キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

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タグ:典型的地方公務員


「地方公務員は『稼ぐ力』が無いから駄目人間だ」という批判とは、リアルでもインターネット上でも頻繁に遭遇します。
住民からの苦情では「税金泥棒」と同じようなニュアンスで使われますし、何より地方公務員自身が自戒を込めてよくこのように評しています。

実際、地方公務員の稼ぐ力はかなり貧弱でしょう。
少なくとも、どれだけ役所で頑張って働いたとしても「稼ぐ力」は身につきません。
もし「稼げる地方公務員」がいたとしたら、役所に就職する前から素養があったか、業務外に自主的に訓練したのでしょう。

ただ僕は、地方公務員には、必ずしも「稼ぐ力」が必要だとは思いません。
途中で退職して転職するのであれば別ですが、地方公務員として職業人生を全うするのであれば、「稼ぐ力」よりも優先して伸ばすべき能力がたくさんあるような気がしてならないのです。

そもそも営利活動に従事していないから必要ない

「稼ぐ力」とは利益を獲得するための能力群であり、握力のように単体で測定できるようなものではなく、「学力」や「モテ度」のようにいろいろな構成要素から成る複合的な評価軸です。

事業を営んだり、民間企業に従事する場合のように、利益を追求する場面で活躍するスキルセットです。

改めて言うほどのことではありませんが、役所はそもそも、営利を追求するための組織ではありません
貧者救済のような営利活動とは無関係な事業もあれば、環境法令による規制のように営利活動を妨害する事業すらあります。


役所の仕事の中には、観光施設の運営のような営利活動っぽい事業も確かにあります。
ただ、こういった事業の従事者はごく限られていますし、民間のように完全営利目的で運営できるわけではありません。
「採算は取れないけど、行政だからやる」みたいな業務がたくさんあります。 

役所で働く地方公務員のほどんどは、営利活動に従事しているわけではありません。
そのため「稼ぐ力」を発揮する機会もありませんし、能力としても求められないのです。

「稼ぐ力」よりも重要な要素がたくさんある

「稼ぐ力」という能力群にはいろいろな要素が含まれているとはいえ、人間の能力を全て網羅しているわけではありません。
公務員としての役割を果たすには、「稼ぐ力」には含まれない、別群の要素のほうが重要でしょう。

特に役所は「誰からも攻撃される」という特異な存在であり、何よりまずは防御を固めないとまともに活動できません。
そのため地方公務員には、あらゆる角度から攻撃リスクを検討して未然防止する「予見力」、攻撃されたらすぐに対策して被害を最小限に抑える「火消し力」といった防御に関する能力が欠かせません。
こういった要素は「稼ぐ力」には含まれていないのではないかと思います。

方向性の違い

「稼ぐ力」に含まれている要素であっても、地方公務員稼業においては求められる方向性が異なるケースも多々あると思われます。

例えば「文章力」。
稼ぐための文章力といえばセールスライティング、つまり多くの人を引きつけて納得・共感させてアクションを起こさせることが重要と言われます。

一方、地方公務員に必要な文章力は、漏れがなく一義的であることです。
読み手に誤解を与えないこと、悪意ある恣意的解釈を許さないことが重要です。

地方公務員が書く文章は、「稼ぐ」という観点から見れば零点です。
同時に、セールスライティングの名文も、役所の文章としては全然使えません。
 
同じ「文章」であっても、求められる要素が全然異なります。
求められる要素が異なるゆえに、求められる能力も異なってくるのです。

稼げないからといって劣等感に囚われる必要は無い

役所は資本主義社会の単なる一参加者ではなく、資本主義に歯止めをかけるという独自の役割を担っています。
その独自の役割を機能させるのが地方公務員の使命です。

現在の資本主義社会において、「稼ぐ力」が重要なパラメーターであることは間違いありません。
ただし地方公務員は、資本主義社会におけるプレイヤーではありますが、民間の方とは異なる役割が与えられています。
そして、役割が異なれば必要な能力も異なる、つまり地方公務員には「稼ぐ力」が備わっていなくとも問題はないはずです。


資本主義というメジャーな価値観に抗えるほど行政は強くなく、「地方公務員は『稼ぐ力』が無いから駄目人間」という批判は今後も止まないでしょう。

地方公務員としての基本的素養を身につけたうえで、さらに「稼ぐ力」を上乗せするのであれば問題ない(むしろ望ましい)と思います。
しかし、「稼ぐ力」コンプレックスにとらわれるあまり、(世間一般の認識のように)地方公務員という職業自体を卑下するようになると、その先には不幸が待っています。
自己否定からの自己肯定感ロストのコンボです。

「稼げなくとも重要な役割を担っているはず」と理解するのが、精神衛生上も無難かと思います。


役所現場を離れているせいでナウピチピチな話題を仕入れられないので、ブログネタを探すために過去の経験を振り返ることが増えました。

思い返してみると、これまで諸先輩方から本当にたくさんの訓示をいただいてきました。
特に新人の頃は、30歳前後の主任クラスの先輩方から、飲み会のたびに「あるべき若手論」みたいなものを垂れられたものです。

今まさに当時の先輩方と同じ年代になってみて、当時いただいた「あるべき若手論」の答え合わせをしてみると、正答率は半々くらいです。
先輩の慧眼に驚くものもあれば、「真に受けて損したわ!」と小突いてやりたくなるものもあります。

僕が先輩から聞いた諸説の中でも、かなり的を射ていると思うのが、「2部局目で身についた働き方が、基本的に定年までずっと続く」というものです。

1部局目(初任部局)で習得したやり方が一生涯使えるわけではない

地方公務員の研修(特に新人)は基本的にOJTです。
新人地方公務員が一堂に集められて一律に教育を施されるのではなく、それぞれの配属先で、上司や先輩から指導されます。

OJTでは、
  • 一般的なビジネススキル(電話の取り方、メールの書き方など)
  • 役所の内部的業務(公文書管理、会計ルール、議会対応、予算、決算、監査対応など)

のような実践的な技術のほか、
  • 公務員としての心構え
  • 庁内の常識

のような精神面についても教えられます。

指導項目は共通でも指導内容はバラバラ

どんな部局に配属されようとも、OJTで教わる項目自体は大差ないと思います。
しかし、各項目で教わる具体的な内容は、部署ごとにバラバラです。

同じ役所内であっても、部局によって仕事のやり方は様々です。
出先と本庁の違いが典型ですが、本庁の中でも課ごとにかなり差があります。
部署ごとの違いが、そのまま指導内容の違いに直結するのです。 

例として、支払い業務(=会計ルールの運用)を考えてみます。

支払い業務は、地方公務員稼業の基本中の基本です。
初任配属先がどこであれ、OJTの中で必ず教わると思います。
しかし、部署によって、教わる内容は異なります。

土木部局や農林部局のような国庫補助金をたくさん扱う部局であれば、いずれ来る会計検査に備えて、担当者も管理職も入念にチェックします。
支払い手続きそのものが相当重要です。
そのため、「担当者がしっかりチェックのは当然のこと、さらに上司が再チェックしやすいよう事業概要ペーパーを作り、根拠資料も全部揃えてから決裁を回せ」と教わるでしょう。
 
一方、観光部局のような予算規模が比較的小さく、国庫補助金をあまり使わない部局の場合は、支払い業務は単なる付随作業です。
支払いの目的である事業が何より重要なのであり、支払い手続きはどうでもよく、なるべく手早く簡単に済ませようとします。
OJTでは「支払い書類を作り込むのは時間の無駄だから、形式さえ合っていればいいからとにかくさっさとやれ」と指導されるでしょう。

指導役のキャラクターも大いに影響

何よりOJTでは、教える側の上司や先輩の個性が、指導内容に色濃く反映されます。
同じ役所の職員であっても、それぞれがたどってきた人事異動キャリアや経験次第で、後陣に伝えたい中身も異なってくるのです。
 
イケイケバリバリの先輩からは、何事も「連携」「協働」「成長」みたいなポジティブな観点と結びつけて指導するでしょう。
一方、僕みたいな陰キャは「苦情」「弁明」「訴訟」みたいなネガティブ・ディフェンシブなことしか教えられませんし、こういう観点をまず身につけることが重要だと思っています。

つまるところ、初任1部署目のOJTは、項目的には必要事項を網羅しているかもしれませんが、各項目の指導内容は相当偏っているのです。


2部局目の苦悩

2部局目にもなると、もはや周囲は新人扱いしてくれません。
しかし前節のとおり、新人時代のOJT教育には偏りがあり、1部局目で身につけた技能が2部局目でもそのまま通用するとは限りません。

多くの若手職員は、1部局目のやり方があまりに通用せず、カルチャーショックを受けます。
そして、なんとか適応しようと精一杯の試行錯誤を続け、自分なりの「仕事の基本スタイル」を確立していきます。
1部局目に学んだやり方をベースにアレンジする場合がほとんどでしょうが、中にはゼロからやり直す人もいるでしょう。


僕の場合、上司への報告で大いに悩みました。
 
僕の初任は防災関係部局で、どんなに些細な情報でもすぐに上司に共有するのが当たり前でした。
防災の仕事は一人では何もできず、部局内全員が一枚岩となって動かなければいけません。
そのため、情報共有は何よりも重要でしたし、僕自身も「とにかくなんでもすぐに報告するように、何よりも『ほうれんそう』だぞ」と強く教えられました。

2部局目は総務系で、担当者ごとの業務分担がはっきり分かれていて単独作業が多いという、本庁にありがちな部署でした。
 
そこでも僕は「ほうれんそう」を墨守していたところ、1ヶ月経った頃に上司から小言を言われました。
「君はどういう目的があってそれを報告してるの?私はそれを報告されて何をすればいいの?」
「確固たる目的の無い報告は双方にとって時間の無駄だから!」

ここでようやく、「なんでも共有」という原則は防災部局特有のルールであり、役所全体のルールではないことに気がつきました。

そこからは試行錯誤の日々です。
まず、上司や同僚に話しかける前に「会話の目的」を考えるようにして、今話す必要が本当にあるのかを吟味するようになりました。
さらに、相手が「知りたがり=なんでも報告してほしいタイプ」なのか「要点だけ知りたい=余計な報告は無駄だと思うタイプ」なのかを見分ける練習も始めました。
あとは常に「案件の重大性」にも気をつけるようにしました。
他の案件を差し置いても至急報告すべき緊急案件、遅れてもいいけど報告はすべき主要案件、担当者レベルで握りつぶしていい些細な案件……といったレベル分けを適切に行えるよう、上司の反応を伺うようになりました。

このような過程を経て、僕の観察者スタイル(日和見主義)が確立しました。
同時に「他人を巻き込む」ことへの忌避感も芽生えてしまいました。 



尾をひく「2部局目」

2部局目で見出した「仕事の基本スタイル」は、教わったものではなく自ら考え出したものです。
自分で考え出しただけあって「自然」で「やりやすい」方法ですし、2部局分の経験が反映されて一般化されているので、次の異動先でも通用する可能性が高いです。
そのため、この「仕事の基本スタイル」は、後々にもずっと適用されていきます。

また、仕事のやり方に思い悩むことで、「自分にとって仕事とは何か」、いわば「仕事観」が見えてきます。
人生における仕事の優先順位が見えてくる、と言ってもよいでしょう。

つまり、2部局目の経験を通して、地方公務員人生の根幹となる「仕事の基本スタイル」と「仕事観」が一旦完成するのです。


僕が先輩から「2部局目に身についた働き方が一生続く」説を伝授されたとき、同時に「2部局目は大変だけど、残業で乗り切ろうとするな」と強く注意されました。
先輩いわく「この時期に残業に頼りすぎると、将来的にずっと残業体質になってしまうぞ」とのこと。
この警鐘は事実だと思います。
実際僕の同期にも、この時期にひたすら残業&休日出勤を繰り返し、さほど忙しくない現在もだらだら残業している職員が少なからずいます。

一方、この時期に「効率的な働き方」を追求して、ちゃんと仕事しつつも定時退庁を続けている同期もいます。

まずは「2部局目は重要だ」という意識を持ち、自分にとっての理想を素直に考えてみることが重要なのではと思います。

このブログでは、よく僕の経験談をネタにしています。
過去の担当業務の内容、上司や同僚や住民の発言、印象的な出来事、残業時間や休暇取得日数のような数字……等々、これまでの経験は貴重なブログの題材であり、ふわっとしたアイデアをわかりやすく説明するための素材でもあります。

ひょっとしたら読者の中には「どうしてそんなに細かく覚えていられるんだ?都合よく捏造しているのではないのか?」と疑っている方もいるかもしれせん。

実際のところ、捏造ではありません。
ちゃんと覚えている……というか記録しています。
 
入庁当時から簡単な業務日誌をつけているので、いつでも過去を振り返れるのです。

一日一行で十分

僕が日々書き溜めている業務日誌は、本当に単純な「一行日誌」です。
  • 日付
  • 出勤時刻
  • 退勤時刻
  • 実残業時間
  • 報告した残業時間
  • 本日の主な業務内容
  • 職場の雰囲気
  • その他コメント

こういった項目を横軸にセットしたエクセルファイルを作り、一日一行、毎日書いていきます。
イメージはこんな感じです。
業務日誌イメージ

民間企業だと、会社で決められた様式があり、個々人が業務日誌をつけるのが当たり前のところが多いでしょうが、地方公務員だと少数派だと思います。

僕がこの習慣を始めたのは、民間企業に就職した友人からの勧めがきっかけです。

彼が就職した会社は文字通りの大量採用・大量解雇方針で、新卒1年目社員にはとりあえず膨大な残業をさせて耐性を測るのが習わしでした。
彼曰く「1年間で西暦と同じ時間の残業をこなせればクリア(今年だと2021時間)」とのことで、「ハンター試験のほうがまだマシ」と愚痴っていました。

彼は早々に嫌気がさして退職しました。
さらには会社への個人的怨恨を晴らすため、労働基準監督署に訴え出ました。

その際に役立ったのが業務日誌です。
実際の残業時間と残業手当支給額との大幅な乖離、休暇取得を申し出ても平然と却下される現状などを証明する根拠として、業務日誌が活躍したのです。

この話を聞いた当時、僕自身も時間外勤務手当が全然支給されないことにまだ慣れておらず、少なからず職場に不満を抱いていました。
そこで、もしかしたらいずれ人事当局と戦う場面があるかもしれないと思い、その際の武器として使う目的で業務日誌を作り始めました。

「同じ一年を繰り返す」為の物差し

今のところ人事当局と戦う予定は皆目ありませんが、それでも業務日誌はすごく役に立っています。
ブログのため……は一旦置いといて、ちゃんと役所実務にも活きています。

地方公務員の仕事(特に本庁)は、議会や予算編成のような年中行事のウェイトが大きいです。
年中行事のスケジュールは毎年ほぼ同じで、年中行事への対応が必要な時期は他の業務にはなかなか時間が割けません。

 
そのため、年中行事以外の各担当者の個別業務は年中行事の合間にこなさざるを得ず、結果的に年中行事も個別業務も例年同じようなスケジュールで回すことになります。

そのため、昨年度のスケジュール感が分かれば、今年度の見通しがだいたい持てるのです。

具体的には
  • どの時期にどんな業務をやっていたのか
  • 業務の順序はどうなっていたのか
  • 時間がかかる業務はどれか
  • 繁忙期はいつなのか

こういったポイントが分かれば、大いに参考になります。
そのまま真似してもいいし、改善の余地を探すヒントにもなります。

一年分の業務日誌を作ってしまえば、二年目以降がかなり楽になります。
スケジュール感の把握に使えますし、業務の遺漏がないかを確認するチェックリストとしても使えます。

仕事熱心で優秀な方であれば、自ら担当した業務のスケジュール感くらいはきちんと記憶できていることでしょう。
しかし僕みたいな下位層は覚えていられません。記録しておかないと参照できないのです。

異動するときには、そのまま引き継ぎ資料としても使えます。
「報告した残業時間」のようなプライベート情報は消したほうが無難ですが、その他の項目は「日誌」以外の形態ではなかなか伝えにくい情報で、かつ後任者にとってもニーズのある情報だと思います。


ちなみに霞が関出向経験のある職員によると、本省勤務の職員はプロパーであれ出向者であれ業務日誌を作るのが一般的らしいです。
異動のスパンが短く、全国転勤が当たり前でなかなか前任者に質問しづらい環境なので、こういう日々の記録がものすごく重宝するとのことです。

「自分史」としての業務日誌

地方公務員のキャリアパスは「ジェネラリスト志向」と評されるもので、定期的な人事異動を通して色々な分野に広く浅く関わることになります。
「様々な業務を経験することで幅広い知見を習得する」ことが目的です。

ジェネラリスト志向そのものの是非は置いといて……この目的を達成するには、過去に経験した業務についてしっかり覚えていなければいけません。

業務日誌は、自分の地方公務員経験の蓄積を可視化したものです。
記憶だけでは保持しきれない知識やノウハウを保存できる媒体であり、ジェネラリストとして成長する助けになると思います。


さらに業務日誌は、過去の自分のスクリーンショットのようなものでもあるとも思っています。
過去の自分の感覚や感情といった主観的な部分が、業務日誌の中にはありありと残っています。

僕の場合だと3〜4年目の日誌が痛々しい感じになっており、恥ずかしくて人には見せられないポエムみたいなコメントが多数書かれています。
しかし当時は真剣でしたし、今でも日誌を読み返せば当時の感覚が蘇ってきます。

過去の感情は、なかなか記憶には留めておけないものです。
むしろ容易に上書きされてしまいます。

業務日誌の記述を通して、こういう若かりし頃の戸惑いや不安、驕りや勘違いのことを覚えていられれば、後輩や部下と接する際に役に立つのでは……とも思っているところです。




最近エゴサーチしてますか?
僕は四半期に一回くらいのペースでエゴサーチしています。

自意識過剰と思われるかもしれませんが、公務員(内定者含む)であれば、誰もが一度はしっかりエゴサーチして、インターネット上に転がっているオープンアクセスな情報だけでどの程度まで自分の身辺を洗えるのか、把握しておいたほうがいいと思います。

多くの地方自治体では、何らかの形で、職員の氏名を公表しています。
最もオープンな自治体ではインターネット上で人事録を公開していて、平職員のフルネームまで容易に調べられます。
紙媒体の人事録であれば、情報公開窓口に行けば、ほとんどの自治体で閲覧できるでしょう。

人事録を作っていない小さな自治体でも、部署ごとの座席表であれば庁舎内に掲示されているでしょう。それを見れば氏名がわかります。

つまり、地方公務員であれば、誰もが氏名を検索窓に打ち込まれ、個人情報を漁られる可能性があるのです。
そして実際、役所外部の人間にガンガン検索されています。

地方公務員の個人情報は(いろんな意味で)おもしろい

自治体職員とのコネクションを求める団体や個人は案外います。
 
営利目的で営業を仕掛けるため、許認可や補助関係で便宜を図ってもらうため、内部情報を入手するため、職員首長や議員へのパイプ作りのため、民間どうしの係争で役所を味方につけるため……等々、目的は様々です。

目的は何にせよ、いきなり見ず知らずの相手にアプローチを仕掛けるより、何らかのバックグラウンドを共有している相手から攻め崩していったほうが勝率は高まります。
役所側から民間に仕掛けるときにも頻繁に使う手法です。

特に便利で汎用性があるのが、以下の情報です。
  • 出身地
  • 学歴
  • 職歴
  • プライベートで所属している団体(地域のスポーツクラブなど)

氏名でググってみてこのあたりの情報がヒットすれば儲け物。
「共通の知人」くらいの間柄の人なら簡単に探し出せるでしょう。
せっかく公表されているのですから、検索しなければもったいないです。
何もヒットしなくても損失はありません。ゼロコストローリターンです。


役所を叩きたい方々にとっても、公務員の個人情報は重要です。
プライベートでの不祥事を発見できれば即席の批判ネタとして使えますし、職員個々人の詳細なプロフィールがわかれば、新たな火種を見つけられるかもしれません。

新規採用職員は特に狙い目です。
公務員が置かれている立場をよく理解していないためにガードが甘く、氏名でググるだけで色々な情報がまさに芋づる式に掘り起こせます。



良い意味でも悪い意味でも、公務員の個人情報は注目されています。
面倒ごとを引き起こさないためには公開情報のコントロールが必須です。
コントロールの第一歩となるのが現状把握であり、すなわちエゴサーチなのです。

ディフェンシブが基本

最近は「セルフブランディングが重要」と叫ばれていて、プライベートの一部をインターネット上に公表するメリットも説かれているところですが、地方公務員の場合はあまりにリスクが高すぎると思います。
(実名で活動している公務員の方々は想像を絶する苦労をされているところを思います。本当に尊敬します。)

特段の目的が無いのであれば、プライベートの情報は極力公開しないほうが無難です。

SNSは鍵かけて意味不明なアカウント名にする

今の時代、何が原因で炎上するかわかりません。
本来燃えるはずがないものすら悪意をもって燃やされる時代といったほうが正確かもしれません。

特にSNSのアカウントは原則非公開にして、リアルな友人知人との交流目的だけに止めたほうが安全でしょう。
かつ、アカウント名は、本名とはかけ離れたものにすることを勧めます。
アカウントを非公開設定にしたところで、アカウント自体が見つかってしまえば、そこからプライベートを掘られてしまうからです。

僕の本名が「久川颯」で「hayate_hisakawa」というツイッターアカウントを持っていると仮定します。
炎上が怖いのでアカウントに鍵をかけています
(俗にいう「非公開設定」であり、僕が許可したユーザーしかツイート内容を読めません)。
 
そこそこ珍しい氏名なので、ググれば簡単にツイッターアカウント自体は特定できます。
ただし鍵がかかっているのでツイート内容は一切読めませんし、フォロー/フォロワー関係もわかりません。

しかし、ツイッター内の検索機能を使って、hayate_hisakawaあてのリプライを検索してみれば、他者から僕に宛てられたリプライを探せます。
僕がいくら鍵アカウントであっても、リプライ発言者(発信元)が鍵をかけていなければ、僕あてのリプライ内容が読めてしまうのです。

リプライの内容次第では、僕とリプライ発信者の関係性を推測できます。
「同窓会行くの?」だったら同窓生ですし、「明日昼飯一緒に行こうぜ」だったら職場の同僚、「尊い…」だったらオタク趣味仲間の可能性が高い、とか。
関係性が見えてくれば、あとはリプライ発信者のプロフィールを特定できれば、僕のことも芋づる式にわかります。

一人のリプライ発信者からわかる情報は限定的かもしれません。
しかし何人分も同じ作業を続けていけば、恐ろしいことにそれなりに見えてきます。

リプライ内容自体が問題になるケースもありえます。
「また大麻売ってくれよ」みたいな反社会的内容はもちろんのこと、「最近儲かってんだろ?ゴチになるわ」みたいな些細な会話から副業を疑われるケースも考えられます。
 


とにかくアカウント自体を発見されないようにしたほうが安全です。

もし不特定多数の人と交流したいのであれば、絶対に氏名と結びつかないよう(氏名を検索しても絶対にヒットしないよう)注意するか、特定されても一切問題がないよう聖人君子のように振る舞う必要があるでしょう。

「勝手にアップされている個人情報」を把握する

インターネット上には、自分がアップしたわけではない個人情報も転がっています。
  • 大学時代の研究室やゼミのホームページ
  • バイト先・サークルのブログ
  • 予備校の合格体験記
  • スポーツの大会記録

ざっと思いつくのがこのあたりでしょうか。

こういった情報は自分では消せません。放置しておくしかありません。
とはいえ、どういう情報がインターネット上に掲載されているのか、リスクとして把握しておく必要があります。

まずはエゴサーチしてみよう

よほど珍しい名前でない限り、同姓同名の人間が存在します。
そのため氏名だけでエゴサーチしてみても、同姓同名の方々の中に埋もれてしまい、自分の情報が見つからないかもしれません。

エゴサーチするときは、単に自分の氏名を検索するだけでなく、自分がヒットしやすくなるよう絞り込めるような要素を付け加えて検索してみてください。
 
具体的には
  • 居住している都道府県名・市区町村名
  • 勤務先自治体
  • 在籍した学校(小学校〜大学まで全部)

あたりの要素は必須級で、ほかにも自分と関係のある要素を試してみればよいでしょう。

苗字だけとフルネームの両方を検索することも重要です。
フルネームの表記は無くても、苗字だけ記載されているドキュメントも多数あります。
フルネームだけ検索していては、こういう情報を見落としてしまいがちです。



どこの自治体の職員採用パンフレットにも「現役職員へのインタビュー」が載っています。
内容は様々ですが、「仕事のやりがい」「一日のスケジュール」「プライベートの過ごし方」あたりはどの自治体でも共通していると思います。

パンフレットの読者である公務員志望者にとって、一番関心のある情報は「一日のスケジュール」ではないかと推測しています。

「仕事のやりがい」はあくまでも職員個人の主観的な感想で人それぞれですし、「プライベートの過ごし方」も同様です。
「一日のスケジュール」のみ客観的事実で、入庁後の自分を想像するヒントになります。

しかし残念なことに、パンフレットに載っている「一日のスケジュール」はほぼ嘘です。
少なくとも、定時出勤・定時退社していたら確実にフェイクです。
採用パンフレットに載るような花形部署が定時勤務できるわけがありません。
(退庁時刻が20:00を過ぎているようだったら信用できます)

そこで、リアルな実例として、閑職県庁職員である自分の一日を紹介します。
暇さ具合でいえば、フルタイム勤務の平職員の中でも上位10%に入る自信があります。

出勤〜定時まで

定時(9:00)の20分くらい前には出勤して、地方紙とネットニュースに目を通し
  1. 自分の業務に関係あるニュース
  2. 職場内で話題になりそうなニュース
  3. 議員や公務員の不祥事(地方・国政問わず)
あたりをチェックします。

①②は入庁当時から続けているルーチンで、僕に限らずたいていの職員が実践しています。
 
③は今年に入ってから新たに加わった習慣です。
新型コロナウイルス感染症の流行以後、自分の担当業務に関係なく行政全般への苦情をぶつけられる状況であり、こういう情報を知らないと苦情主から「意識が低い」と更に叱責されるため、否応無くチェックしている状態です。 

定時内

9:00 業務スタート

まずはメールチェックから始めます。
だいたい夜のうちに5件くらいはメールが届いており、それらを読んでいきます。
自分の個人アドレスだけでなく、課の共有アドレスもチェックします。
 
「朝一のメールチェックはNG」と説くビジネス書もありますが、地方公務員の場合は始業時のメールチェックが不可欠です。
前日の定時後に発出→本日AM10:00期限の作業依頼のような急件がたびたびあり、こういう案件に限って重要だからです。

メールチェックの次は課全体のスケジュール確認です。
特に管理職の予定は必ず確認します。

地方公務員の仕事には、自分一人では完結せず、管理職の了承が必要なものがたくさんあります。
朝のうちに予定を確認しておかないと、「今日中にチェックしてもらいたいのに、午後から管理職が外出しててチェックしてもらえない、詰んだ」という事態に陥りかねません。

課全体の慌ただしさを把握しておくことも重要です。
もしかしたら急に応援を求められ、自分の作業ができなくなるかもしれないからです。

9:15 本日のタスクに着手

課全体のスケジュールを頭に入れた上で、本日のタスクを確認します。
一日の大まかな流れを決めて、優先順位の高い順に取り掛かっていきます。

本日の場合、真っ先にこなすべき案件は、本日17:00締切の調査ものです。
しかも16:00から来客のアポがあるので、実質16:00までに回答しなければいけません。 

定時内であれば、だいたい20分に1回くらいは電話がかかってきます。
よほどの急件を抱えていない限りは、作業の手を止めて電話に応じます。
メールも同様です。定期的にチェックします。

他の職員の書類決裁も、すぐに見て回すようにしています。
僕の手元に留めておくメリットが皆無だからです。

10:30 上司から急件

予定通り作業を進められる日なんて滅多にありません。
毎日少なくとも3件くらいは突発案件が舞い込んできます。
 
本日の1件目は上司から資料作成依頼。議員からの問合せに答えるため、過去のデータをまとめてビジュアル化します。
管理職のチェック・修正指示を経て、資料を仕上げる頃には午前が終わっていました。

12:10〜13:00 昼休み

ちょっと遅れて昼休みに入ります。
自席で昼食(仕出し弁当)をいただき、愛読しているブログ類をスマートフォンで読んでから、仮眠に入ります。

13:00 国からの通知文を読む

午前中の急件対応中、国から通知文が届いていました。突発案件2つ目です。
どうやら僕の担当している制度の運用ルールが今後変わるようです。
幸いにも大した変更ではないので、特段上司には説明せず、通知文を課内供覧に回します。

13:30 作業再開

本日のタスクを再開します。順調にいけば定時内に終わりそう。

14:00 他課から突発案件

本日3件目の突発案件。他課(A課)から、とある資料を至急提供するよう、電話で依頼されました。
個人情報もりもりのデータのため、そもそも他課に提供していいものか僕単独では判断できません。
「課内で検討したい」と回答して一旦電話を切り、係長に相談。
係長的にはOKだが、念のため課長にも相談することになり、課長に諮るための簡単な打合せペーパーを作成。

14:30 課長にヒアリング

先の急件について課長の意向を伺います。
課長的にもOKだが、どうしてA課が突然そんなデータを求め始めたのか、その背景を気にしている様子。
 
まともな職員ならA課から依頼があった時点で違和感を察して背景を尋ねておくべきところ、こういうところで気が利かないから僕は出世競争早々脱落なんだよなーと反省しつつ、ヒアリングから離席してA課担当に電話。
結果、「部長からオーダーされた」との一点張りで、明確な答えは貰えません。
 
明らかに怪しいので、A課に対しては「個人情報なので絶対に庁内限り、職員のみ閲覧可」という条件を強く念押しして情報提供することになりました。

こういう仕事が、公務員がよく言う「調整業務」の一例です。

15:30 作業再開

今日やるべき作業に三たび着手します。
午前中に仕上がるはずだった17:00締切の調査ものすら、まだ出来ていません。
さすがに焦って作業します。

眼精疲労と空腹を感じ始める頃合いで、作業効率が落ちてきます。 

16:00 打合せ

X市役所の担当者が来て、来年度からの新規事業について説明を受けます。
財政的支援を求められますが、そんなものは無いと回答。

残業タイム

17:45 定時終了

あと少しで全タスクを終えられそうなので、そのまま残業に突入します。
定時を過ぎると電話が減り、作業効率が上がります。

18:00 作業依頼メール

他課(B課)からの作業依頼メールが届きました。4件目の突発案件です。
期限は明日AM10:00。作業量自体は大したことないものの、課長の確認が必要です。
本日中に仕上げて、明日の朝一番に課長に見てもらうことにします。


18:45 本日の作業終了

もともと予定していた本日のタスクを完了。
B課から依頼された作業に移り、こちらも完了。
明日マストのタスクをメモして、机の上とデスクトップを整理して、さっさと退庁します。

普通はもっと忙しい

繰り返しになりますが、これはあくまでも閑職のケースです。
90%のフルタイム勤務職員はこれより忙しいです。
忙しい部署だと突発案件がもっと増えるうえ、しかも締切の短い急件ばかりなので、一日中ずっと急かされているような状態になります。

公務員志望の方で、この一日を見て「思ったより忙しそう……」と思うなら、考え直したほうがいいかもしれません。


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