キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

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新規採用職員の皆様も、そろそろ「出先」と「本庁」の違いを理解しつつある頃合いではないかと思います。
採用されたばかりの頃は、「出先機関=当たり」「本庁=ハズレ」なんだろうと漠然と思っている人が大多数だと思いますが、この半年間の自分の経験を踏まえ、異なる感想を抱いている方もいるでしょう。

とはいえ、「本庁勤務のほうがむしろアタリ!」などと宗旨替えする人はごく稀で、出先配属の人は「やっぱ当たりだわ」と胸を撫で下ろし、本庁配属の人は「なんで自分はこんな不幸な目に遭わされてるんだ……」と嘆いているのではないかと思います。
僕自身、初任で本庁配属になり、出先に行った同期よりも圧倒的に残業も休日出勤も多くて、ゲンナリしていた記憶があります。

ただ今となっては、新人の頃に本庁配属されて良かったと思います。
新人の頃に築いた人間関係ーーつまり人脈に、今かなり助けられているからです。

「実力」の7割くらいは「人脈」なのではないか

役所の事務職は、専門知識や技能がさほど求められない代わりに、他者と上手くコミュニケーションをとって仕事を円滑に進めることが求められます。
特に組織内部の人、庁内の別職員とのコミュニケーションは、担当業務が何であれ日常的に発生します。
つまり、組織内部のコミュニケーションがうまくとれる人は、どんな部署に配属されても、どんなポジション・職位であろうとも、優位に仕事を進められます。

このためには、頭の回転速度やトーク力のような所謂「コミュニケーション能力」に加えて、人間関係のストック……つまり人脈も重要です。
組織内部に味方が多ければ多いほど、間違いなくコミュニケーションは取りやすくなります。


ない世界では、個々人の能力よりも、いかにスムーズに組織を動かし、仕事を進めていくかのほうが業務遂行に直結するからです。



専門知識がある職員よりも、庁内で顔の広い職員の方が評価されますし、仕事もしやすいです。
新規採用職員として本庁勤務することが、量・質ともに有益な人脈を築けます。

「量」も「質」も本庁のほうが有利

役所内における人脈には、「量」「質」の2つの側面があると思います。

人脈の「量」とは、知り合いの多さです。
知り合いがたくさんいるほうが何事も進めやすいのは、言うまでもないでしょう。

人脈の量を稼ぎやすいのは、圧倒的に本庁勤務です。
出先機関と比べて本庁は単純に職員数が多いですし、業務内容的にも他課との調整業務が多く、多くの職員と関わることになります。
自発的に動かなくても自然と人脈が広がっていくのです。

人脈の「質」とは、役立つ職員と知り合うことです。
役立つ人というのは、具体的には、以下のような職員です。
  • 助けてくれる人
  • これから出世していく人
  • 学ぶところの多い人、お手本になる人
「仕事ができて、かつ人格的にも優れている職員」と言い換えても良いでしょう。

特に若いうちは、お手本にできる優秀な先輩職員と出会うことが非常に重要だと思います。
地方公務員は、研修や教育を受ける機会が皆無に等しく、OJTもあまり機能していません。

そのため、「教わる」ことができない新人は、まず誰かの「真似」をすることになります。
ここで、「誰の真似をするか」が非常に重要になってきます。
きちんとしたお手本たりうる優秀な職員の真似をできれば問題ありませんが、周囲に変な職員しかいない場合には、間違った仕事の進め方を習得してしまうことになりかねません。

質の高い人脈を築けるのも、出先ではなく本庁だと思います。
30代以上になると、職員の選別もだいぶ進んできて、同世代の中でも比較的優秀な職員が本庁に残るようになります。
そのため、出先にいるよりも、本庁にいる方が、優秀な職員と出会える可能性が高いです。

「新人ボーナス」で好感度を荒稼ぎ

人脈を築くためには、単に人と出会うだけでは不十分です。
相手から好感を持ってもらうことが重要であり、敵とみなされるようなことがあれば、逆に人脈を築くどころか悪影響を及ぼしてしまいます。
特に仕事の世界では、信頼関係が好感の基盤となるため、相手に「この人とはまた一緒に仕事したい」と思ってもらうことが不可欠です。

新人の場合、この好感を得ることは容易です。
多少のミスがあっても「新人なら仕方ない」と寛容に見てもらえることが多いからです。

また、近年の傾向として、若手が仕事に対して消極的な印象を持たれやすいため、やる気を見せるだけでも良い印象を与えることができます。
少しの積極性や努力を見せることで、周囲に「あの新人は頑張っている」と評価され、自然と好感度が高まります。

たとえ認知されなくても有益

ただし、往々にして優秀な職員には仕事が集中し、わざわざ新人を個別に認知する余裕は無いかもしれません。
当然のことながら、お互いがお互いの存在を認知しなければ、人脈たり得ません。
「自分だけが相手のことを一方的に知っている」という状態は、正確には人脈とは言えません。

しかし、認知されることが全てではありません。
新人にとって最重要の恩恵、つまり優秀な職員から得られる「学び」は、相手が自分を認識していなくても享受できるものです。

優秀な人々の仕事ぶりを観察し、彼らから無意識のうちに得られる知識やスキルは、新人にとって貴重な経験となります。こうした学びの積み重ねが、長期的に自分のキャリアにプラスとなるのです。

したがって、相手に認知されるかどうかに焦点を当てるよりも、自分がどれだけの意欲を持って学び、成長し続けるかが、最終的には重要な鍵となるでしょう。



世間的にはいまだに、公務員の仕事=書類にハンコを押す単純作業……という印象を持たれていますが、このような単純作業は、最近は外注したり、会計年度任用職員に任せることがほとんどです。
その代わり、正規職員の業務に占めるコミュニケーションの割合が、どんどん大きくなっています。

このような状況において、もちろん一番重要なのはコミュニケーション能力になりますが、ストックとしての人脈もまた重要です。
これからの役所は、ますます単純作業が減っていって、同時に庁内人脈が重要になっていくと思います。
そのためには、新人ボーナスをフル活用して、若いうちから人脈形成しておくことが重要だと思うのです。

本庁配属の方は、恵まれた環境にいることをフル活用してもらえればと思います。

僕は以前から、地方公務員の出世競争は採用直後からスタートしているという説を提唱しています。

具体的にいうと、
・採用から3年間ほどで有望な職員をまずピックアップし(一次選抜)
・彼ら彼女らを忙しいポストに配置して能力や激務耐性を測る(二次選抜)
・二次選抜に通過した職員を、人事課・財政課・企画課といった圧倒的出世コースに配置し、帝王学教育を施す
という流れです。



この記事を書いた頃は、僕の世代はちょうど二次選抜の真っ最中で、まだまだ勝敗が固まっていませんでした。
それから4年が経過して、とうとう僕の世代も2次選抜が終わったようで、圧倒的出世コース(部長候補)である人事・財政・企画部局に腰を下ろす面々が固まってきました。

出世競争第一幕の結末として、どういう職員が圧倒的出世コースに乗ったのか、細かく見ていきます。

教科書的リア充のA君 →人事課

  • 学歴 県内2番手進学校(バスケ部主将) → 首都圏上位私大
  • 異動遍歴 出先の庶務担当 → 観光部局の予算担当 → 育休 → 土木部局の予算担当 → 人事課
  • 外見 高身長(185cmくらい)、モデル体型のイケメン
  • 性格 いじり上手なムードメーカー(いじれる相手だけ、とことんいじる)
  • 家族 20代半ばで結婚、3児の父
  • 仕事 必要最低限しかやらないスタンス。必要最低限の見極めがとても上手いので、スマートに仕事をこなしつつ年休もがっつり消化。

外見も性格も公務員らしくない、良い意味で異色の存在です。
廊下ですれ違うと「うーっす!」と気さくに挨拶しながら肩を小突いてきて、甘めの香水の残り香を漂わせて、颯爽と去っていくような。

大手民間企業から大量に内定取れそうなスペックなのですが、労働への興味が皆無で、「最低限のことさえやっていれば普通に昇給していくから」という理由で県庁を志望したらしいです。

実際、熱心に仕事に打ち込んでいるわけではなく、残業は極力せず、隙あらば年休を取得しています。
それでも要領が良く、必要十分に仕事をこなしていますし、何よりコミュニケーションが上手いので人望はとても厚いです。

後述するメンバーのように、「めちゃめちゃ仕事ができる」という高評価を受けているわけではないものの、それなりに忙しい部署でもサクッと仕事をこなして年休を取得し、3人の子育てにも熱心に取り組んでいる……ということで、要領のよい優秀な若手職員という評価を受けています。


教科書的エリート公務員のB君 →財政課

  • 学歴 県内トップ進学校 → 関西圏最上位国立大
  • 異動遍歴 厚生福祉部局の制度担当 → 教育委員会の予算担当 → 厚生福祉部局の総括調整担当 → 財政課
  • 外見 特筆すべき点なし
  • 性格 真面目で凝り性、昔はポケモン対戦ガチ勢だったらしい
  • 家族 独身
  • 仕事 常人の1.5倍の労働時間で、10倍の仕事量をこなす

性格も仕事ぶりも「公務員の鑑」。
採用1年目から明らかに有能だったらしく、「彼は財政課に行くだろう」とずーっと言われ続けていました。
管理職達からの評価は非常に高く、僕の世代で一番有名な職員だと思われます。

国家総合職に落ちて県庁に来たという、超高学歴層にありがちな不本意入庁組です。
筆記試験は余裕で通過したらしいのですが、官庁訪問で落ちてしまったとのこと。
当時はちょうど東日本大震災の直後で、国家公務員の採用はだいぶ絞られていました。
しかも彼は難関人気官庁ばかりチャレンジしていたそうです(財務・総務自治・警察庁だったはず)
不人気な官庁も受けていたら、普通に内々定出ていたんじゃないかと思います。

仕事は正確かつ、とにかく速い。そして残業を厭いません。
目の前の仕事はもちろんのこと、過去の懸案事項にも果敢にチャレンジして、実際にいくつも片付けていきます。
さらに「仕事を作る」のも上手いです。
彼が自主的に調べたことや整理したデータが後々活きるケースがとても多く、上司としては本当にありがたい存在なのだろうと思います。

ただ、他人にも自分並みの完成度・作業量を求める傾向があり、自分にも他人にも厳しいタイプです。
ひょっとしたらこれからパワハラ上司に化けてしまうかも……

マイペース趣味人のC君 →企画課

  • 学歴 県内2番手進学校 → 関東圏最上位国立大
  • 異動遍歴 産業振興部局の事業担当(部内で何度か異動) → 国 → 企画部局(総合調整担当)
  • 外見 ヒョロガリ
  • 性格 オタク
  • 家族 独身
  • 仕事 完全自立型、ゴールと納期を設定したら自主的に段取りして進めていく

カタログスペックだけ見ればB君と大差無いのですが、性格が全然違います。
非常に温和で、あまり物事に執着せず飄々としているので、非常に付き合いやすいタイプです。
(職場の人間関係にあまり関心が無いのかもしれません)
僕がオタク趣味を明かしている数少ない一人でもあり、それくらい信頼できる人間です。

出身大学のレベルが近似していることから、庁内には勝手に「B君とは互いにライバル視しあっている」などと評する人もいます。
こういう下馬評に対し、B君は露骨に嫌な顔をしているのですが、C君は「俺らの関係性、傍目に見るぶんにはめっちゃ面白いんだろうなー」などと笑って流すような感じです。

入庁依頼ずっと本庁の産業振興部局の事業担当として、結構裁量も与えられて好き放題に仕事していたのですが、30歳過ぎでいきなり国に出向して、戻ってきてからは企画課に配属。
(僕の勤務先県庁では、国出向はたいてい20代半ばの職員が選ばれるので、異例の高齢出向です)

今度は産業振興関係だけでなく、いろんな分野において、次々降りてくるミッションをこなしているようです。


典型的「優秀な公務員」人材の枯渇

ここまで読んだ大多数の方が、C君みたいな人が出世コースに乗ることに違和感を覚えたと思います。
圧倒的出世コースを歩む職員には、庁内調整能力が欠かせません。
まさにA君のようにコミュニケーション巧者だったり、B君のようにロジカルに他者を従わせる強さが必要です。
ただC君には、彼らのような庁内調整能力が備わっていません。

実際のところ、二次選抜に突入した時点では、もっと庁内調整に長けた典型的出世コース人材がいたのですが……途中でドロップアウトしてしまいました。
多忙すぎて体調を崩したり、パワハラ上司に潰されたり……有望だと目をつけられなければ安穏とした公務員人生を送れたかもしれないのに。本当に気の毒です。

完全に推測ですが、有望な人材のタマが足りなくなったので、カタログスペック的に上位にくるC君を繰上げで圧倒的出世コース入りしたのではと思います。

過去の記事で、人事課や財政課の出世コースの中でも企画課は異色と書きましたが、やはり異色のキャラクターを充てたということなのでしょうか。




これまでの世代はB君みたいな人が同期に複数人いるのが普通だったので、僕の世代を指して「やっぱ平成生まれはダメだ」などと評する人も少なくありません。
本当に人材劣化しているのか、それともむしろ「多様性」が生まれて良い方向に向かうのか、彼らのこれからの活躍に期待です。


今年度から庶務担当になり、出世コースの職員と関わる機会が増えました。
特に、財政や企画部局からは、毎日のように色々と依頼や照会が飛んできます。
怒られることもしばしばあり、もうすっかり歳下から怒られるのにも慣れてきました。

入庁年次や年齢が下であろうと、出世コースを邁進する彼ら彼女らのほうが、役所内では圧倒的に格上です。
僕のような閑職コースの人間が意見具申するなんて、烏滸がましいにも程があります。 
ただそれでも、僭越ながら思うところがあります。

いくら優秀でも完全上位互換ではない

出世コース職員が優秀と言われるのは、汎用的なスキルや知識が高水準だからです。
具体的には、コミュニケーション能力や事務処理能力、ロジカルシンキング、数字のセンス、読解力、文章力のような一般的スキルや、民法や行政法などの汎用的知識が挙げられます。
このようなスキルや知識に長けているからこそ、出世コースに抜擢されているわけです。

このように、各課担当者と出世コース職員の間には、れっきとした能力差があります。
そのため、両者の間で見解の相違が生じたとしたら、たいてい出世コース職員のほうが正しいです。

ゆえに、出世コース職員にありがちな「まず相手の否定から入る」というコミュニケーションスタンスは、非常に合理的なのでしょう。
だいたい相手の方が間違っているので、いち早く間違い箇所や原因を見つけられ、効率が良いのです。

とはいえ、役所の仕事は、汎用的なスキルや知識だけで回っているわけではありません。
各分野に特有の専門知識や、経験を通して得られたノウハウのようなものも重要です。
こういった知識や技能は、それぞれの部署で働いているからこそ身につくものです。
(以下、「専門性」と表現します)

いくら優秀な出世コース職員であっても、専門性の領域では各課の職員には敵いません。
専門性を欠いているために、間違った認識を抱いているケースも少なくありません。
正確な判断をするためには、持ち前の普遍的スキルに頼るだけでなく、各課の担当職員から専門性を借りる必要があると思います。

しかし出世コースの職員は、こういった専門性を軽視しがちです。
専門性よりも一般論のほうが優先される前提で話を進めてくるのは日常茶飯事で、ひどい時には「その専門性は間違いだ」と頭ごなしに否定してくることすらあります。

専門性は一朝一夕で身につくものではなく、簡単に言葉で説明できるものでもありません。
担当者に説明してもらったところで、出世コース職員の優秀な地頭を持ってしてもなかなか理解が進まないでしょうし、不愉快に思うのは尤もです。
 
しかし、各課が持つ専門性を聞き取って吟味して、その専門性をいくつも掛け合わせて活用していってこそ、組織なのだと思います。
このように各課の強みを統合して活用していくことが「内部調整能力の第二形態」であり、幹部に上っていくために必須の技能なのだろうと思います。


所詮は地方公務員

先述したとおり、出世コースの職員は、他の職員よりも優秀です。
ただし、あくまでも役所内という限られた世界で相対的に優秀というだけで、社会全体で見れば所詮は地方公務員、ビジネスパーソンとしては下流です。

役所内で出世コースと言われる「財政・人事・企画・秘書部局」は、いずれも役所の内部調整役です。ひどく偏っています。

普段から役所外部と関わる部署(特に産業振興や観光のような民間企業と関わる部署)であれば、公務員よりもはるかに優秀な民間サラリーマンと日常的に交流があり、自分の至らなさを自覚できます。
しかし、内部調整メインの出世コース職員は、自分よりも格下の職員ばかりを相手にする日々を送っているわけで……社会全体で見れば自分は大したタマじゃないことを忘れがちなのではないかと思います。

出世コースを歩まれている立派な方々はこんなブログ読んでないと思いますが、もし気分を害されたらごめんなさい。完全に私怨です。
冒頭に「怒られるのにも慣れてきた」と書きましたが、慣れてきたせいで一層ストレスが溜まるんですよね……


庶務担当をしているので、よく財政課とやりとりをしています。
去年一昨年の2年間は役所外に出向しており、予算要求とは無関係の生活を送っていたので、財政課に通うのは2年ぶりです。

2年ぶりのはずなのに……財政課の職員の顔ぶれが全然変わらないんですよね。
ちょうど僕の同期より下の世代が全然入ってきていなくて、平均年齢がじわじわ上がってきています。

財政課といえば役所内では王道の出世コースです。
財政課の人事が変調を来しているということは、出世コースにも変調を来していることに他なりません。

同期の財政課職員に状況を聞いてみました。

財政課候補の若手がコロナ対応業務で潰れた

僕の勤務先では、だいたい入庁8年目くらいの若手職員が財政課に抜擢されてきました。
年度末になると、「あの世代からは誰が財政課送りになるのかな〜?」なんて噂話で盛り上がります。
 
少なくとも平成初期頃からこのような流れが長年続いてきたようなのですが……ここ2年ほどは若手が全然財政課に配属されていません。
その代わり、これまで財政課とは無縁だった35歳前後の職員がいきなり配属されるケースが増えています。

このような状況の背景を財政課の同期に聞いたところ……財政課候補だった有望な若手が軒並みコロナ対応業務で「潰れてしまった」せいとのこと。

僕の勤務先県庁では、主に20代後半の職員(採用年次でいえば平成26〜30年あたり)が、コロナ対応の現場最前線(医療系部署)に投じられてきました。
彼ら彼女らが大量の仕事と過酷な住民対応に3年間従事した結果、ハードワークが不可能なほどに「潰れた」という状況のようなのです。

「潰れた」というのが実際どのような状況なのかはわかりませんが、心身を壊したり性格がしまったりして、とにかく財政課のようなハードな部署に配属できる状態ではないのでしょう。

僕自身、令和2年度だけコロナ関係の業務を担当していましたが、本当にひどい仕事でした。
業務量はマシなほうだったものの、とにかく定時内はずっと住民から罵詈雑言電話に耐える日々が続き、ストレスがひどかったです。
これが3年間も続いたら……絶対耐えられません。

治しようのない後遺症

つまるところ、現状の出世ルート界隈は、空前絶後の人手不足なのだと言えるでしょう。
財政課のようなハードワークを任せられる若手職員が組織内からいなくなってしまったのです。

このブログでも何度か触れていますが、国策により採用者数が絞られた結果、地方自治体はどこも40歳前後の職員が極端に少なく、そのせいで組織に歪みが生じています。
この世代は民間採用も不調だったので、採用人数は少なくとも優秀な職員が集まりました。
そのため、出世コースだけを見れば空白は生じていません。

一方、今回の新型コロナウイルス感染症では、職員数自体はさほど減っていないものの、優秀な職員ばかりがダウンしてしまいました。
そのため、頭数は確保できているものの、出世コースだけを見れば空白が生じているのです。

現状、だいたい5年分の優秀な職員を失ったわけで、組織としてはかなり危機的な状況だと思われます。
一方、今現在30代の出世コース入りを逃した職員にとって、今はリベンジを果たす絶好の機会と言えるでしょう。
若手の代わりに出世コース入りするというこれまで無かった臨時ルートが開かれているわけです。

とはいえ、わざわざ出世コース入りしたいと考える地方公務員はごく少数でしょう。
むしろ、望んでもいないのにいきなり出世コースに投入される30代職員が増えている、と捉える方が正しいと思います。

どれだけ成果を上げようとも、どれだけしくじろうとも、待遇にはさほど反映されないのが地方公務員という仕事です。
より正確に言うと、業務実績に応じて人事評価が上がったり下がったりはするものの、人事評価と待遇があまり連動していません。せいぜいボーナス(勤勉手当)の支給額が数万円増減する程度です。
自分みたいな無能閑職にとっては非常にありがたい仕組みなのですが、優秀な職員の皆様はさぞかし憤っていることでしょう……
 
ただし、役所の中には、人事評価とは別に「評判」という評価軸も存在します。
大いに実害をもたらすのは「評判」の方です。
「評判」が低下すると、庁内の協力者が減ってしまって業務の手間が増えますし、職場でのストレスも激増します。


「人事評価」と「評判」を別物として考えたほうがすっきりする

我々は普段から、他の職員に対して評価を下しています。
  • 部下のみならず上司のフォローにも奔走している苦労人だ
  • 事務作業は得意だけどコミュニケーションが下手
  • 若いのにパワハラの気がある
  • いい歳して気配りが全然できていない……などなど。
こういう他者評価の集合体が「評判」です。
人事課が決めた基準に沿って行われる統制的な評価(=人事評価)とは全く別物の、自生的・民主的・多面的な職員評価といえるでしょう。

ここでいう「評判」は、あくまでも仕事面を評価しているもので、人間的な「好き/嫌い」とは関係ありません。
「業務能力の評価だって主観的な好き嫌いに影響されるだろ……」と思うかもしれませんが、実際我々は普段から
  • 仕事はできるけど嫌いな人
  • 仕事はできないけど人間的に好きで憎めない人
という評価を、他者に対して下しているはずです。
こういうカテゴリーが存在する以上、主観的な好みと業務能力をある程度分離して思考できていると考えて問題ないと思います。

評判は絶対評価ですが、人事評価は相対評価です。
そのため、評判と人事評価は相関していると思われますが、実態はよくわかりません。
(後述しますが、評判が良いほど、高い人事評価を獲得しやすいはずです)

評判が良いけど人事評価は高くない……という職員は少なくないでしょうし、反対に評判が悪いのに人事評価が高い職員も存在します。
「パワハラで後輩を潰しまくっているのに出世コースに突入する職員」なんかは、まさに「評判は悪いが人事評価は高い」というケースなのでしょう。

評判次第で役所生活が激変する

役所生活に影響してくるのは、人事評価よりも評判のほうです。

評判が良い職員には、役所組織が味方をしてくれます。
組織内の人望が厚く協力者がたくさんいますし、初対面の相手からも好意的に接してもらえます。

別部署の全然知らない人からいきなり電話がかかってきて、「資料ください」と依頼された場面を想像してみてください。
相手方の評判次第で、多少なりとも対応が変わるのではないでしょうか?

役所の仕事のほとんどは、一人では完結しません。他の職員とのコミュニケーションを伴います。
評判の良い職員は、組織内のコミュニケーションが円滑に進められますし、一度のコミュニケーションから得られるものも多いです。
ゆえに仕事を進めやすく、成果も出しやすいと言えるでしょう。
ひいては人事評価も高めやすいはずです。

何より、役所組織内に味方がたくさんいる、つまり職場の人間関係が良好であれば、仕事のストレスがかなり軽減されるはずです。
総務省資料によると、メンタルヘルス不調による休職に至った理由のうち最多なのが「職場の対人関係」です。
人間関係によるストレスの影響がいかに大きいかを物語っています。



何より評判は、部署異動してもリセットされません。
一度築きあげてしまえば、どこの部署に異動しようとも有用な資産になります。

逆に言えば、一度落ちた評判もずっと引き継がれていきます。
人事異動によって人間関係自体はリセットされようとも、評判が悪い職員は色眼鏡をかけた状態で見られてしまい、マイナスからのスタートになります。

果たして僕の評判はどこまで落ちるのか?

評判を高めるにはどうすればいいのか、いろいろ考えてみましたがよくわかりません。
生来のコミュニケーション能力によってほぼ決まるような気もしつつ、「口下手だけど評判の良い職員」も少なくないことを思うと、その他の要素も少なからずありそうです。

「人事評価は高くないが評判は悪くない」というポジションを確立できれば、役所生活はかなり楽になると思います。
評判のおかげで仕事しやすく、人事評価が高くないおかげでハードな部署には配属されません。
仕事がさほど忙しないおかげで精神的なゆとりを保てて、いつも朗らかでいられるので、「あの人はいつも接しやすいね」とさらに評判を高めていけます。

民間企業であれば、こういう社員は年齢問わずリストラの対象なのでしょう。
しかし役所はこういう職員を切れません。少なくとも勧奨退職年齢までは安泰です。
地方公務員の特権を活かせる生き方だと思います。

僕もこの路線を目指していたのですが、あまりに庶務の仕事が不出来すぎて、日々「評判」が落ちていくのを実感しています……
本当、僕に対する表情とか口調がどんどん冷たくなってきてるんですよ。
このままいけば、忘年会スルーしても全くお咎めねさそうです。

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