キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

タグ:働き方


新型コロナ対応で忙殺されている自治体勤務の皆様には非常に申し訳ないのですが、僕は連休以後1日も出勤していません。
ずーっとテレワークです。

僕の出向元自治体は、少なくとも3月時点ではテレワーク環境が全然準備されておらず、今年度中に急ピッチで整備する予定みたいです。
そのせいなのか、僕のテレワーク環境のことを人事担当からいろいろ聞かれています。

自分で言うのも小恥ずかしいですが、僕みたいな独身貴族機材オタクのテレワーク環境は、社会的正常者が多い自治体組織においては貴重なサンプルだと思います。
どこかの誰かの参考になることを祈念しつつ、僕のテレワーク環境を公開します。 

ハード編

職場PC(シンクライアント端末)

職場から支給されたテレワーク用パソコンで、インターネット経由で職場のサーバーにアクセスして仕事しています。
機種名は秘密ですが、僕の出向元自治体のパソコンより圧倒的に高性能です。
メモリなんて8GBもあります。3月まで僕が使ってた自治体PCの4倍です。


外付けモニター

プライベートで普段使いしているモニターをそのまま使っています。
USB-C接続対応、縦方向でも使える製品ということで、EIZOの「FlexScan EV2795」という製品を使っています。
個人的には、小さくとも24インチは欲しいところです。
これより小さいと、左右で別々のオフィスソフトを開いて作業するのが難しい。


キーボード・マウス

これも普段使いしているものです。
エクセルを触る仕事が多いので、フルサイズキーボードを使っています。


カメラ内蔵マイク

オンラインミーティングの時だけセットしています。
カメラもマイクも職場PCに内蔵されているのですが、僕は私物を使っています。
せっかく持っているのに死蔵させておくのが勿体無いので。

たくさんあるWEBカメラの中でも、本製品はかなり広角に写せるほうなので、複数人を1画面に収めたい(オンライン会議用のアカウントが足りず、端末1台で複数人が参加する場合など)に向いています。

この機材は昨年、職場用に購入したものです。
僕の出向元自治体では、オンライン会議用のハード面の調達が遅れたため(自治体が好きな低価格帯商品が品薄で買えなかったらしい)、カメラやマイク、場合によってはパソコンやタブレットまで職員が自腹で購入していました。


手帳(todoリスト兼メモ帳)

テレワークだと誰もリマインドしてくれないので、ついつい用事を忘れがちです。
そのため、予定・タスク管理には普段以上に気を遣っています。
 
何より、出勤日にしかできない「先送りする仕事」をきちんとメモしておくことが重要です。
 
「テレワーク日にしかできない仕事」はありませんが、「出勤日にしかできない仕事」は意外とたくさんあります。
紙媒体の提出物を処理したり、データ化されていない大昔の資料を探したり、書籍媒体の資料を参照したり……
僕はケチなので資料の印刷も出勤日にまとめてやっています。自腹は極力切りたくありません。

出勤日が少なくなればなるほど、出勤日の使い方が重要になってくるのです。


スマートフォン

職場から電話がかかってくるかもしれないので、念のため卓上に置いてあります。
たいていの用事はビジネスチャット(後述)で連絡を取り合う文化なので、、職場からの電話はほとんどありません。
むしろ出向元自治体からの電話のほうが多いです。正直さみしいのでありがたい。


筆記用具・電卓

私物を使っています。職場から持って帰ってくるのが面倒なので。


タブレット

職場PCはセキュリティが厳しく、ログインが必要なwebサービスがほとんど使えません。
そのため、常用している「Googleカレンダー」や「todoリスト」、「Notion」のようなアプリを使うために、私物のiPadを卓上に常駐させています。


ブルートゥーススピーカー



ときどきBGMを流すのに使っています。
低音と高音をそれぞれ別々に調整でき、ギターやベースがガンガン鳴っているタイプの曲は低音強調、ボーカルを堪能したいときは高音強調……みたいに調整できます。低音強調して「無敵級*ビリーバー」を聞くとたくさん脳汁が出ます。

正直僕みたいなアニソンばかり聴いているオタクにはオーバースペックな逸品なのですが、有線接続もできるBTスピーカーが意外と少なく、こちらを購入しました。

卓上以外のハード

つくえ

小学生時代から使っている学習机をそのまま使っています。
パソコン作業するには天板が低く、改善の余地ありと思っています。


いす

数年前に購入した「コンテッサⅡ」というガチチェアを使っています。
腰に爆弾を抱えているので、ちゃちな椅子は怖くて座れないのです。
 

ソフト編

ビジネスチャット

サービス名は秘密ですが、かなり有名なサービスを職場で契約しています。
容量の大きい添付ファイルや長文メッセージをやりとりする場合を除き、職場内のコミュニケーションはもっぱらビジネスチャットです。


Apple Music

BGM用です。
僕は無音のほうが集中できるタイプなのですが、逆にずっと無音だと集中しすぎるのか一日持ちません。午前11時には力尽きてしまいます。
そのため、小難しい資料を解読する仕事のような「特に集中したいとき」を除き、あえて過度に集中しないよう、音楽を流しています。

雑感

ビジネスチャットは個人的に必須

本格的にテレワークを導入するのであれば、ビジネスチャットは不可欠だと思います。
「メールで十分だろ」と思う方もいるかもしれません(僕も思ってました)が、実際に使ってみると非常に便利です。

テレワークが増えれば増えるほど、テキストメッセージのやりとりも増えます。
全部メールで済ませようとすると件数が膨大になり、メール管理が煩雑になりますし、受信ボックスもすぐパンクします。
その結果、外部とのやりとりのような「メールでないと処理できない」重要案件が埋もれてしまいかねません。

ただ、「テキストメッセージのやりとりはメールに一元化したほうが遺漏が少なくて管理しやすい、メールとチャットに分けるとかえって混乱する」と方もいると思います。

タブレット端末をもっと応用していきたい

テレワーク中は、人目を気にする必要がありません。
そのため、職場だと試せないような「働き方」を実験できます。

僕が一番可能性を感じているのが、タブレット端末の活用です。
業務効率化に役立ちそうなアプリやサービスを試していきます。
卓上で使う場合、サイズは大きければ大きいほど便利です。
そのため先月発表された「iPadPro 12.9インチ」の新型がめちゃくちゃ気になっています。
Pro級の性能は絶対持て余すのですが、約13インチというディズプレイサイズには抗いがたい魅力があります。
12.9インチのAirが出たら即購入なのに……

環境構築のためのイニシャルコストは高くつく

僕はひきこもり気質かつオタクなので、自室の設備は以前かなり充実していました。
「ハード編」で紹介した機材類も、(職場PCを除き)全部元から保有していたものです。
テレワークのための新規購入したものは一つもありません。

ゼロから僕並みに環境を整えようとすると、40万円くらいかかります。

機材のグレードを落としても、5万円はかかるでしょう。

正直パソコンさえあれば仕事できないことはありませんが、それでも健康のために長時間座っていられる椅子は必須だと思います。

僕みたいにテレワーク有無にかかわらず在宅時間が長い人間は別にして、「テレワークのため」だけに諸々購入しようとすると、金銭的にも精神的にも大損になりかねません。
こういう場合は必要最低限の設備で抑えるか、あるいは理由をつけてテレワークを拒むのもアリかもしれません。

急に「テレワークしろ」と言われて慌てて調達する羽目になり、割高な買い物をしてストレスを溜めるより、あらかじめどれくらいのグレードの設備にするかを想定し、金銭的負担の見積もりを用意していたほうが安全な気がします。


本記事を読む前に、これまでの人生を振り返ってみてください。
仕事以外の用事、つまりプライベートの用事で都道府県庁に行ったことって、どれくらいありますか?

僕の場合、
  • マンション管理士試験の申込書を貰うために公営住宅担当課に行った
  • 県立の体育館を借りるために申込書を提出しに行った

この程度です。
多分ほとんどの方が、プライベートの用事では滅多に県庁に行かないのでは?

一方、市役所や町村役場のほうは、たびたび足を運んでいるでしょう。
僕の場合も、マイナンバーカードを作ったり、転入・転出届を出したり、戸籍謄本などの証明書類を取得したり……なんだかんだ用事があって毎年1回は行っています。

この違い、つまりプライベートの用事で訪れる頻度の違いが、市町村職員と県庁職員の業務の違いにも大きく影響していると思います。


市役所・町村役場はプライベートモードの人、つまり「オフの人」を主に相手にしています。

一方、県庁は仕事モードの人、つまり「オンの人」を主に相手にします。


「オン」相手の仕事、「オフ」相手の仕事

もちろん県庁にも「オフの人」を相手にする仕事があります。
自動車税や都道府県民税、公営住宅関係の仕事がその典型でしょう。
ただし、県庁の業務全体からみれば、こういった業務の割合は小さく、従事している職員の数も少ないです。

県庁での対外的な仕事といえば、法人相手の手続き対応がメインです。
職員が対面する相手は「一個人」ではなく「組織の一員」であり、典型的な「オンの人」であります。

何より県庁は、国や市町村とのやりとり、つまり公務員相手の仕事がものすごく多いです。
公務員もまさに「オンの人」です。



一方、市町村の仕事は、住民票関係や各種手当(児童手当など)、生活保護、介護保険、国民健康保険など、住民のプライベートに関わる仕事がたくさんあり、多くの職員がこういった仕事に関わっています。
これらの制度を利用する住民は「オフの人」です。
仕事のためではなく自分自身の私生活のために利用しているからです。

「オンの人」相手の仕事もあるのでしょうが、県庁よりはずっと少なく、役所の仕事全体に占める割合も小さいと思います。

「オン」の人、「オフ」の人

どんな人も「オン」と「オフ」とで異なる顔を持ちます。
 
オンオフの差は人それぞれですが、一般的に「オン」のときのほうが感情の起伏に乏しく打算的だと言えるでしょう。
よく言えば冷静で落ち着いている、悪く言えば無味乾燥でつまらない人間です。
 
人間関係においては、自分の本心を曝け出すわけではなく、表層的な段階を超えません。
まさに「仕事上の関係」です。

「オンの人」と「オフの人」、いずれを相手にするかによって、業務の雰囲気が大きく変わります。

「オンの人」相手の仕事=腹の探り合い

まず、「オンの人」は属性が限られます。
年齢は20代〜60代で、日本語が使えて、健康かつ認知機能のしっかりした方ばかりです。
社会的なステータスもそれなりに高く、常識をわきまえている方がほとんどです。

「オンの人」はたいてい親切です。好感を持たれるよう愛想よく振る舞います。
怒るときも、感情を爆発させるわけではなく、理路整然と詰めてくるほうが多いです。

ただし、親切なのはあくまでも自分の目的を達成するための手段です。
嫌われるよりも好かれていたほうが何事もスムーズに進むから親切なだけで、役所が好きなわけでもなければ、担当職員に個人的な好印象を持っているわけでもありません。
基本的なビジネスマナーを実践しているだけです。

そのため、ある程度までは容易に信頼関係を築けるものの、心の底から打ち解けるような状態までは滅多に至りません。
裏切ったほうが目的に適うと判断すれば、あっさり裏切られます。
なんともドライな関係です。

「オンの人」相手の実際の仕事では、相手の言動は打算であるという前提で動きます。
相手から感謝されても、怒られても、悲しまれても、あくまでも打算だと考え、これらのアクションの裏を読もうとします。
相手の言葉をそのまま鵜呑みになんて絶対しません。発言の経緯や真意を探ります。
相手と協調路線で物事を進めているような状況でも、裏切られた場合を常に想定しています。
ニコニコ笑顔を取り繕いつつも腹の探り合いをしているようなものです。

「オフの人」相手の仕事=生身の人間との対面

一方、役所が関わる「オフの人」は、たいてい苛立っています。
特に役所の窓口に来る方は、来たくて来ているわけではなく、来させらているという認識であり、「貴重なプライベートが潰された!」と言わんがばかりのイライラが表れています。
ただし、うまくスムーズに対応できれば、笑顔で帰ってくれることも多いです。
このときの笑顔は打算ではなく本心でしょう。


属性も幅広く、相手に合わせた対応が必要になります。
認知症のために話が通じなかったり、心身に深い傷を負っていたり、カタギでなかったり……
「読み書きができない」という方も結構いらっしゃいます。

「オフの人」相手の仕事では、文字通り「生身の人間」を相手にしているという感覚があります。
僕の思い違いかもしれませんが、打算ではない「本心」を感じます。
感謝されたら嬉しいですし、力になれなかったら凹みます。


比率の違い

県庁も市役所・町役場も、「オンの人」「オフの人」両方を相手にします。
ただし、その割合は大きく異なります。
県庁であれば「オンの人」、市役所・町役場では「オフの人」相手の仕事が多いでしょう。

どちらの仕事が向いているかは、完全に人それぞれです。
「どちらが楽か」「どちらがやりがいがあるか」とも一概には言えません。

インターネット上には「県庁の仕事は住民のためになっている実感が無く、やりがいが感じられない」という意見が多数ありますが、これは「オンの人」対応が多いという県庁の性質の帰結なのかもしれません。

僕は圧倒的に「オンの人」相手のドライな仕事のほうが性に合っていて、県庁を選んで正解だったと思っています。

地方公務員の仕事はよく「マニュアル仕事」と言われて揶揄されます。
「決まった手順通りにやれば誰でもできる簡単な仕事」「画一的で柔軟性欠ける」「単純なルーチンワーク」というイメージが強いのでしょう。

役所の仕事は基本的に法令という(広義の)マニュアルに基づいて執行されるものであり、なんでもありの民間企業と比べれば間違いなくマニュアル仕事です。

ただし、役所が参照するマニュアルは、業務の手順が全て書かれている親切丁寧なものではありません。

地方公務員は日々、マニュアルの行間を埋めて具体的な作業へと落とし込んで行くプロセス、つまりマニュアルの解釈に膨大な時間と労力を注いでいます。
 
「マニュアルの解釈」の方法を説いたマニュアルはありません。ケースバイケースかつコミュニケーション能力が問われる仕事です。

地方公務員の仕事は「作業ゲー」というよりは、むしろ「作業ルールの解釈ゲー」です。



「要綱」「要領」「手引き」「ガイド」「詳説」「解釈指針」「心得」などと題される、業務の手順や判断基準を説明した文書のことを、便宜上全部ひっくるめて「マニュアル」と称します。

マニュアルは不完全、だから事後的コミュニケーションで補完する

役所の仕事はとにかく「正確さ」を追求します。

マニュアルに書かれていない例外事案が生じた場合、どんなに些細な事象であっても決して無視しません。
 

民間企業であれば「その例外事案について真剣に検討することのコスパ」をまず考え、ごくわずかな影響しかない事象であれば無視するでしょうが、行政は違います。
どれだけの労力がかかろうとも、正確に把握しようとします。

良し悪しは別にして、役所らしいポイントだと思います。


そのため役所は、マニュアルに書かれていない例外事案と日々格闘しています。

マニュアルの文言を拡大解釈して適用しようと試みたり、例外事象そのものを深く調べて本当に例外なのかを確認したり……

どんな方法を採るにしても、一人では完結しません。

マニュアルの作成者をはじめ、いろんな関係者とのコミュニケーションが生じます。



さらにそもそも「読めば誰でも作業できる」ような親切なマニュアルを作成するのは、ものすごく大変です。実際にマニュアルを作ったことがある方なら重々ご存知でしょう。

個人的には作業を文章化することが大変に困難です。
単語の定義は人それぞれです。
どれだけ言葉を尽くして丁寧に文章に認めたとしても、文章を構成する個々の単語の意味が異なれば、文章の意味も変わってしまいます。

マニュアル作成者としては単純作業のレベルまで落とし込んだつもりでも、作業者にとっては曖昧な表現にしか映らない。こういうケースが頻繁に生じます。

マニュアルの文意が汲み取れないのであれば、作業の進めようがありません。
作成者に解説してもらうしかありません。

マニュアルを補完するコミュニケーション

  • マニュアルに書かれていない事態が生じている
  • マニュアルの文章の意味がわからない、または複数パターンの解釈が可能でどちらが正しいのかわからない
マニュアルを解釈するプロセスでは、こうしたマニュアルに対する疑義が頻繁に生じます。
自力ではどうしようできません。疑義を解消するにはマニュアルの作成者に尋ねるしかありません。

ここでコミュニケーションが必要になります。
マニュアル作成者に疑義内容を伝え、回答を求めるのです。
自分が現に直面している状況を正確に伝えるだけの説明能力が問われます。

県庁職員は「疑義に答える」側でもある

市町村役場職員と県庁職員との大きな違いの一つが、マニュアル解釈に関係する業務の中身かもしれません。

市町村職員は、主にマニュアルを解釈して作業する立場です。
 
一方、県庁職員は、マニュアルを解釈して作業するだけでなく、市町村職員からの疑義に答える立場でもあります。
県庁(特に本庁)では、市町村役場にマニュアルを送って作業してもらい、作業結果を集計・分析するという業務がたくさんあります。
県庁主体で実施している業務もあれば、国の事業を仲介しているだけの場合もありますが、いずれにしても県庁はマニュアルを司る側であり、市町村役場からの疑義に答える立場です。
県内の各市町村役場から寄せられる疑義を正確に把握し、回答しなければいけません。

国の事業を県が仲介して市町村に作業してもらう場合でも、市町村からの疑義は県が答えなければいけません。
市町村が直接国に質問するのはご法度です。
市町村も怒られますし、県も怒られます。

疑義にまつわるコミュニケーションの量は、市町村役場よりも県庁のほうが圧倒的に多くなります。
県庁には県内全市町村からそれぞれ疑義が寄せられ、ひとつひとつ対応していきます。
ざっくり市町村数の分だけ疑義数が倍増し、疑義数増に伴ってコミュニケーション量が増えます。

「マニュアル→作業へと具体化するためのコミュ力」こそ地方公務員の適正

地方公務員の仕事の多くが何らかのマニュアルに従って行われているのは、まぎれもない事実です。
ただし、マニュアルに書かれているとおりの作業を淡々とこなしているだけではありません。
マニュアルの解釈に相当の時間と労力を割いています。

マニュアルの解釈は、自分一人で完結するプロセスではありません。
他者とのコミュニケーションが必ず生じます。

一見するとただの単純作業のような業務であっても、自分一人で最後まで仕上げられるとは限りません。
手順に疑義が生じるたびにコミュニケーションが生じます。
そして、「自分の疑義を正確かつわかりやすく相手に伝える」というコミュニケーション能力が求められます。

さらに県庁職員の場合は、「相手が抱いている疑義を正確に把握し、わかりやすく説明して疑義を解消する」というコミュニケーション能力が必要です。

公務員志望者の中には、「マニュアルに従って淡々と作業するのが役所の仕事、自分はマニュアルを理解するのが得意で作業スピードにも自信がある、だからきっと公務員適性があるはずだ」と考えている方もいるかもしれません。

文章読解能力や作業速度が公務員適性のひとつであることは間違いありません。
ただ、前述したようなコミュニケーション能力のほうがもっと重要です。
他者とのコミュニケーションを経なければ、やるべき作業の中身が特定できず、作業に着手することすらできないのです。

こういう「作業内容を確認するためのコミュニケーション」を無駄だと思うなら、きっと地方公務員には向いていません。
何をするにも煩わしく感じられ、ストレスが溜まるでしょう。 

最近の流れを見ていると、マニュアルに基づく作業は今後どんどん会計年度任用職員に任せるようになり、正規職員の役割は「マニュアル作成」「マニュアルの解釈を会計年度任用職員に教える」ほうへとシフトしていく気がしています。


直近だと、札幌市が「比較的簡単な手続き業務」を民間委託するとニュースになっていました。

こういう流れがどんどん進んでいくような気がしています。



こういう路線で実際に進んでいけば、正規職員の仕事に占めるコミュニケーションの割合が大きくなり、より一層コミュニケーション能力が要求されるでしょう。

黙々と作業したいタイプの方にとっては働きづらい環境になるかもしれません。


世間から遅れること約1年、僕もNotionを使い始めました。

 
大変便利です。もっと早くから使っていればよかった……と悔やむばかりです。

Notionのようなクラウド上でのファイル管理サービスは、セキュリティの都合上、地方公務員稼業には向いていません。
内部資料をクラウドストレージに保存する行為は、あまりにもリスクが高すぎます。
わずかでも手違いがあってファイルが外部に流出してしまったらおしまいであり、かつ実際このような事案がたびたび発生しているので、厳に慎まなければいけません。

ただNotionは、「クラウドストレージにファイルをアップ」しなくても十分便利なツールです。
サービスの真価は発揮できていないのかもしれませんが、それでもかなり役立ちます。

(今更ながら)Notionとは?

ざっくりいうと、Notionはオンライン上でファイルを保存・管理できるサービスです。
ワード・エクセルファイルやPDF、画像、動画など幅広いファイル形式に対応しているうえ、ウェブページのコピーをファイルとして保存(クリップ)することも可能です。

さらに、保存したファイルを色々な方法で並べ替えたり抽出して表示できます。
エクセルみたいな一覧表や、インスタグラムみたいなサムネイル表示、カレンダーやガントチャートのような時系列表示など、並べ替え・抽出の目的に応じて様々な形式が利用できます。

要するに、ファイルの保存や管理に関してはわりとなんでもできるツールです。
「わりとなんでもできる」のが特徴です。これまで複数のウェブサービスで別々に行っていた作業を、Notionを使えば一元化できるのです。

今のところ日本語化はされていませんが、直感的に操作できるので全く問題ありません。

詳しい説明は省略します。
既に広く流布しているツールであり、大勢の方がわかりやすい解説をアップしているので、そちらを参照してください。検索すればたくさん出てきます。

ひたすらクリップ&タグ付け

僕のNotion利用法はいたって単純です。
担当業務に関係のあるウェブページをひたすらクリップしています。

僕はグーグルアラートを使って担当業務関係のニュースを日々収集しており、通知されたニュースのうち重要だと思ったもの(あとあと参照したくなりそうなもの)は、とりあえずクリップします。



他にも関係するニュース記事やレポート、他自治体のプレスリリースなどがあれば、随時クリップしていきます。

クリップした記事には、「トピック名」「地域名」「発信者名」「情報媒体の種類」などのタグをつけて、後から見返せるように整理しています。

「自分の担当業務に関係のあるウェブページを保存する」という作業自体は、地方公務員なら誰でも日々取り組んでいるでしょう。わざわざNotionを使わずとも可能です。
ただし、紙に印刷してファイリングしたり、ワードにコピペしたり……と、それなりに手間がかかっているのでは?

一方Notionを使えば、一瞬で終わります。
しかもタグのおかげで、あとあと参照するのも簡単です。

危機的事態だからこそ情報収集&整理

弊ブログでも何度か触れていますが、地方自治体はこれから当分の間、新型コロナウイルス感染症関係の訴訟に悩まされると思っています。
「行政の不手際のせいで新型コロナウイルス感染症が拡大した、だから感染症に起因する不利益の責任は行政にある」というロジックが定着してしまった以上、新型コロナウイルスのせいで不利益を被っていれば、誰もが原告となりえます。

休業補償や医療訴訟は確実として、そのほかにどういう切り口で提訴されるか、現時点では想像もつきません。
新型コロナウイルス感染症とは一切無縁だと断言できる業務はごくわずかでしょう。 
つまり役所は現在、自らが保有するあらゆる機能・あらゆる業務に対して、訴訟リスクを抱えている状態なのです。

訴訟にまで至らなくとも、大規模な抗議運動くらいは続々生じると思っています。
現時点では「密」を避けねばいけないという風潮があるため抗議運動は下火ですが、ワクチンが行き渡って感染リスクが減ってきた時点で、溜めに溜めた憤懣が一気に爆発して、デモ活動のような抗議運動が始まるのでは?と今から懸念しているところです。衆議院総選挙もありますし……

訴訟や抗議運動に対応するには、これらの芽を早々に察知し、Xデーまでに防衛体制を整えておかなければいけません。
こういった作業の基礎が情報収集と整理であり、Notionが役立ってくれるのです。

 

「あなたの仕事のやりがいは何ですか?」というクエスチョンは、どんな職業においてもインタビューの定番です。

「やりがい」はあくまでも主観的なものです。
たとえ同じ仕事であっても、自分と他者ではやりがいを感じるポイントが異なるかもしれませんし、同じポイントに対して正反対のやりがいを感じるかもしれません。
そのため「公務員のやりがいは●●だ」という一般論を示すことは不可能だと思います。

とはいえ、多数のケースを収集すれば、「公務員の中には●●をやりがいと感じる人が多い」という傾向を察する程度なら可能でしょう。
あくまでも一例、河原に無数に転がっている小石の一つくらいの感覚で拾い読みしてください。

公益に貢献できる

公務員稼業のやりがいといえば、真っ先に「公益に携われる」という一文が思い浮かびます。
ただ冷静に考えてみると、「公益に携われる」職業は公務員以外にもたくさんあります。
むしろ公益に資さない仕事のほうが圧倒的に少数派でしょう。

例えばデイトレーダーのような、一見すれば自分のお金のことしか考えていない人であっても、儲けた分だけ納税しています。
もし年収1億円だったら、ざっくり2000万円(20%)くらいを所得税として納めているはずで、僕なんかよりもはるかに公益に貢献していると言えます。

仕事のやりがいとして「公益への貢献」を挙げるなら、なるべく深掘りして具体的に表現する必要があると思います。
特に他の職業との違いを強調したいのなら尚更です。

僕の場合、公務員稼業は主に2つの意味で公益に資する仕事だと思っています。

相対的に困っている人へ→生活水準の底上げ

1つ目は生活水準の底上げです。
 
役所が提供する行政サービスによって恩恵を受けるのは、主に「相対的に弱い立場にいる方々」です。
勿論サービスそのものは住民全員に対して開かれてはいますが、強い立場にいる方々(高所得者など)は、行政サービスを使わずとも生活が成り立つので、必ずしも恩恵を受けているとは限りません。

教育あたりが典型でしょう。
お金のある方は公教育の世話になることなくずっと私立に通わせられますが、普通の方々は公教育を利用します。

電力や通信サービスであれば、立場の強弱に関係なく、使った分だけ支払いが生じます。
こちらは万人の公益に資するサービスです。
一方で行政サービスは、相対的に弱い立場にいる方々を特にケアするものです。
そのため「底上げ」という表現がしっくりくると思っています。

相対的に強い人へ→秩序の維持

2つ目は秩序の維持です。どちらかというとこっちが本命です。
行政がルールを運用したり、各種サービスを提供することによって、社会の秩序が保たれています。
(先述した「生活水準の底上げ」の結果でもあるでしょう)

社会の秩序が保たれていれば、身体的・精神的・財産的な安全が確保され、安心して生活を営めます。
この意味での恩恵は、住民誰もが享受しているはずです。
ネットニュースで「高所得者は行政サービスを受けられない、年収〇〇万円以上だと税金払い損」のような煽り記事がよく掲載されていますが、「秩序の維持」という観点ではむしろ高所得者ほどメリットが大きいと思います。

普段から「行政のおかげで秩序が保たれている」と意識している方はごく少数だと思います。
むしろ「そんなの当たり前だろ」と思う人が大多数でしょう。

ただ自分は、行政による秩序の維持をありがたく感じる人が全然いない現状を、むしろ嬉しく思います。
「当たり前」になっていることを「当たり前」のまま運用していく、これこそが秩序を維持する最大のポイントだと思います。


つまるところ、「生活水準の底上げ」と「秩序の維持」という2点で公益に貢献できるのが公務員であり、これらが僕にとっての「やりがい」です。


知的好奇心を満たせる

僕にとって役所稼業は、個人的な知的好奇心を満たすプロセスでもあります。

無秩序な部局横断的な人事異動のおかげで色々な分野の仕事を経験できるので、幅広い知識が身につく」という意味では断じてありません。

配属部署・担当業務に関係なく、地方公務員稼業を続けていればいつでもどこでも探求できるトピックが、僕は少なくとも2つあると考えています。

現状の不条理分析→真の黒幕は誰なのか? 

ひとつは現状の不条理分析です。

役所の仕事の多くは、現に発生している問題を解消しようとするもので、いわばマイナスをプラスに転じようとする試みです。
そのため、何事もまずはマイナスな事態が発生している現状の分析から始めます。

現状を深掘りしていくと、結構な頻度で既得権益を発見します。
大多数の目には「問題」として映る事態であっても、特定の個人・団体には「利益の源泉」として機能している。こういうケースが散見されるのです。
既得権益といえば金銭的なものがメジャーですが、権威・メンツも立派な既得権益です。

迷惑を被っている人が大勢いることを知っていながらも、私利私欲のために問題解決を意図的に妨害している「真の黒幕」も意外といらっしゃいます。

僕は心根が中二病なので、こういう「黒幕の構造」を探求していくのが楽しいのです。


普通の人のダークサイド分析→常人のキレポイントは?

もうひとつは普通の人のダークサイド分析です。

先にも触れましたが、行政サービスをありがたく思う人はごくごく少数です。
何をやっても感謝されず、むしろ不満や怒りをぶつけられてばかりです。

行政に対して敵意を向けてくる方のほとんどは、戦いの素人です。
戦闘が生活の糧というわけでなく、普段は平穏に暮らしています。
(もちろん戦闘のプロも少なからずいます。役所はじめいろんな相手に戦いを仕掛け、戦果をあげることで収入を得ている方々です。)

こういう方々にとって、敵意を顕にして怒声を上げ罵詈雑言を撒き散らす機会なんて、人生全体で見ても滅多に無いでしょう。

幸か不幸か、役所という場、公務員という相手は、こういうごく普通の方々が秘めたる敵意を発露させやすいシチュエーションだと思います。
つまり公務員は、「普通の人の心のダークサイド」という(ある意味貴重な)事例を垣間見れるのです。

人間の心理に興味のある僕としては、これもまた「やりがい」のひとつです。
……というふうに自分に言い聞かせることで、敵意を浴びるストレスを軽減しようと企てているところです。


やりがいとの付き合い方

僕はなぜか頻繁に異動していて、ほぼ毎年のように担当業務が変わっています。
そのため、どんな部署でも共通するような抽象的な「やりがい」しか思い当たりません。
特定の部局で長く勤め上げているような職員であれば、もっと具体的なやりがいがあるのかもしれません。

逆にいえば、公務員稼業全体に通用するような「やりがい」が見出せず、現在の担当業務と直結した個別具体的な「やりがい」しか見出せないのであれば、人事異動のたびに苦しむのかもしれません。
例えば「観光客の笑顔がやりがい」というだけでは、観光部局から異動した途端に振り出しに戻ってしまいます。

やりがいはあくまでも主観的なもので、口外するものでもありません。
正直、何を抱いていても構いません。
役所勤務の充実感を少しでも高めるための「おまじない」みたいなものでしょう。
自分の納得いくお題目を設定した者勝ちだと思います。 

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