キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

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タグ:スキル

役所は「調整」という言葉が大好きです。
地方公務員であればどんな業務を担当していようともほぼ毎日のように口にする単語ですし、部署名にもよく使われます。
地方公務員向けの啓発でも必ず登場します。

ただ、「調整」の定義は人それぞれです。
各自がそれぞれの定義に基づいて持論を展開しています。

このブログの開設以来、僕もずっと「調整とは何か?」を考え続けてきたところなのですが、最近になってようやく考えがまとまってきたので、ここで一旦紹介します。

調整業務.001

単なる「合意形成」でも「交渉」でもない

地方公務員の調整業務とは
  1. 自陣営にとって有利な結論(落とし所)を
  2. 「客観的妥当性」と「住民感情へのケア」を確保しつつ
  3. 関係者を納得させて実現させる業務
だと思っています。

民間企業にしろ役所にしろ、組織における調整業務とは、単に合意を取り付けるだけではありません。
 
自陣営にとってお得な結果でなければ(損しか生じないケースの場合は損失が最小化される結果でなければ)、たとえ関係者との同意が達成できたとしても、意味がありません。
取りうる選択肢の中でも最善のものを選び取ろうとする、わずかでも自陣営に有利な結論へと誘導しようとする意地汚さが、調整業務においては非常に重要です。

*****

ただし役所の場合は、成果がどんなものであれ、その根拠が「正しい」ものでなければいけません。

「関係者が全員納得しているから問題ないのでは?」という理屈は、役所の場合は認められません。
民主主義の仕組み上、直接的な関係者のみならず、世間一般を納得させなければいけないのです。

「世間一般の納得」というものがまた面倒で、単に論理的・倫理的に正しく、良い結果がもたらされるだけでは足りません。
さらに「感情的な納得」という要素が必須です。

このため、地方公務員の調整能力には、「客観的妥当性の確保」と「住民感情のケア」が欠かせません。
民間企業の調整業務とは一風異なる、役所ならではの要素と言えるでしょう。

*****

もちろん、調整を成功させるためには、関係者の同意が絶対に必要です。
同意を取り付けるための交渉こそ調整業務の本番であり勘所であるのは、役所でも民間企業でも変わらないでしょう。
ただし役所の場合は、本番に先立つ準備のほうも、相当に重要なのです。

調整業務の3段階

調整業務の大まかな流れは前述のとおりであり、3つの段階に分かれます。

自陣営にとって有利な「落とし所」を探る

まずは「落とし所」、つまり「実現可能な選択肢のうち最善のもの」を設定するところから始めます。
 
この過程を通して、
  • 今回の調整において絶対に譲れないポイント
  • 優先すべき要素
  • 時間や費用、ルールなど制約
などの「条件」を整理していきます。

もちろん「落とし所」は、以降の調整プロセスの中でどんどん変わっていきます。
とはいえ最初に条件を整理して「最善手」が何なのかを把握しておかないと、調整過程全体の方向性が定まりません。

「客観的妥当性」と「住民感情へのケア」を満たす説明(根拠)を作る

「落とし所」の案が固まったら、次はこれを正当化するための説明(根拠)を作ります。
 
役所には「二枚舌」は許されません。
直接の交渉相手である関係者にも、無関係な世間一般に対しても、同一の説明を以って納得させなければいけません。
 
このような説明を準備するのは非常に大変で、考慮すべき要素がたくさんあるのですが、少なくともまずは論理的・倫理的に正しくなければいけません。
まず「正しい」ロジックを作ってから、案件ごとの個別性をふまえ、チューニングを加えていくことになるでしょう。

「正しい」説明ができたら、「感情面での適切さ」との両立を模索していきます。
いくら「正しい」説明であっても、感情的に許容できないサイコパスじみたものであれば、理解は得られません。

「論理的・倫理的な正しさ」と「感情面での適切さ」は、たいてい相反します。
バランスをうまく調節しなければいけません。

関係者と交渉して納得させる

調整≒交渉という理解をしている方も多いと思いますが、役所の調整業務に限っていえば、僕はむしろ交渉に臨むまでの準備段階(「落とし所」と「説明作り」)のほうが重要だし大変だと思っています。

とはいえ、関係者が納得してくれなければ調整は成立しないわけで、交渉段階が本番であることに変わりはありません。
 

あくまでも準備した「落とし所」と「説明」を極力そのまま相手に納得してもらうのが、交渉の最大の目的です。

交渉段階で頑張りすぎる(相手を納得させるためにアドリブ的に喋りすぎる等)と、事前に準備した説明内容から外れてしまい、後々に関係者から「説明が違う」「相手によって顔色を変えた、二枚舌だ」という攻撃を受けかねません。
このような批判は、民間企業であれば知らん顔できるのかもしれませんが、役所の場合は致命傷です。何としても避けなければいけません。
 


調整業務に必要な能力(調整能力)

上記の過程を達成するために必要な能力が、俗にいう「調整能力」です。
これを構成する要素として、「知識」「公務員的センス」「洞察力」「プレゼンスキル」があると僕は考えています。

調整案件に関する知識

知識は主に「落とし所を探る」段階で必要です。
 
調整案件に関する知識、例えば
  • これまでの経緯・背景
  • 他自治体の成功・失敗事例
  • 関係法規制などのルール
といった知識がなければ、そもそも「ベストな落とし所」を設定できませんし、「制約条件」を見落とす危険もあります。

公務員的なセンス

落とし所を探る際には、「自陣営にとって何が有利なのか?」という基準が必要です。
これには現時点での損得のみならず将来的な影響も考慮する必要があり、知識だけでは太刀打ちできません。

同様に、説明づくり段階には、「世間一般に通用する妥当性はどんなものか?」「世間一般が感情的に許容できるのはどこまでか?」という基準が必要です。
これも「世間一般」なる抽象的な存在を想定して考えなければならず、ロジカルシンキングが単に得意なだけでは上手くいかないと思います。

これらの能力は、地方公務員として働くうちに培われていくものだと思います。
「公務員的センス」というなんとも抽象的な名称を使わざるを得ず非常に心苦しいのですが、今のところこれ以上にしっくりくる言葉が思い浮かびません。

洞察力・プレゼンスキル

最後の二つは、まとめて「コミュニケーション能力」と称してもいいかもしれません。
 
いずれも主に最後の交渉段階で必要になるものですが、「洞察力」のほうは最初の「落とし所設定」でも重要です。
関係者の意向を最序盤に察することができれば、適切な制約条件を設定でき、より精度の高い「落とし所」が出来上がるでしょう。

プレゼンスキルは、わかりやすくて好感の持てる話し方や身振り手振り、相手の反応を伺いつつ話のペースを工夫する……といった一般的なものです。

奥深い「調整能力」

役所には「トークが上手いわけではないのに調整業務が得意」という方がたまにいます。
特に超有名大学出身の方に多いです。

こういう方は、きっと交渉の準備段階が完璧、つまり「落とし所」と「説明」が完璧なので、話術加算が無くとも関係者を納得させられるのだろうと思います。

「調整能力=交渉能力」という図式は、地方公務員界隈においては表面的すぎます。
地方公務員の調整能力はもっと複合的なもので、一朝一夕で身につくものでもなく、非公務員が即座に真似できるものでもないと思います。

地方公務員=転職弱者という図式に関しては、もはや議論すら生じず、常識として定着しつつあります。

このブログでも「地方公務員経験を通じて確実に鍛えられる能力は『庁内調整能力』だけ」という趣旨の記事を書いています。

庁内調整能力以外も伸ばしたいのであれば、地腹を切って、プライベートの時間を割いて、自発的に努力するしかないと思います。

・・・というのが僕個人の感覚なのですが、転職市場における地方公務員経験の価値に関しては、実際のところ、僕含め正体不明の人間が書いたインターネット上の記事くらいしか情報源が無く、信憑性に欠けます。

ところが先日、地方公務員の転職市場における「強み」について真っ向から触れている本を発見しました。




本書は、定年を目前に控えた中高年地方公務員向けの就職指南本です。
定年退職後もなんらかの形で労働し続けることが求められる現在、安易に再任用を選ぶのではなく、民間企業への再就職という選択肢も含めて、定年退職後という「第二の人生」について考えることを推奨しています。

履歴書や面接で使える「アピールポイント」を検討していく中で、地方公務員ならではの「強み」として、6つの要素に触れています。(同書73ページより)

本書の題材は「中高年地方公務員の再就職」であり、よく話題に上る「若手地方公務員の転職」とは、共通点もあれば相違点もあると思います。

本書で取り上げられているそれぞれの要素について、僕のコメント入りで紹介していきます。

法令や通知に慣れている

まず最初に挙げられているのが、法令や通知のような行政発出文書に慣れている点です。
正確に理解できるかどうかは別にして、「我慢して読む」ことができる時点で、民間サラリーマンよりも優位に立てる、とのこと。

加えて、過去に行政文書を作っていた経験のおかげで、文中に使われている細かい単語や表現から、発出側が考える「ニュアンス」を読み取ることも可能です。

確かに強みだが「地方公務員ならでは」と言えるのか?

やたらとお硬い行政文書を読解する能力は、地方公務員の強みといえるでしょう。
(公務員試験を通して読解能力を測っているのかもしれません)

ただ、地方公務員と同レベルの学力水準(出身大学のレベルなど)の方であれば、公務員であれ民間勤務であれ自営業であれ、読解力には大差ないと思います。
というより、読解されていなかったら、制度が回りません。

転職でいえば、大卒者がほとんどいないような小規模組織であれば「強み」になるのでしょうが、大卒者が普通に入社してくる大企業であれば、足切り回避にはなれども加点要素にはならないと思います。


助成金、補助金等役所関係の手続きに慣れている 

ついで挙げられているのが、役所相手の手続きに慣れている点です。
これは僕も確実に地方公務員特有の強みだと思います。

民家企業にとって、役所関係の手続きは無駄でしかありません。
どれだけ頑張っても利益を生まないからです。
必要最小限の時間と労力しか投入したくありません。
そのため、手続きをサクッとこなせる人材は、それなりにニーズがあるといえるでしょう。

実際、私の知っている範囲でも、中小企業診断士と行政書士と社労士の資格を取得してから独立して、補助金に強いコンサルタントとしてバリバリ仕事をしている方がいます。


関係者との調整能力がある

地方公務員稼業では役所内外の関係者と常に調整が生じることから調整能力が培われる、という点も、強みとして挙げられています。

民間企業勤務でも同様の調整業務はつきものであり、「地方公務員だから調整能力が高い」とは必ずしもいえないでしょう。
しかし、地方公務員の場合は、民間企業と比べ、調整すべき相手の属性が幅広いと思います。
地域住民、PTA、NPO、慈善団体……のような、利益・損得だけが判断基準ではない相手との調整は、民間企業ではなかなか発生しないのでは?

さらに最近は、こういう集団がどんどん存在感を増してきているところであり、民間企業も無視できなくなると思います。


文章力がある

役所仕事では文章をよく書くので、文章力が備わっているという点も、強みとされています。

これは正直微妙なところだと思います。
確かに地方公務員は、普段から仕事で文章を書きますが、あくまでも我流で書き続けているだけです。
添削やフィードバックを受けられるわけではなく、上達するとは限りません。
「慣れている」のは確実ですが、「文章力がある」とまでは言えないと思います。

民間企業の場合、文章を書く専門のスタッフがいます。
きちんと基礎教育を受けた上で、日々フィードバックを受けながら成長を続けているような存在です。

こういう専門スタッフと比べると、地方公務員の文章能力は駄目駄目です。
少なくとも「強み」として堂々と語れるレベルには遠く及んでいないでしょう。


新しい職場への適応能力がある

民間企業と比べ地方公務員は異動回数が多く、しかも畑違いの分野を転々とするため、新しい職場への柔軟性・適応能力が備わっている、という点も挙げられています。

これも正直微妙なところだと思います。
役所は「頻繁に人が入れ替わる」という前提で成り立っている組織であり、経験の浅い職員でもそれなりに仕事を回せるよう、ある程度は業務がマニュアル化されています。

そのため、民間企業よりも「畑違いの異動」のハードルがかなり低く、役所の人事異動を乗り越えられたからといって、柔軟性があることの証左にはならないでしょう。


信用力がある

最後に、役所という「堅い職場」に長年勤務していたことから、ある程度は信用がおける人物だとみなしてもらえる、という点が挙げられています。

これはその通りだと思います。
人間的にも金銭的にも、それなりに信用してもらえることでしょう。

一朝一夕では何もに身につかない

6つの「強み」を見てきましたが、いずれにしてもすぐに身につくものではありません。
あくまで定年退職間際まで勤め上げたから身につく「強み」であって、30歳前後で転職しようとする際には到底使えないネタばかりだと思います。

やはり、若いうちに地方公務員から民間企業に転職したいのであれば、地方公務員経験を活かすという方向性は諦めて、それ以外の強みをアピールするしかないのでしょうか……?
「元地方公務員だから〜〜できます!」ではなく「元地方公務員だけど〜〜できます!」、地方公務員として働いていたというディスアドバンテージがありますが問題ありません!というふうに……



地方公務員各位におかれましては、新型コロナウイルス感染症関係の業務で多忙を極めているところと思います。
しかも今は、過去にない勢いで(少なくとも僕が公務員になって以来は最も苛烈に)役所批判・公務員への反感が噴出しているところで、ストレスも相当なものだと推察します。

昨年は僕自身、特別定額給付金の件で(担当課ではないのに)散々ボロクソになじられましたが、あの頃は所詮「カネ」の問題であり、「ゴネ得ワンチャン」を狙うかのごとく軽薄叩き方でした。

ところが今はワクチン接種という命に直結する話題がメインです。
苦情の量も質も今年のほうが一層重たく、精神的に応えると思います。

ただ、公務員として成長したい方にとっては、今はある意味チャンスだと思います。
役所人生に欠かせない「危機察知能力」を磨き上げる教材があちこちに転がっているからです。

危機管理の最初の一歩たる「危機察知」

ここでいう危機察知能力とは、なんとなく「このまま進めると危ないな」という直感を得る能力です。

「危機」というと災害を想像するかもしれませんが、役所の仕事はどんなものでも「危機」がつきものです。

最も身近なものは住民からの苦情です。
窓口でごねるくらいならなんとかなりますが、最近は一個人のクレームがインターネット上で油を注がれて大事(おおごと)に発展していくケースも多く、これからは一層注意が必要だと思います。

ほかには、 
  • メディアによるネガティブ報道
  • 民間団体との対立
  • 権力者からの横槍

あたりが典型でしょう。



危機察知能力は、出世する/しないにかかわらず、どんな部署に勤めていようとも、職員全員に求められる能力だと思います。

危機察知を含めた「危機管理」全般は、基本的には管理職の仕事です。
特に「危機に対してどう対処するか」は管理職が判断すべき事柄でしょう。

しかし、危機察知に関しては、業務の最前線に立っている平職員目線でないと察知できないものや、管理職世代だと気づかない若年層特有のものも多数あります。
管理職に任せているだけでは不十分であり、若手平職員の知見で補う必要があるのです。


今だけ?ケーススタディやり放題

新型コロナウイルス感染症のせいで、今はそこら中に危機事案が溢れかえっています。
行政への不信感と反発が長期間蔓延し、公務員vs非公務員の「断絶」すら生じつつある現状は、危機管理敗北の結果とも言えるでしょう。

つまり今は、反省すべき事案が大量に転がっています。
しかも全国あらゆる場所で均一に生じているために、自分に身近な事例が容易に入手できるのです。

出世したいなら絶対必須

先にも少し触れましたが、「危機管理」は管理職の重要な役割です。
出世するためには、危機管理能力が欠かせません。

危機管理能力には色々な側面があり、今回取り上げている「危機察知」もその一つです。
「危機察知」は危機的状況に陥ることを未然防止するためのスキルであり、平時から役立つものです。

危機的事態は、何より「起こさない」のがベストです。
そのため、数ある危機管理能力の中でも、未然防止に資する「危機察知」はかなり重要な位置付けだと思われます。
つまり、出世するために必要な「危機管理能力」の中でも、「危機察知」は特に必要なのです。

危機察知能力の磨き方

ここからは僕が実践している方法を紹介します。
あくまで陰湿なオタクによる自己流に過ぎません。
もしかしたら、すでに体系化された定番手法が存在するかもしれません。



この方法は、精神に相当な負担がかかります。
心身に余裕の無いときは厳禁です。
 


1.事例探し

まず、SNSで、勤務自治体に対する批判的発言をしているアカウントを探します。
首長の名前で検索すれば大量にヒットするでしょう。

できればフェイスブックがおすすめです。
実名かつ投稿文字数に制限が無いせいか、ツイッターと比べて文章が整っていて、分析しやすいです。

2.感情特定

次に、そのアカウントの発言を遡っていって、批判的発言の原動力となっている感情を探っていきます。
だいたいは「怒り」「呆れ」「悲しみ」のいずれかだと思います。

感情由来ではなく「打算」という可能性も大いにあります。

3.感情の原因特定

感情が特定できたら、その感情を抱いた原因を深掘りしていきます。

  1. とある情報を知った
  2. とある情報を知らない
  3. とある情報を誤解した
  4. 実害を被った
  5. 根本的思想(反権力など)
  6. 私怨
  7. 誰かの受け売り


このあたりが典型でしょう。

このうち1〜3は特に注目に値します。
情報の伝え方を工夫していれば、未然防止できたかもしれないからです。
どういう点が不味かったのか、詳しく分析していくと良いでしょう。

4.プロフィールの特定

ここからはアカウントの持ち主に注目していきます。
過去の発言を遡ったり、アカウント名で検索してみたりして、持ち主の属性を特定していきます。

  • 年齢
  • 性別
  • 職業
  • 居住地
  • 経歴
  • 所得水準
  • 家族構成
  • 人間関係
  • 思想・信条
  • 好き嫌い
このあたりの情報を、わかる範囲で探っていきます。

感情を特定する前にプロフィールを探ることもできますが、プロフィールを先に知ってしまうと変な先入観を持ってしまうかもしれません。
そのため、僕は先に感情を探ることにしています。

1〜4までの過程を通して、住民の反発という危機がどうやって発生したのかをトレースすることで、いくつかのパターンが見えてきます。
パターンを多く知れば知るほど、危機察知能力の基礎ができ上がっていくはずです。

5.リストの作成

プロフィールを探ってみた結果、アカウントの持ち主が
  • 法人・団体の代表者
  • 個人事業主
  • メディア関係者(個人活動のインフルエンサー含む)

のような、今後もしかしたら役所とビジネスパートナーになりうる人物であれば、その人のプロフィールをリストに記録しておきます。

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という諺がありますが、実際のところ、負の感情はなかなか消えないものです。
これから数年経って新型コロナウイルス騒動が落ち着いたとしても、いったん自覚してしまった行政への反感は、ずーっと燻り続けると思います。

つまり、こういった方々は、金輪際、行政の施策には協力してくれない可能性が高いです。
相手側から行政に近づこうともしないし、行政側から接触しようとしても拒絶されるでしょう。
迂闊に近づくと、双方とも嫌な思いをしかねません。

接触しないほうがいい相手を事前に把握しておくことも、危機察知のひとつです。
つまり、このリストそのものが、危機察知能力の一部を形成するのです。
しかもこのリストはどんな部署に異動しようとも使えますし、同僚や後輩に引き継ぐこともできます。


僕はかれこれ一年間くらい上述のプロセスを続けています。
最初は批判者リスト作成が目的でした。
 

リストを作って観光や地域振興担当の同期職員に共有しよう!という半ば私怨から始まったのですが、やっているうちにだんだん目的が変わってきました。
批判的言動をよくよく見てみると、些細な行き違いが発端のものが多々あります。
工夫次第では未然防止できたであろう案件も多いです。

事例が豊富な今こそ、批判的言動の原因を見つめることで、将来に役立つ能力が養えるはずです。

地域おこし協力隊のバリエーションとして、「地域プロジェクトマネージャー」や「地域おこし協力隊インターン」という制度が新たに始まるようです。
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総務省ホームページによると、地域おこし協力隊は、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に移住して、地域ブランドや地盤産品の開発・販売・PR等の地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」を行いながら、その地域への定住・定着を図る取組です。



開始前は期待されていたのに実際スタートしたらトラブルが続発して利用実績が伸びない……という悲しい施策がたびたびある中、「地域おこし協力隊」はきちんと利用実績が伸びているだけでなく、色々な亜種まで登場しています。

ということは、隊員を受入れる側の自治体もメリットを感じているのだろうと思われます。
上記の総務省ホームページにアップされている「受入自治体に対するアンケート」でも、約8割の自治体が「今後も地域おこし協力隊を活用していきたい」と回答しています。
トラブルもいろいろあると聞きますが……


ただ、地域おこし協力隊のような外部人材が重宝されるということは、裏を返すと、地元人材だけでは足りていないということにほかなりません。

「田舎人材が持っていないスキル」ほど田舎社会は欲している

「地元人材だけでは力不足である」と状況を詳しく見ていけば、地域ごとに事情が異なるでしょう。
地元人材だと地縁や因習にとらわれて身動きがとれないのかもしれませんし、地元人材よりも都会人材のほうが能力的に優れているのかもしれません。

個人的には後者だと思っています。
より正確にいうと、地方人材には無いスキルを都会人材は持っているのです。

具体的にはIT関係全般定量的分析あたりでしょうか。
比較的目新しく、学識も必要になるスキルです。

営業や経理、法務のような伝統的なスキルであれば、田舎にもそれなりに人材がストックされているはずです。
しかし、目新しいスキルや学識の必要なスキルは、これまで田舎では習得する環境がそもそも無く、都会と比べればニーズもわずかなために実務経験を積む機会も乏しかったのでしょう。

今となっては流石に誰もがこうしたスキルの重要性を理解していますが、人材は急には育ちません。
しかも育つまで待っている余裕もありません。

そこで「スキルのある人材」を外部から調達する手段として「地域おこし協力隊」が機能しているのではないかと思います。

地域おこし協力隊とは関係ありませんが、大企業を定年退職してからUIターンしてコンサル業を始める方も最近けっこういらっしゃいます。
こういった方々を見ていると、成否がはっきり分かれています。

戦略論を唱えるだけの方はうまくいっていないようです。
仕事が無くて時間にゆとりがあるのか役所にもよくいらっしゃって、「この地域は〇〇が駄目で、××すべきなんだ、役所が旗振り役になって意識改革せよ(そして私を起用してくれ)」と主張されます。

一方、自分で定量的分析のような作業を手掛けている方は重宝されています。

やはり田舎はスキルに飢えているのだと思えてなりません。

「地元を盛り上げたい」という熱意に燃えている方は、田舎にもたくさんいらっしゃいます。
しかし、彼ら彼女らが頑張っても、事態はなかなか好転していません。

このような状況において、さらに上乗せすべき要素は「熱意のある人材」よりも「スキルのある人材」でしょう。

成果を出すなら遠回りのほうがいい?

地方公務員への就職を考えている方の中には、「地元を盛り上げたい!」と燃えている方もいるでしょう。
 
ただ、本当に成果を出したいのであれば、まずは都会で就職して、最先端のスキルを身に着けてから地元に舞い戻ってくるほうがいいのかもしれません。
めんどくさい公務員試験にチャレンジするだけの意欲があれば、学べる環境に身を置けば、きっと成長できます。

反対に、地元に長年住んでいなければ得られないスキルもあります。
地域の雰囲気というか風土というか……「らしさ」のようなものは、一朝一夕では身に付きません。
これが無いと地域住民から信頼を得られず、何をするにしても独りよがりになってしまいかねません。

ただし、こちらのスキルは保有者が既にたくさんいます。
希少性という意味でも、まずは都会で修行する利点があるでしょう。

特に都会から地元へUターン就職を検討している方は、一度冷静に考えてみてほしく思います。

都会に嫌気がさしていたり、僕みたいに就職活動に失敗して都会に居場所が無くなってしまったのであれば、Uターンするしかありませんが、「地元で活躍したい」のであれば都会で修行する選択肢もぜひ一考してほしいです。

そのほうが地域のためにもなるし、何より自分自身のためにもなるかもしれません。

公務員は頻繁に「頭がおかしい」と揶揄されます。
 
住民は電話越しでも対面でも軽々と放ってきますし、マスコミによる公務員バッシングの中でも頻出表現です。

インターネット上では「公務員になるような人間はもともと頭がおかしいのか、公務員として働く過程で頭がおかしくなるのか」みたいなニワトリvsタマゴ論争も繰り広げられています。
(個人的には両方とも存在すると思います。そして両者は「おかしさ」の性質が違います。)

一方、公務員側が他者を「頭がおかしい」と思うケースもしばしばあります。
住民、マスコミ、議員といった役所外の人間はもちろんのこと、味方のはずの上司・部下・同僚ですら時折「頭がおかしいのでは?」と感じてしまうものです。
地方公務員の場合は、中央省庁を動かしている官僚に対して「頭のおかしさ」を感じるケースもあるでしょう。

自分にとって不都合な状況に陥ったとき、その原因を他者に求め、他者に責任をなすりつけると、気分が楽になります。
特に「他人の人格」に原因があると決めつけて、情状酌量の余地なしと断じてしまうと、自分の非が一切なくなり、感情的にもスッキリします。

ただ、こういう整理法は憂さ晴らしにはぴったりですが、根本的な事態の解決に至るとは限りません。
一方的に責任を押し付けられ、「人格に問題がある」と糾弾される側にとっては、当然ながら反発したくなります。
こうして敵対的対立構造が出来上がってしまうと、どんどん事態がこじれていって、解決が遠のいていきかねません。

「頭がおかしい」と判断する前に、情報の非対称性を疑ったほうがいいと思っています。

自分と相手の知識水準は異なる

「情報の非対称性」という言葉自体は公務員試験でも頻出のワードで、聞き覚えのある方も多いでしょう。

ここでいう「情報の非対称性」とは、以下のような状況を指します。

  • 自分の判断の根拠となっている「重大情報」を、相手は持っていない または
  • 相手の判断の根拠となっている「重大情報」を、自分は持っていない

持っている情報が異なるのであれば、異なる判断を下して当然です。
もし相手に自分と同じだけの情報が備わっていたら、自分と同じ判断を下すかもしれません。
この可能性を否定できないうちは、「頭おかしい」とは言えません。

同じ情報を持っているのに異なる判断を下すのであれば、相手と自分は判断基準が異なるわけで、「頭おかしい」認定も可能になります。

インターネットが普及したおかげで「情報の非対称性」が解消されたかのように思っている方もけっこういると思いますが、実際はまだまだ解消されていないと僕は思っています。
 
「情報の非対称性」の存在を忘れているのか無視しているのか、いずれにせよ
  • 「自分も知っていることは相手も当然知っているはずだ」 →相手の無知を考慮しない
  • 「相手が持っている情報は全て自分も持っているはずだ」 →自分の無知を考慮しない
こういう思い込みのせいで不必要にキレている方が多いように思います。
苦情対応していると本当によくあるケースです。


お互いを深く知らずにキレ合う役所と住民

地方公務員と住民という関係では、この「情報の非対称性」が特に生じやすいと思っています。

地方公務員(というより役所組織)は、大事な情報ほど隠したがります。
重大な政策判断ほど対外的に公表できないアレな理由で下されていて、下っ端の職員たちは真の理由を隠すための「表向きの理由」作りに奔走するものです。
さらに最近は個人情報保護にも気を遣わねばならず、何事も迂闊に公表できません。

些細な案件であっても、施策の背景を知らないせいでキレている人によく遭遇します。
「なぜこの施策が実施されているのか」という理由や経緯を知らずに「無駄だ!」と怒っていたり、法的規制を知らずに「なぜ〇〇しないのだ!」と騒ぎ立てたり……

そういう方々から苦情をいただいた場合には、順序立てて背景を説明します。
「最初からそう言えよ!」と捨て台詞を吐かれれば幸運なほうで、「住民にはっきり伝えない役所の広報体制が悪い!」という新たなトピックへと延焼して対応が長引いてしまうパターンもよくあります。

「頭おかしい」認定する前に…… 

冒頭でも触れましたが、公務員は日常的に「頭おかしい」と叱責されます。

罵声を浴びせられる身としては、即座に相手を危険人物認定したい誘惑に駆られるものです。
 
しかし、そう判断する前に、「そもそも必要な情報を持っていなかっただけで相手の人格に問題は無い(はず)」と一呼吸置くことが大事だと思います。

相手を「頭おかしい」認定したところで、事態が好転するとは限りません。
実利を得るためには、軽率に「頭おかしい」認定するのではなく、どうして差異が生じているのかを落ち着いて考えてみるほうが良いと思います。

そもそも「頭がおかしい」という評価自体、もっと細分化して考えるべきだと思います。
判断に至るまでは様々なステップがありますし、各ステップを決定する要素も色々あります。
そのうちどこが自分と異なるのか、冷静に分析してみるのです。

即座に「頭おかしい」認定をぶつけあうギスギスした世の中だからこそ、腰を据えて「差異分析」する価値があると思います。


最近の時事ネタだと、「東京オリンピックの開催の是非」がまさに「情報の非対称性」の典型だと思っています。
当局側と一般国民の保有する情報があまりに異なるために、国民側は当局を「頭おかしい」と感じている……のでは?

ここからは僕の妄想です。

当局にとってすれば、オリンピックは外交問題なのでしょう。
やる/やらないの判断次第で、これからの国際社会における位置づけが変わって、いろいろな場面で不利益を被りかねません。
そこで、諸外国有力者の意向のような情報を収集して、諸々の判断を下しているのでしょう。

外交関係の情報はトップシークレットであり、国民が知るはずありません。
当局と国民の間には、凄まじい「情報の非対称性」が横たわっています。
そのため国民は当局の判断が理解できず、「当局の人間は頭がおかしい」と怒っているのです。

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