キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

タグ:国家公務員

都道府県にしても市区町村にしても、日々運用している制度の多くは法令に基づいています。
国会で成立した法令をベースに、国が具体的な運用方法を決めて、各自治体に対して「運用要綱」「マニュアル」「質疑応答」のような形で周知することで、全国統一的な運用がなされるよう図られています。
(以下、これらをひっくるめて「運用要綱」で統一)

ものによっては数百ページにもわたる運用要綱ですが、ここに制度の全てが書いてあるわけではありません。
住民からの問合せ、上司からの素朴な質問、社会情勢の変化などをきっかけに、頻繁に疑義が生じます。
疑義が生じるたびに、まずは運用要綱を読み直し、過去事例や他自治体での取扱いを調べて、それでも解決しない場合は国に問合せます。

国への問合せは極力避けたいところです。
真剣に取り合ってくれる場合もありますが、大抵は塩対応だからです。
嘲笑混じりで対応されるのが普通で、「その程度は自分で調べりゃわかるでしょ!?」と怒られることもしばしばあります。

塩対応に対して、腹を立てている地方公務員も多数います。
  • 調べりゃわかるとは言うものの、実際どこに書いてあるんだよ
  • すぐ回答できるなら初めから要綱に書いておけよ
このあたりの悪態は日常茶飯事です。

このようなギャップが生じる原因は、地方公務員側の法令知識の欠如にあると思っています。

運用要綱が全てではない

そもそものところ、地方公務員は運用要綱を過信していると思います。

運用要綱はあくまでも法令を補完するものです。
守るべきルールは法令であって、運用要綱は補足説明です。

運用要綱は、条文の解釈に疑義が生じそうな部分をあらかじめ補足するために作成されるものであって、これに全てを盛り込む必要はそもそもありません。
つまり、法令にはっきり書かれている内容の繰り返しであったり、あえて明記しなくてもわかるであろう内容まで、運用要綱に盛り込む必要は無いのです。

問題の原因がここにあります。
運用要綱を作成する本省国家公務員にとっては「法令にはっきり書かれている」「あえて明記しなくてもわかるであろう」内容であっても、地方公務員の法令知識が不足しているために「書かれていない」「明記されないとわからない」と感じられてしまうのです。

法令知識が足りてない

法令知識の欠如には、大別して2種類あります。

一般法

一つは、民法や行政手続法、行政不服審査法のような一般法の知識です。

社会を構成するルールは、だいたいこういった一般法で定められています。
しかし、一般法の内容を熟知している人はごくわずかで、大抵の人は把握しきれていません。
ルールを執行する側である公務員も同様で、特に国家公務員(キャリア)とその他の間には相当な格差があると思われます。

公務員試験の難易度格差からして、そもそも高度な一般法知識を備えた人間でないとキャリア採用には通過できません。

この入庁時の格差は、勤務年数を経るにつれてどんどん拡大して行きます。
国家公務員は、法令や制度を作る仕事を多く担当します。
この仕事には一般法の知識が欠かせません。
つまり、入庁時の高い知識が、実務によりさらに磨かれていくのです。

一方の地方公務員は、試験でもさほど法令知識を求められませんし、実務でも一般法に触れる機会はあまりありません。
採用当初がピークで、勤務年数を経るにつれてどんどん劣化していくでしょう。
ちなみに僕は民法無勉で公務員試験に挑みました。こんな奴でも合格してしまうんです。

一般法で定められている内容は、あえて運用要綱に転記する必要はありません。
運用要綱に書かなければいけないのは、一般法では規定されていない内容や、一般法とは異なる取り扱いだけです。
 
本省職員にとっては一般法の全条文が常識です。
条文の文言だけでなく、その条文にまつわる学説や運用事例、判例もまた常識でしょう。

しかし、こういった事柄は、地方公務員にとっては常識ではありません。
たいていの地方自治体は一般法の基本書や判例集なんて贅沢品は持ち合わせておらず、調べることもできません。
「もしかしたら一般法に規定があるのかも」という発想すらない職員もいるでしょう。

法令用語・解釈技法

もう一つは、法令用語や解釈技法の知識です。
 
日常的に使われている用語でも、法令だとより厳密な定義が存在するものがいくつもあります。
「速やかに」「遅滞なく」「直ちに」や、「その他」「その他の」の意味の違いあたりが有名です。
僕の場合、「署名」と「記名」の違いをつい先日初めて知りました。恥ずかしながら。

また法令には、類推解釈や反対解釈など、定番の読み方(解釈技法)があります。

一見あやふやに見える条文であっても、こういった知識と照合して読めば、一義的に意味が定まる場合がよくあります。
法令中にはっきり一義的に書かれている事柄を、あえて運用要綱で繰り返す必要はありません。
そのため、よほど重要な箇所でない限りは省略されがちです。
 
しかし、知識のない人間が読むと、運用要綱の記載漏れだと思われたり、運用側に解釈が委ねられているかのように誤読したりしかねません。


地方自治体vs住民の関係にも影を落とす

運用要綱を作成する本省職員にとって、こういった法令知識は常識です。
常識でわかる事柄に対して、わざわざ解説は不要だと判断するでしょう。
判断するというより、最初から必要だとは感じないと思います。

一方、地方公務員の法令知識には個人差があります。
本省職員並みに知っている職員もいれば、全然知らない職員もいます。
後者の職員にとっては運用要綱が全てです。運用要綱に書かれていなければ何もわからないのです。

そのため頻繁に疑義が生じ、本省に質問することになります。
そして本省職員から「どうして書いてあるのに理解できないのだろう」「いや常識でしょ」と一笑に付されてしまいます。

知識ギャップによるトラブルは、地方自治体と住民の間にも頻繁に生じます。
役所側としては「ちゃんと書いてある」「あえて書かなくてもわかるはず」と思っていた事柄に対して、住民から「説明が無い」「ちゃんと書けよ」とお叱りを受ける事案です。

地方公務員という立場上、住民を叱責したり冷笑するわけにはいきません。
わかるように書けなかった役所側が常に悪者です。
トラブルの未然防止のため、対外的な文章を作成する場合は、常に「知識のギャップ」を意識したいところです。


事前面談会が大変なようで……当事者の皆様は本当にお疲れ様です。
ネット上にいろんな声が上がっていますが、僕の感覚では「まあそうなるよなぁ……」という感じで、正直驚きはありません。
表向きのルールを守らない流れなら、やっぱ今年も伝統行事「地上試験日拘束」やっちゃいそうですね……

事前面談会で深淵を垣間見た結果、国家総合職への就職を再考している方もいるかもしれません。
ただ、現時点で完全に見切りをつけられる方はごくごく少数でしょう。
そして大半は大いに迷っていることと思います。
特に「これまでの努力が無駄になってしまう」という葛藤と戦っているのでは?

この感情こそ、かの有名な「一貫性の法則」「サンクコストの錯誤」と呼ばれる人間の思考の癖です。
狩猟時代から人類の脳に刻まれた思考パターンであり、無意識のうちに人間の決定を方向付けます。
そしてときには不合理な決定をもたらし、後悔の素となるのです。
 
ファーストキャリアに国家総合職を選ぶかどうかは、人生において非常に重要な選択です。
認知の歪みに左右されることなく、合理的に考え抜いたうえで決定すべきです。

「一貫性の法則」や「サンクコストの錯誤」そのものの解説は別サイトに任せるとして、これらの思考の癖から解放されるためのヒントを考えてみます。


一貫性の法則:志望動機を冷静に深掘りしてみる

端的にいうと、「これまでずっと国家総合職を目指してきたから今更進路変更なんてしたくない」という気持ちを惹き起こすのが「一貫性の法則」です。

この法則の影響から逃れるためには、なぜ国家総合職を目指しているのかを今一度冷静に見つめ直して、「一貫性の法則」とは関係なく本心から国家総合職を志しているのかを問い直すのが効果的です。

  • 官僚というステータスに憧れている
  • 入庁後にやりたい仕事がはっきりしている

このように断言できるのであれば問題ありません。邁進してください。

断言できないのであれば、国家総合職を目指す動機を細分化してみることを勧めます。
 
前述の「官僚というステータスに憧れている」パターンでなければ、国家総合職への就職は目的ではなく手段です。

  • 目的を達成するための手段は、「国家総合職への就職」一択でしょうか?
  • または「国家総合職への就職」が利用可能な手段のうち最善の選択肢でしょうか?

どちらの問いもノーであれば、国家総合職への就職が必ずしも合理的とは言えません。
より志望動機を深掘りしていって、さらに問いを深めてみては?

その結果「国家総合職がベストだ」という結論に辿り着ければ問題ありません。

反対に「他の選択肢の方が良いんだけど、どうしても国家総合職を捨てきれない」という状態から脱せないのであれば、「一貫性の法則」のような認知の歪みが作用している可能性が高いです。
自分で悶々と考えていても仕方ないので、第三者の意見を仰ぐことを勧めます。
それか前掲の『影響力の武器』『ファスト&スロー』を読んでみて、自分の心理状態を客観的に見てみてください。

サンクコストの錯誤:そもそもサンクコストではない

「一貫性の法則」と若干被りますが、「今更国家総合職の道を止めるのは、これまでの過程を失敗とみなすことと同義だ。これまでつぎ込んできたお金・時間・労力などのコストを無駄にしたくない。だから国家総合職しか進路は無い!」という心理状態が「サンクコストの錯誤」です。

もしこういう風に考えているのでしたら、安心してください。
国家総合職を志して努力してきた日々は、少なくとも地方公務員になるのであれば、決して無駄にはなりません。

国と地方がうまく歩調を合わせられない理由の一つとして、官僚と地方公務員の間の絶望的な法令知識格差があると思っています。 
地方側に法令知識(中でも特に、民法と行政訴訟裁判例)が無いために、官僚の意図が正しく伝わっていないのです。
(いずれ別途記事にしようと思っています)
 
こういう構造的課題があるために、官僚並みに法令知識を備えている職員が地方側にいれば、国・地方の相当にとってものすごくありがたいのです。
過去の記事で「東大卒は人事異動のペースが遅い」と書きましたが、高学歴ならではの固有スキルである「知識の厚み」を活かして国と地方の仲介役という代替困難な役割を担っているために、異動させづらいのかもしれません。


 

公務員にならないにしても、国家総合職試験に向けて膨大なインプットをこなしてきたという経験はきっと役立つでしょう。
とにかく無駄にはなりません。

【2020.6.24追記】
噂の事前面談会ですが、やはりルール無用の長時間拘束・深夜営業らしく「ああやっぱり」という感じです。
本省はこれが平常運転です。県庁でさえ、本省から「解散指示あるまで待機」と連絡があって夜明けまで帰れない事態がよく発生しています。

今年の受験生はある意味ラッキーかもしれません。
普通なら入省するまでわからない(東京大学みたいなOBがたくさんいるところは別として)、本省のリアルな職場の雰囲気が垣間見れたのです……

【追記ここまで】


前回の記事で紹介したとおり、今年の公務員試験では国家総合職と地方上級の併願が難しいです。
参考:【懸念】2020年は国家公務員(総合職)と地方上級の併願は事実上困難な気がする

しかも今年は新型コロナウイルス感染症のせいで説明会がありません。
そのため、どっちの選択肢もよく理解しないうちに決断を迫られることになりかねません。

過去にも記事にしていますが、僕は国家公務員の激務っぷりが怖くて地方に逃げた人間です。
この判断は大正解でした。自信を持って断言できます。 

そんなクソ雑魚メンタルの僕からの提案です。

弊ブログをご覧ということは、国家公務員だけでなく地方公務員も興味があるのでは?
それなら国家総合職という選択肢をちょっと見つめなおしてみませんか?

短時間睡眠での激務に耐えられますか?

そもそもこんな記事を書いているのは、安易に国家総合職を選んでしまうと、あまりの激務っぷりに心身をやられてしまう危険があるからです。

どこの省庁でも国家総合職の方は激務を強いられています。
僕自身は本省勤務経験はありませんが、現役官僚の友人知人や、本省出向経験のある同僚など、本省の実態を知る人に囲まれています。
皆さん口を揃えて、それはもう激務としか言いようがないエピソードを語ってくれます。

僕のような木っ端地方公務員でも、本省職員の勤務時間がめちゃくちゃなのは、はっきり見てとれます。
本省の方から、365日24時間、どんなときにもメールや電話が飛んでくるからです。

金曜日の夕方に提出した調査ものに対し、日曜日の明け方に「追加調査やります、月曜9時までに回答求む」という返信が届いて月曜日に絶句するなんてパターンは日常茶飯事。
自分は未経験ですが、「どうして土日に電話に出なかったのか」と週明けに叱られるケースも多数聞きます。

省庁内で完結するならまだしも、本来なら指揮命令権限の無いはずの地方自治体職員にまで365日24時間稼働を求めざるを得ないのです。
切迫したスケジュール、組織内プレッシャーの凄まじさがにじみ出ています。

社畜の徹夜は一味違う

国家総合職にとって、深夜残業は必須スキルです。
「徹夜慣れしているから大丈夫」という自信がある方もいるでしょう。
ただし、仕事での夜更かしは、学生時代までに経験した夜更かしとは別物です。


●人に囲まれている、コミュニケーションを伴う夜更かし
省庁での深夜労働は、一人で黙々と作業するだけではありません。
上司や同僚と一緒に、日中と同じようにコミュニケーションを取りながらの仕事が続きます。
気心の知れた家族や友人とではなく、職場の同僚とずっと一緒という環境。これが予想以上に堪えます。

●いつ始まるか、いつ終わるか全くわからない
省庁に限らず、役所の徹夜仕事は、いつも突然に始まります。
だいたい外部から持ち込まれるものです。
つまり、いつ突然深夜労働を強いられるかわからないし、いつ終わるかもわからないのです。

こういう「見通しの不透明さ」をストレスに感じる人は結構います。
徹夜そのものは平気でも、毎日常に「今日は徹夜かもしれない」という可能性をちらつかせられるのがストレスになるのです。


このような労働環境を知って、僕は国家公務員を諦めました。
ただし、ちゃんと適応できている人も少なからずいます。
ハードだからこそ得られるものがあることも事実です。
そういう方々に支えられているのが今の中央省庁なのでしょう。本当に感謝しかありません。

「国家公務員」ではなく単に「公務員」になりたいだけなら国家総合職は再考したほうがいい

とにかく公務員になりたくて、手当たり次第に試験を受けている方もいるでしょう。
こういう方は一度冷静に考え直してみたほうがいいと思います。
 
特に、難関大学に通っていて、周りがみんな国家総合職を受験しているという理由だけで、強く志望しているわけではないけどとりあえず受験を考えている方。
採用された後、本当にきついと思います。

公務員を志望する理由を、改めて考えてみてください。
その志望理由が国家総合職でしか叶わないのであれば、堂々と国家総合職試験に臨んでください。応援します。

加えて消去法でも考えてみてください。
消去法でも国家総合職しか残らないのであれば本物です。
ただし、国家総合職以外の選択肢も消せないのであれば、ハードな労働環境に挑戦できるのかどうかを再考してみてください。
  • 住民対応やりたくない
  • 自治体職員はレベルが低いから一緒に働きたくない
  • 30代後半まで部下持てないなんてあり得ない
  • 役所に骨を埋めるつもりはない、地方公務員だと転職できなくなる
まずはこのあたりの条件からチェックしてみては?

「地方自治体は今後破綻するリスクが高く身分保証されるとは限らない」という理由で、国家公務員を志している方もいるでしょう。
確かに自治体が破綻して、解雇されたり待遇が大幅悪化されるリスクはあります。

しかし、過労が原因で自分が潰れてまともに働けなくなるリスクは、国家公務員の方が圧倒的に高いです。

失職リスクを考慮するなら、都庁はじめ財政的に豊かな都会自治体の方が、トータルで見て安全です。
勤務先がどれだけ盤石であろうとも、自分が潰れてしまえば、働けないのです。

この記事を読んでどう思いました?

この記事への直感的な感想も、重要なチェックポイントだと思います。

「はぁ……やっぱ地方公務員はだらしないし頼りないんだよな。こんな奴に行政運営は任せておけない。やはり国がしっかりしないと駄目だわ。」と思った方。
貴殿こそ国家公務員たるべき器の持ち主です。


「地方公務員だと平凡な人生で終わりそうだけど、国家公務員になれば何か新しい人生が始まりそう!この期待を捨てきれないんだ!」という方。
健康を賭け金として差し出せるか、考えてみてください。
国家総合職として働くほうが成長できるでしょうし、大きなことを成し遂げられるでしょう。
ただし、激務のあまり心身を壊すリスクを忘れないでください。

加えて、地方公務員であっても全国スケールで活躍している方もいます。ごくわずかですが。
大半の地方公務員は平凡な人生を歩むでしょうが、偉業を成し遂げることが不可能とは限りません。
むしろ余暇時間が確保できるので、独力で挑戦するような事柄なら、地方公務員のほうがやりやすいかもしれません。 

順延後の国家公務員試験の日程が発表されました。
まさか地方上級よりも後になるとは……


 

 


国家公務員が本命の方は、試験勉強期間が長くなって大変なことと思います。
しかも「事前面談会」という新要素もあって勉強時間が相当奪われるようで、ますますお気の毒です。
総合職事前面談会ガイド2020(PDFで開きます)

これ事実上の官庁訪問でしょ……ここで大方選考しておいて、官庁訪問本番は意思確認だけのやつでしょ……それに「土日は拘束しない」ってわざわざ書いてあるのも怪しいです。例年通り「有志の交流会」みたいな別名目で地上試験日を拘束するのでは……��

 

国家総合職と地方上級の併願は事実上困難では?

公表日程をもとに、内々定までのスケジュールを作ってみました。 
青色部分は僕の予想です。例年のケースをもとに僕が勝手に想像しているものです。公式情報ではありません。
試験日程.001

地方上級は例年通りのスケジュールを入れてあります。
国家公務員のほうは、総合職も一般職も想像です。
どの省庁も、総合職採用を固めない限り、一般職採用のボーダーラインを決められないと思われます。
そのため何より一般職採用の開始前に、例年よりもハイペースで総合職採用を完了させるでしょう。
官庁訪問期間がもっと短くなって、内々定時期がもっと早まることも考えられます。


僕の予想では、国家総合職の官庁訪問・2次試験と地方上級(県庁・大きい市役所)の面接期間が思い切り重複します。
つまり、国家総合職・地方上級の両方とも筆記通過したとしても、面接日が被ってしまうせいで、どちらかを切り捨てざるを得ないケースが大いに発生しうるのです。
事実上、持ち駒が一つ減るのと同じです。

都庁や特別区だとお決まりの事例なのですが、今年は地方上級でも発生するのです。

どっちを取るか?で志望順位を推定する


官庁訪問にしても地方自治体の採用面接にしても、受験者側の都合で日程を変えてもらうことは基本的に不可能です。
特に官庁訪問は、指定日に素直に応じるかどうかも重要な選考要素です。ここで志望度を測ります。
実態はどうであれ、日程変更を申し出た瞬間に「うちの省庁以外が第一志望だな、そっちの官庁を訪問するんだな」と評価されるでしょう。

そのため、変更を打診すること自体、やめておいたほうが無難です。

地方自治体なら変更に応じてくれるかもしれません。
ただ、もともと面接日として用意されている日が少ないです。
1日で全員分こなしてしまうところもあるでしょう。
そのため、地方上級の面接日も、基本的には変えられないと思ったほうが無難です。

あらかじめ順位を決めておくしかない?

最も影響が大きいのは、国家総合職が第一志望の方でしょう。滑り止め候補が一つ減るのです。
中でも、国家公務員(総合職)なら何でもいいわけではなく、第一志望の省庁以外は興味無しという方にとっては、持ち駒の減少は痛いところと思われます。

後悔しないために、今のうちから しっかり優先順位を考えておいて、シミュレーションしておくことを強くおすすめします。
選考本番が近づくにつれて、どんどんプレッシャーが強まっていき、冷静な判断ができなくなります。

志望順の円.001

国家総合職志望者を図示してみました。
どんな方も①〜⑤のいずれかにあてはまるでしょう。

自分がどこにいるのか、今のうちに冷静に考えておくと良いと思います。
そして、第一希望の選択肢が断たれたときにどうするのかも、合わせて考えてみてください。
僕のリアル知人たちを見る限りでは、場の雰囲気に流されて志望順位の低い省庁に総合職入庁してしまうパターンが一番つらそうです。
 

公務員試験と一口で言っても、いろいろ種類があります。
そして、種類ごとに試験科目が異なります。
そのため、効果的な勉強のために、どの公務員試験が本命なのか志望順位を出願前から考えておいたほうが良いと思います。

志望順位を決める物差しは、ざっくり以下の2軸があります。
  • 公務員の種類(国家公務員or地方公務員orその他)
  • 勤務地 (東京or地方、転勤ありorなし)
今回は地方勤務のメジャーな公務員について、比較してみました。
県庁勤務の僕視点での感覚なので、隣の芝生は青い効果が出ているかもしれません。

国家一般職(地方採用)

メリット

  • キャリア官僚の近くで仕事でき、公務員として成長できる
  • 同一分野に携わり続けられ、専門性が身に付く
  • 調整業務が少なく、人のために働いている実感が持ちやすい
  • ワークライフバランスが比較的保たれている(本省異動を命じられない限り)
仕事を通して公務員として成長したいのであれば、国家一般職が最善手だと思います。

まず、身近にキャリア官僚という圧倒的に優秀な存在がいるのが大きい。
県庁や市役所であれば、上司含め周りは同レベルの存在ばかりで、お手本が少なすぎます。
一方、国であれば、よほど小さな出張所でない限り、身近にキャリア官僚がいます。

さらに、同一分野の仕事にずっと携わっていられ、知識や経験がリセットされません。
異動のたびにゼロからのやり直しを迫られる地方公務員とは、30代になる頃には大きな差が開きます。

デメリット

  • 地道な仕事・ルーチンワークが多い
  • ルールや指示に縛られ、裁量を発揮する場が少ない
  • 出世できない

国家一般職(地方採用)の職員は、国という巨大な機関の末端実行部隊です。
中央が決めたルールを的確にこなすことが至上命題で、個人の技能や裁量は滅多に求められません。

目の前の仕事を一つ一つ片付けていくことに達成感を覚えるタイプの人間であれば、国家一般職(地方採用)はうってつけの職場だと思います。
一方、スケールの大きな仕事に携わりたいとか、自分の判断で仕事を動かしていきたいという野望があるのなら、完全に不向きです。何もできません。

県庁

メリット

  • 幅広い分野・業務に携われる
  • 大きな仕事にも関われる
  • 学識を活かす機会がある
  • 職員層が幅広く多様性がある
県庁の業務はとにかくいろいろあります。
分野も幅広いですし、業種も多岐にわたります。

県庁職員は、異動のたびに、分野も業種も切り替わります。
僕の場合だと、これまでの7年間で3分野(防災、総務、観光)4業種(法務、窓口、イベント現業、経理)を経験しています。
これら多岐にわたる業務を満遍なく経験できる職場が、県庁のほかにあるでしょうか?

中にはスケールの大きな仕事もあります。
国の本省や大企業、大学など、地方公務員よりも格上の相手と一緒に仕事する機会があるのも刺激的です。

職員の層が幅広いのも、僕はメリットだと考えています。
色んな人が机を並べることで、組織としてもバランスの良い判断ができ、個人の成長にも繋がるでしょう。

デメリット

  • 漫然と働いているだけだと何も身に付かない
  • 一つの分野・業種を極めることができない
  • 組織が大きく利害関係者が多いせいで、意思決定が遅く尖ったことができない
  • 運要素・巡り合わせによって満足度が大きく異なる
いろいろな仕事を満遍なく経験させるという特徴が、そのままデメリットになります。
一つの分野・業種に関わっている時間が短くて、中途半端なレベルまでしか到達できないのです。
あまりに脈絡なく経験させられるため、相乗効果も働きにくいです。

専門性を身に付けたい、成長したいと思うなら、余暇と私財を投じて自発的に勉強しなければいけません。

仕事の幅が広いせいで、職員間の満足度格差も大きいと思います。
やりたい仕事に携われている職員は、ごくごくわずかでしょう。

待遇面での不平等感も大きいです。
超目玉プロジェクトの一員として毎日上司から激詰めを受けている職員も、閑職すぎて新聞各紙を毎日読み通している職員も、年齢が一緒なら基本給はほぼ一緒です。
得する職員と損する職員との差がはっきり表れます。

市町村

メリット

  • 尖ったことができる
  • 職員の個人技能が活かせる
  • 住民との協働作業ができる(県庁職員は敬遠されます)
  • 県庁ほどには担当業務がばらつかず専門性が身につきやすい
県庁よりも組織が小さく利害関係者が少ないおかげで、施策の自由度が高いです。
観光施策のような自由度の高い仕事だと、特にその恩恵が受けられます。
首長のカラーにも左右されますが、目新しいことにガンガン取り組んでいきたいなら、県庁よりも市町村です。

職員の個人プレーが許されやすいのも、市町村職員の特徴です。
もちろん保守的な自治体だとNGでしょうが、そうではないところも多いです。
公務員という立場でセルフブランディングを志すのであれば、市町村職員一択でしょう。
本を書いている地方公務員のほとんどが市町村職員であることからも明らかです。

デメリット

  • 窓口業務が多い分、クレーム対応が大変
  • イベント対応や選挙事務など、休日出勤が多い
  • 災害対応が大変
  • 首長次第で何もかも変わる
改めて説明する必要は無いでしょう。


総評

この記事、投稿までに3回ほど全面的に書き直しています。

国家総合職や都庁でも合格できる優秀な人間を田舎県庁に引きずり込むのが本ブログの隠れテーマなので、冷静に比較しているように見せながら県庁はいいぞと訴求したいところなのですが……考えれば考えるほど積極的に県庁を選ぶ理由が見当たりません。

「ルーチンワークだけだとつまらない」とか、「窓口対応はできるだけ避けたい」とか、消去法で考えていけば県庁の魅力が見えてくるのですが、どうしても決め手に欠けます。

県庁の受験倍率が一人負け状態な理由が、少しわかった気がします。 

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