キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

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先日職場にて、後輩職員たちが勤務環境の悪さを愚痴りあっていました。
彼ら曰く、「県庁は10年前から何も変わっていない」とのこと。

彼らはせいぜい入庁5〜6年目で、10年前の勤務環境を経験しているわけではありません。
言葉のあやというか、きりの良い数字ということで「10年」という年数を持ちだしたのでしょう。
ゆえに、「10年前」の姿を誤認していても仕方ありません。

しかし、それにしても……「10年前」の認識が甘すぎます。
10年前の県庁は、彼らが想像しているよりももっとずっとひどかったです。

「いや10年前はさぁ……!」という老害ツッコミを入れたくなるのをその場では必死に堪えましたが、結局モヤモヤが治らないので、以下発散させてもらいます。


OHP(オーバーヘッドプロジェクター)

大人数の前で何らかの発表を行う場合、今ならパソコンをプロジェクターに繋いでスクリーンに投影するのが一般的でしょう。
最近はこの方式すら時代遅れになりつつあるかもしれません。

僕が入庁した当時は、OHPを使うのが主流でした。
透明なプラスチックのフィルムに光を当てて、紙芝居のように投影するアレです。
長時間使っていると熱を帯びてきて、独特の匂いを放ち始めるんですよね。

奇しくも入庁2〜3年目くらいにOHPからプロジェクターへの置き換えが進展して、これまでOHPだった資料が一気にパワーポイント化されていきました。
僕自身、OHP資料を作ったのは最初の1年目だけです。

今から思い返してみると、OHP資料を作るのは本当に面倒でした。

OHPを使うには、発表資料をフィルムで1枚1枚用意する必要があります。
特別な印刷機を使う必要があり、手間も費用もかかります。
フィルムがけっこう高価で、しかもインクがうまく乗らなかったりして印刷ミスが多発するんですよね……

そのため、一部分だけ更新したい場合は、印刷し直すのではなく手書きで修正したり、修正箇所だけ印刷して切り貼りしたり……手先の器用さを求められました。

あと、「色を濃くしすぎるとうまく投影されない」とか、「細かい部分は印刷よりもペンで塗ったほうが綺麗に仕上がる」とか……いろいろなテクニックも必要でした。

パワポであれば数秒で済む作業に、相当な時間と労力をかけていましたね。

docx・xlsx・pptx禁止令

MicrosoftOfficeのファイルには、「docx・xlsx・pptx」のように末尾に xがつくものと、「doc・xls・ppt」のように末尾にxがつかないものがあります。
前者はOffice2007以降のバージョン、後者は2003以前の古いバージョンです。

エクセルの条件付き書式がxlsだとうまく動作しなかったりと、末尾にxがついているほうが機能が充実しているので、最近は普通はこちらを使っています。

僕が入庁した当時(2013年)は、末尾にxがつく形式でのファイル作成は厳禁でした。
庁内のパソコン更新が進んでおらず、xがつく新しい形式だと開けない職員が多発するからです。

役所内のみならず世間的にも「xがつく新しい形式は一般的ではない」という認識が強く、申請書のような書類様式をdocx形式でホームページにアップしてしまった日には、苦情の電話があったものです。

今となっては誰も気にしていないでしょうし、誰も覚えていないでしょう。
当時、苦情を食らった当事者でもない限り……


タバコ痕だらけの机

執務室内の机や椅子がボロいのは今も昔も変わりませんが、机に関しては10年前よりも随分改善されています。

僕が入庁した当時、執務室内の机にはたいてい焼け焦げた跡があり、凹凸がありました。
原因はタバコです。
執務室内でも自由に喫煙できた時代に、灰を落としたりして机を焼いてしまった痕跡が、ありありと残っ
ていたのです。

僕が入庁した頃には、すでに分煙が徹底されていて、各フロア設置された喫煙室以外では完全禁煙が達成されていました。
それでも先輩職員の皆さんは「自席で自由に喫煙できた時代」が忘れられないらしく、机の焦げ跡を懐かしげに眺めていたものです。

最近は机の更新も進んで、焦げ跡が残っている机がだいぶ減ってきました。
もしかしたら「昔の名残がなくなる」と悲しんでいる職員もいるのかもしれませんが、僕は何の感慨もありません。
机の凸凹が無くなって使いやすくなりますし、住民の皆様から「いまだに机でタバコ吸ってるのか!」と誤解されてお叱りを受けるリスクが減りますし、良いことづくめです。

1ヶ月ほど前から唐突に、対話型AIが脚光を浴び始めました。
テレビやネットニュースはもちろんのこと、平均年齢70歳くらいの地方新聞の投書欄ですら、「AI=ChatGPT」と言わんがばかりの勢いで侃侃諤諤の議論が交わされています。

こういう新技術は、高齢者層から頭ごなしに否定されることが多い気がしますが、対話型AIに関しては賛否両論に分かれているような印象を受けます。
ただ、賛成側にしても否定側にしても、実際に使ったことがある人は果たしてどれくらいいるんでしょう?
話題になっているのを見て数回使ってみたくらいの人は結構いるかもしれませんが、日常的に使っている人はほとんどいない気がします。

創作のお供

僕は趣味で短編小説(主に二次創作)を書いています。

書きたいシーンはスラスラと言葉が出てくるのですが、そうでないシーンはなかなか進まないもので、いわば後片付けのために多大な時間と労力を注ぎ込んでいるような気がして、結構ストレスなんですよね。
こういう部分、あんまり筆が載らないシーンをAIに書いてもらっています。

あとは擬音や視覚表現のバリエーションを増やしたいときにも使っています。
例えば、殴り合いのシーンを5,000字くらい書いていると、どうしても擬音がワンパターンになるんですよね。「ガシッ」「ボカッ」みたいな典型だけだと足りません。
そこでAIに「擬音の候補」を提示してもらうのです。

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ちなみに、単に「殴ったときの擬音を教えて」とだけオーダーすると、倫理コードに引っかかってブロックされます。これを回避するために「あなたは編集者です」などの状況設定を入れています。

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エピソードは得意、ロジックは苦手

現状、対話型AIが得意なのは「エピソード」です。
シチュエーションを指定してやれば、それらしいエピソードを一瞬で創出してくれます。
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ChatGPTであれば、プログラムも書けます。
地方公務員に身近なところだと、エクセルの計算式やマクロコードも一瞬で仕上げてくれます。
僕自身、庁内各課から提出されてきたエクセルファイルを統合する作業を代行してくれるマクロコードをChatGPTに書いてもらって、早速楽をさせてもらっています。


一方、論理構造がしっかりした文章はまだまだ苦手です。
因果関係や論理関係がしっかりした文章はなかなか生成できませんし、ビジネス文章の基礎である「ロジックツリー」や「MECE」にもうまく対応できません。

根拠をはっきりさせたうえで意見を主張する文章も苦手です。
意見自体はそれなりに仕上がるのですが、根拠の部分が弱いです。
インターネット上の通説レベルの根拠はしっかり準備してくれるのですが、専門書レベルの知見や定量的データまでは引っ張ってきてくれません。
そのため、既視感のある薄っぺらい仕上がりになりがちです。

現状、対話型AIを仕事で使うのは仕事で使うにはまだまだ難しいと思います。
論理構造が今ひとつで根拠も弱く、説得力に欠けるからです。
一文一文は綺麗に書けていて、サラーっと流し読みするだけならそれっぽく見えるのですが、じっくり読むと穴だらけなんですよね。

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「昇給や賞与が少ない」とか「民間は週6勤務が一般的」というファクトがだいぶおかしいです。


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センチュリーが日本の伝統の結集であるのはまだわかるとしても、「地元の産業や文化に対するアピールにつながる」という結論にはつながりません。


一方、厳密なロジックや根拠が必要ない文章、例えば新聞の社説、コメンテーターの発言、エッセイ、感想文のような文章を作るには十分実用レベルだと思います。
特に、具体的なエピソードをもとに何らかの主張をするタイプの文章はとても良い感じに仕上がります。
ニュースでも「就職活動のエントリーシートをAIに書かせた」という事例が取り上げられていましたが、まさにこういう使い方において長所が発揮されるでしょう。

あとは質問を作るのも上手いと思います。
人間ではなかなか気がつかないようなものも含め、網羅的に論点を出してくれます。

実務に使えるか

いくつかの自治体では、既存の対話型AIを議会答弁や報道発表に活用する方向で検討しているらしいですが、僕はなかなか難しいのではないかと思っています。

役所が作る文章は、いろんな人が多角的・批判的に吟味してきます。
そのため、結論はもちろんのこと、論理展開や根拠にも一切手を抜けません。
全面的にAIにぶん投げて作文してもらうのは不可能でしょう。
AIが作った文章を、職員が全面的に修正する光景がありありと想像できます。

せいぜい細かい文言の候補を提示してもらうとか、記者発表原稿の大まかな流れを作ってもらうとか、その程度に止まるのではないかと思います。
 
これだけでも十分便利そうではありますが、世間で騒がれているほど革命的な進歩かと言われると……正直疑問です。
「エピソードの創作」という現状の強みを活かすのであれば、今すぐにでも対話型AIを活躍させられそうですが……役所内にそういう仕事があるのでしょうか?僕には思い当たりません。

それよりも、エクセルマクロのコードを書いてもらって日々の業務を効率化する用途にまず使うほうが、有益だと思います。あまり世間受けは良くなさそうですが……

今はまだ組織的に採否を判断するフェーズではなく、職員個々人が試しに使ってみて、どんな局面でAIを活用できるのかを探る段階だと思います。

加えて、どういう質問を投げると効果的に回答を得られるのかを探るのも重要だと思います。
「現状苦手」と書いた定量的根拠に基づく主張も、うまく質問を投げてやれると、きちんとした回答が返ってくるんですよね。

実は僕、これまでずっと携帯電話料金を親に払ってもらっていました。

少し言い訳をさせていただくと、僕は普通の田舎民よりも携帯電話を持つのが早く、小学校5年生の頃からずっと保有しています。
当時、中学受験のために塾通いを始めて、送迎のために持たされたのです。

僕の世代(アラサー)だと、高校入学のタイミングで初めて自分の携帯電話を買い与えられるのがスタンダードだったので、中学生の頃は優越感を覚えていたものです。

こういう経緯があるために、僕の回線は親の回線にぶら下がっていたようで、請求明細にもはっきり出てこず、誰がいつどうやって払っているのかよくわからない状態でした。

30代にもなって親に肩代わりしてもらうのはさすがにまずいと思い、契約を変更すべく、今更ながら格安SIMについて調べています。


今の時期、僕みたいに携帯電話のプランを見直している方がけっこういるのではないかと予想します。
4月からの新生活を控えて固定費を総ざらいしている方もいれば、大手キャリアがリリースしたセカンドプランを吟味している方もいるでしょう。

地方公務員ならではの事情を整理していきます。

音声通話とSMSは必須(もしかしたら掛け放題も)

これまでも散々触れているとおり、ごくごく一部の担当業務を除き、地方公務員には仕事用携帯電話が支給されません。
とはいえ今の世の中、携帯電話無しでは仕事が回らないので、私用携帯電話を仕事にも使わざるをえません。

使用頻度は担当業務によって様々でしょうが、一切使わないことは無いと思います。

仕事での主な用途は、出張時の通信手段です。
このため、地方公務員の携帯電話には、音声通話とSMSが欠かせません。

「LINEみたいなメッセージ&通話アプリで十分では?」と思う方もいるかもしれませんが、残念ながら足りません。
上司や部下のような役所内の人としか連絡しないのであればアプリで十分かもしれませんが、仕事では役所外の人とも連絡を取り合います。
例えば出張先での待合せだったり、急な遅刻連絡だったり……

そのため、音声通話やSMS機能を省いた「データSIM」は、地方公務員には適さないと思います。

加えて、担当業務によっては頻繁に音声通話するため、掛け放題プランが必要になるかもしれません。
その場合どう対応するか、あらかじめ考えておいたほうが無難でしょう。

通信量には余裕を持たせる

私用携帯電話は、インターネット閲覧端末としても使います。

役所のパソコンは、たいていセキュリティの都合上、閲覧できるホームページが制限されています。
変なページを見てウイルスに感染しないためであったり、仕事に関係ないページを閲覧してサボるのを防止するためなのでしょう。いたって合理的な理由です。

とはいえ仕事をしていると、制限されているホームページを閲覧しなければいけないケースがけっこう発生します。
例えば施策が炎上したとき。
炎上の経緯や燃え具合、匿名掲示板の書き込みやまとめサイトが参考になります。
しかし、こういうサイトはたいていブロックされていて、職場PCからは閲覧できません。 

情報セキュリティの担当課に相談すれば一時的にセキュリティを解除してくれるのかもしれませんが、炎上対応のような緊急事態では一刻を争います。相談している暇なんてありません。
こういう場合は私用の携帯電話から閲覧するしかありません。

加えて、最近はオンライン会議をする機会が急増していて、機材トラブルのため私用携帯を使わざるをえず通信量が爆増するリスクが顕在化してきました。

こういった事情のため、インターネット利用にも私用携帯電話を使います。
月の使用容量には余裕を持たせたほうがいいでしょう。



地方公務員にも仕事用携帯電話が支給されれば悩まずに済むのですが、支給されたらされたで電話番号がインターネット上で晒されて嫌がらせを食らうのが目に見ています。

私用携帯電話を使うこと自体は仕方ないとして、通話料や通信料に対する手当みたいなものがもらえたら最高なのですが……出張に自家用車を使うときみたいに。

世間から遅れること約1年、僕もNotionを使い始めました。

 
大変便利です。もっと早くから使っていればよかった……と悔やむばかりです。

Notionのようなクラウド上でのファイル管理サービスは、セキュリティの都合上、地方公務員稼業には向いていません。
内部資料をクラウドストレージに保存する行為は、あまりにもリスクが高すぎます。
わずかでも手違いがあってファイルが外部に流出してしまったらおしまいであり、かつ実際このような事案がたびたび発生しているので、厳に慎まなければいけません。

ただNotionは、「クラウドストレージにファイルをアップ」しなくても十分便利なツールです。
サービスの真価は発揮できていないのかもしれませんが、それでもかなり役立ちます。

(今更ながら)Notionとは?

ざっくりいうと、Notionはオンライン上でファイルを保存・管理できるサービスです。
ワード・エクセルファイルやPDF、画像、動画など幅広いファイル形式に対応しているうえ、ウェブページのコピーをファイルとして保存(クリップ)することも可能です。

さらに、保存したファイルを色々な方法で並べ替えたり抽出して表示できます。
エクセルみたいな一覧表や、インスタグラムみたいなサムネイル表示、カレンダーやガントチャートのような時系列表示など、並べ替え・抽出の目的に応じて様々な形式が利用できます。

要するに、ファイルの保存や管理に関してはわりとなんでもできるツールです。
「わりとなんでもできる」のが特徴です。これまで複数のウェブサービスで別々に行っていた作業を、Notionを使えば一元化できるのです。

今のところ日本語化はされていませんが、直感的に操作できるので全く問題ありません。

詳しい説明は省略します。
既に広く流布しているツールであり、大勢の方がわかりやすい解説をアップしているので、そちらを参照してください。検索すればたくさん出てきます。

ひたすらクリップ&タグ付け

僕のNotion利用法はいたって単純です。
担当業務に関係のあるウェブページをひたすらクリップしています。

僕はグーグルアラートを使って担当業務関係のニュースを日々収集しており、通知されたニュースのうち重要だと思ったもの(あとあと参照したくなりそうなもの)は、とりあえずクリップします。



他にも関係するニュース記事やレポート、他自治体のプレスリリースなどがあれば、随時クリップしていきます。

クリップした記事には、「トピック名」「地域名」「発信者名」「情報媒体の種類」などのタグをつけて、後から見返せるように整理しています。

「自分の担当業務に関係のあるウェブページを保存する」という作業自体は、地方公務員なら誰でも日々取り組んでいるでしょう。わざわざNotionを使わずとも可能です。
ただし、紙に印刷してファイリングしたり、ワードにコピペしたり……と、それなりに手間がかかっているのでは?

一方Notionを使えば、一瞬で終わります。
しかもタグのおかげで、あとあと参照するのも簡単です。

危機的事態だからこそ情報収集&整理

弊ブログでも何度か触れていますが、地方自治体はこれから当分の間、新型コロナウイルス感染症関係の訴訟に悩まされると思っています。
「行政の不手際のせいで新型コロナウイルス感染症が拡大した、だから感染症に起因する不利益の責任は行政にある」というロジックが定着してしまった以上、新型コロナウイルスのせいで不利益を被っていれば、誰もが原告となりえます。

休業補償や医療訴訟は確実として、そのほかにどういう切り口で提訴されるか、現時点では想像もつきません。
新型コロナウイルス感染症とは一切無縁だと断言できる業務はごくわずかでしょう。 
つまり役所は現在、自らが保有するあらゆる機能・あらゆる業務に対して、訴訟リスクを抱えている状態なのです。

訴訟にまで至らなくとも、大規模な抗議運動くらいは続々生じると思っています。
現時点では「密」を避けねばいけないという風潮があるため抗議運動は下火ですが、ワクチンが行き渡って感染リスクが減ってきた時点で、溜めに溜めた憤懣が一気に爆発して、デモ活動のような抗議運動が始まるのでは?と今から懸念しているところです。衆議院総選挙もありますし……

訴訟や抗議運動に対応するには、これらの芽を早々に察知し、Xデーまでに防衛体制を整えておかなければいけません。
こういった作業の基礎が情報収集と整理であり、Notionが役立ってくれるのです。

 

古のインターネットでは、PDFファイルはブラクラ扱いを受けていました。
しかし今では超便利ツールとして活躍しています。時代の変化を感じますね。
特に役所のホームページでは「とりあえずPDF化しておけば大丈夫」という感覚で、色々な情報がPDF化されて掲載されています。

PDFに限らず、どんなファイルにも「メタデータ」というものがあります。
ざっくりいうと「プロパティの中にあるデータ」であり、作成日・更新日や作成者などの情報のことを指します。

メタデータの中でも特に有名なのが、画像データのexif情報です。
弊ブログでも過去に取り上げたことがありますが、最近はきちんと公表前に削除するのが常識として定着しつつあるようで安心しています。 




PDFファイルを公表するということは、必然的にPDFファイルに含まれるメタデータも公表されてしまいます。
この「PDFファイルのメタデータ」が意外と厄介で、下手をすると炎上案件を引き起こしかねません。

右クリックするだけでは閲覧できない

PDFファイルのメタデータはプロパティの中に潜んでいます。
ファイルを右クリックして見られるプロパティではなく、Adobe Acrobat Reader DC(閲覧機能だけの無償版)のようなPDF閲覧ソフトの中で見られる、より詳しいほうのプロパティです。

ここには、PDF化する前の元データ(ワードやパワーポイントのファイル)のプロパティが一部残存しています。


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実例を見てみます。左が元データ(ワードファイル)のプロパティ、右がPDFのプロパティです。
「タイトル」と「作成者」がそのまま残っています。
これらの情報が残っていて、役所外部に知れ渡ってしまうと、非常に面倒です。

タイトルのせいで不要なトラブルを招く

まずはタイトルから見ていきます。
メタデータにおける「タイトル」は、ファイル名とは別物です。
PDFファイルの名称をいくら変更しても、「タイトル」は変わりません。
PDF化する前の元ファイルの名称がそのまま残るようです。

伝えたい情報はファイルの中身とファイル名に記載しておけばいいのであり、メタデータに記載する必要はありません。
メタデータの「タイトル」は、「file01」のような無機質な名称か、ブランクで十分です。 

メタデータの「タイトル」欄は、そこに使われている単語のニュアンスをめぐり、トラブルの引き金になりかねません。

画像で示した例でいうと、タイトルに含まれる「講演」「資料」という2語は、人によって定義が異なる可能性が高い単語です。
各人がバラバラな定義を持っているせいで、以下のような抗議が想定されます。

  • 「講演」は目上の人間が目下の人間に対して行うものだ、公僕である役所職員が「講演」するなんて思い上がりも甚だしい、謝罪しろ
  • 「資料」と称するからには講演内容の出典や根拠資料を網羅的に示すべきだ、学会ではこれが常識だ
  • 「講演資料」と題するなら講演そのものを追体験できるデータ、つまり音声と動画を掲載すべきだ、テキストだけで済ませるのは怠慢だ
いずれの抗議にしても、メタデータがブランクであれば起こりえないものです。
まさにメタデータが余計な一言になって、住民感情を逆撫でしてしまうのです。


さらに、資料の中身とは直接関係のない情報がタイトルに書かれていると、あらぬ疑念をかきたててしまいます。

画像で示した例でいうと、「案B」「修正4」の部分が問題です。
これらの情報は講演内容そのものとは関係ない「講演に至るまでの検討過程」であり、本来は役所外部に披露する必要のない情報、これも余計な一言です。

「案B」「修正4」という文言を見ても、大抵の人は関心を示さないでしょう。
しかし、役所と戦いたい人にとっては、この情報が攻めの糸口になります。

  • 案Aはどんなものだったのか?なぜ案Bにしたのか?もしや案CやDもあるのか?
  • どうして修正が生じたのか?そもそも4回も修正する必要があったのか?修正に要したコストは?コストに見合う成果はあるのか?

こういう攻撃を誘発してしまうのです。

個人情報漏洩になりかねない「作成者」情報

「作成者」情報のほうがより深刻です。
個人情報の漏洩というマジモノの不祥事に直結するからです。

公文書公開のルール(情報公開法・自治体の情報公開条例)では、公文書に含まれる個人の氏名は非公開情報であり、黒塗りしなければいけません。
誤って公開してしまうと、個人情報の漏洩になります。
※ただし個人の氏名であっても「公務員の氏名」は例外で、黒塗りは不要です。

データの場合も同様に、個人の氏名は公開してはいけません。

データの場合はさらに注意が必要です。
ファイルの中身(本文)だけではなく、プロパティ内にも情報(メタデータ)が潜んでいるからです。

メタデータの中に個人情報がある場合も、消去するなり記号に置き換えるなりして個人情報を守らなければいけません。
ここが結構見落としがちなポイントで、誤って公開してしまい不祥事として大々的に報道された事案もあります。

画像の例でいうと、「作成者=久川凪」という情報は、まさにメタデータの中の個人情報です。
原則、公開してはいけません。
(ただし、久川凪さんが公務員であれば全く問題ありません。)

役所が自前で作った資料であれば、「作成者」欄は作成した職員=公務員の名前になるので、問題は生じないでしょう。
しかし、外注して作成した資料だと、外注先の社員さんの氏名がそのまま残っているケースがよくあります。チラシとかパース図とか図面とか……
バレたら即、不祥事です。

元データのプロパティを消す

不祥事ハンター達はメタデータをよく見ています。
そもそもこの記事自体、ネット上でアンチ役所活動を展開している方の発言から着想を得ました。
その方いわく、「いつどこが不祥事を起こすかわからないんだから、日々あらゆる行政機関のサイトを巡回してメタデータに個人情報が残っているファイルを収集している」とのこと。

どういうふうに悪用されるかわからないし、役所としては(今のところ)公開する義務もないので、可能な限り消しておくのが無難です。

しかし困ったことに、PDFのプロパティ内のデータは、一旦PDF化してしまうと削除できないようです。
Adobe Acrobat(PDFの加工ができる有償版)があれば消せるようですが、無償版のAdobe Acrobat Reader DCでは対応していません。
Adobe Acrobatは高価なため、役所で保有しているところはごく少数でしょう。

そのため、PDFファイルを作成する前に、元ファイルのメタデータを消すしかありません。

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赤丸で囲んだところをクリックしてプロパティを消してからPDF化すれば、PDFのプロパティも綺麗になります。
できれば作成日とか更新日も消したいところなのですが、こちらは消せないようです。


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