キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

タグ:働き方

今年も自治体の炎上案件が相次いでいます。
特定の地域にしか影響を及ぼさないローカルニュースを掘り出してきて叩く……という行為に果たしてどれだけの社会的意義があるのかは知りませんが、コンテンツのひとつとして収益が期待できるからこそ、大手メディアが挙って地方自治体を叩くのだと思います。
そうでなければ、地元住民以外にとっては本来どうでもいいニュースに番組の尺を割くわけがありません。マスコミ関係者の本音が知りたいなと常々思っています。

僕自身、過去に炎上案件に巻き込まれたことがありますが、通常業務に炎上対応が丸ごと上乗せされて、すさまじい残業を強いられました。
課内の外線電話回線全部が苦情電話で埋まってしまい、通常業務の電話ができない日が続く……なんてこともありました。

僕が勤務しているのは県庁であり、職員数がそれなりにいるので、幸いにも炎上対応を一人で抱えずに済みました。もしこれが市町村、特に小規模な自治体だったら、もっともっと大変だっただろうと思います。

炎上への対応(以下「消火業務」)は、質的にも量的にも、自治体の規模とは関係ありません。職員数が少ない小規模自治体ほど、一人あたりの業務負担は大きくなります。
自治体の炎上が常態化しつつある昨今、「消火業務の負担がすさまじい」という小規模自治体の宿命は、働くうえでの「リスク」でもあると思います。

業務を侵食する「有事」の奔流

ひとたび「炎上」の端緒が開かれれば、平時のルーティンは瞬時に霧散し、役場内は峻烈な「有事」の様相を呈することとなります。

まず直面するのは、電話やメール、広報用SNSアカウントなどを介して殺到する不特定多数からの苦情や抗議です。
窓口にも抗議者が詰めかけ、怒声が飛び交います。
特に最近は炎上案件を扱う配信者(ユーチューバーなど)も増え、遠方からはるばる窓口にやってくる方も珍しくありません。

直接の利害関係者に対しては懇切丁寧に対応する必要がありますが、大半は全く無関係で、自治体職員に怒りをぶつけてすっきりしたいだけの人です。こういう人の相手をしていると、個人的カタルシスのために膨大なリソースが浪費され本来の問題の解決が遠のいていくことへの虚しさを感じます。

同時に、マスコミからの取材も殺到します。 強い口調で糾弾されながらも、一言一句に細心の注意を払いながら質問に答えるのは、かなり精神を削られます。
案件によっては謝罪会見もセッティングしなければいけません。会見での発言や態度がさらなる炎上に繋がるケースも多く、桁違いのプレッシャーに晒されます。

さらに、公文書公開請求や住民監査請求といった「制度的な攻撃」も急増します。
電話や窓口対応とは異なり書面でのやりとりが中心になるので、精神的な負担はまだ小さいものの、業務負担は重く、通常業務を圧迫する大きな要因となります。

意外と見落とされがちなのは、近隣自治体への対応です。
炎上案件が一つの自治体だけで収まることはまずありません。近隣自治体もまとめて攻撃されるか、叩かれないにしても「取材」という形でコメントを要求されます。
そのため近隣自治体は、火元となった自治体に対し、これまでの経緯や炎上の発端などの事実関係を問合せせざるを得なくなります。
火元の自治体としては、この問合せ対応が結構な負担になります。同業者だからこそ細かい内容を尋ねられ、資料を作って送るよう要求されることもしばしばです。

少なくとも県庁は、市町村役場が炎上したら必ず巻き込まれます。
(県庁もターゲットにして一緒に燃やそうという魂胆の場合もあれば、炎上自治体をさらに攻撃するための材料探し目的の場合もあります)
県庁としても当然、市町村の炎上は好ましくなく、鎮火の手助けをしたいところなのですが……情報が足りないゆえに迂闊な発言をして、火に油を注いでしまうケースがたびたび発生しています。

このような事態を未然防止するためにも、火元自治体から正確な情報を入手することが極めて重要で、申し訳ないと思いつつも細かい説明を求めてしまいます。

不均衡な闘いと、小規模自治体の宿命

先述した炎上対応業務は、役所の貴重なリソースを容赦なく侵食していきます。
それは単に職員のマンパワーの占有・摩耗に留まりません。
鳴り止まぬ抗議電話が電話回線を占拠し、怒り狂う来庁者への対応のために会議室を供用するなど、物理的なインフラさえもが「消火業務」という有事対応に接収されてしまいます。

ここで、現代のデジタル社会における炎上の特筆すべき、そして最も残酷な性質が浮き彫りになります。
それは、攻撃の苛烈さや、炎上対応業務の質・量が、「自治体の規模」とは無関係という点です。

3万人を超える職員を擁する東京都庁であっても、十数人の職員で職場を回している島嶼部の小規模自治体であっても、一度火がつけば対峙すべき敵は「全国の不特定多数」となるのです。

その典型的な、そして痛ましい実例が、2020年(令和2年)に山口県阿武町で発生した特別定額給付金の誤給付事案です。
この一件では、連日数百本もの抗議電話が殺到するという異常事態に陥り、全職員約60名のうち10名もの人員、つまり2割弱の職員を苦情対応の専任に充てざるを得なかったと報じられています。
苦情対応に従事した職員はもちろん、引き抜かれた職員が元々所属していた部署の職員も業務のカバーに回る羽目になり、役所全体が疲弊したことと推察します。 



分母となる職員数が少ない小規模自治体ほど、炎上によるリソースの剥奪率は跳ね上がり、行政機能が麻痺するリスクは指数関数的に増大します。
そしてこのリスクは、「唐突にすさまじい多忙に見舞われるかもしれない」という意味で、職員の人生においてもリスクといえるでしょう。

人為の火群を超え、真の危機管理へ

炎上という現象が自然災害と決定的に異なるのは、それが天災ではなく、徹頭徹尾「人為」によって引き起こされるという点にあります。

「アテンション・エコノミー」が加速する現代において、自治体の炎上は、収益が期待できる一種の「ヘイトコンテンツ」であり続けると思います。
そのため、今後も、プロの放火犯たちがビジネスとして炎上を仕掛けてくるはずです。 だからこそ、自治体経営における炎上対策は、単なる広報上の不手際への対応ではなく、組織の存立を賭けた「危機管理」の枢要として、より注目されていいと思います。

同時に、職員個人レベルでも、なるべく職員数の多い自治体に勤務することが、自らの身を守る「リスクヘッジ」として重要なのではと思います。

総務省が検討会を開いて、地方公務員のあり方を検討するらしいです。





検討会の名称は「社会の変革に対応した地方公務員制度のあり方に関する検討会」。
(長いので、以下「検討会」。)

報道によると結構なロングスパンで継続開催されるようで、委員数も多いですし、法改正につながるような抜本的な見直しをするんじゃないかと思われます。

まだ全然情報が出ていない今のうちに、どんな検討がなされていくのか想像していきます。

検討の前提にある「社会の変革」とは

まず、この検討会で一体どんな議題を扱うのかを考えてみます。

名称を見るに、この検討会は「社会の変革」に対応するための「地方公務員制度」を検討する場のようなので、検討の前提となる「社会の変革」をどう定義しているのかがまず重要になります。

地方公務員を取り巻く「社会の変革」を総務省がどう捉えているのか、一つヒントが存在します。

総務省では、地方公務員のあり方に関して、「ポスト・コロナ期の地方公務員のあり方に関する研究会」という別の研究会(以下「研究会」)を、最近まで開いていました。
名称も似ていますし、今回の検討会にもこの研究会からメンバーが一部引き継がれていますし、連続性があるのだと思われます。



この研究会の報告書の中には、「社会状況等の変化」という文言が出てきます。
「社会の変革」と「社会状況等の変化」、表現はやや異なりますが、ニュアンス的にはかなり近いです。

そのため、検討会における「社会の変革」が何かを窺うには、研究会の報告書内で結論づけられた「社会状況等の変化」がヒントになると思います。


研究会の報告書では、以下の3点を「社会状況等の変化」として掲げています。
  • 【社会情勢の変化による人材確保への影響 】若年人口の減少と人材の流動化に伴う人材獲得競争の激化と、困難な政策課題に対応できる多様な人材確保の必要性の高まり
  • 【行政に求められる能力の変化】 行政課題の複雑・多様化に伴い職員に求められる能力等の再整理、専門人材(特にデジタル人材)の育成・確保、定年引上げに伴う計画的な人材育成の必要性の高まり
  • 【働き手の意識変化】 職員がやりがい・成長実感を得られる取組や、多様な働き方を受け入れる職場環境の整備等の必要性の高まり

いずれの点も、違和感はありません。

災害対応のような突発的長時間労働の増加、慢性的な人手不足、離職者・休職者の増加、心身に危害が及ぶレベルのカスハラ増加……といった業務の過酷化の観点が全然無いのが若干遺憾ですが、2000年台のような「これまで甘い汁を吸ってきた連中の既得権益を引っぺがすぞ」的な懲罰的視点が無いだけでもありがたく思うべきなのでしょう。


正規職員の処遇改善は無さそう

前項では、検討の前提となる「社会の変革」がどのようなものが探ってみました。
一応のヒントは存在するものの、包括的な記述すぎて、具体的な論点は想像できません。

総務省ホームページの検討会資料によると、まず課題を洗い出してから、それぞれの課題を分科会で検討するという進め方を採るらしいので、とりあえずはどんな課題がセットされるのかを注視していきたいです。

現役職員的に一番気になるのは、正規職員の処遇改善でしょう。
時事通信社の記事には「処遇改善」という単語が出てきており、期待したくなるところなのですが…‥総務省が公表している検討会資料では、処遇改善に関しては全然触れられていません。
そのため、この検討会を経て、地方公務員の処遇改善がなされるかは定かではありません。

個人的には、正規職員の処遇改善は望み薄だが、非正規職員や外部人材の処遇改善は大いにありうると思っています。
先に触れた研究会報告書における「社会状況等の変化」の中には、「若年人口の減少」と「人材の流動化」という記述があり、この前提から「従来の正規職員中心の組織運営ではなく、シニア世代を含めた非正規職員や、外部人材をもっと登用すべき」という方向性になるのではないでしょうか?

現状、役所の非正規職員の待遇はよろしくない(専門職は除く)ですし、外部人材に支払う報酬や謝金も、民間水準に比べれば随分安いようです。
特にデジタル関係の人材に関して「求めるスキルに対して報酬が低すぎる」とよく炎上していますし、このあたりの実態を改善するような策が提言されるのでは……と思っています。


良い影響は無さそう

検討会の結論が出るのは2025年度末(令和7年度末)。
実際に制度が変わるのはもっと後になるでしょうし、制度変更が実際に役所現場に影響を及ぼすまでには、さらに年月を要します。

その頃には僕はもうアラフォーで、きっと出先機関で庶務係長あたりのポジションを拝命しているでしょう。
そのため、制度改正の影響は、僕自身の給与とか身分よりも、僕の部下たちに影響してきそうです。
これまで通り、部下は若手正規職員なのか、非正規の高齢者だらけになるのか……ひょっとしたらデジタル化が進んで部下がいない可能性すらあります


地方公務員の働き方は、外部環境に大きく影響されます。
地方公務員制度をいかに変えようとも、正直あまり関係ないと思います。
時間外勤務手当が満額支給されないように、運用上うやむやにされるのが制度の宿命。
明らかな待遇劣化が生じないかという観点で、引き続き注視していきたいです。


地方公務員は、「成果を上げても評価されない」「頑張っても報われない」仕事だとよく言われます。

金銭面でいえば、たとえ大きな成果を上げようとも、ボーナスが0.1ヶ月ほど増える(+2万円くらい)とか、定期昇給で2号上乗せされたり(年収ベースで+5万円くらい)程度の見返りしかありません。
仕事をたくさん引き受けて長時間残業しようとも、残業代が満額支給されるとは限りません。

成果を上げれば出世できるというわけでもありません。
役所で出世するのは内部調整が上手いタイプです。
個人として有能だったり、役所の外に圧倒的人脈を持っていたりして、しっかり成果を残せたとしても、内部調整が今ひとつだったら出世できません。

しかし実際のところ、地方公務員の中には、待遇以上に頑張って働いている人が大勢います。
職位以上のプレッシャーを引き受けたり、サービス残業を日々続けたり……いわば「損をする」職員がいなければ役所は到底回りません。

このような現実を踏まえ、「地方公務員は頑張るほど損だ」と考える方も多いと思います。
(早々に地方公務員を辞めた方は、特にこう考えていると思います)

ただ僕は、「頑張るほど損だ」とまでは思いません。
目の前の仕事に興味があるのなら、頑張りに応じた「自己満足」というリターンが得られるからです。

自己満足はリターンたりうる

冷静に振り返ってみると、我々は自己満足を得るためだけに相当な投資をしています。
旅行なんて自己満足の典型ですし、美食やファッションなんかも自己満足要素が強いでしょう。
自己満足は、仕事以外の面においても、実際すでに強力なインセンティブになっています。

しかも自己満足は、単なる一時的快楽ではありません。
うまく構築できれば、「思い出」という形で、一生涯楽しむことが可能です。

地方公務員であれば、ことあるごとに過去の武勇伝を語ってくる高齢者と接触する機会も多いでしょう。
彼ら彼女らにとって、自分の武勇伝(=思い出)は、まさに自分のアイデンティティそのものであり、生きる支えでもあります。

電話や窓口で武勇伝プレゼンが始まるたび、僕は人生における「思い出」の重要性を痛感します。
適当に相槌を打ちながら、「もしこの人にこの武勇伝が無かったら、果たしてこんなにいきいきしていられるのだろうか?」なんてことも考えたり……

自己満足という要素を考慮せず金銭面だけで損得を考えるのは、精緻なようで現実離れしているとすら思えます。

仕事はコスパの高い自己満足手段

自己満足を得る手段は、仕事だけではありません。
いろいろな手段がありますが、地方公務員はさほど高給ではないので、なるべくコストパフォーマンスに優れた方法で得るほうが望ましいです。

地方公務員の場合、仕事で自己満足を得るのは、かなりコスパのよい方法だと思っています。

仕事は、時間というコストを投じる必要があるものの、費用はかかりません。
むしろ投下した時間に応じてお金が返ってきます。
モノやサービスを消費して得る自己満足よりも、かなりコストが小さいと言えるでしょう。

特に地方公務員の場合、副業規制という制約があり、仕事以外から収入を得られませんし、経費は全部自腹です。
何をしようとも仕事よりもコストが高くついてしまうので、得られる自己満足がよほど大きくない限り、コストパフォーマンスでいうと仕事を下回ってしまうでしょう。

「公益」という自己満足ブースター

仕事から自己満足を得られるのは、公務員に限った話でありません。民間勤務でも同様です。
しかも民間の場合、頑張れば頑張るほど、自己満足のみならず金銭的な見返りも期待できます。

ただし、地方公務員の仕事は、何であれ名目上は「公益のため」という高邁な目的を持っています。
誰かの私利私欲のためではなく、みんなのための仕事であり、「利他」とか「自己犠牲」のような高尚な理念を持った仕事です。

地方公務員の仕事は、このような世間的に高く評価される理念に直接貢献できる仕事ということで、自己満足を感じやすいと思われます。
実際のところ貢献できているかと問われると非常に微妙なところですが…… 

案外、トータルリターン(自己満足+金銭的報酬)でみれば、たとえ金銭的報酬では惨敗していようとも、公務員にも分があるかもしれません。

頑張りたいと思うなら素直に頑張ってみれば?

つまるところ、「頑張りたい」と思える環境に巡り会えたなら、素直に頑張ってみるのも悪くない選択だと思います。
金銭的には損かもしれませんが、それを補う自己満足というリターンを獲得できるかもしれないからです。


「頑張るだけ損だから」などと斜に構えて意図的に手を抜くと、サビ残が減って金銭的なコスパは良いかもしれませんが、かえって不完全燃焼感が残ったりして自己満足面ではマイナスが勝るかもしれません。
それならいっそのこと、コスパ度外視で思いきり頑張ってみたほうが、長期的には幸せになれるでしょう。

僕自身、観光部局にいたころ、サビ残まみれ&自腹切りまくりの日々を送る羽目になり、金銭的にはかなりしんどかったです。
しかし今となってはぼちぼち良い思い出です。
(将来「若い頃は自腹で東京出張したもんだ」みたいに武勇伝語っちゃいそう……)


自己満足をどれだけ重視するかは人それぞれですし、自己満足の感じやすさも人それぞれです。
自己満足に価値を見出せない人、自己満足を感じにくい人にとっては、まさに地方公務員は「頑張るだけ損」に違いないと思います。性格的に向いていないと言えるでしょう。

今年度の国家公務員受験者が久々に前年を上回ったようです。


とはいえ僕が公務員試験を受験した頃の3分の2くらいにまで落ち込んでいます。
当時より採用者数は爆増しており倍率的には歴史的低水準、つまり「合格しやすい」にもかかわらず受験者数が伸びないということは、巷でよく囁かれる「学生の公務員離れ」が進んでいると思わざるを得ません。

人事院では昨年、「国家公務員を志望しなかった理由」を調査しています。

 

国が実施する調査は、調査する前は大々的に取り上げられるものの、調査結果はなぜかスルーされがちです。
この調査も、「調査します」と発表した際にはニュースになっていましたが、3月に発表された調査結果はほとんど話題になっていなかったように思います。僕自身、つい先日気づきました。
気になった項目を紹介していきます。


全文へのリンクを貼っておきます。

もうちょっと細かく集計してほしかった

僕がまず注目したのは、本アンケート回答者の「志望状況」です。

スクリーンショット 2022-04-24 10.05.12

まず、回答者の約65%が「もともと興味なし」と回答しています。結構高いです。
ということは、このアンケート結果には、「公務員を興味が湧かなかった人」の意見が色濃く反映されています。

就活生は忙しいです。
興味が湧かない業界に対し、わざわざ時間と労力を費やしてリサーチしている余裕はありません。
ゆえにこのアンケート結果は、「公務員に興味がない人が」「直感的印象で回答している」ものと解釈するのが適切だと思います。

また、約20%が「関心があったが、やめた」と回答しています。
この層は「ちゃんとリサーチしたうえで止めた」方々であり、採用側からすれば「取りこぼし」ともいえます。
個人的には結構高いと思います。一旦公務員を検討したら受験まで一直線のイメージが強く、「よく考えたうえでやっぱりやめる」というパターンはごく少数だと思っていました。

ガチで分析するのであれば、「もともと関心がなかった」層と「関心はあったが、やめた」層を分けて集計する必要があると思います。
前者の回答は「ただの印象」で、後者の回答は「調査・熟考の結果」です。重みが違います。
なんらかの対策を講じるにしても、手法が全く異なるはずです。
公表されていないだけで、人事院内ではきちんと分析しているのでしょうが……

「人間関係と職場の雰囲気が終わっている」というイメージ

個々の回答項目を見ていくと、1問目から衝撃的な結果が出てきます。

スクリーンショット 2022-04-24 10.28.37

「人間関係や職場の雰囲気が良さそう」のスコアが飛び抜けて低い……
本省のエンドレス長時間労働や、国会議員にどやされている印象が強いのでしょうか?
「職場の雰囲気」は多忙と結びついているとして、「人間関係」とは……?

「仕事と私生活の両立ができる」も気になります。「そう思わない」がこの項目だけ頭一つ抜きん出ています。
「関心はあったが、やめた」層がこの項目でどう回答しているのか非常に気になります。
ひょっとしたら「そう思わない」に集中しているのかも……

コスパが悪い就職手段?

次の設問では「国家公務員を選ばなかった理由」を尋ねています。

先述したとおり、この設問の対象者には、「もともと関心がなかった」層と「関心はあったが、やめた」層という異質な存在が入り混じっています。
これらの2層では、「選ばなかった理由」に差がありそうですし、たとえ同じ回答を選ぼうとも、その回答に至るまでの過程は全然違うはずです。
そのため、ごちゃ混ぜで集計してもあんまり有意義ではない気もしつつ……とはいえどうしようもないので、この結果を見ていきます。

スクリーンショット 2022-04-24 10.38.57


まず目につくのが採用関係です。
「採用試験の勉強や準備が大変」が最も高スコア、「採用試験に合格しても必ずしも採用されないこと」「採用試験の実施時期が遅い」もなかなか上位に来ています。

がっつり対策しなければいけないのに採用されるかどうか不確実、つまるところ採用対策のコスパが悪いということなのでしょう。わかります。完全に同意です。

あとは「ハードワークだから敬遠している」系統の項目でスコアが高くなっています。

一方、ハードワークを厭わない層からは、処遇関係への不満がありそうです。
「出身大学が処遇に影響しそう」「能力や実績に基づいた評価がなされなさそう」「若手に責任のある仕事を任せてもらえなさそう」あたりの回答も高スコアで、実力や成果に見合った待遇を求めるバリキャリ志向のニーズに沿えていないことがわかります。

第三者発の情報のせいで受験者が減っている?

この調査では、国家公務員関係のみならず、就職活動プロセス全般についても質問しています。
中でも僕が気になったのは情報収集手段です。

スクリーンショット 2022-04-24 11.11.18

本文中でも触れられているとおり、採用側が発する公式情報のみならず、インターネット記事や口コミサイト、Twitterのような第三者発の情報も結構参照されているようです。

この傾向は、役所にとってはかなり不利です。
世間の人々の大半は、公務員に対して敵対的です。
インターネット上には、公務員批判記事は大量にあれど、公務員に好意的な記事はほとんどありません。

公務員への就職に関しても、「オワコン」「泥舟」「人生の墓場」といった否定的な記述ばかりです。
公務員就職を推奨しているのは、今や予備校くらいです。

つまり、第三者発の情報を集めるほど、公務員就職に対してネガティブな感情を抱いてしまうでしょう。
こうやって意欲を挫かれる人も、ひょっとしたら少なくないのかもしれません。

この調査結果はあくまでも国家公務員について尋ねたもので、そもそも地方公務員は対象外です。
ただし、この設問は「就職活動全般」について尋ねており、地方公務員採用でも大いに参考になります。
インターネット上の第三者意見が結構参照されていることが定量的に明らかになったという事実は認識しておいたほうがいい気がします。

以前の記事でも少し触れたのですが、現役キャリア官僚の友人から転職相談を受けました。
その後も何度かやり取りして、結果的に今回は転職を見送ることで落ち着いたようです。

とはいえ彼の霞が関への落胆は相当なもので、かつ彼個人の問題というよりは本省勤務のプロパー国家公務員に共通するものだと思われました。

本人から「隠すような話でもないし」と了承もらったので、紹介します。

ひたすら「連絡調整」の日々

今回僕に相談をくれた現役キャリア官僚(以下「X氏」)は、現在は某省(本省)のとある課で課長補佐を勤めています。
国家総合職試験に合格して採用された後、1回だけ出先機関勤務を挟んでいますが、基本的にずっと本省勤務が続いています。

課長補佐に昇進してからは、国会対応と内閣府・内閣官房(以下まとめて「内閣周辺」)との連絡調整がメイン業務です。

具体的には、
  • 国会答弁を書く
  • 国会議員の要求に応じて個別にレクする
  • 内閣周辺からの指示(資料作成、レク、各種文章作成など)に対応する
といった業務を、自ら手を動かして処理したり、係長や事務官に指示して対応してもらったりしてこなしています。

いずれの業務も、とにかく「日本語を整えること」が最も重要です。
口頭であれ文章であれ、「隙が無く、かつわかりやすい」説明が求められます。


連絡調整やりたくて官僚になったわけではない

X氏は、こういう仕事がやりたくて官僚になったわけではありません。
X氏がやりたいのは、施策や制度そのものに関わる仕事です。

既存の制度を安定運営させることはもちろん、新たな課題に対して新規施策を打ったり、状況変化に応じて制度を改正したり、不要になった施策を廃して新陳代謝を図ったり……
いわば施策や制度という「コンテンツ」に関わる仕事です。

こういう仕事に生涯をかけて取り組みたいと思ったために官僚を志し、学生時代から勉強を重ね、入省後も経験を積み、人脈を作ってきました。

しかし実際のところ、年々どんどん制度・施策そのものから距離が開き、今となっては口出しすらろくにできない状況にまでなってしまいました。

「連絡調整業務ばかりで施策・制度そのものに関われない」という状況は、X氏だけに限った状況ではありません。
上を見ても下を見ても横(同年代の総合職採用職員)を見ても、皆同じように連絡調整業務に追われています。


加速する「連絡調整」シフト

「制度や施策に携われない」という不満そのものは、今に始まった話ではありません。
X氏を離職に駆り立てたのは、ここ数年でこの傾向が一層強まっているためです。

X氏いわく、2つの大きな流れが、プロパー職員を制度・施策からさらに遠ざけているとのこと。


省庁横断

ひとつは「省庁横断」です。

ここ数年、「官邸主導」や「縦割り廃止」のような掛け声を実現すべく、内閣官房や内閣府の職員がどんどん増えているようです。
職員は基本的に各省からの出向という形で賄っており、係長級〜課長補佐級の職員が中心。
出向中は「各省にオーダーを出す側」として、ひたすら連絡調整業務をこなします。

一方、各省のほうは、内閣官房や内閣府に出向した分だけプロパー職員が減ります。
そのため、少ない人数で、連絡調整業務をこなさなければいけません。

つまるところ、「省庁横断」実現のため「連絡調整業務の司令塔」がどんどん増強されており、連絡調整業務の総量も増えていく一方、各省の対応人員は減少しているため、各省の一人当たりの負担がますます重くなっているのです。

外部人材登用

もうひとつは「外部人材登用」です。
 
プロパー職員が連絡調整業務に追われる中、制度や施策に関わる業務は、プロパー職員以外が担うようになりつつあるようです。

特に民間企業からの出向者の存在感がどんどん増しつつあり、新規施策や大型制度改正のような目玉プロジェクトほど、民間企業出向者中心で進められているとのこと。

X氏から見れば「自分のやりたかった仕事が外部人材に奪われた」も同然の状況です。
「これまで積み上げてきたもの、学識も経験も人脈も無駄になっている」と嘆いてもいました。
「霞が関において、キャリア官僚は『裏方』になりつつある」という言い方もしていました。

悪いことではないものの……

「省庁横断」「外部人材登用」いずれの流れも、これから当分続くと思われます。
そもそも、どちらも悪いことではありません。
うまくいけば行政サービスの向上につながるでしょう。

しかし、これらの流れが進めば進むほど、プロパー職員はますます連絡調整役に徹することになります。
国家公務員、特に国家総合職の仕事の魅力である「制度・施策に携わって国を動かすこと」から、どんどん遠ざけられてしまいかねないのです。

X氏に離職を考えさせたのは、現状への不満ではなく、「このまま霞が関に残っていては『制度や施策を動かす仕事』に関われない」という将来への危機感でした。
転職先候補として自治体も視野に入れてくれたために、僕に連絡をくれたとのこと。

公務員のやりがいとは何か?と改めて考えさせられる一件でした。

このページのトップヘ