような相談窓口があります。
ホストクラブやキャバクラのような接待を伴う飲食店も、れっきとした傾聴サービスでしょう。
いずれも基本的に有償です。無料では利用できません。

役所の場合、窓口に何時間居座ろうと、何時間電話をしようと、料金はかかりません。
完全無料です。

発言する話題もかなり自由です。
もちろん役所とは全然関係ない話(最近パチンコの調子が良くない等)はさすがに駄目ですが、行政と少しでも関係のある話題であれば、役所側は追い返せません。
使い勝手が良いと言えるでしょう。

つまるところ、ただ傾聴してもらうだけであれば、民間サービスよりも役所の窓口を利用したほうが、圧倒的にコスパが良いのです。


誰かの得=誰かの損、トレードオフ

役所の傾聴サービスのコスパの良さに気づいてどハマりする方は結構います。

特に高齢男性には、若い女性の多い福祉部局をキャバクラ代わりに使う方もいます。
日本酒入りペットボトル片手に窓口に来て、女性職員相手に、取り止めのない話を延々と続けるのです。

新型コロナウイルス感染症騒動が始まってからは更に増えました。
不満や不安が募り積もって傾聴サービスそのものへの需要が高まっているのか、外飲みに出られなくなった等のために民間傾聴サービスが利用できなくなったせいかのか、理由はよくわかりませんが、確実に増えてはいます。

サービスの受け手(傾聴される側)からすればお得であっても、サービスを提供する側、つまり役所側からすれば、私的満足のために職員を長時間拘束されるのは大損にほかなりません。

より正確にいうと、役所が損をするというよりは、「傾聴される一人」以外の全住民が損をします。
本来であれば他のサービスに供されるはずだった職員の時間とマンパワーを、「傾聴される一人」に私的独占されたからです。

もし残業代が生じるのであれば、余計な人件費負担を課されるわけでもあります。
他人のキャバクラ代を割り勘で払わされているようなものです。


政治判断を待つしかない

役所の傾聴サービスの実態を知れば、「税金の無駄遣いだ」と怒る方もいると思います。
「全体の奉仕者たるべき公務員が、その趣旨に反して特定個人に便宜供与している」と糾弾されても、反論できません。

一方、役所による傾聴サービスを必要としている人がいるのも事実です。
最近は「関係の貧困」が問題視されており、対策の一環として「自治体による傾聴」が位置付けられることもあります。
つまり、「関係の貧困」対策というお題目の下、傾聴サービスのさらなる充実を正当化することも可能なのです。

どちらの方向で進むのか、決めるのは役所ではなく政治です。
僕みたいな木っ端職員は、事態の趨勢を見守ることしかできません。

いずれにせよ、現状ですら「傾聴の提供」に膨大なコストがかかっているという事実、そして行政による傾聴サービスをより充実させるには相当なコストの上乗せが必要という事実は、世間全体に広まってほしいと思っています。

現場職員の「創意工夫」や「自発的努力」でなんとかなるレベルではないし、行政リソース配分の問題として真剣に考えなければいけないと思います。

東京オリパラ2020、ついに始まってしまいました。

僕は今回のオリパラに対し屈折した感情を抱いています。
うまくいってほしいと思いつつも、国民がのうのうと観戦してるのが許せないというか……
地方公務員であれば、同じようなことを考えている方が結構いるのでは?

スポーツエンターテイメントとしては間違いなく世界最高峰のイベントであり、一旦始まってしまえば、エンタメの魔力によってこんなモヤモヤした感情も吹き飛んでしまうのでしょう。
だからこそ今のうちに思いの丈を書き残しておきます。

国民感情とかいうUMA

オリパラが始まってしまえば、よほど筋金入りのアンチスポーツ勢を除き、「開催してよかった」と思うに決まっています。
これがエンタメの魔力です。

ただ実際のところ、開催前の時点では、国民はどう思っていたのでしょう?
メディアが報じるとおりであれば「開催反対が多数派」らしいのですが、本当にそうだったのか?

国民感情なんてものはそもそも調べようがないのですが、もしメディアが報じるとおりなのだとしたら、あまりにも浮気性すぎてどうなの?と思う。

一方、本当は「開催反対が多数」なんて事実が存在せず、メディアが火に油を注ぐためにでっち上げたのであれば、やり口がダーティで腹立たしい。

いずれにせよ釈然としないのです。

とにかく行政末端職員が被害を受ける

どんなトピックであれ国民感情が荒立つと、役所にクレームが飛んできます。
今回のオリパラも同様です。
僕自身、昨年のうちから、賛成派・反対派の両方からクレームを受けてきました。
マジでどうしようもないのに、ただ感情の捌け口として利用されてきました。
教育委員会の体育教育担当係あたりは苦情処理に年中追われていたと聞きます。

つまるところ、地方公務員が「国民感情の調整弁」のように使われたのが腹立たしいのです。

誰かが意図的に役所叩きへと誘導したのか、自然発生的に役所を叩く流れになったのか、実態はわかりません。
とにかく「事実関係や原因を確認する前に、イラッとしたらまずは身近な役所に対して怒りをぶつける」というムーブが当然のように罷り通り、国民の間に広く浸透してしまったという事実が、本当に厳しいのです。

悪評はずーーーっと残る

エンタメの魔力の効果がどれだけ凄まじくとも、今回のオリパラに対し百点満点評価を下せる人はあまりいないと思います。
終了した後に、加点要素と減点要素の線引きが行われるでしょう。

この境界線をどこで引くのか、これは高度に政治的な問題だと思います。

少なくともアスリート達は確実に加点要素です。
演出を作ったクリエイター達も、加点要素側に入るでしょう。
競技会場などのハード面を整備した方々、ボランティアとして参加したスタッフも加点要素でしょう。

一方、事務方は、僕は減点要素扱いされるのではないかと思います。
事務方自体は、どちらかと言えば国民に負担を求める立場であり、自ら感動的なコンテンツを生成しているわけではないからです。

最終的には
  • 役所用語でいう「サブ」=コンテンツ制作に携わった方々は加点要素
  • 役所用語でいう「ロジ」=開催にあたっての段取りに携わった方々(事務方)は減点要素
言い換えると
  • 無能事務方のグダグダっぷりを挽回する勢いでアスリート達が頑張ってくれた

こういう整理で落ち着きそうな気がしているのです。

国民にとって、オリパラの事務方=行政です。
この整理はつまるところ、「今回のオリパラによって行政の無能っぷりが露呈した」
という理解にほかなりません。

『失敗の本質』あたりの本と絡めて、「今回のオリパラ運営も、太平洋戦争と同様、未だ兵糧軽視の玉砕戦を〜」みたいなことを論じる方が絶対出てくると思います。予言します。


「行政は無能」という理解は、オリパラの感動とともに、国民の心に深く根付くでしょう。
そしてこれから当面の間、行政不信・公務員蔑視の燃料として燃え続けると思います。
公務員を見下す風潮にお墨付きが与えられたと言っても過言ではないでしょう。

「どれだけ頑張っても戦犯扱い」、これが事務方の宿命なのかと思うとやるせなくなります。

大変ありがたいことに弊ブログにも固定読者様がいらっしゃって、この方々のおかげで新規投稿した記事はどんなものでも大体1週間で200PVは読んでいただけています。
その後も読まれ続けるかどうかは記事次第ですが、とにかく初速ではそれなりに読んでいただけています。

例外は書評記事です。
記事タイトルの頭に【読書メモ】をつけて投稿している、僕が読んだおすすめ本の紹介記事は、50PVに届けばいいほうです。
ニーズに乏しいのでしょうね……

ただし、今回の書評記事はそれなりにPVを集めるのではないかと内心期待しています。
タイトルがあまりに衝撃的だからです。


「クソ野郎」とは?






あなたは同じチームの嫌なやつに悩まされていないだろうか?
「消えてほしい」くらい厄介で面倒なやつは世界じゅうどこの組織にもいる。
本書では、人間関係の悩みを抱えるチームリーダー、運悪くいじめの“標的”になってしまった被害者、職場や組織の居心地の悪さにウンザリしている人のための解決策を紹介する。
スタンフォード大学のロバート・サットン教授が、嫌がらせ行為のメカニズムを徹底検証。
実データをもとに、最低の人間を遠ざける方法や、身勝手な連中を変える方法、手強いクズどもを追放する方法、やつらがもたらす被害を最小限にとどめる方法を伝授する。




威圧的な態度を振りまいて他人を傷つけたり組織内人間関係を損なう人のことを「クソ野郎」と称して、そういう人から自分の身を守る術を説いたのが本書です。

本書における「クソ野郎」は、第1章できっちり定義されています。



基準その1ーーその人物と話したあと、標的になった側が萎縮し、侮辱されたと感じ、やる気を吸い取られるか、あるいは見くびられたように感じるか。とくに、標的自身が自分のことをダメ人間だと思い込んでしまったかどうか。

基準その2ーーその人物が自分より立場が上の人間にではなく、下の人間に狙いを定めているかどうか。

 ロバート・I・サットン著 片桐恵理子訳
『チーム内の低劣人間をデリートせよ』 パンローリング株式会社 2018年11月3日
p.17より



他者に対する反感・嫌悪感は、たいてい主観的なものです。
ある人からは「こいつは酷い」と思われている人であっても、別の人からすれば「良い人」かもしれません。

ただし、上述した2つの基準を同時に満たすような人は、大抵の方が「クソ野郎」だと感じるでしょう。
本書ではターゲットを限定することで、具体的かつ効果的な対策を打ち出します。

タイトルだけ見れば乱暴な本に思われるかもしれませんが、全方位に攻撃するスタンスではなく、組織の癌になりうる「真のクソ野郎」だけがターゲットなのです。

タイトルにある「低劣人間」という単語は、本文中には出てきません。
「低劣人間」という表現からは「仕事ができない」「能力に乏しい」「スペックが低い」という無能人間を想起するかもしれませんが、あくまで本書でターゲットにしているのは攻撃的態度で人間関係を乱す人です。


「組織内の他人」だけではない

「チーム内」という言葉がタイトルの先頭にくることから、本書の射程は職場の同僚・上司・部下に限定されていると思われるかもしれませんが、実際はもっと幅広く論じらています。

最も多く触れられているのは「職場の上司」ですが、ついで多いのが「顧客」です。
サービスを提供する側とされる側という疑似的な上下関係が生じるからなのでしょうか、レストラン、空港、そして行政関係まで、様々な「クソ顧客」の事例が取り上げられます。

弊ブログで本書を取り上げる理由がまさにここです。
地方公務員は常々クレームに悩まされており、苦情主を「クソ野郎」認定したくなることもしばしばあります。

僕の経験上、役所にしつこく絡んでくる方々の多くは、本書の定義に合致する「クソ野郎」です。
しかし、ちょっとした思い違いのせいで一時的に激昂しただけだったり、むしろ役所側に非があったりするケースもあります。




「クソ野郎」の言いなりになるのは勿論駄目ですが、無辜の住民を悪者に仕立て上げるようなことも絶対あってはいけません。
排除すべき「クソ顧客」とはどんな存在なのかを考える際に、本書は大いに参考になると思います。


また本書では、「『内なるクソ野郎』を押しとどめる方法」という章を設けています。
丸々1章を割いて、自制を促しているのです。
現状の人間関係に一切不満がない方にも、きっと役立つと思います。



新型コロナウイルス感染症騒動が始まって以来、僕が務める県庁では「コールセンター業務の外注」が相次いでいます。

窓口業務の多い市区町村では、業務の外注は日常風景かもしれません。
ただ県庁勤務の僕にとって、これまで職員がやっていた業務を民間事業者に委託するという事態は、なかなか新鮮です。

自治体の業務外注(民間委託)には賛否両論あるところですが、僕は賛成派です。
中でも住民対応窓口業務はどんどん外注すればいいと思っています。

「職員の負担が減る」「安上がりになる」という理由ではありません。
役所の窓口業務特有の環境を民間企業に経験してもらうことで、社会全体のイノベーションにつながるかもしれないからです。

「万人に同じサービスを提供する」難しさを経験してもらう


過去の記事でも少し触れましたが、行政サービスの利用者層はものすごく幅広いです。
いろんな層の人間が、戸籍関係書類の取得のような同一のサービスを求めて、日々役所を訪れます。


通常のビジネスだと、こんなに広い客層に対して同一のサービスを提供しなければいけないという経験は、なかなか得られないと思います。
この貴重な経験を民間企業に提供することで、新たなテクノロジーやサービスが生まれるかもしれません。
 

戸籍関係書類の取得をイメージすれば、きっとわかりやすいと思います。

手続きのためには申請書を書いてもらわなければいけませんが、この「申請書を書く」という行為は、利用者次第で難易度が異なります。

案内なしですらすら書ける方もいますし、一言一句説明しないと書けない方もいます。
握力が弱っていて字が書けない方や、そもそも文字が読めない方もいます。

つまり、利用者のレベル差がものすごく激しいのです。
 

この課題に対し、役所であれば、分厚いマニュアルを作って人海戦術を採るというハイコストな作戦を採ります。
しかし民間企業の場合は、同じ手は使えません。儲けが出ないからです。
そのため、何らかの新たな方法を編み出して、「利用者のレベル格差」という課題に対処するでしょう。
ITに強い企業であれば、新しいテクノロジーを開発するかもしれません。

このようにして新しいノウハウやテクノロジーが生み出されれば、きっと役所窓口だけでなく別の場所でも応用されていき、ひいては社会全体が便利になるでしょう。
行政サービスの外注は、イノベーションのヒントを提供するのです。

これまで切り捨ててきた層に向き合ってもらう

民間企業と役所の大きな違いの一つが、顧客を選べるか否かだと思います。
もちろん、民間企業は顧客を選べる立場で、役所は選べません。

民間企業は、誰も彼もにアプローチするのではなく、ちゃんと利益の源泉になりうる層だけにアプローチすることで儲けを確保しています。これがビジネスです。
逆にいえば、利益の源泉にならなさそうな層に対しては、大して情報を持っていないと思われます。

行政サービスを受託する場合、民間企業でも、これまで顧客として見てきた層のみならず、社会全体のあらゆる層の方々に対応しなければいけません。
これもまた貴重な経験です。
従来は顧客として見てこなかった層の情報を、ローリスクで得られるのです。


ここからは暴言なのでフォントを小さくします。

要するに、これまで民間企業が相手にしてこなかった
  • 資力的に民間サービスを利用できない低所得者
  • お金は無いけど時間は有り余っていて、役所くらいしか相手にしてくれない高齢者
  • 即刻出禁にするレベルのハードクレーマー
  • 表立って関係を持ったら罰せられかねない反社会的存在
こういった方々と対面することができます。

多くの民間企業は、こういった層の方々を「収益源として見込めない」と端から切り捨てています。
しかし、実際に接触して研究を深めていき、新たなサービスやテクノロジーを生み出せば、収益源にできるかもしれません。


民間企業が自社事業としてこういった層にアプローチするのは、多大なリスクが伴います。
しかし、行政サービスの受託であれば、一定の収入は保証されており、リスクはかなり軽減されるでしょう。 

行政サービスの外注は、民間企業を、これまで民間企業から見放されてきた層に半ば強制的に引き合わせるきっかけになります。
この出会いがイノベーションの端緒となるかもしれないと僕は思っています。


つまるところ、これまで役所に押し付けてきた「面倒ごと」を民間企業にも経験してもらうことで、何らかの社会的改善が図れるのでは?と期待しているのです。

現役地方公務員とそれ以外の方々で評価が180度変わりそうなニュースが出てきました。



東京都では
  • 特定の人が頻繁に請求を繰り返したり、請求する対象が十分に特定されないため開示を検討する対象の文書が大量になったりして、業務に著しい支障が出ている
  • 制度の運用を見直し開示請求を受け付けない基準を設けることを検討している
とのこと。

もしこのような運用が実装されたら、地方公務員の多分80%超がガッツポーズをとると思います。
上記のような状況は、東京都に限った話ではありません。
僕の勤務先県庁でも常態化していますし、しかも特定の部署に限った話ではなくほぼ全部署が悩まされています。

僕自身もこれまで幾度となく手を煩わされてきました。
とある年度なんか、特定の1人からの情報公開請求だけで250時間くらい残業しました。
(今使っているMacBookProは、その時の残業代で買いました。なのではっきり覚えています)

一方、地方公務員以外の方からすれば、サービスの劣化かつ行政の不透明化、ひいては知る権利の侵害に他ならず、「けしからん」と思うでしょう。
(都議選を控えたこの時期に、こんな住民受けが悪そうなニュースが報じられるあたり、政治的な匂いを感じます)


ニュースの文面だと、あたかも「公開請求の件数が多いせいで業務に支障が出ている」ように書かれていますが、実際は異なります。
混雑緩和のために入場制限を設けるかのごとく、「件数が多いから規制します」という理屈であれば、僕も疑問に思います。

情報公開の現場を悩ませているのは、「この制度を使って行政活動を妨害したい」「情報公開のプロセスをやらせることでミスさせたい」という悪意ある方々です。
こういう方々が暴れているせいで、「情報公開制度を使って情報を入手したい人」、つまり本来のユーザーが割を食っています。

「さすが独身異常男性、狭量すぎだろ(笑)」と思われるかもしれませんが、僕がこれまで経験したどの部署でも、情報公開制度を使った攻撃を食らってきました。

以下、自分の経験談を紹介していきます。
現役の地方公務員であれば、身に覚えのある話ばかりで、目新しさは皆無だと思います。

事務担当者側から見た公文書開示のフロー(前提)

情報公開制度は、だいたい以下のような流れで進んでいきます。

  1. 請求内容の確認
  2. 対象文書を探す
  3. 開示できるか否かの判断
  4. 非開示情報をマスキング(黒塗り)
  5. 開示方法の調整
  6. 開示の実施
基本的には無料です。お金がかかるのは開示された資料をコピーする際くらいです。
スマートフォンカメラで撮影すれば完全無料で済みます。

単純作業のように思っている方もいるかもしれませんが、実際は相当のコミュニケーション能力が求められます。
特に「請求内容の確認」「開示方法の調整」あたりは、頻繁に揉めます。


公開請求=Look at me.

情報公開制度は、開示請求書を提出するというアクションを起こすことで、役所に対して『公文書開示』というサービス提供を義務付けることを可能にする制度です。

あえて性格の悪い言い方をすると、紙切れ一枚で役所に法的義務を負わせ職員を拘束することが可能です。
たとえ理不尽な内容であっても、条例上のルールを守っていれば、役所側は拒否できません。
「条例ギリギリ」の理不尽ラインを攻めることで、役所に負担をかけられるのです

先述した1〜6の各プロセスで、具体的にどういうふうに役所に負担をかけられるのか、見ていきましょう。

1.請求内容の確認……あえてぼかす

情報公開制度を利用する方は、基本的に公務員以外の方です。
そもそも役所がどんな情報を持っているのか知りません。
そのため、請求内容は、「〇〇に関する文書を開示してください」みたいな抽象的なものになりがちです。

こういう請求があった場合、役所側は請求者とコミュニケーションをとり、請求内容を絞り込まなければいけません。
情報公開制度は条例に基づくサービスであり、このコミュニケーションも条例に基づくもので、役所側は法的義務を負っています。
そのため、下手(したて)に出るしかありません。

繰り返しになりますが、役所側は「請求内容を特定する」という法的義務があります。
そのため、どれだけ請求者から罵倒されようが詰られようが粘り強くコミュニケーションを続けなければいけませんし、直接面会を要求されれば応じなければいけません。

さらに、情報公開請求のフローに乗せれば、メールや電話ならスルーされるレベルの荒唐無稽な中身であっても、行政側は応じざるを得ません。


例えば
  • 「ふざけるな」など単なる暴言
  • 「地球外生命体が攻めてきた場合の避難フロー」みたいな過激設定・陰謀論

であっても、行政側は真剣に応じなければいけません。

つまり、「請求書を提出する」というお手軽かつ無料のアクションだけで、下手弱腰な職員を好きなだけ拘束できるという美味しいシチュエーションを確立できるのです。



2.対象文書を探す……悪魔の証明を強制できる

対象文書の量が多くても、正直それほど負担ではありません。
肉体的には大変ですが、あくまで作業です。

本当に大変なのは、存在するのかどうかはっきりわからない文書です。
書庫をひっくり返して探すしかありません。

僕の経験上、悩ましいのは以下のような文書です。
  • 大昔の文書(廃棄した可能性が高いもの)
  • 国から移管された業務の文書(自治体に引き継がれているのか不明瞭)

「存在しない」ことの証明は、俗にいう「悪魔の証明」であり、どれだけ手間と時間をつぎ込もうが原理的には不可能です。
しかし、情報公開制度を使えば、役所に対して「悪魔の証明」を強制できるのです。
こういう案件が降ってくると、面白いくらいに残業時間が嵩んでいきます。

3.開示できるか否かの検討……グレーゾーンを攻めて「運用の齟齬」を狙う

情報公開制度のルールでは、「開示できない情報」の基準も定められています。
代表的なものが個人情報(特定の個人を識別できる情報)です。
あとは企業の営利的内部情報であったり、役所内部の機密情報などもあります。

各自治体の内規などで、これら「開示できない情報」の具体的な線引きがなされていると思いますが、情報のあり方は非常に多様で、全ての事例を網羅的に線引きするのは不可能です。
そのため、部署ごとに個別の判断が下されることもあります。

つまり、ある情報についてA部署では普通に公開されたのにB部署では非開示情報扱いで黒塗り処理された……という「運用の不統一」が生じうるのです。

開示できるか否かのグレーゾーン案件が生じた場合、とにかく徹底的に前例を調べなければいけません。
庁内初のケースであれば、別自治体にも問い合わせます。
これも時間がかかるんですよね。

もし「運用の不統一」に感づかれてしまったら、格好の燃料になってしまいます。


4.非開示情報をマスキング(黒塗り)……物量で攻めて「ケアレスミス」を狙う

全ページ真っ黒に塗りつぶせるなら楽なのですが、1ページの中に個人情報がちょろちょろ出てくるような文書の場合、個人情報部分だけを黒塗りしなければいけません。

この作業がめちゃくちゃ大変です。
これまでの県庁職員生活で、僕がいただいた残業代の少なくとも3割は、黒塗りタイム分だと思います。

悪意ある請求者達もこの苦労は十分ご存知で、だからこそ黒塗り作業が発生しやすそうな文書を狙い撃ちしてきます。
黒塗りが多ければ多いほど、役所に負担をかけられるのです。

もし黒塗り作業にミスがあれば、請求者側からすれば「棚からぼた餅」です。

黒塗りが漏れている箇所があったら、明らかな行政の失態です。
管理職を呼びつけて謝罪させることができます。

黒塗り不要な箇所を間違って黒塗りしてしまった場合も、「情報の隠蔽だ」「きっと意図があるに違いない」と言って燃やせます。


5.開示方法の調整……ここからが本番

黒塗り作業を終えて開示準備が整ったら、再び請求者とのコミュニケーションが始まります。
ここからの流れは、「単に情報が欲しい人」相手と「役所と戦いたい人」相手とで大きく異なります。

前者の方々が求めているのは「文書そのもの」です。
そのため、「開示の準備ができました」と一報を入れれば終了です。

一方、後者の方々の目的は文書ではありません。
公文書開示のプロセスを通して職員を好き放題に拘束することです。
そのためほぼ確実に、情報開示にあたり、職員の同席&口頭説明を求めます。
むしろここからが本番です。

個人的には一番緊張するプロセスです。
怒鳴られながら宣戦布告されることもあれば、やたら嬉しそうな口ぶりでプレッシャーをかけてきたり、「マスコミと議員を連れていくから最低限課長出してね」と一方的に通告されたり……


6.開示の実施……毎回ドラマ

文書が目的の方の場合、基本的に開示には立ち会いません。
質問がある場合のみ面会して対応します。

一方、役所と戦いたい人の場合、相手側の要求に応じて立会わざるを得ません。

開示当日は何が起こるかわかりません。
いまだトラウマな案件もあれば、笑い話もあります。
何にせよ時間も体力も消耗します。

大体の案件に共通するのは、せっかく用意した文書をほとんど見てもらえないことです。
請求者の目的は「職員の拘束」であり、文書はどうでもいいのです。

文書を読み込まれたら別のトラブルに飛び火しかねないので、読まれないほうが安心ではあるのですが、せっかくの努力が無駄になるのはやるせないものです。



ここまで約3,500字にわたって書いてきました。
このブログの記事はだいたい2,000字前後なので、かなりの長編になってしまいました。

しかし、ほとんどの地方公務員にとって、目新しい内容は無かったと思います。
それくらいありふれた事案です。

東京都には是非頑張ってもらって、全国に広がることを強く期待します。
 

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