キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

タグ:典型的地方公務員

年末ということで家計簿を整理していたところ、今年は4年ぶりに交際費が1万円を超えていました。
旧知の友人知人たちから、「コロナも落ち着いてきたし久々に飲みに行こうぜ」というお誘いをたくさんいただいたからです。
(婚活的な意味でもそこそこ費やしましたが成果ゼロです)

中にはコロナぶりどころか10年ぶりに会う人なんかもいたのですが、田舎ゆえにドラマチックな人生を歩んでいる人はほとんどおらず、だいたい新卒で就いた仕事を続けていて、変化といえば家庭面(子どもが産まれた、家を建てた)という人が多いです。

そのため、近況報告はあっさり終わって(報告するような中身が無い)、昔話でばかり盛り上がりました。あと他に盛り上がったのは薄毛対策健康診断(特に肝臓)ですね。
文字通り「昔に戻ったかのように」歓談できて非常に楽しい時間を過ごせました。

とはいえ、やはり当時から相当な時間が経過していることは事実で、価値観の変容を感じることもありました。
その中の最たるものが、とある一人がポロッとこぼした言葉。
「俺の人生はもう終わったからなー」という一言です。

主役からの降板

発言者は、同い年の二児のパパ。県内地場の大手企業勤務です。

彼いわく、
  • 自分のやりたいことは、仕事も趣味もひととおりやりきった。
  • もう「自分のやりたいこと」を追求するつもりはない。すでに十分満足しているし、そもそも「やりたいこと」がもう無い。
  • 今大事なのは子ども。だからこれからの人生は「自分のため」ではなく「子どものため」に過ごしていきたい。
という意味で、「自分の人生はもう終わった」という一言が出てきたとのこと。
ネガティブなニュアンスは一切無く、一種の達成感と、次なる人生のステージへの意欲が込められていました。

独身の僕にはちょっと理解できない感覚だったのですが、ほかの子持ち既婚者たちも深く頷いていました。
きっと共感するところがあるのでしょう。

「自分のため」の人生から「子どものため」の人生へ。
このシフトが、いわゆる「大人になること」であり「親になること」、つまり社会的・世間的に見て望ましい30代の在り方なのかもしれません。

同時に、30代半ばにもなっていまだに「趣味の充実」だの「仕事のやりがい」だのといった「自分ごと」に囚われているのは、ひょっとしたら幼稚なのかもしれません。

まさに目から鱗が落ちた瞬間でした。

降板せざるを得ないから降板した?

ただ後々冷静になって考えてみると、30代におけるこのような人生観のシフトが世間一般的なのか?というと、そうでもない気がしてきます。
少なくともインターネット上では、30代既婚子持ちであっても「自分のやりたいこと」を追求すべきという意見が圧倒的多数ですし、このような趣旨の書籍もたくさんあって売れています。

よくよく考えてみた結果、田舎という環境的制約(ヒト・モノ・サービスの制約)が、30代以降の「自分の追求」を妨げているせいなのでは?と思い至りました。

高齢者ばかりで刺激のない人間関係、リアルな店舗が続々潰れてモノが手に入らなくなる(特に目新しいものは全然入ってこない)、人手不足を理由にあらゆる分野でサービスが縮小されていく(都会のように新技術が導入されるわけでは無く純減されるだけ)……という万事縮小傾向の田舎では、20代のうちに一通り興味のあることを試し切れてしまいます。

そのため、30代になる頃には、実現可能な範囲では本当に「やりきって」しまえるのです。

「自分のための人生はもう終わった」と発言した彼も、もし都会に就職していて、いろいろな可能性を試せる環境下にいたら、「やりきった」とは思わなかったかもしれません。


「子どものための人生を送りたい」という思いも、広い意味では「自分のやりたいこと」であり、素晴らしい自己実現の在り方だと思います。
ただひょっとしたら、田舎という制約ゆえに「自分のやりたいこと」を追求できない、あるいは選択肢や可能性が見えないがゆえに、消去法的に「子どものため」の人生を選んでいるとしたら、やるせないな……と思った次第です。

僕はまだまだ幼稚な人間なので、これからも「自分のため」の人生を送っていきます。
このブログもまさに自分がやりたくて書いているもの、来年も細々と続けていきます。

20代の若者にとって、地方公務員という仕事は旨味がありません。

民間と比べて給料は安いですし、ビジネスマンとしての汎用的なスキルが身につくわけでもなく、キャリアの幅が狭まります。
しかしそれでも一定数(最近は随分減ってきましたが)の若者が地方公務員を志しているのは、こういったデメリットがあるにもかかわらず、何らかのメリットを見出しているからなのでしょう。

地方公務員に就職するメリットとして典型的なのは、「趣味の充実」でしょうか。
土日祝日に安定して休みが取れて、平日もまあまあ早く帰宅できてるので、趣味に割く時間もエネルギーもしっかり確保できるはず……このように期待している人は少なくないと思います。

この目論見は概ね正しいです。
よほど忙しい部署に配属されない限り、趣味を楽しむ時間はそこそこ確保できます。
とはいえ30代になると、なかなか趣味をエンジョイしにくくなってきます。
(男性のケースを中心に紹介していきます、女性職員の事情はよくわかりません)


30代になっても趣味を充実させられているのはかなり少数派

30歳過ぎで実際に趣味をしっかり楽しめている男性職員は、全体のおおよそ2割程度でしょう。
だいぶ少数派です。
 
趣味を充実できていない理由は、既婚者と独身者で大きく異なります。

時間もお金もエネルギーも足りない既婚者

既婚かつお子さんがいる男性職員は、とにかく育児に時間もエネルギーもお金も吸い取られています。
趣味に割く余力なんて一切残りません。
「家にいると疲れる、仕事のほうがラク」というぼやきを何回聞いたことか……

仕事が忙しかろうと暇であろうと関係ありません。
たとえ毎日定時で帰れて、年次有給休暇をフル取得できたとしても、エネルギーとお金が無くなって趣味を継続できないようです。

ただ、趣味から遠ざかってしまったからといって、彼らは不幸には見えません。
「辛い辛い」と言いつつも、充実しているように見えます。
 
多分、人生における優先順位が変わったのでしょう。
興味関心が趣味から育児へとシフトしているために、たとえ趣味に一切触れられなくても、人生としては充実しているのです。

一方、お子さんのいないDINKS家庭であれば、反対に生活に余裕ができて、趣味を継続しやすいようです。

エネルギー(モチベーション)が枯れていく独身者

一方の独身者では、お金や時間はあるものの、エネルギーはどんどん失われていきます。
エネルギーというより「モチベーション」というほうが正確でしょうか。

独身者の場合、他の人が婚活に励んでいる20代の時間を、まさに趣味につぎ込んできた人が多いです。
それだけ趣味に没頭してくると、それなりに飽きが生じてきます。

加えて、自分の限界も見えてきます。

スポーツであれば体力の限界。
コレクションであれば資金力の限界。
ゲームであれば技量の限界。

ある程度没頭してきたからこそ、自分の限界が見えてくるのです。

さらに、趣味仲間もどんどん減っていきます。
結婚等で時間が無くなる、怪我や病気で続けられなくなる、単に興味が無くなる……などなど、色々な理由で趣味仲間がいなくなっていき、趣味を介した人間関係が衰退していきます。

こういった事情が重なって、趣味へのモチベーションがどんどん削がれていくのです。


新しい趣味が見つかればいいが

僕自身、これまでそこそこ充実した趣味人生を送れてきましたが、今年に入ってから急激にモチベーションが低下してきています。

オタク趣味のほうは、仲間が激減したことが大きいです。
これまで主にTwitter経由で繋がっていた仲間が、Xに移行する際のドタバタでSNSから離れてしまい、気軽に感想を言い合える相手がほとんどいなくなってしまいました。

このブログも趣味のひとつですが、今まさに限界をひしひし感じています。
残業が多すぎて週0.5日くらいしか休めていない生活が続いており、記事を書く時間が全然ありません。
この記事が最後のストックです。次回はいつ更新できることか……

「趣味の充実」という目論見で地方公務員になるのは、間違いではないと思います。
ただし、年齢を重ねるにつれてライフステージが変わり「趣味」がどうでもよくなるかもしれませんし、趣味へのモチベーションを保てていたとしても、異動ひとつで趣味どころではなくなるかもしれません。

「給料安いし僻地勤務リスクがあるけど、趣味の時間を確保したいから地方公務員になる」 みたいな感覚、つまり諸々のデメリットは理解しているものの「趣味時間の確保」というメリットが上回るから地方公務員になりたい!という方は、よくよく考え直したほうがいいと思います。 

僕が新卒就活をしていた頃(2010年代前半)は、体育会系神話がまだまだ健在でした。
「体育会系は就活で強い」というやつです。
大学一年生の頃から就活を見据えて体育会系部活動に入る人もいましたし、人間関係トラブル等で居づらくなっても「就活のためだから」と嫌々ながら部活動を続けている人もいました。

今はどうなのでしょう?新型コロナウイルスのせいで、大学のサークル文化や、体育会系部活動自体が存亡の危機にあるという話も聞きますが……

僕の同期職員にも、何人か体育会系部活動出身者がいます。
入庁当時は皆さん見た目からしてバリバリの体育会系でしたが、30代になった今は人それぞれです。
そして、役所内でのポジションも、明暗が分かれています。

役所は体育会系組織?

Wikipediaによると、体育会系とは「精神論や根性論、上下関係、体力の重視」を特徴としている人や組織のことを指します。
個人的にはさらに、「組織のために滅私奉公するのが当たり前」というポイントも追加したいところです。

またWikipediaによると、公務員組織は典型的な体育会系らしいです。




公務員組織においては特に顕著に見られ、国家公務員・地方公務員ともに上司の職務上の命令に忠実に従わなければならないことが公務員法で明確に規定されており、公務員には上司の適法な職務上の命令に服従する義務があることから、公務員組織は厳格な上意下達型の命令系統を重視する体育会系の組織文化である。


 
 ※2022年9月10日閲覧



この定義に照らしてみると、僕の勤務先自治体は体育会系ではありません。
上位下達なのは間違いないありません。
ただ、上下関係が厳しいとか、根性論がまかり通っているといった他の特徴は当てはまらないです。
(何事も人海戦術で解決したがる傾向はありますが、それを「体育会系だから」と理由付けするのは何か違う気がしています)

組織の小さい市町村役場だと、お偉いさん一人のキャラクターで組織文化が決まってくるので、体育会系のところもあるのかもしれません。
ただし県庁くらい組織が大きいと、構成員の属性も様々ですし、さほど体育会系にはならないのではないかと思います。

体育会系職員は少数派

個人レベルで見ると、年齢問わずバリバリ体育会系な職員もいますが、かなり少数派です。

地方公務員試験を突破するには、そこそこ長い準備期間(試験勉強期間)が必要です。
そのため、体育会系部活動と並行して公務員試験対策をするのは時間的に難しく、そもそも選択肢として入りづらいのだろうと思われます。
(部員は「部活最優先」の大学生活を強いられるので、「試験勉強に時間を割く」なんて自分勝手な判断は許容されないと思われます)

明暗が分かれる体育会系職員

僕の勤務先自治体だと、体育会系の職員は、役所組織に順応している人としていない人に、くっきり分かれています。

体育会系成分をうまくコントロールできている人は、組織にばっちり馴染めています。
こういうタイプは、いざという時にしか精神論や根性論を持ち出しません。
周囲を励ましたい場面や、もう一踏ん張り必要な場面など、限られた局面でのみ、打算的に体育会系っぽく振る舞います。

一方、精神論や根性論を全面に押し出してくる典型的体育会系タイプは明らかに浮いてしまいます。
20代前半のうちは「元気な奴」として歓迎されもするのですが、アラサーになり部下や後輩ができる頃になると、彼/彼女の体育会系気質が組織の和を乱し始めます。
上司からすれば扱いづらい奴、同僚からすれば面倒な奴、後輩からすればパワハラ予備軍です。


見体育会系経験者の視点(下級生・上級生理論)

ここからは完全に伝聞です。
同期の体育会系部活動出身者が、「どうして体育会系は役所内で浮くのか」を以前語っていました。

大学の体育会系部活動では、「下級生は家畜」「上級生は人間」「OBは神」というヒエラルキー構造があるようです。
下級生には一切の自由が認められず、上級生の指示に従うしかありません。
上級生は下級生を好き放題使えますが、とはいえさほど自由は無く、OBのわがままに振り回されます。

このヒエラルキー構造は役所とそっくりです。
下級生が大半の職員、上級生が管理職、OBが住民・議員・マスコミに相当します。

こう考えると、体育会系は役所生活に馴染めそうな気がします。
それなのに一定数が「異分子」になってしまうのは、彼ら彼女らが「勘違い」をするからです。

体育会系部活動はせいぜい4年間ですが、地方公務員人生は30年以上続きます。
しかも組織の構造上、圧倒的に「下級生」時代が長いです。
「上級生」になるには、本庁の課長クラスまで上り詰めなければいけません。
このことに気づかず、単に後輩ができた程度で自分を「上級生」だと勘違いしてしまう人が少なくないのです。

体育会系部活動出身者としては、「上級生」としてしっかりと成果を出してきたことが自身のアイデンティティであり、早く「下級生」を脱して「上級生」になりたく思うのでしょう。
しかし、役所組織における「下級生」期間は、部活動よりもずっと長いのです。

下級生期間(奴隷生活)に耐えられたのなら役所生活も耐えられる

役所はいわゆる体育会系組織ではなく、バリバリの体育会系人材にとって過ごしやすい環境とは言えませんし、体育会系部活動経験がそのまま活かせるとも思えません。

ただし、ひたすら周囲からの指示に耐え忍ぶ生活が長年続く、つまり他律性が強いという意味では、体育会系部活動における「下級生」と酷似しています。



「上級生」として部活動を引っ張っていった経験は活かせなくとも、「下級生」として辛酸を舐めた経験は、きっと自分の助けになるでしょう。
役所生活にはいろいろ理不尽がつきものですが、体育会系部活動の「下級生」に対する仕打ちに比べれば随分マシなのだろうだと思います。


「『やりたい仕事』を明確化・具体化すべき」というアドバイスは、就職活動(特に新卒)の鉄板です。

地方公務員の場合も同様で、
  • ただ「地方公務員になりたい」だけでは不十分
  • 採用後にどんな分野でどのような仕事をしたいのか、具体的に考えるべき
  • 具体的に考えるための情報収集が欠かせない

というアドバイスが、一般的になされています。

「具体的にどんな仕事がしたいか」という質問は面接でも定番で、誰もが考えなければいけないポイントです。
ただ僕は、このポイントはあくまでも面接対策として必要なだけで、「地方公務員を目指すか、それとも民間就職するか」を決断する段階では、無意味だと思います。

民間就職ではなく地方公務員になる理由は、「具体的に〜〜したい」ではなく、「地方公務員になりたい」であるほうが、健全だと思うのです。

むしろ、採用前に「やりたい仕事」を具体化・明確化してしまうほど、採用後のミスマッチがひどくなり早期離職を引き起こすのでは……とすら思っています。

まず考えるべきは地方公務員という職業そのものの特異性であり、これに魅力を感じるか否かを徹底的に吟味したほうがいいと思います。

「やりたいこと」が実現できるわけない

日本は民主主義国家であり、行政は民主主義的決定事項を執行(実行)する立場にあります。
「何をするか」「どのようにするか」を決めるのは主権者たる国民であり、行政ではありません。

この原理原則はもちろん地方自治体にも適用されます。
役所(=地方公務員)の仕事のラインナップは住民が決めるわけで、地方公務員が決めるわけではありません。
役所の仕事の多くは法令に基づいていますが、法令はまさに民主主義的決定の結果であり、法令に基づく仕事は「住民が決めた仕事」の代表例です。

法令に基づかない仕事(例えば観光振興とか広報あたり)は、一見すると役所の裁量で動かしているように思われるかもしれません。
しかし実際は、議会や業界団体や地域住民の意見に従って進められており、役所の意向で動かせるわけではありませんし、担当職員の考えを挟む余地はほぼありません。

つまるところ、役所は職員個々人の「やりたい仕事」を実現できる環境ではありません。

「やりたい仕事」が実在しても担当できるとは限らない

もちろん、役所の仕事ラインナップの中に、自分の「やりたい仕事」が含まれている場合もあり得ます。
しかし今度は、「ジェネラリスト志向」とかいう人事異動の仕組みが立ち塞がります。
異動希望はほぼ通りませんし、通ったとしても数年でまた異動させられます。
「やりたい仕事」を担当できるかどうか未知数であるうえ、担当できるとしてもせいぜい数年なのです。
僕は今年でちょうど入庁10年目になりますが、同期入庁職員の中でこれまで「やりたい仕事」に配属されたことがあるのは、だいたい3割くらいです。

人事異動の無理ゲーっぷりを定量的に知りたければ、こちらの記事をどうぞ。

 

地方公務員の仕事は刻一刻と変わっていく

そもそも、役所が手がける仕事のラインナップ自体、どんどん変わっていくものです。
わずか数年後ですら、現時点では想像もしないような仕事を一般事務職員が担っているかもしれません。

新型コロナウイルス感染症の流行前後の激変っぷりが、まさに好例です。
コロナ前の自治体はインバウンドブームでした。
「訪日外国人観光客をいかに呼び込むか」が重要課題であり、ハード・ソフトともに新規事業がバンバン展開されていました。
「これからの地方公務員は英語で日常会話できるのが当然」なんて主張もなされていました。

もし当時にタイムスリップして、「2020年に新型感染症が世界中で流行して、一般事務職員が夜な夜な居酒屋を回って会食マナーを指導したり、ホテルに駐在して患者に弁当を配るよ」なんて言おうものなら、確実に頭がおかしいと思われるでしょう。

しかしこれが現実……

「地方公務員の特異性」に魅力を感じますか?

地方公務員の面接における「やりたい仕事は何ですか?」という質問、僕は本当にナンセンスだと思います。


採用された途端に、まるで「千と千尋の神隠し」冒頭のごとく
「贅沢な名だね、今からお前の名前は『主事』だ。いいかい主事だよ。わかったら返事をするんだ『主事』!」
と言わんばかりに没個性化を強いるのに、面接段階では個性を主張させようとする。何なんですかね。


多分、この質問が「ちゃんと下調べしているか」を測るのに好都合だからなのでしょうが、受験生的には「具体的に考えるのが大事なんだ!」「熱意が重要なんだ!」と勘違いしてしまいかねません。
そもそも採用側が虚飾だらけの情報しか公表していないのに、「やりたい仕事」を明確化・具体化しろと受験生に強いるほうがおかしい気すらしてきます。

「やりたい仕事」を具体的に考えるのは、面接対策の直前期だけで十分です。 
「やりたい仕事」は、面接を通過するための方便・手段に過ぎず、真剣に考えたところで何の役にも立ちません。
特に「地方公務員になるか、国家公務員になるか、民間就職するか」という根本的進路選択には、まず役立ちません。むしろ害悪です。
 
代わりにじっくり考え抜くべきなのは、
  • 地方公務員という職業は、国家公務員・民間勤務とどう異なるのか(=地方公務員の特異性)
  • 地方公務員の特異性に対し、魅力を感じるか

この2点だと思います。
地方公務員の特異性は、すでに多くの人が論じており、書籍でもインターネット上でもいろいろな説が提唱されています。
先にも触れたとおり、役所が「何を」「どのようにするか」を決めるのは住民であり役所に自己決定権は無いという性質……俗にいう「他律性」も、地方公務員の特異性の一つです。
「原則クビにならない」「病気休暇を取得しやすい」等の勤務条件も特異性の一つでしょう。

このような地方公務員の特異性を見つけるためには、地方公務員のみならず国家公務員や民間企業のことも詳しく調べて、比較することが欠かせません。


他職種と地方公務員を冷静に比較していくと、地方公務員のメリットが実はあんまりないことにきっと気がつくと思います。
それでも「地方公務員になりたい」と思えるのであれば、それこそ真のモチベーションです。
薄っぺらな「やりたい仕事」とは段違いに深みのある、本音の「志望動機」です。 

地方公務員志望者の中には、「プライベートを充実させたいから」というモチベーションの方も少なからずいらっしゃるでしょう。

実際、現役地方公務員にもこういう意識の方は大勢います。
歳をとるにつれて「(個人的な)プライベート充実」から「家庭生活充実」へと変質していくとはいえ、「オフを充実させたい」という基本的路線には変わりありません。
主権者たる国民からはお叱りを受けそうですが……

ただし、このブログでも散々書いているとおり、地方公務員のプライペートには色々制約が課せられます。
せっかく趣味を楽しむために地方公務員になったとしても、趣味によっては、この制約のために諦めざるを得ないかもしれません。 

とにかく「無難」を強いられるファッション

地方公務員だから楽しめない趣味の最たるものがファッションだと思います。 

職員の身なりに関する住民からの苦情は本当に多いです。
派手な格好をしていると当然怒られますが、かといって地味すぎても怒られます。
僕がかつて観光関係の仕事をしていた頃、「人前に出る仕事なんだから整髪料くらいつけろ」と怒られたことがあります。

服装のせいでお叱りを受けて仕事が止まってしまうのは、明らかに時間の無駄です。
住民の「お気持ち」は如何ともし難いので、苦情防止のためには職員側が自衛する、つまり派手すぎすダサすぎない「無難な格好」をするしかありません。

もちろん休日は好きな服を着ていいのですが、自分の身体は平日であれ休日であれ急には変えられません。
そのため、ファッションにおいて重要である「髪型」が厳しく制限されます。

女性であれば、ヘアカラーは黒か、染めるにしてもダークブラウンくらいです。
明るい色にはできませんし、メッシュ入れたりも不可です。
男性は黒一択、かつ長髪は確実に駄目です。 あとはツーブロックもNGな自治体が結構あるようです。
ちなみに僕は「もみあげが長すぎる」と叱られたことがあります。ブラック校則よりも細かいのでは?

女性の場合、手指のネイルも楽しめないでしょう。
ネイルアート自体は休日だけ(平日は落とす)にしても、土台となる爪そのものが長い時点でNGです。 
 
僕はキモオタク独身異常男性なので、ファッションは全く詳しくありません。
外見的にすぐわかる事例しか挙げられないのですが、ほかにも色々と制約があるのだろうと思われます。
ビジネスカジュアルマニアでもない限り、思い通りファッションを楽しむのは難しそうです。


長期休暇が取れないので近場しか旅行できない

細かい休みは取得しやすいものの、長期休暇は取りづらいのが地方公務員です。

地方公務員(特に本庁)の仕事はチームではなく個人技が基本です。
職員ごとに細かく担当業務が分かれており、一人でも欠けるとフォローしきれません。

そのため、「平日に連続して休暇をとる」ことへの強い抵抗感が染み付いています。
もし休んでいる間に担当業務で突発案件が舞い込んできたら、組織全体に迷惑がかかるからです。

僕の勤務先県庁だと、よほどの事情が無い限り、年休取得は週あたり2日が限度です。
お盆や年末年始を除けば、最長でも土日含めて4連休が限界でしょう。
ちなみに、ゴールデンウィークには期待しないほうがいいです。
暦通り休めたらラッキーなほうで、休日出勤せざるを得ないケースも少なくありません。
(ちなみに僕の場合、本庁勤務していた8年間、毎年1〜2日は休日出勤していました)



長期休暇を取れないとなると、長期の旅行、特に海外旅行ができません。
せいぜい3泊4日が限界でしょう。
台湾のような近場なら問題ないでしょうが、移動だけで時間を要するヨーロッパや南半球への旅行は、かなり難しくなります。

職務専念義務のために何であっても売れない

地方公務員には職務専念義務があり、営利活動は禁止されています。
地方公務員は地方公務員法38条により営利活動を制限されています。 
「営利活動」にはいろいろな解釈があるようですが、基本的に「売上が生じる活動は全部駄目」です。
つまり、売上以上に経費がかかっていて利益的にはマイナスであったとしても駄目です。

このため地方公務員は、フリーマーケットで手作り雑貨を売ったり、同人誌を頒布することができません。
 
最近は何でもかんでも「副業」に括られて収益面ばかりが注目されがちですが、こういった活動はそもそも「作ることが楽しい」ものです。
僕もクリエイターとしては傍流の端くれですが、この気持ちはよくわかります。

モノを作るとなると、どうしても経費がかかります。
そこで「対価をとって経費を回収したい」と思うのであり、儲けのためにやっているわけではありません。
しかし地方公務員は、この「経費回収のための売上」が許されていません。

こっそりやっていればバレなさそうなのですが、実際のところ結構バレています。
僕の勤務先県庁でも定期的に発覚しています。
実例を挙げるのは避けますが、恐ろしいくらいにあっさり特定されてしまうようです。
 
僕も実は既に特定されていて、無収益だから放置されているだけなのかもしれません……


地方公務員人生と相性が良いのは、細々と続けていくタイプの趣味でしょう。
高確率で土日は休めますし、平日もそれほど夜遅くなるわけではないので、「毎日20分」とか「週1回」みたいな、細切れの時間は確保できます。

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