キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

タグ:クレーム

地方公務員として働き始めて驚いたことの一つが、本県内のローカルニュースに対してわざわざブチギレてくる「県外の方」がとても多いことです。

新しい開通したバイパス道路に対して「無駄だ!」と数十分間怒声を上げ続けてきたり、過疎化が進んで開催が見送られることになった地域のお祭りに対し「どうして支援しないんだ!」と金切り声を上げられたり……これまで所属してきたどの部局でも、うちの県のローカルなニュースに対し声を荒げて抗議してくる電話クレームを何度も受けてきました。

Yahoo!ニュースのコメント欄やSNSでは、日々のローカルニュースに対して誰かしらが持論を展開して批判を展開しています。中にはバズって拡散されるものもあり、自ら批判文を綴るほどではなくても、居住地域外のローカルニュースに対して感情的に反応する人がかなり多いことが窺われます。

県外の方からこのような苦情電話・メールを受けたり、本県のローカルニュースがネット上で炎上するたびに、心底不思議思いました。
この方々は、自分には何の利害も無い県外のローカルニュースに対して、どうしてそこまで本気で怒れるのか。
この疑問が長年解けずにいました。

去年の秋頃、僕の勤務先県庁でもちょっと世間を賑わせた話題があり、この類のクレームを傾聴する機会が例年以上に多かったのですが……何人も連続して罵詈雑言を拝聴するうちに、ふと気づいたのです。

彼らが怒るのは、悪意からではなく、「情報が足りていない」からなのではないかと。
具体的には、事実の経緯や背景、そして言語化しづらい非言語情報の欠如が、誤解や感情的反応を増幅させているのではないかと考えています

ローカルニュース報道は不完全

我々が、ある出来事に対してどう評価するかを決めるとき、その「事実」そのものよりも、それに至る経緯や背景に強く影響を受けます。

たとえば、とある過疎地域に新しいバイパス道路が完成したとします。
「過疎地域に新しいバイパス道路が完成」という事実だけ見れば、大抵の人は「無駄だ」と思うでしょう。

しかし、
  • 災害で壊れた周辺道路を廃道にすることが決まっており、今後この新しいバイパス道路が唯一のアクセス手段になる
  • 過疎地域を経由して都市部と都市部をつなぐ機能があり、人流・物流の効率化につながる
  • この地域に新しく産廃処理施設が建設される見込みで、交通量はかなり多い見込み
このような事情や経緯があると知れば、見方はがらりと変わるはずです。

ローカルな話題はとりわけ、その土地固有の事情が色濃く表れるものです。
結果として生じている事実のみならず、その背景や経緯といった周辺情報を含めて把握しないと、正確な理解はできないと思います。

しかし、ニュースとして配信される際には、文字数や構成の制約もあり、「事実」が優先的に取り上げられ、周辺情報はそぎ落とされてしまいます。

周辺情報を知らないから筋が通っていないように見える

このようなローカルニュース報道の宿命——「事実だけが報道され、周辺情報は報道されない」という報道のあり方が、遠方のローカルニュースに対してキレる方が多い原因でないかと思っています。

その事実の評価にあたり重要である「周辺情報」を保有していないがために、一種の誤解が生じて、筋が通っていないように感じられるので、怒りを覚えるのです。

さらに言えば、周辺情報=「その地域特有の事情」の代わりに、「自分の生活圏で培った価値観や常識」を当てはめて評価しようとするので、評価を誤るのだと思います。

つまり、ローカルニュースの炎上とは、ある地域特有の文脈で生じた出来事が、その文脈を失った状態で全国に拡散され、異なる文脈を持つ人々によって再評価されるという、「文脈の衝突」から生じる現象なのだと思います。

実際、県外の方からの義憤クレーム対応では、背景や経緯といった周辺情報をきちんと伝えると、大抵納得してくれます。
とはいえ、素直に引き下がる人はごく少数で、「そういう事情があるなら最初から説明しろ!お前らの情報発信のあり方が悪い!」というふうに、自治体広報のあり方へと怒りの矛先がシフトして、もうワンセットお叱りを受けるのが定番ですが……

周辺情報をきちんと調べたうえで批判してくる方は、ごくごく少数です。多くの方は報道内容だけで物事を判断しており、わざわざ自分から追加リサーチする方は本当に少ないのでしょう。
大多数の「誤解して怒っている方々」とは異なり、こういう方の批判は聞くに値します。

炎上前提の世界へ

つまるところ、ローカルニュースをネタにする報道機関が、ちゃんと周辺情報もうまくまとめて併せて発信してくれれば、県外在住の方からの苦情はだいぶ減るのではないかと思うのですが……「尺が足りない」という根本的な制約はどうしようもなく、期待するだけ無駄なのだろうと思います。
ゆえに、自衛が必要だと思います。

まず、自分自身が情報の受け手としての心構えを見直すことが肝要です。
違和感を覚えるニュースに遭遇した際は、即座に感情的反応を示すのではなく、その背景や経緯を丹念に調査する姿勢が必要でしょう。
周辺情報を十分に把握した上で改めてニュースを検討すれば、当初感じた違和感が氷解するケースが少なくないというのは、苦情対応実務を通して、身を持って理解しています。
同じ轍を踏まないよう、自分自身がちゃんと周辺情報を調べるよう注意したいところです。

一方、情報の発信者としては、どんな話題であれ「誤解されて炎上する」ケースを想定すべきなのだと思います。

今の世の中、炎上を未然防止するのはもはや無理です。
ゆえに僕は、ある程度の炎上は避けがたいものとして受け入れたうえで、事後の説明や対話の準備を怠らないという発想が重要だと思っています。
つまり、「炎上しないように行動する」ではなく「炎上しても弁明できるよう備えておく」という姿勢です。

前提知識や経緯、非言語情報を共有していない不特定多数の方々に対する広報活動は、極めて困難を伴います。炎上を恐れるあまり表現を抑制し続ければ、最終的には官報のような無味乾燥な事実の羅列に終始するほかなくなってしまいます。

幸いにして現在は、組織のトップを含め、炎上がもたらす悪影響への認識が随分浸透してきて、役所内にも「炎上回避」のノウハウが蓄積されてきていると思います。
これからはさらに一歩進んで、炎上後の「消火」技能を高めていくことが求められるのではないでしょうか。
すなわち、一定程度の炎上はやむを得ないものとして覚悟しつつ、炎上後に適切な説明や振る舞いを即座に取って、「延焼を最小限に抑え」「さっさと忘れてもらう」技術です。

札幌市が公費で名刺を作成するとのニュースがあり、SNS上で盛り上がっていました。



自治体職員の名刺自腹問題は、弊ブログの開設当初に取り上げています。




この記事、書いてから6年経過するにもかかわらず、いまだに安定して閲覧されています。
それだけ多くの職員が「名刺の自腹負担」に違和感を抱いている現状がうかがえます。

仕事で名刺を使う、つまり名刺が公務に必要なツールであるのなら、その作成費用を個人が負担することには合理性がありません。民間企業では名刺は会社負担が一般的であり、自治体においても公費で作成するのが自然な流れでしょう。
札幌市以外でも公費負担に切り替える自治体が増えていますし、今後ほかの自治体でも、積極的に見直す動きが生じるのではないかと思います。

一方で、僕の勤務先自治体では、過去の監査(某士業団体が主導した外部監査らしい)で「名刺の公費負担は認められない」と判断されたことを根拠に、公費負担しない方針が維持されています。
公費負担への方針転換=士業団体の権威を損なうことにつながりかねず、当面は舵を切れないんだろうなと思います。

今回の札幌市の取り組みが、他の自治体にも波及し、公費負担が当たり前になる日を心待ちにしています。
しかし一方で、名刺を公費負担で作成するようになった場合、新たな種類の住民トラブルが発生するのではという懸念もあります。

求められると断れない?

近年、職員のプライバシー保護やカスハラ対策のため、普段身につけている名札を簡略化する動きが広がっています。
とはいえ住民の立場からすれば、後々トラブルになった際の保険として、職員のフルネームは是非とも把握しておきたいと思うのが当然の心理です。
実際、公文書開示窓口や図書館で職員録の開示を求めたりして、別の方法でフルネームを調べる方が増えているとも聞きます。

このような背景を考えると、今後は職員のフルネームを把握するための手段として、住民から名刺を求められるケースも増えていくと思われます。

名刺には、フルネームの名前よりも明かしたくない情報(メールアドレスや直通電話番号)まで記載されていますし、さらにはSNS等に晒されて個人攻撃につながるリスクも孕んでいます。

そのため、名刺を渡す相手はなるべく選別したいのが本音です。相手から名刺を差し出されて「交換」するならまだしも、職員側から一方的に名刺を渡すのは極力避けたいところです。

名刺を差し出すよう要求された場合、私費負担(作成するかどうかは職員の判断)であれば、「作っていません」「あいにく今切らしています」で逃げることができます。

しかし、公費負担になるとこの言い訳は使えません。
特に、いくつかの先進自治体のように、名刺を「広報ツール」として位置付けてしまうと、名刺は公共施設のパンフレット等と同じく「積極的に配布すべき公式な印刷物」になるわけで、「作っていません」「切らしています」という回答は、行政の不手際とみなされる可能性が高いです。

かといって正直に「お渡しできません」と返答する、つまり「渡さない」という判断を職員が下す形になると、間違いなく住民の反感を買うと思います。
公費で印刷している以上、「なぜ渡さないのか」を説明する責任も発生するでしょう。

いずれにしても、名刺を渡さないことで、さらなるトラブルを招くおそれがあると思います。

杞憂であることを願うばかり

自治体における名刺の公費負担は、公務の効率化や公平性の確保という観点から重要な施策だと思います。
その一方で僕は、住民とのトラブル増加を懸念しています。

僕自身、これまで幾度となく、怒れる住民から名刺を出すよう要求されてきました。
「お前の態度が気にくわない、SNSに晒すから寄越せ」と明示的に言われたことすらあります。
そのたびに「うちの県では名刺作ってません」という弁明で逃げてきました。
もしこの言い訳が使えなくなったらと思うと相当厳しいです。

既に公費負担に踏み切った自治体では、こういうトラブルは発生していないのでしょうか?
実際のところどうなのか気になるところです。

先述したとおり、僕の勤務先貴自治体ではまだまだ名刺自腹負担が続きそうなので、他自治体の動向を注視していきたいと思います。

【2025/2/11追記】
もし公費で名刺を作成するとなった場合、もしかしたら名刺も公文書扱いになるんでしょうか……?

少なくとも、名刺を発注するために印刷会社に渡したデータは公文書になるはずなので、わざわざ職員に名刺を要求しなくても、「印刷会社との間で作った入稿データ」を公文書公開請求すれば、職員のフルネーム・直通電話番号・メールアドレスが簡単に一式揃うのでは……?

二地域居住は「手段」であって「目的」ではないのでは



若手国家公務員の二拠点居住を支援して、「国の職員が中小規模の市町村を副業的に支える仕組み」を構築するとのこと。
市町村にとってはありがたい施策のように見えますが、一方で国(省庁)や国家公務員側には全くメリットが無さそうで、実際に制度が始まっても利用者はごくわずかだろうなと思いました。

まず、自宅のほかに拠点を持つとなると、かなりお金がかかります。
いくら支援があろうと、全額補填されることはさすがに無いと思います。自腹を切らざるをえないでしょう。

さらに、市町村のお世話をする時間に対し、対価がちゃんと支払われれるのか危ういです。
「副業的」という書き方をして、ちゃんと報酬が出るような仄めかしはしていますが、自治体の現場を見ていると、報酬を払うまでのハードルはかなり高いと思います。
市町村の財政事情は常時厳しいですし、何より「公務員の副業に対して公金を支出する」ことに住民が賛同するとは思えません。いかにも地元メディアが叩いてきそうです。

つまるところ、ただでさえ超激務な国家公務員が、貴重な余暇と身銭を切って、さらに叩かれるリスクまで背負って、わざわざ市町村の支援に行くのだろうか……と思われて仕方ないのです。

国家公務員側にメリットがあるとすれば、転職に役立つかもしれないという点でしょうか。
自らの知見に基づいてコンサル的な活動をした実績が作れるので、転職市場での市場価値は上がるんじゃないかと思います。

そもそも、市町村の伴走支援は都道府県庁の役割のはずなんですが、すっかりスルーされているのが面白いですね。
国としても地方公務員の人材劣化(都道府県庁職員では市町村のサポート役は到底務まらない)を実感しているということなのでしょうか。

実際に地方公務員を大規模削減したらどうなるんだろうか



トランプ大統領が「政府職員を大幅削減する」と表明して以来、ネット上では「日本も公務員を減らすべき」との大合唱が続いています。
ほとんどの人は公務員叩き&ディスりの観点で「もっと減らせ」と主張していますが、中には「これから労働人口が減っていくんだから、真に人手が必要な業界とか成長分野に人を回すべき」との意見も見られます。この意見、僕は至極ごもっともだと思います。

役所の人手が足りないのは事実です。現在進行形で新しい仕事がどんどん増える中で、公務員を減らしたら、行政サービスの水準は間違いなく劣化するでしょう。
しかし世の中には、行政サービスよりも必要性の高い民間サービスがたくさんあります。例えば物流あたりでしょうか。
これからどんどん労働人口が減っていく中、役所よりもこういう業界に人を回したほうがいいと思います。

さらに、人材の質という意味でも、役所よりも優先すべき業界が多くあると思います。
そもそも民主主義というシステムを採っている以上、公務員はあくまでも主権者の道具、主権者が決めたことを粛々と実行する役割にすぎません。
ゆえに、(総体としての)主権者よりも賢い人が公務員になろうとも、その知性は埋もれます。主権者の意思決定に意見具申すらできないからです。
つまり、一般国民よりも優秀な人材が公務員になっても、その優秀さを全然発揮できないのです。

地方公務員界隈では「優秀な人材ほど役所を辞めていく」という嘆き節が後を絶ちませんが、これは一種の社会の自浄作用なのではないかとすら思えてきました。
民間企業でもやっていける優秀な人材はどんどん民間に流出していったほうが、社会全体にとってはきっと良いのでしょう。

そうなるともちろん行政サービスは劣化していきますが、もはや仕方ないと僕は思います。
劣化させてはいけないサービス(消防や警察)はなんとかして維持、それ以外は計画的に縮小・撤退していくのが、僕世代の自治体職員の責務なのだろうと思います。

クレーマーの喜びを垣間見た

普段は全くテレビを見ない僕ですが、1月27日のフジテレビの記者会見は視聴しました
僕はフジテレビに対して個人的な恨みがあります。以前とある部署でフジテレビのニュース番組から取材を受けたのですが、スタッフから無茶ぶりをされたうえ、オーダー通り対応したのに散々罵倒されたからです。
(フジテレビの名誉のために断っておくと、他のキー局からも同じような奴隷的扱いを受けた経験あり)

経営陣がしどろもどろに答える様子は、正直とても面白かったです。
いけ好かない連中が追及され、狼狽する姿を眺めるのは、ある種の溜飲が下がる思いでした。

しかし僕は途中で視聴を止めました。
フジテレビ経営陣が罵倒され詰られる様を面白がる心理は、公務員叩き&ディスりに励むクレーマー達と酷似していることに気づいたからです。

記者会見を見ながら愉快な気分になっていた自分は、彼ら彼女と何が違うのか。
安全圏から他者を叩くことの快感に、無意識のうちに囚われていたのではないか。
そう思ったとき、急に自分が怖くなり、視聴を止めたのです。

同時に、公務員に対する一般的な住民感情(=漠然とした反感や敵意)の正体を垣間見たような気もしました。
僕がフジテレビを好いていないように、多くの住民もまた公務員を好いていません。
そして、好いていない相手が追い詰められていると、たまらなく嬉しくなる──まさに僕が感じたのと同じ構図です。

「公務員叩き」が一大コンテンツとして長く愛されている理由がようやくわかりました。
国民の大半に刺さって、全国津々浦々から新鮮なネタが提供されてくるわけです。
コンテンツ制作者にしても、コンテンツを配信するメディアにしても、本当に便利なのだろうと推察します。

僕は現在、X(旧ツイッター)のアカウントを2つ持っています。
かれこれ15年近く使っているオタク趣味アカウントと、このブログ開始と同時期に作った公務員関係者しかフォローしていないアカウントです。

Xの仕様が変わったのか、昨年夏頃から、自分がフォローしているアカウントのとは関係なく、バズったツイートが「おすすめ」としてよく表示されるようになっています。

その結果、オタクアカウントのほうに、おすすめされるツイートとして地方公務員の愚痴が頻出するようになりました。
多分、X全体で見ても、地方公務員の愚痴ツイートがバズっていると認定されているのだろうと思われます。

中身は「電話で長時間クレームを受けた」とか「てにをは直すだけで一日が終わった」「我儘老人の相手ばっかりで生産性皆無」みたいな地方公務員あるあるネタで、だいたい1000fav、1000RTくらいを達成しているものです。

「変な客がいた」とか「上司からハラスメント受けた」みたいな、どんな仕事にも共通する仕事の愚痴ツイートは、ほかにもよく流れてくるのですが、特定の職種の「あるあるネタ」がバスって流れてくるのは、今のところ地方公務員と公立学校教員だけです。

このような現象が生じているのは多分自分だけではなく、他の方にも生じているようで、「愚痴ツイートが頻繁にバズるという」現象を捉えて、「地方公務員/教員という仕事はクソだ」と評価を下すツイートがまたバズる……という派生系まで見られるくらいです。

地方公務員にしても教員にしても、手放しに「素晴らしい仕事だ」と褒め称えることはできないと思います。
とはいえ、他の職種と比べて極端に悪いかと言われると、そうでもないと思います。

どうして地方公務員や教員の愚痴ツイートがバズりやすいのか、考えてみます。


母数が多い

まず、地方公務員や教員の人数を見ていきます。
他の業界と比べて母数が多いのであれば、その界隈のツイートがバズっても不自然ではありません。

国の統計によると、正規職員の地方公務員(一般行政)の人数は約94万人、教員は約100万人です。

※一般行政職員は総務省「定員管理調査」、教員は文部科学省「学校基本調査」より

この人数は、他の業種と比べても大して多くはありません。
例えば製造業や卸売業・小売業には1000万人以上が就業しています。


この数字には非正規雇用の人数も含まれていますが、正規雇用の人数だけを比較しても、地方公務員よりも多いです。
例えば製造業の正規雇用率は76.7%なので、正規雇用の人はだいたい760万人くらい存在することになります。やはり地方公務員・教員よりも圧倒的に多いです。

ということは、製造業あるある愚痴ツイートを投稿すれば、従業者=当事者が7倍存在するために、地方公務員の愚痴ツイートの7倍バズってもおかしくなさそうですが、実際のところ製造業ネタはそれほどバズっていないと思います。

逆にいえば、製造業の1/7しか従業者がいないのに愚痴ツイートがバズる地方公務員という仕事は、製造業よりも圧倒的にブラックな仕事、ということなのでしょうか?
僕は違うと思います。

実際、地方公務員の愚痴ツイートがバズりやすいのは、母数(=当事者)が多いのがひとつ理由として存在すると思います。
地方公務員の約94万人は、(一部技術職も含まれていますが)大部分が「いつどこに異動させられるかわからない」事務職の職員です。つまり同類であり同じ穴の狢です。
同じ境遇に置かれていて、似たような仕事をしているわけで、琴線も近似していて、刺さるツイートの傾向も近しいと思われます。
教員の約100万人も言わずもがな、教壇に立って児童生徒を教えるという仕事をしている同一集団です。

一方で、製造業の約760万人には、いろいろな職種の方がいます。
工場の現場の方はもちろん、経理だったり営業だったり……しかも地方公務員とは異なり、職種間での人事異動は稀です。そのため、いくら同じ製造業に従事している人とはいっても、感覚はだいぶ異なると思います。
別の言い方をすれば、約760万人の中に、業務内容や勤務条件が大きく異なるクラスターが複数存在していて、それぞれのクラスターの人数は、地方公務員よりも小さいのだろうと思われます。

つまるところ、地方公務員や教員の愚痴ツイートがバズりやすい理由のひとつは、同質的な人が他職種と比べても多いから、だと思います。

環境が同じ

同じような仕事をしている人がたくさんいたとしても、就業条件が異なれば、愚痴の中身も変わってきます。そうであれば、愚痴ツイートがバズるという現象は生じないでしょう。

愚痴ツイートがバズる、つまり共感されるのは、地方公務員や教員が、全国どこでも同じような境遇にいるからなのだと思います。
愚痴ツイートに頻出する「クレーマー住民」とか「高圧的な上級官庁」、「横柄な高齢者」、「サービス残業」あたりの要素が全国どこの役所にも遍在していて、全国どこの地方公務員も同じような不満を抱いているから、その不満を言語化した「愚痴ツイート」がバズるのです。

このような点も、他の業種には見られない特徴なのだろうと思います。

個人的経験が救いになりうる

今回、地方公務員や教員の愚痴ツイートがバズりやすい理由として、2点の特徴をピックアップしてみました。
正直、どちらも改めて考えなくても当たり前のことで、この記事を読んでいる皆様も、特に新鮮には感じなかったと思います。

地方公務員や教員の愚痴ツイートがバズりやすいのは、全国の同類たちが同じような悩みや不安、苛立ちを抱えているからに他なりません。
つまり、自分が今苦しめられている状況には、他の人もきっと同じように苦しめられているはずです。


精神が参ってくると、「これは自分だけの問題だから他の人にはどうしようもない、自分でなんとかするしかない」と、他者に頼るのを諦めようとしてしまいがちです。

しかし実際のところ、地方公務員や教員が抱える悩みはけっこう類型化されていて、SNSを覗いてみれば、同じように苦しんでいる人が見つかると思います。
「一人じゃない」とわかるだけでも気が楽になりますし、いざとなれば相談することもできます。

同時に、もし自力で何か困難を解決したことがある人は、その経験談を発信すればいいと思います。
その困難もまた自分固有のものではなく、きっと他の人も直面しているはずだからです。
経験談を披露することが、きっと誰かの助けになるはずです。


地方公務員にしても教員にしても、常に四面楚歌の環境で仕事をせざるを得ません。
周囲が敵だらけだからこそ、仲間内では助け合う必要があると思います。

遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
例年であれば暇すぎてブログ記事の書き溜めをしていた年末年始ですが、今回は婚活のせいで非常に忙しく、年始の挨拶すらできないまま10日も経過してしまいました。

毎年、新年1発目の記事は「地方公務員界隈の今年の展望予測」をお送りしております。
ちなみに去年は「地方公務員の給与は高すぎるとの批判を浴び続けそう」でした
当たらずも遠からず、といったところでしょうか?

今年は……インターネット上の住民運動が活発になり、その対応に手を焼く一年になると思っています。

ネットの力が(今更ながら)注目を浴びた2024年

2024年10月に実施された兵庫県知事選挙と衆議院総選挙では、どちらもインターネット上での選挙戦が結果に大きく影響したと報じられてます。
選挙区ごとに事情は様々なのでしょうが、全体としてこのような特徴があるのは間違いないと思います。

もちろん、「インターネットを使ったから勝った」という単純な話ではなく、インターネットをうまく使いこなしたから勝利したのだと思います。しかし、具体的にどのような使い方をしたのかまでは報じられていません。
そのため、少なくない人(特にインターネット文化に親しみのない人)が、「ネットを使えば世論を動かせる」とシンプルに理解しているんじゃないかと思います。

ここ最近、婚活の話題作りのためにテレビドラマを見るようにしているのですが、現代が舞台のドラマだと、あらゆる作品で「SNS上でバズる」シーンが出てきます。
そして大抵の作品で、SNSでのバズシーンは起承転結の「転」にあたります。バズることによって事態が好転したり暗転したりします。

実際のところ、インターネットの活動を通して世論を動かすには、膨大な人手・お金・ノウハウが必要です。テレビドラマのように、多少バズった程度で激変するわけではありません。
しかし、インターネットを使って現に世論を動かしている人たちが具体的に何をしているのかは明らかにされておらず、一般的には「バズらせる」以外の方法がよくわからないのも事実です。

そのため、「ネットを使う=バズらせることが重要」「とにかくバズらせれば世論を動かせるかもしれない」と認識している人が大多数なのではと思います。
そして、2024年の選挙戦の結果を見て、「バズらせることの威力の大きさ」を確信したのではないかと思います。

バズ狙い連中との戦いが激化

地方公務員という立場では、「ネット上でバズらせれば役所に勝てるかも」というワンチャン狙いの戦いを仕掛けられることが、これまで以上に増えると思います。

例えば、ホームページ上の記述を恣意的に切り取ってSNS上で晒したり、特定の人にしか渡らないはずの資料を公表されたり……でしょうか。

実際、僕が所属している課でも、似たような事案が昨年末に発生しました。
政策研究家を名乗る方が、ホームページ上で公表している補助金要綱の一部を抜粋して、あたかも補助対象が特定地域にだけ限定されているかのように見せかけ(実際は県内全域が対象)、ツイッター上で「こんな欠陥制度は許されない」と投稿したのがそこそこバズり、翌日には10件ほど苦情メールが届きました。
この事案のせいで、部局長に報告するための資料を作ったり、広報担当課と対策を相談したりする羽目になり、1.5営業日を奪われました。ただでさえ予算業務で忙しいのに……

このような事案が、今年は増えていくような気がしています。

僕が経験したこの案件は、役所側に全く非が無かったので、堂々と対応できました。
しかし、役所側にわずかでも非がある場合には(誤解を招きそうな紛らわしい文面だった等)、対応は難しいと思います。

「世の中は悪意に満ちている」という認識を常に忘れず、ガチガチに守りを固めていくことが、これまで以上に重要になるのだろうと思います。

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