キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

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個人的に今年一番のホットニュースである「ぐんまちゃんアニメ化」の続報が出ました。





役所はとにかく他自治体の事例を気にする組織です。
斬新な取組みであればあるほど。

広報や観光の担当者の中には、この事例について上司から「分析しろ」「資料を作れ」と指示されている方もいるかもしれません。

インターネットで調べれば
  • 地元出身の声優さんをメインキャストに据えている
  • 自治体が「製作・著作」としてクレジットされるアニメは珍しい
くらいの事実ならすぐわかると思いますが、僕みたいなオタクを除き、どれくらいすごいことなのかという感覚的な部分はピンとこないかもしれません。

資料を作ってヒアリングしても、「どんな効果が見込まれるのか?」「うちの自治体でも真似できるのか?」「成功するのか?」と詰められたら、回答に窮するでしょう。

7月11日時点で公表されている情報をもとに、「僕だったらこう説明するだろうな」というヒアリング用のカンペを作ってみました。

メインキャストがガチ

メインキャストの3名(高橋花林さん、内田彩さん、小倉唯さん)はめちゃくちゃ有名です。
断言できます。
高橋果林さんはキャリアが短いものの、当たり役(ぼののとかぐろっぴとか)を続々と射止めており、知名度は相当高いです。

声優業には「アニメ畑」「吹き替え畑」「ナレーター畑」のような活動領域がありますが、メインキャストの3名は皆さんアニメ畑です。
かつ、単に声をあてるのみならず、歌手活動も活発に行っており、マルチタレントと言っても良いでしょう。 

内田彩さん小倉唯さんはソロライブツアーなんかも複数回やっています。
さらに内田彩さんは、μ’sの一人として紅白歌合戦にも出場しています。

代表作やディスコグラフィのような指標で示すことも可能ですが、このブログの主要読者層は関心がない情報だと思うので省略します。
とにかく名実ともに「豪華キャスト」であることに間違いありません。

お三方とも声は可愛い系(しかも正統派美少女というよりはちょっと変な声路線、特徴が強い)なので、マスコットキャラクターを演じるのにもぴったりだと思います。
かつ絶妙にファン層が被っていないのも高ポイントです。

一朝一夕で成った企画ではない(推測)

群馬県庁と地元出身声優さんとの繋がりは、今回のアニメ化のずっと前から連綿と続いていたものと思われます。
少なくとも内田彩さんのTwitterアカウントには、かなり前から「ぐんま特使」であることが書かれています。

一昨年、東京・銀座にあるアンテナショップ「ぐんまちゃん家」を訪問したのですが、内田彩さんソロ名義のCDを取り扱っていて、とても驚きました。
アンテナショップという極めて競争率の高い売場でスペースを確保できるほど、一昨年の時点で深いつながりを構築していたのでしょう。

自治体がメディアタイアップするときにありがちな、広告代理店にお金を積んでゴリ押するパターンには到底見えません。成るべくして成ったという感じがします。

「物語性」への挑戦

今回のアニメ化の最大のインパクトは、「自治体のマスコットキャラクターに物語性を付与」したことだと思っています。

アニメ化されるということは、キャラクター達が織りなすストーリーが綴られるということであり、エピソードの積み重ねにより、キャラクター達の設定・奥行きが増していきます。
これが「物語性」です。

「物語性」は、もちろん制作側が主導権を握って作っていくものですが、受け手側によってもかなり左右されます。
制作側が狙ったとおりに受け手側が解釈してくれるとは限りません。
ファンの誤読がバズって炎上騒ぎに発展するケースもあります。

さらに「物語性」は、好き嫌いが分かれる要素でもあります。
大多数が高く評価していても、ごく一部からは強烈に嫌われていたり……逆もまた然りです。

つまるところ「物語性の付与」は、どれだけ頑張っても成功するとは限らないし、何より「全員が喜ぶ」ことはほぼあり得ないのです。


これまでの自治体キャラクターの運用は、粗探しや政治利用を回避すべく、とにかく設定を少なく物語性を排除していました。
極論、ロゴマークと大差ありません。

長期間運用することが前提である自治体マスコットキャラクターにとって、「物語性の付与」はかなりリスクの高い行為です。
これまで積み上げてきたキャラクターイメージが崩壊するかもしれませんし、悪意をもって物語性を解釈し難癖をつけてくる人も現れるでしょう。


自治体キャラクター運用の新境地なるか?

リアルでのパフォーマンスでは、結局くまモンに勝てません。
僕も何度か生で見たことがありますが、明らかに別格です。
動きのキレがいいというレベルを通り越して、観衆の心を揺さぶってきます。

しかも最近は新型コロナウイルス感染症のせいでリアルイベントが中止になり、キャラクターが活躍できる機会も減っています。

このまま従来通りの運用を続けていても、ジリ貧であることは間違いありません。
だからこそ群馬県はチャレンジしたのでしょう。

アニメという媒体を使うのであれば、ここまでは最善に近い展開だと思います。
あとは本編がどうなるか次第です。



新型コロナウイルス感染症が収束したら、自治体の観光PR合戦が始まると思っています。
自治体が自発的に施策を打ち出すだけでなく、旅行会社や広告代理店からも自治体にガンガン営業を仕掛けて合戦を煽っていくでしょう。
もしかしたら既に水面下で動いているところもあるかもしれません。

PRの手法は色々ある中、個人的には「アニメとのタイアップ」が増えるのではないかと思っています。
去年の「鬼滅の刃」の大ヒットを受けて、田舎の重鎮たちもさすがにアニメ作品の影響力を理解したことでしょう。
そういう方々が「アニメ作品=若年層に対する有効なアプローチ」だと思い込んで、「アニメ作品を媒介に地域の魅力を発信しよう!」という安直な判断を下しそうな気がしているのです。
少なくとも広告代理店はこういう宣伝文句を使って企画を売り込んできそう。


あくまでもいちオタクの感覚ですが、アニメ作品を絡めたご当地PRは、かなり難易度が高いと思っています。
特に役所のようなステークホルダーをたくさん抱えている存在が関与すると、どれだけ題材が良くて予算・時間が潤沢だとしても失敗しかねません。

以下、現実に存在する地域を舞台にしたアニメ作品を「ご当地アニメ」と呼びます。

アニメにおいてご当地要素は

まず前提として、映像作品としてのアニメの特徴をざっくり整理します。

アニメの特徴はすべての要素をコントロールできることです。
絵も音も動きも全て製作者の思いのまま、現実には不可能なシーンもアニメなら表現できます。

一方、現実に存在するものをそっくりそのまま再現するのは苦手です。
実写のほうがずっと簡単かつ高クオリティに仕上がります。

ほとんどの場合、ご当地要素は「現実に存在するもの」か「過去に存在したもの」です。
いずれにしても現実世界に存在したことのあるもので、単に正確に描写するだけであれば、アニメには向いていない題材です。

つまり、ありのままのご当地要素を発信したいのであれば、アニメよりも実写のほうがずっと適しています。
ご当地要素を「主」にした映像コンテンツを作りたいのであれば、実写ドラマのほうが作りやすくてディテールまで正確に表現できます。
わざわざアニメにするのであれば、ご当地要素はあくまでも「従」に位置づけ、「主」となる要素を引き立てるために使ったほうが効果的です。

以上はあくまでも僕の感覚です。
これに基づいて、「良いご当地アニメ」の条件を考えていきます。

多くの人が面白いと感じる

面白くないフィクション作品には誰も見向きもしません。
ご当地描写をどれだけ豊富に盛り込もうとも、視聴されなければ意味がありません。
ご当地描写は置いといて、作品として面白いことがまず必須の条件です。

PR効果を期待するのであれば、少数の熱狂的なファンから高評価を得るのではなく、多くの人に視聴してもらえる作品に仕上げなければいけません。

つまるところ、ごく限られた層にだけ刺さるニッチなアニメではなく、多くの人が面白いと感じる作品であることこそ、「良いご当地アニメ」の前提条件だといえます。

「大勢に受ける面白さ」はマジで難しい

創作行為の魅力かつ厄介なポイントは、誰にでもできるところです。

ドラマを見ながら「自分が監督ならこうするのに……」と思ったことが誰しも一度ならずあるのでは?
これも一種の創作です。
ゼロから物語を組み立てるのはハードルが高いかもしれませんが、「こうすれば面白いのでは?」という単発のアイデアを捻り出すくらいであれば簡単です。

ただし、「たくさんの人が面白いと感じるもの」を創作するのは、非常に難しいです。
才能と経験が必要であり、素人が口を挟む余地はどこにもありません。

このため、行政はアニメ制作には極力関与しないほうがいいと思っています。
ご当地要素に関しては行政は間違いなくプロですが、創作に関してはド素人集団であり、行政の意見をどれだけ取り入れようとも決して面白くはなり得ないし、むしろノイズになりかねません。
 

議員や地域住民も同様に、制作とは距離を置くべきだと思っています。
地域のことにどれだけ詳しくとも創作に関してはド素人であり、彼ら彼女らの意見を作品に反映させる必要はありません。

しかし、行政が下手に関わると、創作の現場に民主主義のルールが持ち込まれてしまい、こういったド素人の意見を作品に盛り込まなければいけない状況に追いやられかねません。

たとえばアニメ制作過程から補助金を出してしまえば、議会や住民から「行政には監督責任がある」とか「税金が投じられているのなら住民の思いを反映させるべきだ」という意見が噴出した場合、行政は逆らえません。

放送前から行政がガンガン宣伝しているような作品は、もしや制作過程にまで行政が絡んでいるのでは?という懸念を抱かせます。具体的な名称は挙げませんが……

ご当地要素を詰め込みすぎない

先述したとおり、すべての要素をコントロールできるのがアニメ作品の特徴です。
作中で描かれているものは、すべて作品において必要なものであり、何らかの意味が付与されています。

ご当地要素も同様です。作品にとって必要だから描かれるのです。
逆にいえば、特に意味もなくご当地要素をつっこむと、ものすごく浮きます。

たとえば島根県松江市が舞台のアニメがあるとします。
松江市は日本三大和菓子処に数えられる都市です。
せっかくなのでその特徴を活かすべく、主人公の自宅の居間のテーブルの上に毎回異なる銘菓を置くことになりました。

この場合、「テーブルの上に毎回異なる銘菓が置いてある」ことに意味を持たせなければいけません。
  • 銘菓を常に用意しておかなければいけないくらい来客が頻繁な家庭であることを暗示する
  • 主人公が後々虫歯になる展開の伏線
  • 主人公の母親が茶道教室を開いていて、稽古に使うお菓子が毎回余っている(内気なヒロインがその茶道教室に通っていて、「稽古のお菓子」という共通の話題がある主人公とだけは会話できる設定の背景として機能する)

なんでもいいです。とにかく意味付けが無ければ、視聴者は冷めてしまいます。
「制作サイドが大人の事情で入れたんだな」と感じて、いやがおうにもフィクションの世界から意識が逸れてしまいます。

反対に、うまく意味付けができれば、視聴者は「松江市といえば和菓子」という印象を好感をもって記憶するでしょう。
ご当地要素は、単に作中に盛り込むだけでなく、ストーリーの中でうまく調理・消化してこそ輝くのです。

どんな作品でも、根幹となるテーマと尺が決まっています。
そのため、ひとつの作品で消化できるご当地要素には限界があります。
テーマとかけ離れたご当地要素は扱えませんし、いくらテーマに沿うものであっても扱える数には限りがあります。

質的・量的な限界を無視してご当地要素を詰め込んでしまうと、作品が崩壊します。
ご当地要素を消化しきれず、かえってノイズになって視聴者を辟易させてしまいます。

ご当地要素のオーラを活かしている

どんなご当地要素も、固有の歴史と文脈、そしてオーラを備えています。
ありきたりのスポットや、大量生産のノーブランド製品とは異なります。
つまるところ、味が濃くて存在感があるのです。

新海誠監督の「言の葉の庭」という作品は、新宿御苑が舞台になっています。
この作品を見たことがある方ならよくわかると思いますが、本作は新宿御苑でないと成立しません。
明治神宮でも駄目、日比谷公園でも駄目、上野公園でも駄目です。

新宿御苑が持つ固有のオーラが作品の本筋を際立たせているのだと思います。

作品の本筋と、ご当地要素の持つオーラが合致しないと、ちぐはぐな感じになってしまいます。
この意味でも、ご当地要素の盛り込みすぎは危険です。作品の出来を損ないます。
作品を彩るために必要な分に限って使うものです。


「公務員の常識」は「創作の非常識」

地方公務員的な感覚だと、どんな事業であっても「地域住民の声を積極的に取り入れ」たり「地域の魅力を幅広くふんだんに盛り込ん」だりしたくなります。
議会や住民、マスコミなどに説明する際に、受けが良いからです。
 
しかし、ご当地アニメを媒介にする場合では、これらの要素は地雷です。

ご当地要素を何でもかんでも詰め込むと作品が破綻します。
ご当地アニメにおいて、ご当地要素はあくまでも「従」であり脇役です。
「主」を描くための補助的要素にすぎません。

しかし、「主」をうまく描いて面白い作品として成立すれば、「従」のほうも魅力的に映るものです。
このあたりの塩梅は創作のプロに任せるしかありません。

ご当地要素の扱い方がものすごく巧かった作品が「ゾンビランドサガ」です。
なんと来月から第二シリーズが始まります。
オタク的にも楽しみですし、地方公務員的にも楽しみです。


全国的にイベントごとが復活してきました。
(最近はまた怪しくなってきましたが……)
ただし、都市部と田舎を比べると、かなりの温度差を感じます。都市部のほうが復活のペースが早いです。

これから当面の間、田舎では、イベントごとに限らず、地域住民発の活動が下火になると思っています。
キーパーソンがいなくなるからです。
 
キーパーソンの内訳は様々です。リタイア後の地域住民、副業サラリーマン、ボランティア、地域おこし協力隊、イベント会社のプロデューサーなどなど……意欲的に地域を盛り上げようと励んでいる方を指します。

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【YouTube限定公開】コットンキャンディえいえいおー! Special MV(https://www.youtube.com/watch?v=Ksf_gq6fZZM )

こうした方々はこれまで、イベントの企画運営、地域住民コミュニティの運営、スモールビジネスなどを通して、地域を盛り上げてくれました。
しかし今後こうした方々は地域活動から離れていってしまうのでは、もしかしたら既に離れてしまったのでは?というのが、僕の懸念です。

キーパーソンはコロナ下でも活動している

かつて観光の仕事をしていた頃、地域のキーパーソンの方々ともよく関わりました。
今でも各種SNSで活動を追いかけています。

彼ら彼女らは、例えるならマグロです。
燃えたぎるパッションのために、活動を止められません。

新型コロナウイルス感染症のせいで外部環境が変わろうとも、彼ら彼女らのパッションは不変です。
人との接触や越境移動が制限されようとも、活動意欲は抑えられません。

そこで彼ら彼女らは、オンラインに活路を見出します。
オンライン上で同士を募り、できることを模索していくのです。

オンラインの悦びを知った上で地域に戻ってくるか?


思うに、田舎のリアル社会で活動するよりも、オンラインで活動するほうが、あらゆる面で有益です。

多くのターゲットにアプローチできる


田舎の地域社会でどれだけ精力的に活動しても、見込み客の数には上限があります。
いずれ頭打ちになって停滞せざるを得ません。
オンラインであれば可能性は無限大です。

全国の有能かつモチベーションの高い仲間と協働できる


田舎はそもそも人員の頭数が少ないですし、地域活動に意欲的な人間になるともっと少ないです。スキルもありません。
つまるところ、人的リソースが圧倒的に不足しています。
そのため、最終的なアウトプットの質も量も、自ずから限界があります。

一方オンライン上には、自分並みの有能な人間がごろごろいます。
そういった層と協力し合えば、地域住民とでは成しえなかったスケールのアウトプットが実現できます。

大きな仕事を達成する悦びを知ってしまった後に、ちんまりした事業を再開する気が果たして起こるでしょうか?
しかも仲間は、やる気も能力も今ひとつな田舎住民達。
オンライン上で出会った、意志を同じくする全国の優秀な仲間達とは雲泥の差があります。
 
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ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル ALL STARS メインストーリーより

たいていの人にとっての地域活動は「やったらやったで楽しいけど、やり始めるまでは腰が重い」ものだと思っています。
いったん日々のルーチンに組み込まれてしまえば有意義に感じられます。
ただし一旦ルーチンが途切れると、再開するのは大変です。面倒臭さが勝ります。

新型コロナウイルス感染症のせいで、ほとんどの地域で活動のルーチンが途切れたことと思います。
キーパーソンの仕事は、まずは他の住民を呼び戻すことです。
やる気の冷えてしまった住民を再び揺り動かして、巻き込まなければいけません。
すぐに活動そのものを再開できるわけではありません。いわば土壌作りからやり直しなのです。

人間関係面でのオンライン活動との落差は凄まじく、地域住民への幻滅すらありえると思います。
この難局を果たして乗り越えられるのか?僕は正直悲観しています。

しがらみが無い


リアル田舎社会だと、外部から横槍が入って企画が頓挫するという事態が多発します。
議員古老が許さないとか、地元メディアが自社の営利活動に組み込むべくああしろこうしろと口出ししてくるとか……
「教育のため」をお題目に無理難題・私利私慾をぶつけてくるPTA団体もかなり厄介と聞きます。
他住民から妬まれて不快な思いをすることもあるでしょう。

オンラインだと、こうしたしがらみから随分解放されて、自分の思い描くままに活動できます。

(妬み・嫉妬はむしろもっとひどいかもしれませんが)

自分のキャリアアップにつながる


田舎社会でどれだけ頑張って成果を出しても、最終的に到達できるのはせいぜい地方議員くらいです。
オンラインであれば全国区の専門家へと羽ばたけます。
どっちが好ましいかは人それぞれでしょうが、大抵は後者を選ぶのでは?


とにかく、一度オンラインでの活動を経験したら、あまりの心地よさのために、二度と地域活動に戻ってきてくれないのでは?と思えてならないのです。

決めるのは「住民の人柄」


合理的に考えれば考えるほど、オンライン上での活動を続けるほうが賢い選択です。
堅固な合理的理由を打ち破り、彼ら彼女らを地域に繋ぎ止められるとしたら、地域住民との絆しかないと思います。
  • やる気も能力もいまひとつだけど、一緒に活動しているとなぜか楽しい仲間
  • お金も名誉もくれないけど、素直に喜んでくれる地域住民


こういう存在が桎梏とならない限り、キーパーソンは地域を飛び出していってしまうと思います。

今更どうこうできる話ではありません。これまで(コロナ発生前まで)の蓄積の問題です。
キーパーソンが孤軍奮闘していたような地域はさらに衰退するでしょうし、地域全体で盛り上がっていたところは早々に復活するでしょう。


かつて観光の仕事をしていた人間がこんなこというと怒られてしまいそうですが、僕はイベントごとは「確固たる目的があるものを除き不要」だと思っています。
この機にゾンビイベント(特に意味なく延命されている、開催することだけが目的なイベント)が払拭されればいいなと思うくらい。
ゾンビイベントが減れば、会場や人員、予算面でのリソースが生まれて、新しい「目的のある」イベントが生まれてくるはずです。

自治体広報には「全員にもれなく理解させなければならない」という原則があります。
これを達成するためにはアナログな手法をベースにせざるを得ません。
デジタルな方法だと、ツールをうまく使えない人に対して、情報を伝達できないためです。

とはいえSNSアカウントの運用のような、今時のデジタルな広報も、間違いなく重要です。
手間もコストも、発信に至るまでの時間も大幅に削減できます。
使える手段も増えて、内容も充実させられます。

デジタルな広報業務を担う職員は、地方公務員の中でも圧倒的少数です。
多分、1000人に1人くらいでは?
担当者は一から独力で勉強し、誰にも相談できず、孤軍奮闘する羽目に陥りがちです。

僕も観光の仕事をしていたとき、公式SNSを運用していた時期がありました。
幸いにも僕の場合、2ちゃんねるに始まり、ふたば、爆サイ、mixi、facebook、twitter、instagram、マストドンなどなど、それなりにインターネットでのコミュニケーションに触れてきた経験があったおかげで、ネット上の作法には自信がありましたし、すぐに「それっぽい」運用ができました。
最近のギスギス具合を見ていると、「リナカフェなう、誰か氏〜」とか言ってた頃のTwitterが本当に懐かしくなります。

しかし、こういう予備知識がない人間がいきなりSNSを任されたら、かなり大変だと思います。
前述のとおり圧倒的少数派であり、庁内にも仲間がいないので、疑問があっても誰にも相談できないのです。
自分の力でなんとかするか、自治体をまたいだ横のつながりを作るしかありません。

そんな悩める広報担当職員にぜひお勧めしたいのが、先月発刊された『まちのファンをつくる 自治体ウェブ発信テキスト』です。


今年読んだ役所本の中でも暫定ナンバーワンです。
若手よりも、ある程度役所の常識が染み付いてきた職員のほうが、心に響くと思います。

ひたすら具体的でわかりやすい

よくあるビジネス書だと、抽象的な概念図や数式を用いて、広報のコツを紹介しています。
民間企業のサラリーマンであれば、普段から身近にマーケティングのことを考えているために、概念を説明されるだけで自らの経験とリンクできて腹落ちするのかもしれません。
 
しかし公務員の場合、そんな素地がありません。
抽象的な一般論を説明されても、字面を追うのに必死で、理解できるとは限りません。

本書はひたすら事例ベースで具体的です。抽象概念や専門用語が無く、すっと理解できます。
読んだらすぐに実践できる事柄も多数取り上げています。

これからの予算要求にぴったり

本書で取り上げているのは、全国の自治体が実施している先進事例・成功事例です。
まさにこれからの来年度予算要求にも大いに役立つと思います。
新規施策のヒントにしたり、予算折衝の材料に使ったり……全部で100事例も掲載されているので、きっと参考になるものが見つかるでしょう。
発刊のタイミングが絶妙です。


職員が疑問に思うポイントを的確に押さえている

僕がSNS運用に関わったのは半年弱でした。
2ちゃんねる(大学受験サロン)でコテハンやっていた頃と同じ感覚で、何より炎上しないように節度を保ちつつ、応援したくなるような誠実さ・好感度を演出するように投稿していたのですが、本当にこれでいいのか迷う場面も多数ありました。

本書を読んで僕が何より感激したのは、当時疑問に思っていたポイントの多くが、本書で触れられていたことです。
著者の方は本当に自治体のことをよく見ていると思います。
自治体職員が悩みそうなポイントを把握していて、答えを提示しているのです。


例えば、SNSアカウントに寄せられたリプライへの反応。
僕の場合、炎上回避のため、以下のルールで運用していました。
  • 基本的に反応しない(プロフィールにあらかじめ明記しておく)
  • 投稿内容のミスを指摘するリプライのみ、感謝の意を返信する(「黙って修正した」と後から叩かれないように)

当時この本があったら、このような対応には止まらなかったと思います。


攻めに転じる手がかりとして

インターネット上には意図的に炎上案件を発生させて楽しむ悪い人がたくさんいます。
そんな方にとって、自治体は格好のターゲットです。
幸い、自治体には炎上を回避するノウハウが豊富に蓄積されています。
公平性と網羅性の徹底なんかは、その最たるものでしょう。

まずは行政ならではの守備優先の運用方法を習得してから、本書にあるような「攻めの運用」を考えていけばいいのではないかと思います。

広報のレベルは、自治体ごとに相当格差があります。
あえて力を入れていない(広報より内実に注力する)という考え方の自治体もあるのでしょうが、そうであったとしても、全国的な成功事例・先進事例を知っておくことは重要だと思います。
手軽に全国の事例を総ざらいできるという意味でも、本書は大変有用です。

大型市役所や県庁志望の方は、今ごろ面接ネタを練っているところと思います。
中には「役所だけではどうしようもない課題を、住民や民間企業と協力しながら解決していきたい」という展開を考えている方もいるかもしれません。
 
とても耳触りの良いストーリーではありますが、実務をやっている身からすると現実味がありません。
面接官としても心を動かされないと思います。

協力してもらえれば解決できそうな課題は実際たくさんありますが、「いや役所の責任でしょ」と一蹴されるのが常であり、そもそも協力しあえる素地があれば、現存する社会課題の多くは今ほど深刻になる前に解決できていたはずです。
いまだに課題のまま残っているものは、過去に協力を仰ごうとして失敗したと考えるほうが自然です。

もし「住民・民間企業との協力による課題解決」要素を使いたいのであれば、国内自治体の成功事例を探しておいたほうがいいと思います。
少なくとも事例が無いと、根拠があまりにも薄弱だからです。

ただし、どんなに優れた成功事例があったとしても、指定管理者ネタだけは絶対に避けたほうが無難です。
全国各地でトラブルが相次いで発生していて、職員を悩ませているからです。

指定管理者の懐具合

指定管理者制度の概要は、インターネットで検索したほうが正確かつわかりやすいでしょう。
ここでは省略して、お金の話を中心に進めていきます。

役所側から見ると、指定管理者制度は
  • コスト削減(特に人件費)になる
  • 役所では提供しづらいサービス(物販や飲食、娯楽イベントなど)を提供でき、施設の魅力向上につながる
というメリットがあります。

一方、指定管理者として施設を預かる民間側(受託者)からすると、
  • 設備は役所が準備してくれるので、初期投資なしで事業が始められる
  • 賃料や固定資産税がかからないので、運営コストが安い
  • 指定管理料という安定収入を得られる
というメリットがあり、一見双方にとってお得な制度のように見えます。

建前はこんな感じなのですが、実際やってみると、上記メリットの恩恵を受けられるとは限りません。
特に受託者側の負担が想定以上に重くなり、受託当初は想定していなかった多額の赤字を抱えることになりがちです。

想定外のコストが嵩む

赤字の原因の一つは、住民や議会からの要望です。
運営を指定管理者(民間)に任せているとしても、施設自体は役所のものです。
そのため、民主主義の原則から逃れることができません。通常の民営施設のように営利優先での運営ができないのです。

完全民営の施設であれば、お客さんから要望があったとしても応じる義務はありません。
「利益につながるかどうか」を判断基準として検討するでしょう。
しかし役所の場合は、民間企業の感覚では一蹴すべきトンデモ案件や、利益には到底結びつかない提案であったとしても、しかるべき相手・人数からの要望であれば応じなければいけません。

指定管理者が運営している施設も、税金を原資に提供されている行政サービスであることには変わりありません。
民主主義の原則に従い、役所本体が提供するサービスと同程度に、住民の意見を尊重しなければいけません。

かっこよく言うと、公設という性質上、採算度外視でロングテールのニーズに応じなければいけないのです。 
  • 農産物直売だけでなく試食も出してほしい →加工・提供スタッフ増員(人件費増)、衛生管理のコスト増
  • 街灯代わりに照明を点けておいてほしい →光熱水費増加
  • ふるさと納税の受付窓口機能も持つべきだ →対応スタッフ増員
  • 避難所機能も持つべきだ →非常食などの備蓄(消耗品費増)
指定管理料を増額したりして役所側で費用増額分をカバーできればいいのですが、全てカバーするのはなかなか難しいです。
こういう要望に応じるたびにランニングコストが嵩んでいって、赤字を積んでいくのです。

役所から支払われる指定管理料ではなく、受託者の独自財源を使っている事業であっても、状況は変わりません。
その事業単体では確かに公費は入っていませんが、事業に使っている施設の財源は税金である以上、「独自事業だから好きにやらせてほしい」とは言えません。

「住民や議会からの要望を優先せざるを得ない」という現実は、受託者の裁量を制限し、意欲を減退させます。
受託者としてやりたいことがあっても、こういった要望に応じるために予算が枯渇してしまって実行できなかったり、真逆の要望を受けたために諦めざるを得なかったり……。
まさに学習性無気力という状態に陥るケースもよく聞きます。

人材確保できないためにオペレーション効率化できない

指定管理で運営されている施設で働いているのは、ほぼ全員が非正規雇用の方々です。
正社員は施設長くらいでしょう。しかも元から受託者の別部署で働いていた方を配置転換しただけで、指定管理のために新たに雇用するケースはごく稀だと思います。

施設の指定管理は、たいてい3年くらいの有期契約です。この期間が終了したら、次どうなるかは全くわかりません。
もし正社員を雇用して、3年後に継続受託できなかったら、余計な人員を抱えることになります。
このため、指定管理のために受託者が正社員を新たに雇用するケースはほぼ無く、アルバイトや契約社員を中心に運営することになります。

アルバイトや契約社員を募集するにしても、「3年後に終わるかもしれない」という点がネックになります。
将来性に欠けるため真面目な人がなかなか集まらず、採用できたとしても腰掛け的なジョブホッパーかリタイア世代ばかり採用せざるを得ないのです。
職場としての魅力に欠けるために離職者も多く、採用活動はずっと続くことになります。

スタッフが定着しないために、日々のシフト調整ですら苦労する羽目になり、長期的な経営計画はもちろんのこと、年間の運営計画すら見通せません。
人の入れ替わりが激しいせいでノウハウが育ちにくく、運営のマニュアル化も難しいです。
このような手探り・場当たりの環境がずっと続くために、オペレーションの改善が進まず、非効率・高コストな運営になりがちです。

そもそも儲からない?

指定管理業務をやっている上場企業は、なかなかありません。
決算に現れるくらいに大きなウェイトを占める企業だと、シダックス株式会社しか見つかりませんでした。

トータルアウトソーシング部門

有価証券報告書によると、同社は全国で指定管理を受託していて豊富なノウハウを持っており、しかもグループ内で流通会社を持っているためにローコストで物品調達ができるとのこと。
さらに社員もたくさんいるので、先述した人材確保の問題もある程度は緩和されるでしょう。

つまり、指定管理ビジネスをやっている企業の中でも、かなり高い利益率を確保できるほうと思われます。
しかし、それでも営業利益率6%前後(しかも本社機能の経費は別途発生)なのです。
そもそもビジネスとしてあまり儲かる分野ではないのでしょう。

担い手がいない

このような事情が深刻化しつつあり、指定管理の担い手がいなくなりつつあります。

現行の受託者は、人手不足や赤字を理由に継続受託を断念することが増えています。
新たに指定管理者を公募しても、応じる事業者が見つからないケースが多発しています。

役所が直営で運営できる施設ならまだしも、道の駅のような物販や飲食機能のある施設だと、直営は不可能です。
実際、指定管理者が見つからないまま閉鎖状態の施設も出てきました。

「指定管理者 断念」あたりのワードで検索すれば、いろんな事例が出てきます。
今後はさらに増えていくと思われます。新型コロナウイルスの影響でさらに収益性が悪化して、会社として生き残るために、指定管理業務をリストラせざるを得なくなるケースが予想されるためです。

指定管理という運営方法が成り立たなくなった場合の対策を検討しているのが田舎役所の現状です。
もし面接で「指定管理制度を活用して〜」みたいなことを発言されたら、少なくともローカルニュースに全然目を通していないんだなと思われるでしょう。 

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