キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

地方公務員の人生満足度アップを目指しています。地方公務員志望者向けの記事は、カテゴリ「公務員になるまで」にまとめています。

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選挙のたびに「若者が選挙に行かないから政治が変わらない」という説が報道されますが、僕は若者どうこうよりも投票率自体が低いことのほうが原因だと思っています。

投票率が低いと、当選に必要な得票数が減ります。
有権者が100万人いる地域の場合、もし投票率が100%だと、当選には50万が必要です。
一方、投票率が50%の場合は、必要な得票数は25万です。
必要な得票数が半分になります。

必要な得票数が少なければ、特定のセクターの組織票だけで当選できる可能性が高まります。
つまり、住民にあまねくサービスを提供して人気集めをする必要がなくなります。
同時に、特定のセクターに利益提供するインセンティブが生じるのです。

2018年宮崎県知事選挙の場合

実際の選挙を見てみます。
2018年の宮崎県知事選挙では、過去最低となる33.90%となりました。
有権者912,647人に対して、31万人弱しか投票していません。

次回もこれくらいの投票率だと推測すると、912,647人×33.90%(推定投票率)×50%(当選に必要な得票率)=約16万票を集めれば当選できると試算されます。

平成29年就業構造基本調査(PDF)に、産業分類別の就業者数が載っています。

これによると、
  • 農業、林業 53,800人
  • 建設業 45,900人
  • 製造業 68,000人
この3業種だけで16万人を超えます。

つまり、この3業種の組織票さえあれば、当選できるのです。

このうち農業、林業、建設業は、どこの地域でも業界団体がしっかりしていて、選挙の時はいつも活躍(暗躍?)しています。
選挙の2年前くらいから、土地改良や道路整備のような昔ながらの大型公共事業を打ち出しておけば、確実な票田として機能するでしょう。

投票率を高めるだけで首長も議員もビビる

投票率が高くなればなるほど、首長は安穏とできなくなります。
投票率が高ければ高いほど、組織票だけでの当選は遠のきます。
つまり、次の選挙に勝つためには、在任中になるべくたくさんの住民に恩恵が行き渡る施策を打ち出し、人気を集めなければいけません。

議員も同じです。
投票率が高くなるほど、支持基盤を広げる必要に迫られます。
支持基盤を広げるということは、特定のセクターに便宜供与するだけではなく、一般住民への便宜も考えなければいけません。

1票増えるごとに現職へのプレッシャーが高まり、頭を使わせることになるのです。

遅ればせながら『FACTFULNESS』を読みました。



データをしっかり見ることの重要性を説いた本書。面白かったです。
僕もデータに基づいた推論をやってみたくなりました。
最近役所内でまことしやかに囁かれている噂を検証してみます。

地元国公立大学の県庁離れ?

僕の勤める県庁では、ここ数年、新規採用職員に占める地元国立大学卒の割合が漸減している説で盛り上がっています。
飲み会でも一番ホットな話題です。
これを公表資料の範囲で定量的に調べてみました。

※実際の数字を書いてしまうと勤務先がバレるので隠します。

今回使った資料は以下のとおり。
 
地元大学(近隣県含む)の進路実績
ホームページに掲載されている進路実績データと、各校で開講している公務員講座の募集要項に載っていた合格実績を使いました。

地元資格予備校(近隣県含む)の進路実績
各校で配っていた公務員講座の募集要項を使いました。

各種SNS
新規採用職員の名前をググってSNSアカウントを探しました。
フェイスブックとEightが特に使えました。

県庁離れの傾向顕著、市町村と国に二極化

地元国立大学の県庁離れは、ホームページを見たらすぐわかりました。
県庁への就職人数が年々減少しています。
 
ただ、公務員試験の合格者総数は減っていません。
ここ3年くらい全体採用数が減少傾向であるにもかかわらず、です。

つまり、地元国立大学では、「公務員離れ」ではなく「県庁離れ」が進んでいるようです。

一方、市町村職員と国家公務員の合格者数は増えていました。
特に国家の増加幅が大きく、総合職・一般職ともに増加。

僕の学生時代の感覚では、地元国立大学からの国家総合職はあり得ないと思っていたのですが、どうやら時代が変わったようです。

その他(国税、裁判所など)は横ばいでした。

地元私立大学の躍進

県庁合格者の減少分を補っているのは、一体どこなのか。

可能性として考えれらるのは以下3つ。
  1. 地元国立大学以外の地元大学
  2. Uターン者
  3. 新卒者以外

①に関しては事例を見つけました。地元の私立大学です。
ホームページの進路実績を見ると、県庁が大幅増加しています。
 
偏差値的には地元国立よりも大幅に劣る(併願先にすらならない)にもかかわらず、大学側がしっかりサポートすることで合格実績を伸ばしているようです。

大学主催の公務員講座募集要項によると、現役職員(もちろん同大学OBOG)との交流会なんかも開催していました。
合理的に複数人にOB訪問できる良い取組だと思います。

②③はよくわかりません。
地元資格予備校の資料だと、合格者数に大きな変化はありません。
Uターン者が激増しているのであれば、合格者数が落ち込むはずなので、②はあまり関係ないと思われます。


地元の雄である国立大学からの就業者数減少。
僕の勤める勤務先だけなのか、地方県庁全般に当てはまる傾向なのか。
気になるところです。

今年4月、総務省からふるさと納税制度の基準が示されました。
返礼品については、寄付額の3割以下かつ地場産品と指定されました。
 
返礼品が地場産品縛りになったことで、今後ゴネ型クレームが増えるのではないかと危惧しています。

都心部からのあるあるクレーム

ふるさと納税返礼品へのクレームは現時点でもたくさん寄せられています。
特に東京周辺の都心部からのクレームが多いです。(そもそも人口が多いので当たり前ですが……)
 
僕が対応した限りだと、もっとたくさんの返礼品を引き出そうと戦略的にクレームをつけている玄人の方が多く、本当に困っている人はむしろ少数派だと感じました。

よくあるパターンは以下のとおり。
  1. 「届いた返礼品が写真と違う」等、返礼品に対する苦情電話からスタート
  2. 通常の売買なら即返金の落ち度だが、制度上返金が難しいから正確なものがもらえれば我慢してやる(ここでなぜか恩を着せてくる)
  3. 自宅まで来て謝罪と交換するのが筋だろう、私は忙しいけど○月○日なら対応できると一方的に提案(普通の小売店なら当たり前の対応なのだが?と凄んでくる)
  4. 「他の自治体はこれくらいやってくれた」と事例提供
  5. 「私は貴自治体のためを思ってふるさと納税してあげたんだから、善意を裏切らないでほしい」とのプッシュ
  6. 「対応次第ではポータルサイトで低評価をつけざるを得ない」とのプッシュ
  7. 「忙しいから早く結論出してくれ」と度々急かす

ポイントは②③。
みんな大好き「返報性のルール」を使った具体的テクニックである「譲歩的要請法(ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック)」を使っています。

たとえば、あなたがある要求を私に受け入れさせたいとしましょう。この場合、次のようなやり方で、私が承諾する可能性を高めることができます。まず確実に拒否されるような大きな要求を私に出します。私がそれを拒否した後、それよりも小さな、あなたがもともと受け入れて欲しいと思っていた要求を出すのです。これらの要求を上手に組み合わせて提出できれば、私は二番目の要求を自分に対する譲歩だと考え、こちらも譲歩をしなければといけないという気になり、ーー二番目の要求を受け入れるでしょう。

ロバート・B・チャルディーニ
『影響力の武器 ーーなぜ、人は動かされるのか』P.68
2014年 誠信書房

「田舎自治体が謝罪のためだけに出張するなんて不可能だ」とわかりきった上で③の要求を繰り出し、③の要求を拒否させることで、②の要求(もう一回送る)を通そうとしているのでしょう。

④〜⑦は、自治体組織の意思決定プロセスを踏まえたアレンジです。
ポイントは⑦。電話窓口役のような下っ端職員に即答を迫ったところで、「確認して返答する」以上の回答しか返ってこないことは勿論承知しています。
それでも圧力をかけることで、自治体側に罪悪感を覚えさせ、要求を通しやすくするのです。

地方行政の仕組みまで把握している

僕が観光部局に勤務している間、何度かこういうクレーム電話を受けました。
ただし、全部、県内市町村の返礼品に対するクレームでした。

正式な担当課の連絡先は、返礼品に同封した令状の中にしっかり書いてあります。
それでもわざわざ県庁に、しかも観光部局に電話してくる時点で相当な玄人です。
 
なんだかんだで市町村は県に逆らいにくいという実情に加えて、観光部局の職員が県庁の中でも性善説タイプが多いことも知っているのだと思われます。
 
総務系の部署だと、クレーム電話に対しては最初から防御姿勢で対応します。
一方、観光や商業など善意の住民と触れ合う機会の多い部署だと、困った住民からの声を素直に聞き入れがちです。
こういう職員のキャラクター性もふまえての電話。プロの技です。

備えるしかない

これまでギフト券を返礼品としていた自治体は、こういうクレーム回避目的も少なからず考えていたのだろうと思います。
ギフト券に対してはクレームのつけようがないからです。

しかし地場産品縛りになると、ゴネる余地が大きく広がります。

クレームという形でわざわざ戦いを挑んでくるのは、勝てると確信しているからです。

ふるさと納税制度への慣れ具合は、自治体によってバラバラです。
ホームページやパンフレットを見て制度への習熟具合を見極め、ゴネ通せる相手だと確信した上で攻め込んできます。
押し負けないよう、あらかじめしっかりとクレーム対応プロセスを構築しておくべきでしょう。 

開催までついに残り1年を切ってしまった東京オリンピック・パラリンピック。
良い意味でも悪い意味でも話題が絶えません。

東京から遠く離れた田舎自治体でも、オリパラ関係の業務がどんどん飛んできています。
幸運にも?オリパラどちらとも縁遠い部署なので直接の被害は被っていませんが、それでも次々と作業指示が下りてきます。
いつから自治体(都庁含む)は電通の下請けになってしまったのでしょうか……

オリパラに対して、個人的には不安しかありません。
もちろん成功して欲しいとは思っていますが、成功したらしたで悪しき前例として末長く役所を苦しめると思っています。

何が何でもボランティアを使う習慣

オリパラへの批判ポイントの一つに、ボランティアの待遇があります。

さらに、マラソンなど早朝に行われる競技については、ボランティアの会場入りが始発の交通機関でも間に合わないため、終電での会場入りを想定。その場合は待機時間が見込まれるため、ボランティア同士の交流機会や、士気を高めるような取り組みを検討していくこととなりました。

第4回ボランティア検討委員会 開催 東京2020オリンピック・パラリンピックボランティア ボラサポ

最近話題になった上記の件に限らず、なかなかハードな条件でボランティアを働かせる計画で進んでいます。

批判されている分、大本営は今後がっつり反論してくるはずです。
実際にボランティアに参加した人にアンケートをとって、「有意義だった」「学びがあった」みたいなポジティブ回答を集めて、定量的に成功を裏付けるとか。
何としても「ボランティアによる運営は成功だった」と主張するはずです。

成功だと主張されると、自治体でも見習えという声が出てきます。
つまり、「自治体主催のイベントでも、もっとボランティアを使うべき」という意見が湧いてくるのです。

もちろん待遇はオリパラ並みがスタンダードになるでしょう。成功例踏襲です。学生動員や深夜待機は当たり前。

オリパラの場合、以前からボランティアが支えているという積み重ねがあります。
そのため、ボランティアで運営するにしても、まだ正当性があります。

一方、自治体主催のイベントにそんな歴史はありません。
ボランティアで労働力を賄うという発想は、単なる強引な人件費カットと同義です。

ボランティア募集のために自治体職員が方々を巡って頭を下げることになるのでしょう。
職員も部署関わらず動員されるでしょう。もちろんボランティア扱いなので手当は出ません。

一企業の営利事業を自治体にやらせるスキーム

最初に書いたとおり、オリパラ関係の仕事が続々と地方にも下りてきています。
正直、自治体がやる意味がよくわかりません。
事務局でやればよさそうな単純な作業やリスク回避のような仕事まで下りてきます。

一度こういうスキームがまかり通ってしまうと、これも悪しき前例になります。
「オリパラの時に一回やっていて成功したから」という剛腕説得が罷り通るようになるのです。

あくまで陰謀論にすぎませんが、僕達が組織委員会の業務を肩代わりすることで、相当の人件費がカットできているでしょう。
今後トラブルが発生したときも、「うち(組織委員会)ではなく自治体が悪い」と、責任をなすりつけてもくるのでしょう。

突き返してやりたい気持ちもあるのですが、やりとりしている都庁職員に疑心暗鬼・神経質・情緒不安定な方が多く、これ以上心労を増やしたくないという同情の方が勝ります。
あと1年、どうかご無事で乗り切れるよう、影ながら応援していく所存です。


自治体職員の動員?

個人的に不思議なのが、自治体職員の動員が無い点。
「国家的なイベントなんだから1人くらい中央に派遣しろ」とか言ってきてもおかしくないのに、今のところ聞いたことがありません。
僕が知らないだけで既に動員されているのか……

官民問わず、今週から本格的に仕事を再開している方が多いと思います。
今年も暑い夏でしたね。 
暑いおかげで引きこもりが正当化され、個人的には過ごしやすい夏でした。

名残を惜しみつつ、公務員の夏休み事情を振り返ります。

夏期だけ使える特別休暇がもらえる

公務員の場合、民間企業のような夏期休業期間は設けられていません。
夏の間だけ使える有給休暇が付与されて、職員が各自好きな時に取得するパターンが多いようです。
僕の勤務する自治体も同じスタイルで、特に月曜日や金曜日に取得して連休をつくる方が多いです。


利用期間や日数は自治体によって異なります。
たとえば徳島県だと、7月〜9月の間だけ使える5日間の特別休暇が付与されます。
 
僕の知る限りでは、徳島県のように
  • 利用期間 7月〜9月
  • 日数   5日間
という組合せが多いです。

旧盆以降は実質休めない

権利的には認められていても、実態は異なります。
特に本庁勤務の場合、8月下旬以降は、この特別休暇はほぼ使えません。

9月に入ると議会が始まります。
議会対応の準備はもっと早く、ちょうど旧盆が終わった頃からスタートします。

議会関係業務が始まると、休暇どころではなくなります。
いつ質問が湧いてくるかわからないので、とりあえず役所内に居なければいけません。
たとえ特別休暇が余っていたとしても、そもそも休暇が認められないため、使えないのです。

出先機関の場合は9月でも休めるようです。
議会業務に左右されないからなのでしょう。

反面、8月は休みにくいようです。
平日なかなか役所に来られない人が、お盆休みを使って窓口に押し寄せるのです。

全庁的に暇だけど、忙しい人も少なからずいる

特別休暇の事実上の利用期限である「7月〜8月旧盆」の期間、大体の部署は暇です。
議会業務のような役所全体を巻き込む仕事が無いので、役所お得意の「調整業務」が激減し、各部署固有の仕事しか残らないからです。

ただ、この時期こそ忙しい部署や担当業務も勿論あります。
こういった部署・担当業務の職員は、せっかくの特別休暇を捨てざるを得ません。

9月議会で目立っちゃう部署

全庁的な準備は8月下旬から始まるものの、条例案を提出したり、9月補正予算として追加で予算要求するなど、目立ったことをする場合には、7月中から内部調整が始まります。
 
この関係で、
  • 条例の文言担当(総務系部署の文書係、法規係ポジション)
  • 財政課の予算担当
  • 条例案や予算案を提出する各課の関係職員
には、休んでいる暇がありません。むしろ休日出勤するほどです。
 
冷房の効かない休日出勤は地獄そのものです。

参考:地方公務員の冷房事情とは?

つい先日まで「どうせ人事課と財政課は休日でも冷房入ってるんだろ?」と疑っていましたが、財政課に異動した同期職員から「つかないよ」「だからまだ涼しい夜に出勤して仕事してるよ」とやつれた顔で呟かれ、心底反省しています。

採用・インターン関係

県庁の場合、7月〜8月にかけて採用面接が続々行われます。
夏休み期間中に入ると、学生向けの職場見学会やインターンもあります。
これらの業務に追われるので、人事課は休めません。

夏だから忙しい部署

全庁的には暇とはいえ、夏特有の季節業務を抱える部署は忙しいです
たとえば渇水対策。万一の場合に備え、水道関係の部署は準備に奔走します。
防災部署も忙しいです。台風が発生するたびに説明資料を作り、庁内幹部に説明して回ります。
 
観光部局も結構忙しいです。最近流行りの「ナイト〇〇」の準備や現地対応で、昼間よりも定時後の方が忙しいかもしれません。
市町村だと地域のお祭り対応も大変そうです。

実際休めているのか?

僕の場合、防災部署にいたときは不運にも台風が続々上陸してきて忙殺されたせいで、2日くらいしか消化できませんでしたが、そのとき以外は安定して4日間は休めています。

観光部局にいたときも、僕は休めました。
ただ、観光施設のライトアップ担当だった同僚は全然休めていませんでした。こちらは運が良かった。

ただ、5日間完全消化は一度しかできていません。
旧盆までに5日取得する計画を立てても、直前に緊急業務が飛んできて休めなくなり、代わりの休日を見繕えないままに9月に突入してしまいます。

周囲を見ていても、5日間完全消化している職員は滅多にいません。3日休めたら及第点だと思います。
僕含め、若手職員は「使えたらラッキー」程度の認識でいます。

都会・田舎で差がありそう

今回紹介したのは、あくまでも田舎役所の事情です。
都会の役所だと相当事情が異なると推測します。

田舎の人間は、お盆に帰省する必要がありません。
帰省するとしても近場なので、長期の休みは不要です。

一方、都会人の場合、田舎の実家に帰省する都合で、長めに休みたい方も多いでしょう。
僕達のように「使えたらラッキー」程度のゆるい認識ではなく、もっとガツガツ取得しに行くのでは?と思っています。

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