キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

タグ:スキル

弊ブログ読者の中には、ひょっとしたらブログ執筆に興味のある方がいるかもしれません。
そういう方に向けて、地方公務員ネタ中心で約5年間ブログを書いてみた率直な感想をお届けします。

ブログ執筆を趣味とするメリットは?

僕の場合、1記事書くのに大体3時間くらいかかります。
累計だと1500時間程度、20代後半から30代前半にかけての貴重な時間をこのブログに費やしているわけです。
地方公務員法抵触リスクを恐れて広告は貼っていないので、いくら書いても収入はゼロです。
金銭的に見れば時間の浪費にほかなりません。

しかしこの時間は、僕の成長に間違いなく寄与しています。無駄だったとは思いません。

文章力の向上

ブログを書き続けたおかげで、堅めの文章を書くスキルは確実に向上しました。
1文1文の表現力はまだまだ未熟ですが、文章全体の構成力や論理展開のほうは随分マシになったと思います。詳しくは後述します。

正確な知識の定着

ブログを書くために制度要項や統計データを調べていると、意外な発見がたくさんあります。
初めて知る事実だったり、勘違いだったり……いずれにしても「ググればわかる」ことを案外知らないものだと、日々痛感させられています。
職場で恥をかくまえに誤解を正せて良かったと思います。

日常が面白く見える

普段から「ネタ探し」という観点で役所内を眺めるようになり、役所内で過ごす時間が少し楽しくなりました。
別部署との衝突とか問題職員とのやりとりみたいな面倒な仕事も、「格好のネタ」と捉えられるようになり、以前ほど億劫には感じられません。

自律性の回復

ここまでブログを書き続けてこられたのは、ひとえに楽しいからです。
特に、調べて考えて文章化する……という一連のプロセスの達成感に取り憑かれています。
ひたすら他律的であることを強いられる仕事とは違い、ブログが好き放題書けるおかげで、平日ゴリゴリ削られた自律性を回復できている実感もあります。

 



ブログ執筆のデメリットは?

ブログ執筆のプラス面は上述のとおりで、手軽かつローコストで始められる手段としてはかなりリターンが大きいと思います。
ただし、地方公務員をネタにしてブログを書こうとすると、特有のデメリットが生じてきます。

オフの時間も仕事のことを考える羽目になり気分転換できない

地方公務員をネタにブログを書くということは、仕事について休日にも真剣に考えることにほかなりません。ある意味セルフ休日勤務です。
「せっかくの休日を潰して仕事のことを考えなければいけない、しかも無賃」と捉えると、地方公務員ブログは苦行そのものです。
僕自身、「どうして休日なのに役所のことを考えなきゃいけないんだろう?」と虚しくなってきて、執筆を中断することも時々あります。

正直、僕がこの虚しさに耐えられているのは、
  • 田舎なので娯楽が少ない
  • 他の娯楽を楽しむだけのお金が無い
  • 独身ゆえに時間に余裕があり休日を持て余しがち
という条件が重なっているおかげだと思います。
もし僕が都会に住んでいたら、このブログよりも別の娯楽に流れていることでしょう。

ネガティブな情報を収集せざるを得ず鬱々としてくる

地方公務員をネタにするなら、どうしても社会のダークサイドに触れざるを得ません。
役所の仕事の多くはマイナスをゼロに近づける仕事であり、今現在どのような惨状が存在するのかをまずは情報収集して理解しないと、記事は書けません。
まちづくりや地域振興のような前向きな話題であっても、必ずダークサイドは存在します。 

地方公務員に向けられる軽蔑や嫌悪感も、役所の意思決定や地方公務員の価値観に大きな影響を及ぼしており、無視できません。
ブログを書くためには、地方公務員がどのように叩かれているのかを詳細に把握する必要があります。
せっかくの休日にわざわざ社会のダークサイドを調べたり、ネット上の公務員叩きを眺めたりしていると、どんどん気分が悪くなってきます。
ブログをやらなければ知らずに済んだはずのネガティブ情報を知ってしまい、余計にストレスを抱えているわけです。
精神的自傷と言っても過言ではないでしょう。

もちろん、ネガティブな情報を一切省いて、ひたすら明るく仕上げることも可能ではあります。
しかし、地方公務員界隈はネガティブなファクトがてんこ盛りであり、これらを無視して地方公務員ネタの記事を書こうとすると、相当工夫しない限り薄っぺらくなるでしょう。
素材が全然足りないのです。

文書力を向上させるにはどうすればいいのか?

趣味でブログを書くことの効用として、「文章力の向上」がよく挙げられます。
文章力が身につくことで、本業のみならず副業にも役立つ……という文脈が多いでしょうか。

地方公務員の場合、普段から仕事でそれなりに文章を読み書きしています。
そのためわざわざブログを書かずとも相当程度の文章力が備わっているものです。
そこからさらに文章力を高めていくためには、ただひたすら記事を量産していくのみならず、文章力とは何なのかを改めて考えて、意識的に練習する必要があると思います。

文章力=語彙力×構成力

俗にいう文章力は、語彙力構成力の2つに大別されると思っています。
 
語彙力は、適切な単語と表現を扱えることです。
構成力は、文章全体の流れを整えることです。

文章力の構成要素には他にもいろいろあるのでしょうが、この二つを高めることで、正確でわかりやすく、読者の心に残る文章が書けるようになるはずです。

語彙力:たくさん読む

語彙力のほうは、よく言われるように、たくさん読んで、使える単語や表現のストックを増やしていくしかないと思います。
特に、自分が書きたいテーマに関する単語や表現を中心に、網羅的に収集していけばいいでしょう。

さらに語彙力は、物事をより深く理解し考察する助けにもなります。
単語は概念であり、思考や分析のツールでもあります。
ある物事に属する固有名詞をたくさん知っていれば、それだけその物事を細かく分類・分析できるわけですし、ある物事を描写する形容詞をたくさん知っていれば、それだけその物事を多角的に観察できるわけです。

例えば、雨についての単語をたくさん知っていれば、それだけ雨を細かく分類できる、つまり雨について深く考察できます。
より身近な例だと、「公務員」という単語しか知らない人と、「会計年度任用職員」「臨時的任用職員」「任期の定めのない職員」「フルタイム再任用職員」「短時間再任用職員」などの公務員の細目を知っている人とでは、同じく公務員批判をするにしてもレベルが段違いのはずです。

語彙力が伸びれば、文章力向上につながるのみならず、思考力もどんどん増していき、文章の中身自体がより面白くなります。

構成力:参考書を読みながら練習する

ブログ執筆により磨かれるのは、語彙力よりも構成力のほうだと思います。

文章の構成といえば「起承転結」や「序破離」あたりが有名ですが、これらが万能というわけではありません。
文章のフォーマット次第で、求められる構成力は異なります。

地方公務員の日常業務でも、メール、通知文、議事録、挨拶文、議会答弁……などなど、いろいろなフォーマットの文章を書きます。
我々はこれらを同じ方法論で書いているわけではなく、それぞれの書き方のコツを無意識に使い分けています。

話の舞台を役所実務から文章全般に敷衍しても、状況は同様です。
世の中にはたくさんのフォーマットがあり、フォーマットに応じた作文のコツ、つまり構成力が存在します。
つまるところ、自分が書きたい文章のフォーマット次第で、習得すべき構成力も変わってくるわけです。

とはいえ、多数のフォーマットで適用できる汎用的な構成力も存在します。
こういう構成力を身につければ、文章力が飛躍的に向上します。

僕の経験では、
  • ロジカルな文章
  • 脚本(ストーリー)
  • エッセイ
この三種類はかなり応用が効きます。

おすすめ参考書

構成力の養成方法自体は単純です。
定評のある参考書を入手して、それに従って練習するのみです。

ロジカルな文書だと『考える技術・書く技術』が一押しです。



超有名な本なので、すでに読んだことのある方も多いでしょう。
僕が学生の頃は「就活中にマスターすべき一冊」とも言われていました。
Amazonのレビューだと「読みにくい」という声が多数ですが、地方公務員なら難なく読めると思います。
ちなみにこのブログも、2019年2月頃から本書のメソッドに従って書いています。


脚本(ストーリー)だと、このあたりでしょうか。
ストーリー
ロバート・マッキー
フィルムアート社
2019-05-24


SAVE THE CATの法則 SAVE THE CATの法則
ブレイク・スナイダー
フィルムアート社
2018-08-03


「感情」から書く脚本術
カール・イグレシアス
フィルムアート社
2018-08-03



ストーリーの力を借りると、事実をわかりやすく印象的に伝えることができます。
「創作趣味も無いのにストーリーを書く技術がどうして必要なのか?」と思う方もいるかもしれませんが、ちょっと齧ってみるだけでも案外役に立つものです。

エッセイはいまだにピンとくる参考書に出会えておらず、どう書けばいいのかよくわかりません。
自分が経験した事実と感情を淡々と描写しつつ、さりげなく自分の主義主張を織り交ぜて読者の思想を誘導するのがエッセイの極意だと思っているのですが、その塩梅が難しいです。

地方公務員ネタでブログを書く際のコツとは?

インターネット上では、日々いろんなメディアが地方公務員について論じていますし、当事者(現役・元職の地方公務員)が運営しているブログもたくさんあります。
そんな中でこれからブログを開始し、価値ある情報を発信していくには、地方公務員として得た知識や経験を用いて、市井の人々よりもう一段階深掘りすることが重要だと思っています。

一般的なブログ運営手法とは真逆だと思われますが、地方公務員ネタのブログに限っては、僕はむしろ著者をブランディングせずに「凡百の一地方公務員」という立場で書くほうが面白くなるとも思っています。
大多数の地方公務員が感じたり考えたりしそうな事柄を、普通の人よりもう一段階深掘りするだけで、十分読み応えが出ますし、オリジナリティも宿るからです。
さらに「物事を深掘りする」という行為自体が、自分自身の成長につながります。

「地方公務員的には常識だけど世間には知られていない」情報だけで十分差別化できる

「役所の常識は世間の非常識」という定型句があります。
公務員の人格を非難する文脈で頻出の表現ですね。

実際、役所の常識と世間の常識は大きく乖離しています。
ただ、常識が乖離している理由は、一般的に言われるような人格的問題よりも情報の非対称性が大きいと思っています。
お互いに保有している情報が違うせいで「当たり前」も食い違うのです。
  • 制度の仕組み
  • 施策の背景や経緯
  • 公的統計情報
あたりは、今やググればすぐにわかるとはいえ、世間一般には案外知られていないものです。
そもそも「ググったら誰でもわかる」という認識すら無いかもしれません。
こういう「地方公務員以外にはあまり知られていない行政関係情報」をきちんと押さえたうえで世の中を眺めてみると、インターネット上の多数説とは異なる発想が見えてきます。
これが地方公務員ならではの付加価値であり、地方公務員ブログを面白くする要素になると思います。

たとえば、今年話題になった「マイナンバーカード取得率の普通交付税算定への反映」だと、
  • 自治体間の競争を無駄に煽る
  • 国の責任を自治体に押しつけるな
  • マイナンバーカード取得の事実上の強制だ
みたいな主張が盛んになされていますが、地方公務員ならではの強み、例えば地方交付税制度の知識を踏まえると、新しい視点が見つかります。

以下、ネットで見つけた某自治体の研修資料を見ながら書いてみました。

地方交付税の目的は、地方交付税法第1条で規定しているとおり「財源の均衡化」と「財源の保障」です。
要するに、税収の少ない自治体でもきちんと行政機能を維持できるように、国が「地方交付税」という財源を配分するのが、地方交付税という仕組みです。

ただし、何でもかんでも財源保障するわけではありません。
地方財政計画に計上されている「標準的な歳出」、つまり
    • 法令に定められている事業(生活保護、ごみ収集など)
    • どんな自治体でも実施している事業(道路の維持補修など)
あたりを中心に財源保障しており、
    • 自治体公式Youtubeチャンネルの運営経費
    • 地域のお祭りへの補助金
みたいな、一部自治体しか実施していなかったり、義務づけ度の低い事業に対しては財源保障していません。

また、地方交付税は国税の一部(消費税の33.1%など)を原資としており、税収に応じて毎年度総額が決まっています。
総額をいかに配分するかを決めるのが総務省の仕事で、今回「マイナンバーカードの取得率を反映させる」と決めたわけです。

このような地方交付税の性質を踏まえると、
    • 現時点ではマイナンバーカードを活用した施策なんて一部先進自治体でしか実施されていないのに、地方交付税で財源保障すべき「標準的な歳出」と言えるのか?
    • もっと優先して財源保障すべき経費がたくさんあるのでは?保健所職員の時間外勤務手当とか……
    • 「一般財源同水準ルール」が適用されている現状では、地方交付税の総額を増やすのは困難であり、マイナンバーカード事業分を新たに財源保障する分だけ、他の事業の財源保障をカットして財源捻出することになるのでは?
あたりの批判が可能でしょう。
 

行政関係のファクトをきちんと押さえておけば、スーパー公務員の方々のような個性的卓見を持たなくとも、それなりにユニークな内容に仕上げられるものです。
いちいち調べるのは面倒ですし時間もかかりますが、その分だけ自分の血肉になりますし、無駄ではないでしょう。


深掘りの練習方法

物事を深掘りしていく手法は、コンサルタントやシンクタンク向けの書籍が参考になります。
一般的な分析・思考のフレームワークをちょっと使ってみるだけでも、新しい視点が得られます。
僕はこのあたりの書籍をよく参照しています。

ロジカル・シンキング Best solution
岡田 恵子
東洋経済新報社
2013-05-02



新版 問題解決プロフェッショナル
齋藤 嘉則
ダイヤモンド社
2015-01-19




地方公務員ならではの「行政実務にまつわる知識と経験」を使って、世間一般とは異なる切り口で物事を眺めたり、世間一般よりも深掘りすることで、新規性のある中身に仕上がるはずです。

困窮者救済を掲げて活動している団体や個人は、世の中に大勢います。
ただその内実を見てみると、自ら施しを行うのではなく、役所に帰責して圧力をかけるだけというパターンが残念ながら少なくありません。老若男女問わず。
(それゆえ、直接に助けている方は本当に尊敬します。)

困窮者救済は、パブリックセクターの本質的な役割です。
役所に対して「もっと救済しろ」と迫ること自体は、全く間違っていません。

しかし、役所に対して「救済しろ」と迫るだけでは、政治団体と変わりません。
慈善団体を標榜するのであれば、もう一歩踏み込まないといけないのでは?といつも思ってしまいます。

もし慈善活動・困窮者弱者救済活動に興味があるなら、一度は地方公務員として働いてみるのもアリだと思います。
地方公務員経験から得られる知見は、かけがえのない財産になるでしょう。
そして、名ばかり慈善団体とは段違いの価値を提供する手掛かりになると思います。

ニーズを理解できる

役所という職場には、困窮者についての情報がどんどん舞い込んできます。

困窮者との接触が生じる職業は、地方公務員以外にもたくさんあります。
しかし、地方公務員ほど幅広い層と接する仕事は他に無いと思います。
 
困窮者の支援・救済は、役所の根幹的な役割であり、様々な困窮者支援制度を提供しています。
民間団体と比べ、カバーしている領域が段違いに広いです。
さらに現状、「困ったらとりあえず役所に振ってみる」ことが常態化しており、ありとあらゆる分野の困窮者が役所を訪れます。
  • 金銭的に困っている人
  • 健康上の問題があり困っている人
  • 家族や近所等の人間関係で困っている人
などが主ですが、「事実は小説よりも奇なり」ということわざの通り、思いもしない窮状を訴えてくる方が日々訪れます。

困窮者の実情は、インターネット上でもある程度は情報収集できます。
しかし、困窮者の中にはインターネットを利用できない方も多く、ネット情報だけでは間違いなく見逃しが発生します。

困窮者の実情とは、つまり慈善活動のニーズです。
どのような理由で困っているかが分かれば、提供すべき慈善活動のメニューが見えてくるわけです。

困窮者当人だけでなく周辺環境も理解できる

役所にいれば、困窮者本人だけでなく、困窮者支援・救済を取り巻く関係者とも幅広く接触できます。
民間事業者、非営利団体、政治家をはじめ、ほかにも思いもしないような界隈の方々が、困窮者支援・救済の関係者として役所を訪れます。

やってくる人のスタンスもまた様々です。
  • 自らの手で困っている人をとにかく助けたい
という人もいれば、
  • 助けることをビジネスにしたい
  • 本当は自分に非があるけど役所に責任を押し付けたい
  • 助ける気はない、搾取したい
という人もいます。

こういった周辺人物との接触機会も豊富にあるために、困窮者の置かれた環境をより深く、包括的に理解できるでしょう。

行政の限界を理解できる

最初にも書いたとおり、困窮者救済は行政の基幹的な役割です。
ただ現状、役所の困窮者救済機能が万全に機能しているかどうかは疑問です。

特に最近は、伝統的に行政が対応してきた身体的困窮者・経済的困窮者のような存在だけでなく、新しいタイプの困窮者がどんどん登場しています。
この中には役所が対応するべきなのか疑問なものも含まれますが、とりあえずどんなタイプであっても役所の責任とされています。

役所の怠慢を諸悪の根源として位置付け、「行政はもっとしっかりしろ」と叩くだけであれば誰でもできます。
真に現状改善を試みるなら、役所がどうして機能していないのかをまず分析して、
  • 「役所が無能で怠惰だから」よりも具体的な原因
  • 「役所がもっとしっかりする」よりも具体的な解決策
を探求していくことが必要なのではないでしょうか?

これらを突き詰めていくには、役所の外から調べるだけでは限界があります。
個人情報保護や政治的事情のために開示できない事情があまりに多く、しかもこういう部分こそ本質だからです。
本質を探るには、役所の一員として、実際にどういう制約条件・外圧があるのか、どういう過程を経て意思決定しているのかを経験するほかないと思います。

外部団体に出向中の今なら人事課にバレないだろう……という目論見のもと、ここ1年半ほど細々と転職活動をしています。
※今のところ地方公務員を辞めるつもりは一切ありません。単なる社会勉強です。

ここまで、転職サイトに登録してオファーを待ってみたり、転職フェアに参加してみたりしてきたところですが、今回は転職シリーズの総仕上げとして、キャリアアドバイザーと面談してみました。

市場価値の低さに定評のある地方公務員、しかも僕は30歳を超えています。
果たしてどれだけ酷評されてしまうのでしょうか……?
これまで獲得してきた資格たちは、僕を助けてくれるのでしょうか……?


<これまでの転職シリーズ>







準備〜作戦編

僕が今回利用したのは、某大手転職エージェントの無料面談サービスです。
エージェントへの登録自体はだいぶ前に済ませており(求人情報を見るため)、そこで提供されているサービスを利用しました。

このエージェントからは、電話やメールで「面談しませんか?」というお誘いを何度も受けており、「転職するかどうか検討中段階でも是非面談しましょう」とプッシュ営業を仕掛けられています。
向こうから誘ってくるくらいなので、生煮え段階の僕が面談しても怒られはしないだろう……と思い、面談を申し込んでみました。

僕がキャリアアドバイザーから引き出したい情報は、転職市場における地方公務員の位置付けです。
一般論を聞き出すのはもちろんのこと、他の転職事例も聞いてみたいところ。
僕が喋る時間は最小限に抑え、キャリアアドバイザーになるべく話させたいです。

そこで、「これから自分のキャリアやスキルを棚卸しする手がかりにすべく、民間企業は元地方公務員をどう見ているのか把握したい」というスタンスを取ることにしました。
こういう理由であれば、「相談する」というよりは「教えを乞う」感じで進めても自然なはず……。

面談本番

面談はオンライン会議アプリ経由で、30分ほど行いました。
アドバイザーの方は僕と同年代くらいの女性で、新人らしさは全然無く、この道でそれなりに経験を積んでいるオーラが出ています。期待大です。

まずは簡単に自己紹介をした後、履歴書の中身についていくつか先方から質問されました。
具体的には、転職先の条件の優先順位、興味のある業界、転職する場合の就業見込み時期あたりです。

あとは地方公務員としての業務経歴についても色々聞かれました。
特に観光部局での経験を深掘りして尋ねられ、
  • 課内でどういうポジションを務めたのか
  • 特に印象に残っているエピソード
  • 役所外部との折衝経験
このあたりを結構詳しく話しました。
今から思い返してみれば、こちら側の喋りやすい話題を振ることでアイスブレイクする目的だったのかもしれません。

「転職するとしたら来年4月以降」と伝えたところ、先方から「半年以上先となると、現時点で具体的な求人をお示しするのは困難です。志望企業を固められない以上、履歴書の添削もできませんし……今回の面談は、お客様の疑問にお答えして自己分析を深める機会にしたいのですが、よろしいですか?」と提案されました。

こちらとしては願ったり叶ったりの展開です。早速用意しておいた質問を投げかけていきます。
(以下、アドバイザーさんからの回答は 斜字体 で表記します)


地方公務員から民間企業へ転職する場合、どういう業界が人気なのか?

コンサルティングファームシンクタンクを志望する方が多いですし、実際に多くの方が転職に成功しています。
公務員の業務と比較的似ていること、確実に収入アップが見込めることが人気の理由です。

また、こういった企業では、パブリックセクターから業務を受注するケースが近年増えており、「行政組織の内部事情を知っている元公務員を雇用したい」という人材ニーズがあることから、公務員から転職しやすい業界ともいえます。

ここ数年は、うまく需要・供給のマッチングが成立している状況です。


1問目から興味深い回答をいただけました。
コンサル転職といえばキャリア官僚の独壇場かと思っていましたが、地方公務員からでも転職できるんですね……。

「政策立案したくて役所に入ったのに、調整業務や住民対応、肉体労働ばかりやらされて、頭を使わせてもらえない」という不満を抱える若手職員は少なくありません。
こういう不満を解消したくて、バリバリ頭脳労働のコンサルやシンクタンクに光明を見出すのかもしれません。

地方公務員の人材面での強みは何か?

強みとしては、「地頭の良さ」「組織内調整スキル」「セルフマネジメントスキル」が挙げられます。

まず、公務員には地頭の良い方が多く、物事の理解力や論理的思考力に長けています。
たとえ未経験分野であっても、学習が速く早々に戦力化できるという意味で、ポテンシャルが高い人材として認識されています。

また、公務員は日常的に、様々な利害関係者間の調整業務を担っていることから、同年代の民間人材と比べても組織内調整の経験が豊富です。
大規模市役所や県庁クラスであれば、大手民間企業に引けを取らないスケールの組織であり、調整能力に関しては即戦力として期待する企業様もいます。

このほか、公務員は一人あたりの業務量が多く……大変失礼な言い方になりますが上司によるマネジメントが機能していないので、若手であってもしっかり自立している方が多いです。
業務の目的やスケジュールを自力で設定して、自分で進捗管理するというセルフマネジメントの技術は、民間企業ではなかなか身につかない、公務員独特のスキルともいえます。


「ありません」と即断されるかと思いきや、丁寧かつ具体的に教えてくれました。
いずれのポイントも、地方公務員ならではというよりは、国家公務員ともかなり共通します。
転職市場では、地方公務員はキャリア官僚の代用品みたいな扱いなのかもしれません。

若手地方公務員を悩ませる「不毛な調整業務」や「放置系上司」が、まさか人材力向上に資しているとは……


地方公務員の人材面での弱みは何か?

弱みとしては、「利益感覚の欠如」「マネジメント経験の欠如」が挙げられます。

民間企業では、どんな業種であれ「売上を確保する」「利益率を高める」といった観点が不可欠ですが、公務員でこういった感覚をお持ちの方はごく稀です。
また、民間企業と比べて公務員は出世のペースが遅く、部下を持ったりチームを率いたりといったマネジメント経験が不足している傾向にあります。



こちらは予想通りの回答です。納得。

民間転職したい地方公務員が準備すべきポイントは?

企業様が地方公務員に期待しているのは、先にも述べたとおり「地頭の良さ」「組織内調整スキル」「セルフマネジメントスキル」です。
これらのポイントをわかりやすく企業様にアピールできるよう、まずはこれまでの業務経験を棚卸しして、使えそうなエピソードを探してみてはいかがでしょうか。

特におすすめなのが、新規事業の立上げに携わった経験です。
自然と調整能力をアピールでき、かつ企業様としてもイメージしやすく、面接でも高評価を得られています。

また、弱みである「利益感覚の欠如」を補うため、簿記資格の取得を推奨します。
(FPはどうでしょう?という僕の更問いに対し)FPよりも簿記ですね。FPはあくまでも個人資産の運用に関する資格なので、転職ではさほど重視されません。

あとは
MOSITパスポート資格を取得していれば、社会人としての基礎能力を証明できるので、時間があれば取り組んでもよろしいかと思います。
そのほかの資格は……キモオタクさんのようにITストラテジストを取得している地方公務員の方は結構いらっしゃいますね。あとは中小企業診断士も多いかと。
これらの資格、地頭の良さを証明する材料にはなりますが、合否を左右するほど重要というわけでもありません。


ITストラテジスト地方公務員、転職市場では希少価値無いんですね……ショックです。
中小企業診断士も若干興味あったのですが、すでに地方公務員のホルダーがたくさんいると知らされて萎えてしまいました。


「優秀な若手」は民間でも通用しそう

もっとボロクソにこき下ろされるのかと思いきや、地方公務員をそれなりに高く評価しているように思われました。
お世辞も混じっていたのかもしれませんが、ここは全部真実だとして話を進めていきます。

とりあえず簿記

わずかでも転職に関心があるのなら、まずは簿記の勉強をしてみるのが良さそうです。
「簿記は大事」という話は、今回のアドバイザーさんのみならず、以前転職フェアに参加した際にも複数の企業から聞きました。
複数の情報源から推されるということは、かなり重要度が高いと言えるでしょう。


「優秀さ」の物差しは官民でさほど変わらない

地方公務員の強みとして挙げられていた「地頭の良さ」「組織内調整スキル」「セルフマネジメントスキル」は、地方公務員なら誰しもが備えているわけではありません。
この3点を備えた地方公務員は、職員の中でも相当の上位層です。

つまり、役所内で「優秀だ」と高く評価されている職員と、民間企業が求める元地方公務員人材は、かなり共通していると言えるでしょう。
僕はこれまで「公務員らしくない人ほど民間企業では活躍できる」と思っていましたが、どうやらそうとも限らないようです。

逆にいえば、役所内でパッとしない人は、民間企業からも需要が無い……とも言えます。
厳しい現実です。

固有技能よりもポテンシャル

インターネットで地方公務員の転職情報を調べると、「地方公務員は転職市場では無価値」という前置きからの
  • 地方公務員が転職するならプログラミングスキルが必須!
  • ブログを書いて文章力を磨こう!
みたいな、何らかの殊技能を身につけるべきという主張がたくさんヒットします。
しかし今回の面談では、こういう個別具体的なスキルに関しては一切言及されませんでした。

語学に関しても全然触れられませんでした。
(こちらから更問いしようと思っていたのに、すっかり忘れていました……)


アドバイザーさんの回答を余すところなく文章化しようとした結果、弊ブログ最長の約4,400字に到達してしまいました。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。

もし転職を考えている方がいたら、僕みたいにとりあえず無料相談サービスを使ってみればいいと思います。
地方公務員は、引く手数多な「転職強者」ではありませんが、ゴミ扱いもされるわけでもありません。
怯える必要は無いでしょう。 

新規採用職員の方は、採用から半年が経過して、そろそろ「自分の実務能力」のレベルが見えてくる頃合いかと思われます。
中には「自分は仕事ができない……」と落ち込んでいる方もいるでしょう。

あくまで僕の体感ですが、役所の仕事は慣れるしかないものです。
どれだけ高学歴だろうと、地頭が良かろうと、輝かしい経歴を持っていようと、最初は通用しないと思います。(もちろん「慣れ」のスピードは地頭次第で大きく差が開くでしょう)

今はうまくいかなくとも、ひたすら数をこなして慣れるしかありません。
めげずに続けているうちに、いずれ慣れて楽になってくるはずです。 

答えを出した「後」が重要

地方公務員の仕事(特に新人が担当する仕事)の多くは、法令や要綱などのルールを運用するものです。
何か疑問が生じた場合には、自分で考えるのではなく文書を紐解いて答えを探します。
ある意味、あらかじめ答えが用意されている仕事であり、答えに到達するだけなら、他の業界と比べても相当に楽だと思われます。

ただ、地方公務員の仕事は「答えを出す」だけではありません。
見出した答えを上司や役所外部の方々(住民など)に説明して、納得させるところまでが仕事です。
むしろこういう「答えを出した後のプロセス」のほうが、時間もエネルギーも消費します。
僕の体感では、ヒラ職員の仕事の約7割が「答えを出した後のプロセス」です。

上司にしても役所外部の方々にしても、基本的にヒラ職員のことを信用していません。
そのため、いくらヒラ職員が「法令にこう書かれています」と率直に説明しても、なかなか納得してもらえません。
「法令の読み方を間違えているのでは?」「見落としがあるのでは?」と疑られているわけです。
そこでヒラ職員は、過去事例や裁判例、法令制定時の考え方のような関連情報を収集して、説明を補強していく必要があります。

また、答えそのものがたとえ正しいとしても、感情的に受け入れ難いケースも多々あります。
この場合は、感情的に納得させるための工夫が必要です。
説明の言葉遣いを練り上げて感情的不和を緩和したり、感情的反発を押し切れるくらいにロジックを固めたり……などなど、方法はいろいろです。


こういった「答えを出した後のプロセス」には、ルールもマニュアルもありません。
他の職員から教わったり、見よう見まねで実践したりして、職員個々人が経験を積まない限り、なかなか習得できない領域です。
最初は出来なくて当然ですし、そもそもこういうプロセスの存在すらわからないかもしれません。

さらに困ったことに、先輩や上司からすると、このプロセスはとにかく教えにくいものです。
あまりに慣れきってしまっているために、なかなか言語化できないのです。
「地頭次第だから教えても無駄」だと認識しており、若手から請われても「自分で考えろ」と軽くあしらう職員も少なくありません。

教本無し、師も頼りない……となると、自分でなんとかするしかありません。
幸運にも教えてくれる人がいれば最大限利用しつつ、基本的に自分で試行錯誤するしかないのです。

知識よりも経験を補給

地方公務員の採用プロセスでは、民間企業と比べてかなり重い筆記試験を課されます。
そのため、「地方公務員は知識が重要な仕事だ」と考えている方もいるかもしれません。

しかし実際のところ、地方公務員の実務では、知識よりも経験のほうが圧倒的に重要です。
若手職員の中には「もっと知識を身につければ仕事がうまくいくはずだ」と考え、公務員本を買い漁ったりセミナーに参加しまくったりする人もいますが、それでうまくいくかは疑問です。

経験は一朝一夕で積み上げられるものではなく、それなりに時間をかけて場数を踏むことでしか得られません。
 
唯一の近道は、他者の経験を「他山の石」として活用する、たとえば
  • 周囲の職員が何をしているのか(特に上司との打合せ)を盗み聞き
  • 共有サーバーに入っている他人の資料を盗み見
こうやって他者の経験を追体験すれば、少なからず経験値の足しになると思います。

外部団体に出向中の今なら人事課にバレないだろう……という目論見のもと、ここ1年ほど細々と転職活動をしています。
※今のところ地方公務員を辞めるつもりは一切ありません。単なる社会勉強です。

以前の記事では、転職サイトに登録した結果を紹介しました。
(基本情報技術者の資格を追加した結果を追記しています。)


転職サイトに登録してからそろそろ一年が経ちますが、ずーっと似たような企業からしか案内が来ず、物足りなくなってきました。
そこで、新たな刺激を求め、転職フェアに参加してみました。

ただの説明会ではなく「市場(いちば)」

僕が参加したのは大手人材会社が主催している転職フェアで、だだっ広い会場にたくさんの企業が個々にブース出展して、来場者は気になる企業のブースを訪れて社員から話を聞く……というスタイルです。
形態だけ見れば、新卒採用の合同説明会と同じようなものです。

しかし内容は別物です。
選考とは関係のない説明会ではなく、明らかに採用に直結しています。
我々求職者が企業を「選ぶ」だけでなく、企業側も求職者を「選ぶ」、まさに市場そのものでした。

企業のブースでは、担当者が会社の説明をしてくれるだけでなく、こちらのプロフィールをぐいぐい尋ねてきたり、ことあるごとに「あなたはどう思いますか?」みたいに質問を投げかけてきて、こちらに喋らせようと仕向けてきます。

フェアによっては面接用の専用ブース(試着室みたいなもの)が用意されており、僕の隣で一緒に説明を聞いていた人がそちらへ連れ込まれていく……なんてこともありました。
 

僕は不人気

僕が参加したフェアでは、いずれも「これまで経験した職種」や「希望する職種」のカードを首から下げるルールでした。
「営業」「経理」「人事」「エンジニア」など、いくつかのカードが用意されており、その中から選択します。

僕の場合、消去法で「事務一般」を選ぶしかありません。
カードを下げた途端、一気に自分が「商品化」されたように感じられてテンションが上がります。
ディストピア作品の導入シーンのようです。

企業側はこのカードを見て、自社のターゲットか否かを判断しているのでしょう。
採用したい職種の人には積極的に声をかけ、そうでない人はスルーするのが一般的セオリーのようでした。

会場を見て回った感じ、人気なのはやはり「営業」です。
反対に「事務一般」は人気がなく、「未経験歓迎」を掲げている企業を除き、僕は全然声をかけられませんでした。
そもそも事務職の転職者自体のニーズが少なく、採用するにしても若い人の方がいいのでしょうか……

本日は貴重なお話ありがとうございました

お話を伺った企業の中から、印象に残ったところを紹介していきます。

IT派遣系

最も話を聞きたかったのがIT派遣業界、俗にいうSESです。
今話題の「デジタル人材」市場の動向に興味があり、僕が取得した基本情報技術者の価値も知りたく思っていました。あとは株式投資対象としても興味があります。

どの企業も幸いにも「未経験OK」を堂々と掲げていたので、安心して乗り込めました。

事業内容はどの企業も似通っていて、何ヶ月か研修してからプロジェクトにアサインする……という流れなのですが、業界の捉え方や、IT人材の考え方は、企業ごとに様々でした。

例えば、アサインするプロジェクトなんかだと、
  • みっちり下流工程で経験を積んでからでないと上流工程にはアサインしません、下流工程のスキルのほうが汎用性があるのでその方が社員のためになります
  • 本人の希望に応じて新人でも上流工程にアサインします、上流工程のスキルを異業種へ横展開していくことが今後必要です
こんなふうに綺麗に分かれました。
どちらの考え方も一理あるように思われます。

基本情報技術者資格は、残念ながら全然評価されませんでした。
「基礎知識があるという担保にはなりますが、ある程度年齢を積まれている方の場合、基礎知識よりも専門性のほうが重視されるので、開発経験とかベンダー資格のほうが歓迎されますね」とのこと。

あとは興味本位で「官公庁へ派遣する事例もあるんですか?」と質問してみたところ、今のところ事例は無いもののそういう相談は結構寄せられているらしく、近いうちに実現するかも……とのことでした。

IT派遣企業からは、フェア後のアフターフォローもありました。
「個別面談しませんか?」みたいなメールが送られてきたほか、電話もかかってきました。
30代未経験という市場価値ゼロの人間でも繋ぎ止めようとするあたり、「IT人材の不足」は本当に深刻なのだと思われます。

税務コンサル

税金をたくさん徴収したい役所側からすると、税務系のコンサルは難敵です。
敵の本懐を探るべく、お話を伺いました。

行政の搾取から企業を守る……みたいな「思想」が伺えるかと期待していたところ、「ルールに則って正しく節税提案することで、企業の資金繰りを守り、ひいては不正に走ることを防げます」などなど、非常に誠実に説明していただき、疑ってかかったことを内心深く反省しました。

「スタートアップ企業に積極的に営業を仕掛けて顧問化を狙っている」ことを売りにしていたので、「スタートアップ支援って最近は地銀とか公的機関が乗り込んできて、競争激化してませんか?」と興味本位で質問してみたところ、「スキルに雲泥の差があるので絶対勝てます」と即答されました。かっこいいです。

市役所・町役場

民間企業に紛れて、夏以降に採用試験を行う自治体もいくつか出展していました。
長くなりそうなので、次回記事で改めて紹介します。

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