キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

タグ:田舎

役所批判のテンプレートの一つに、「近視眼的」というものがあります。
「中長期的視点の欠如」という言い方もされますが、とにかく中長期的なビジョンが無くて行き当たりばったりな施策ばかりやっているという批判です。

この批判は実際当たっていると思います。
大規模なインフラ整備を除けば、実施した年度のことしか考えていない施策が多く、5年後10年後を見据えた施策はかなり少ないです。

このように役所が近視眼的な理由は、世間的には「公務員が無能だから」で片付けられがちです。
ただ実際のところ、公務員個々人の能力というよりは、役所組織の問題だと思っています。

とにかく「4年間」に集中する首長

まず、役所組織のトップである首長が、最長でも4年先の未来までしか考えていないことが多いです。

首長という仕事は、(よほどご高齢でない限り)人生におけるゴールではなく、次のステップがあります。
次の任期も首長を続けたり、国会議員に転身したり、より大きい自治体の首長へとランクアップしたり、民間企業や大学で「地方自治の専門家」ポジションに就いたり……人によって様々でしょうが、首長としての任期である4年間は、いずれにしても「次のステップ」の準備段階ともいえます。

次のステップに進むためには、任期のうちに成果を出すことが欠かせません。
そのため、4年間という任期の間にどれだけ成果を出すかが最大の関心事になりがちのようです。

加えて、首長の中には、そもそも5年以上先のビジョンを描くことを越権行為と考える人も少なくありません。
あくまでも信託されているのは「現任期の4年間」だけであり、それ以上の時間的スケールの問題は、自分の役割ではないと捉えているのです。
県主導で市町村との連携事業を始めようとすると、よくこういう理由で断ってくるんですよね。


「1年先」しか見ない財政部局

役所組織を牛耳っているのは、たいてい秘書・財政・人事・企画部局です。
この中で最も近視眼的なのは、間違いなく財政課です。
彼ら彼女らは、基本的に一年スパンで物事を考えます。

財政課の主要業務は予算編成ですが、地方自治法において「会計年度独立の原則」が規定されている以上、財政課としてはこれを遵守し、単年度で完結する予算を編成しなければいけないからです。
 
財政課が近視眼的であること自体は問題ではなく、むしろ近視眼的でいることが役割なのだろうと思います。
一年スパンで見た費用対効果最大化が、彼ら彼女らのミッションです。

問題なのは、財政課が王道出世ルートであり、役所内幹部の多くが財政課出身者という点です。
つまり、一年スパンでの費用対効果最大化に特化した職員ばかりが偉くなり、発言力を持ち、意思決定を行なっているのです。

そのため、たとえボトムアップで中長期的な施策を提案していったとしても、たいてい部局長級の幹部を突破できずに撃沈していきます。

「単年度でしっかり成果を出さなければいけない」という意識自体は、間違いではありません。
議員やマスコミ、住民を納得させるためにも、施策の効果がすぐに現れること(即効性)が重要です。
1年周期では遅いくらいです。

一方で、「単年度では成果が出ないけど、中長期的には成果が見込まれる」という考え方も、同じく間違いではないと思います。
しかし財政課的な感覚では、このような説明は言い訳に過ぎません。
このような感覚が組織内の要人の大半に刷り込まれているために、組織全体が近視眼的……より端的にいえば単年度ベースで思考・判断しがちなのだと思います。



地域の5年後10年後を見据えた仕事って、果たして誰が担っているんでしょうね?
ハード面にしてもソフト面にしても、少なくとも行政はほぼノータッチです。
都市部であれば民間企業がしっかり考えて街づくりや再開発をしているのでしょうが、田舎では誰も何も考えていないんじゃないかと思われます。ひょっとしたら政令市・中核市レベルでも……

もちろん地域によっては、行政がしっかりと中長期的に物事を考えているところもあるでしょう。
このような中長期的ビジョンの有無が、今後さらに地域間格差を拡大させていくんだろうなと思います。

未婚者の増加が話題になるとき、地域別の傾向がよく取り上げられます。
その文脈の中で、独身者の性別が男女いずれかに偏っている地域のことを、「男余り」「女余り」と表現されています。

有名なのは、
  • 北関東は男余り
  • 福岡は圧倒的に女余り
あたりでしょうか。 

雑誌やインターネット上の記事を見ていると、男余り/女余りの根拠として「男女別の未婚者の人数」がよく使われています。シンプルでわかりやすいですね。

ただ、独身男性当事者としては、これだけでは物足りなく思っています。
「男女別の未婚者人数」は、あくまでも男余り/女余り現象を表しているだけです。
いわば結果であり、男余り/女余りの「原因」を説明しているわけではありません。

未婚者の増加を問題として捉えて解決策を模索したいのであれば、真に探求すべきは、男余り/女余りの原因ではないでしょうか?

男余り/女余りの原因は複数存在するでしょうし、地域ごとにさまざまな事情があると思います。

参考になりそうな数字を探していたところ、ヒントになりそうな統計を見つけたので、整理していきます。

年齢別の転入超過・転出超過から原因を探る

今回見ていくのは、男女別の人口流入/流出の状況です。
「住民基本台帳人口移動報告」を使用していきます。

この統計では、住民基本台帳上の転入・転出人数を、5歳ごとの年齢帯で集計しています。
今回、僕が興味のある10代後半~30代前半までのデータを抽出して、都道府県間の人口移動として表にまとめ、地域ごとの特徴を調べてみました。

僕が着目したのは、転入超過数(転入者-転出者)です。
この人数がプラスであれば転入超過(人口が増えている)、マイナスであれば転出超過(人口が減っている)です。

年齢帯ごとの呼称設定

この記事では、各年代に名前を付けてみました。
(毎回「15~19歳」などと年齢帯を記載すると、読みづらいため)

10代後半(15~19歳)は、「大学進学期」と命名しました。
この年代で県外に出るのは、大学進学が主な理由だと思われるからです。
高卒で県外に就職する方(工業高校卒→推薦で大企業の工場に就職するパターンなど)もそこそこ居そうですが、そもそも高卒就職者の割合は2割未満であり、進学者よりもだいぶ少数なので、今回は捨象しました。

20代は「ファーストキャリア期」と命名しました。
この年代の移動は、就職に伴うものが多いと思われるからです。
25~29歳をファーストキャリアと呼ぶのは微妙な気がしますが、数字を見るに20~24歳と傾向が似ているので、合わせることにしました。

30歳~34歳は「セカンドキャリア期」と命名しました。
この世代は、転職や、所帯を持つことによる転居といった、人生の第二幕開始に伴う転居が多いと思われるからです。


都道府県別に集計してみた結果

転入超過ビジュアル

都道府県別に人数を集計した結果が、上の表になります。
人数がプラスの部分は転入超過(人口が増えている)、マイナス部分は転出超過(人口が減っている)です。

上の表をもとに、地域別の特徴を見ていきます。

北海道

基本的に転出超過が続いていますが、大学進学期とセカンドキャリア期は減少幅が小さいです。

大学進学期は、道外に出ていく人も多い一方で、道外から北海道大学に進学する人がそこそこいる、ということなのでしょう。
ただ、大卒者を受け入れるだけの就職先が無いのか、大学卒業後のファーストキャリアで北海道を離れる人が多いと思われます。

セカンドキャリア期では、男性が転入超過になっています。
UターンなのかIターンなのかはわかりませんが、道外から北海道へ移住してきてセカンドキャリアを始める人が一定数いるのだと思われます。

男女差を見ると、女性のほうが転出超過しています。
完全に推測ですが、男性は一次産業に就業していく一方、女性は一次産業を避ける傾向があったりするのでしょうか……?


東北(青森〜福島)

仙台市を擁する宮城県の一強です。
大学進学期は、東北大学を擁する宮城県のみプラス。
ファーストキャリア期も、宮城県だけマイナス幅が小さいです。
セカンドキャリア期も、明確にプラスなのは宮城県のみ。
どの年代においても圧倒的に強いです。

男女差では、宮城県を除き女性のほうが転出超過しています。
特に福島県の女性流出が激しいです。
 
未婚者数ベースでも「南東北~北関東は男余りが激しい」とよく言われますが、まさにこの結果と一致します。

関東(茨城〜神奈川)

南関東と北関東でくっきり分かれています。

南関東(埼玉・千葉・東京・神奈川)では、いずれの年代でも転入超過が続きます。
大学進学、ファーストキャリア、セカンドキャリアいずれの人生の転機においても、全国から人を集めているといえるでしょう。

ただ東京都のみ、セカンドキャリア期で減少が見られます。
一方、埼玉県・千葉県では同数ほど増加しているので、東京都内で賃貸暮らしをしていた人がマイホームを購入するにあたり、郊外に引っ越したということなのでしょう。

北関東は、セカンドキャリア期のみ増えています。
こちらも東京都内勤務の方が引っ越してきたのだと思われます。ベッドタウンという特徴が数字に表れているのでしょう。

一貫して転出超過なのは群馬県だけです。
東京のベッドタウンとしては遠いということなのでしょう。

男女差でも、北関東と南関東でくっきり分かれます。
北関東は女性のほうが転出超過、南関東は女性のほうが転入超過です。
ここでも未婚者数ベースの結果と一致しています。

北陸・甲信越(新潟〜長野)

県ごとに特徴が異なる地域です。

新潟県・富山県・福井県は、一貫して転出超過が続きます。
富山県だけファーストキャリア期の転出が少なめなのは、製薬会社やYKKなど就職先が多いからでしょうか?

石川県は、大学進学期だけ転入超過という宮城県や京都府と似た特徴があります。
近隣県から金沢大学へと進学しているほか、特に男性のほうが著しく転入超過になっているところを見ると、金沢工業大学にも県外から人が集まっているのでしょう。
ただ、せっかく集まった学生たちを引き留められるほど就職先には恵まれていないのか、ファーストキャリア期で大勢転出していきます。

山梨県は、大学進学期とセカンドキャリア期で転入超過になっています。
東京にも近く移住先として人気なので、セカンドキャリア期の転入超過はわかるのですが、15~19歳がなぜ転入超過なのか全然わかりません……ファナック関連企業に県外から高卒で就職してくるのでしょうか……?

長野県は、セカンドキャリア期で転入超過です。
長野県はよく「移住先進県」と言われますが、セカンドキャリア期の転入超過は、まさに移住人気を証明しているといえるでしょう。

男女差を見ると、石川県を除き女性のほうが転出超過傾向にあります。
ただし、ネットニュースによると、石川県も「激しく女性が転出している」と評されています。僕の集計方法がおかしいのか……?




 

東海(岐阜〜三重)

愛知県が圧倒的に強いです。
ただし東京都とは異なり、ファーストキャリア期の後半以降から転出超過に転じています。
 
地域全体を見ても転出超過なので、東京都のように近隣県にマイホームを持つために転出するのではなく、中京圏から去っているのだろうと思われます。
とはいえ、他地域と比べれば些細な転出超過です。

男女差では、ファーストキャリア期①で、女性のほうが圧倒的に転出超過になっているのが興味深いです。
製造業が強い地域ですが、女性にとっては魅力的な勤務先が少ないということなのでしょうか?


関西(滋賀〜和歌山)

関西といえば大阪・京都・兵庫の三強……というイメージですが、それぞれ特徴が異なります。

大阪府は非常に強く、セカンドキャリア期を除き転入超過です。
東京都と似ていますが、セカンドキャリア期の転出が東京都と比べてさほど大きくありません。不動産価格の違いなのでしょうか?
滋賀県・奈良県が大阪のベッドタウンという位置付けのようで、セカンドキャリア期で転入超過になっています。

京都府は大学進学期のみ転入超過で、以降は転出超過が続きます。
「京都は学生比率が高いから、人口のわりに税収が少ない」とよく言われますが、この数字を見ていてもそんな気がしてきます。

兵庫県は、ファーストキャリア期での転出超過が非常に大きいです。
神戸大学に集まってきた学生を引き留められていないのでしょう。

一貫して転出超過なのは和歌山県だけです。
関東における群馬県のように、ベッドタウンとしては遠いということなのでしょう。

男女差では、女性のほうが増えています。
特に大阪府は、ファーストキャリア期①で男性の約2.5倍も転入超過になっています。
大学進学期で、兵庫県・奈良県が女性のみ転入超過なのも面白いです。女子大の影響なのでしょうか?


中国・四国(鳥取〜高知)

転入超過なのは、鳥取県のセカンドキャリア期のみ。
基本的に転出超過です。厳しいですね……
 
他地域と比べて男女差が小さく、まんべんなく転出していっているのだと思われます。


九州(福岡〜鹿児島)

福岡県の一強です。
「九州の若者は福岡県に集まる」というイメージと見事に合致しています。

福岡県といえば「女余り地域」の代表格ですが、実際に女性の転入超過数のほうが多く、女余りっぷりが見事に表れています。

九州地方に特徴的なのは、セカンドキャリア期で幅広く転入超過になっている点です。
人数的にはさほど多くないものの、広範囲で転入超過が見られるのは、南関東と九州だけです。
UターンなのかIターンなのかはわかりませんが、移住先として人気があるということなのでしょう。


沖縄

ファーストキャリア期②から転入超過に転じるという、他地域とは異なる傾向が見られます。
男女差では、女性のほうが転出が少なく、転入が多い傾向にあります。
「セカンドキャリアを沖縄で始める」 という流れは、僕のイメージとも一致します。

やはり定性的調査・分析が必要なのか

ここまで見てきた「住民基本台帳上の転入超過数」は、未婚者数ベースの男余り/女余りと、それなりに関係があると思われます。
未婚者数ベースで「男余り」と言われる南東北や北関東は、やはり女性のほうが大きく転出超過になっていましたし、反対に「女余り」と言われる西日本や福岡県は、女性のほうが転入超過傾向にありました。

つまるところ、大学進学や就職のタイミングでの人口移動の男女差が、後々の未婚者数にも影響してくる……と考えて間違いなさそうです。
目新しい知見ではありませんが、印象論ではなく、定量的な裏付けもあると判断できるでしょう。

とはいえ、転入・転出の定性的な理由はわからないままです。
今回は僕のイメージで「大学進学」「就職」「転職」あたりを理由として想定してみましたが、実際の理由はもっといろいろあるでしょう。

移住定住施策や、少子化対策施策の一環で、若年層の転入・転出の理由を詳細に調べてみると、有用な知見が得られるかもしれません。

この統計調査では、転入元・転入先の都道府県ごとのデータ(例:北海道から東京に出ていく15歳~19歳男性の人数)まで細かく公表されているので、お住まいの自治体のデータの時系列推移を見るのも面白いでしょう。
地方公務員稼業の基礎データとして、幅広く使えそうです。 

地方公務員の給与水準に対する官民の印象には、埋め難い隔たりが存在します。
当の地方公務員は「安い」と嘆き、公務員以外は「高すぎる」と憤る…という構造です。

新型コロナウイルス感染症が流行し始めてからは、再び「高すぎる」という批判が強まってきました。
特に、人事院勧告の調査対象が「従業員50人以上」の企業だけという点を捉えて、
  • 公務員給与は大企業水準で設定されており、国民の大半を占める中小企業従業員の水準が反映されていない
  • ゆえに日本国民全体で見たら給与水準は間違いなくガタ落ちしているはずなのに、公務員給与の減少幅が不当に小さい、人事院勧告のあり方がおかしいせいで公務員は不当に得をしている
という批判を展開する方が多いように思います。

地方公務員の給与水準が民間と比べて高いのか低いのか、このブログでも何度か取り上げています。
なるべく統計数字を使って分析をしてみたところ、
  • 男性の場合、給料月額(基本給)は同年代の民間平均よりも安く、大卒地方公務員≒同年代の高卒民間従業員くらい。ボーナス込みの年収だとだいぶマシになるが、それでも民間平均よりも低い。
  • 女性の場合、同年代の民間企業従業員よりも恵まれている
  • 官民の差は、地域によって状況が違いそう

というところまでは見えてきました。




今回はさらに一歩踏み込んで、地域別・企業規模別で分析してみます。

算出方法

今回も「賃金構造基本統計調査」を使っていきます。

この統計調査から、都道府県別・年代別の民間企業従業員の平均年収を算出し、同年代の地方公務員年収と比較していきます。

この統計調査であれば、従業員規模10人以上という中小企業も含めた給与額が使えます。
公務員給与の高さに怒っている方々は、「地方公務員給与が高いのは、人事院勧告の調査対象が50人以上の大きくて裕福な企業だけだから」という叩き方をしてきます。
民間企業の中でも「上澄み」だけを比較対象にしていて、大多数のサラリーマンからはひどく乖離しているという主張です。

総務省の資料(リンク先エクセルファイルの「7−4」)によると、従業員10人規模以上の企業だけで、全雇用者の7割強を補足できるようです。
これなら「上澄み」のみならず民間企業従業者全体と比較できるはずです。


民間企業従業員の年収は、「きまって支給する現金給与額」×12+「年間賞与その他特別給与額」で算出しました。

地方公務員の年収は、賃金構造基本統計調査の対象と合わせ、給料(基本給)、時間外勤務手当、期末勤勉手当、地域手当を合算しています。

給料は、大卒ストレート(22歳)で入庁した職員が一般的ペースで昇給したと仮定し、民間統計の年齢帯の中間である27歳(5年目)で1級40号、32歳(10年目)で3級8号と設定しました。

10年目にもなると自治体間の差も広がりますし、同じ自治体の同期入庁職員どうしでも差が開いてくるので、まだ2級という方も少なくないでしょう。
ただ、あまり低く設定すると地方公務員側に有利な分析になってしまうので、あえて高めに設定しました。

残業時間は、総務省の「地方公務員の時間外勤務に関する実態調査結果」中の都道府県職員の平均残業時間である12.5時間≒13時間、毎月残業すると想定し、13×12=156時間分の時間外勤務手当を盛り込んでいます。
時間外勤務手当単価は、所定内給与時給換算額×1.25で算出しました。

地域手当は、各都道府県の都道府県庁所在地の率を反映させています。
 
ボーナス(期末勤勉手当)は4.4か月分を計上しました。

男性……30歳以降はそこそこ

まずは男性から見ていきます。

01_male_all


25〜29歳区分では、ほとんどの都道府県において、地方公務員より民間企業のほうが高水準です。
きちんと「従業員規模10人以上」まで集計対象を広げた結果がこれです。
「中小企業も含めた国民全体水準から見ると、地方公務員は不当に高給」という定番の批判は、少なくとも20代後半の男性職員に関しては、当てはまらないと言えるでしょう。

一方、30〜34歳区分では、半分強の地域で、地方公務員のほうが高水準になります。
地方公務員のほうが昇給ペースが早いので、徐々に差が縮まり、ついには逆転するのでしょう。
僕の体感的に「20代のうちは中小企業含めて民間より安いけど、30歳を過ぎると民間に引けをとらなくなる」という感覚だったのですが、どうやら間違っていなかったようです。安定昇給に平伏感謝。

地域別に見ると、やはり田舎ほど地方公務員のほうが優位に見えます。
意外なのが千葉県と埼玉県です。
千葉県民とか埼玉県民という括りだと決して公務員は高給取りではなさそうなのですが、「千葉・埼玉県内で働く人」という括りだと、相対的に公務員が優位に立てるようです。
地域手当がガッツリ支給されるのも大きそうです。

【閲覧注意】1,000人規模以上だと惨敗

02_male_over1000

企業規模1,000人以上の大企業だけとの比較版も作ってみました。
こちらだと、沖縄県を除き地方公務員の惨敗です。 

しかも企業規模10人以上の場合とは異なり、25〜29歳区分から30〜34歳区分にかけて、官民乖離が縮まりません。
元々の給与水準も、昇給ペースでも、地方公務員は大企業に遠く及ばないのです。

女性……超強い地方公務員

続いて女性のデータを見ていきます。

03_female_all


地方公務員の圧勝です。

民間のデータは産休・育休を挟んだせいで昇給が遅れた方の影響が反映されているはずなので、やや低めに出る(地方公務員のほうが高くなる)かもしれませんが、それでも地方公務員優位という結論は揺るがないでしょう。

1,000人以上でも引き続き優位

04_female_over1000

従業員1,000人以上の企業とだけ比較しても、地方公務員の優位性は揺らぎません。
25〜29歳区分では負けている地域も半分弱ありますが、30〜34歳区分では完勝です。

やはり男性20代地方公務員の給与水準は低い

分析結果をまとめると、以下のようになります。
  • 男性の場合、25〜29歳区分では、中小企業を含めて比較しても、民間よりも地方公務員のほうが給与水準が低い。ただし30〜34歳区分では地方公務員のほうが高い地域が増える。
  • 男性の場合、従業員1,000人以上規模の大企業の給与水準には、年齢区分問わず遠く及ばない。
  • 女性の場合、中小企業を含めると、地方公務員のほうが高水準。従業員1,000人以上規模の大企業に限って比較しても、半分以上の地域で地方公務員のほうが高水準。

データ集計のため、ひたすらエクセルコピペ作業を約3時間ほど繰り返しました。
苦労した分、未知の新事実との邂逅を期待していたのですが……得られた結論はそんなに目新しくありません。
多くの地方公務員が抱いている「感覚」の正しさが定量的に証明された、とも言えるでしょう。

数字で見ると、女性の公務員志望者が増えているという報道が一気に現実味を帯びてきます。
給与水準が高く、産休・育休も充実、休暇後も復帰可……となると、少なくとも「金稼ぎの手段」としては、役所はかなり魅力的な職場に映るのでは?

一方で、バリバリ働ける男性にとっては、かなり損な職場とも言えそうです。
僕みたいに民間就活に失敗して公務員になったパターンならまだしも、民間就活やっていない若手職員にとっては、 同世代の民間サラリーマンはまさに「青い芝」に見えることでしょう。

首長選挙にしても議員選挙にしても、やるたびに投票率が下がってきている気がします。

以前の記事でも触れましたが、投票率が低下すればするほど、当選に必要な得票数(絶対数)が減少します。
必要な得票数が少なければ、特定の属性(居住地域、職業、年齢など)からの票さえしっかり抑えておけば、当選できてしまいます。
たとえ世間一般からの評判が芳しくなくても、コアな支持母体がいれば、そこからの票だけで勝てるのです。



こういう人が当選した場合、もちろん支持母体にメリットのある施策にばかり注力します。
投票率が急上昇しない限り、支持母体からの人気さえ保っておけば、次も安定して勝てるからです。

これは好ましい状況ではありません。住民の分断が深刻化してしまいます。
自治体職員という立場でいうと、理不尽なクレームの原因になります。
支持母体からはやたら高圧的に注文をつけられますし、支持母体以外からは「利権だ」「不公平だ」という苦情が相次ぎます。

こういう状況を避ける(というより現状がこんな感じなので、ここから改善していく)ためには、まずは投票率を上げて、「支持母体さえケアしていれば次の選挙も余裕で勝てるし」という舐めプ政治姿勢を改めてもらうのが、地味ですが手っ取り早いと思います。

自治体としても「投票率の低迷」を問題視しており、平時から色々な策を使って投票啓発を行なっています。
選挙期にはポスターを作ったりテレビ・ラジオCMを流したりして、投票を呼びかけます。

ただ冷静に考えてみると、こういう投票啓発、特に直前期の広報活動は、単に「投票率を高める」のみならず選挙結果そのものにも大いに影響を与えそうな気がしています。


文面以外にも副次的なメッセージがたくさん潜んでいる

「投票に行こう」というポスターが見た人が受け取るメッセージは、「投票に行こう」という表面的なものだけではありません。
認識できるもの/無意識下で機能するもの、ともに他にもたくさんの要素があります。

代表的なものは、「ハロー効果」「プライミング効果」のような心理学的影響でしょう。

こういった要素のせいで、投票啓発広報は、単に「投票に行く」という行動を誘発するのみならず、投票先の選択をも左右するかもしれないのです。

特に、ポスターやCMに芸能人を起用する場合は、かなり複雑に心理学的効果が機能すると思います。
芸能人本人のパーソナリティに加え、過去に演じた配役も少なからず影響してきそうだからです。

例えば、代表作が「半沢直樹」の俳優が「選挙に行こう」とガッツポーズを組んでいるポスターを見たら、現職よりも新人に投票したくなりませんか?
今回の選挙とドラマの内容とが自然とリンクして、「現体制は駄目」「確変を起こさねば」という気がしてきませんか?

しかも、投票啓発広報を見て投票に行くような層はもともと政治への関心が低く、確固たる政治思想を持っているわけでもなく、候補者のことをわざわざ調べもしないでしょう。
そのため、心理学的効果の影響を強く受けた状態で投票してしまいがちだと思われます。

国や自治体の選挙担当者も、余計なメッセージが混ざりこまないよう、広報内容には細心の注意を払っていると思います。
ただそれでも、無意識下で働く心理学的影響まで完全に除去するのは困難でしょう。
多かれ少なかれ、投票啓発広報の中身は、選挙結果に影響を及ぼしていると思います。

 

どういう層の投票行動を促すのか次第で結果が変わる

万人に刺さる広報は存在しません。
投票啓発広報も同様です。
使用媒体やメッセージ文言、紙面デザイン等の要素次第で、刺さる層が変わってきます。

言い方を変えると、投票啓発広告によって行動を変える人(もともと投票に行くつもりが無かったが、広告に触れて考えを改め投票することにした人)の属性は、けっこう偏ると思われます。

そして、どのような層の行動変容を起こすか、いわば「得票の発掘」を行うか次第で、選挙結果にも影響が及んでくると思っています。

例えばメインビジュアルにキッズモデルを起用したポスターだと、パパママには刺さりますが、僕みたいな独身者にはさほど効果は無いでしょう。
そのため、パパママの投票率は向上しても、独身者の投票率は変わりません。
独身者よりもパパママの得票率のほうが高くなれば、結果的に、子育て世帯にメリットのある施策(保育や教育の充実など)を訴える候補者が当選しやすくなるでしょう。


揉めないよう注意するくらいしか対策できないか?

つまるところ、投票啓発広告は
  • 広報そのものの見えざる影響
  • どういう層の投票を誘発するのか
という二つの面で、選挙結果を左右すると思われます。

「結果を左右」とまでは言えなくとも、選挙の争点を設定するくらいの影響は確実にあると思います。

自治体の投票啓発広告はあくまでも「投票率の改善」を目的としており、選挙結果に影響を及ぼしてしまうのは好ましくありません。
とはいえ一切影響を出さないことも不可能で、せいぜい後々問題にならないよう、公平中立な立場を保つよう注意するのが精一杯でしょう。

世の中には「選挙コンサルタント」なる職業があるらしいです。
今回僕が考えたようなことも含め、投票行動にまつわる様々な心理的要素を駆使して、クライアントを勝利に導くのでしょうか……?

以前からずっと問題視されている「若年層の低投票率」。
若年層が投票に行かないせいで、高齢者向けの施策ばかり充実して、若年層が不当に虐げられている……というふうに、低投票率を世代間闘争の原因とみなす論調すらあります。

仮定の話として、もし若年層の投票率が向上して、若年層の政治力が高まったとしたら、果たしてどうなるのでしょうか?
僕個人的には、若年層全体が幸せになるとは到底思えません。
 
若年層の間でも「勝者」「敗者」がはっきり分かれて、かえって負担が重くなる人も少なくないと思います。

※本記事でいう「若年層」は、だいたい40歳未満をイメージしています。

「若年層内の闘争」という第二ラウンド

全員が得をする施策は存在しません。
年齢、性別、居住地、健康状態、就労の有無、就労形態、職種、収入の多寡、配偶者の有無、子の有無、両親の有無……などなど、個人を構成するあらゆる属性次第で、利害関係が変わってくるからです。
「好み」という主観的要素も大きいです。

とはいえ高齢者であれば、少なくとも「体力が衰えてくる」という万人共通の特徴があります。
そのため、医療負担の軽減やバリアフリーのような施策であれば、高齢者の大部分が得をします。

一方、「若年層」の属性は様々です。
少なくとも高齢者よりもずっと多様だと思います。
したがって、「若年層全員が得をする施策」というものは非常に作りづらいと言えるでしょう。

つまり、若年層の政治力が高まり、若年層向けの施策に充てられるリソースが増えたとしても、若年層全員が得をするとは限らないのです。

施策に費やせるリソースには限りがあります。
政治参加者は、自分(または自分の支持母体)が得をするような施策を実現させようと奔走します。
いわばリソースの奪い合いです。

現状は若年層vs高齢者という世代間でのリソースの奪い合いですが、もし若年層の政治参加が進めば、今度は若年層間での闘争が激化すると思います。
 
同じ若年層とはいえ利害関係が細かく分かれているために、自らの手にリソースを収め、自ら行使しなければ、恩恵にあずかれないからです。
他の人の勝利のおかげで自分も得をする……という「棚からぼたもち」的な展開を期待できないのです。


闘争が起きれば、勝者と敗者が生じます。
若年層の政治力向上の恩恵にあずかれるのは、結局のところ若年層の中でも「勝者」側だけなのです。


「負担の押し付け合い」という第三ラウンド

若年層は、行政サービスの受益者であると同時に、供給者(負担者)でもあります。
納税によってリソースを涵養しているのです。
他の世代と比べても、負担者としての役割が色濃いと思います。

たとえ若年層の政治力が強まったとしても、税の負担割合を抜本的に変えるのは困難です。
金融資産(預貯金含む)に対する資産課税を導入でもしない限り、若年層の負担で高齢者向け福祉サービスを提供、という構図は変わらないでしょう。
せいぜい高齢者特有の負担軽減措置をなくす程度が限界でしょうか?
 
どれだけ頑張っても、若年層は負担者という立場から逃れられません。

つまるところ、若年層内の政治的闘争は、「リソースの奪い合い」であると同時に「リソース負担の押し付け合い」でもあるのです。
もちろん勝者の負担は軽減され、その分の負担が敗者にしわ寄せされます。


勝者はわからないが敗者は決まってる

若年層が政治力を持ったところでリソースそのものが増えるわけではありません。
リソースを配分する過程に、「政治闘争に勝利した」若年層の意見が反映されるようになるだけです。
「政治闘争に敗北した」若年層の意見は採用されませんし、むしろ負担が増えるでしょう。

いずれにせよ、若年層の政治力が向上した結果、一部の若年層はかえって損をする……という皮肉な結果が待ち受けているように思えてなりません。

若年層内の政治的闘争が現実に勃発したら果たして誰が勝利するのか?実際に起こってみないとわかりません。

ただ、独身者が勝利する展開はまずないと思います。
少なくとも子持ち世帯には絶対勝てないでしょう。
もしかしたら、インターネット上でもたまに話題になる「独身税」が現実になるかもしれません。
俗にいうDINKSとかFIREも危うい気がします。


このページのトップヘ