キモオタク地方公務員(県庁職員)のブログ

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先日なぜか「地方公務員の普通退職者が増えている」ことが大々的に報じられました。



今回取り上げられている「地方公務員の退職状況等調査」は、総務省が毎年実施して調査結果も公表されているものです。
このブログの過去の記事でも、何度かこの調査の結果を使っています。

記事中では「若手地方公務員の退職が増えている、公共サービスの劣化が懸念される」と危機感を報じていますが、この傾向は今回の調査結果に始まったわけではなく、ここ数年ずっと続いています。
正直、目新しさゼロなのですが……どうしてこのタイミングで報じたのでしょう?

報道の裏側にある意図は置いといて、結果を深掘りしていきます。

若手職員の母数が増えているので退職者数も増えて当然

まず、この報道には大きな欠陥があります。
退職者の増加にだけに焦点を当てていて、職員数の増加に一切触れていない点です。

地方公務員の採用数は、全国的に平成10年代後半に一度大幅に減少した後、平成24年頃から増加傾向にあります。
この影響がモロに若手の職員数に波及して、ここ10年で若手職員数が大幅に増加しているのに、この記事では全く触れていません。

「若手の地方公務員」の母数が増えれば、退職者数も増えて当然だと思うのですが……
あえて触れずに「退職者の増加」をことさら強調する意図がきっとあるのでしょうね。

より正確に実態を把握すべく、職員数の増加具合も追加して、表にしてみました。
H25・R4退職実態調査


20代は、退職者数が2.7倍に増えている一方、職員数も1.35倍に増えています。
そのため、退職率の増加は2倍になります。

30代は、退職者数の増加は3.14倍に対し、職員数は1.05倍しか増えていません。
そのため、退職率の増加幅も3倍を超えます。
特に35歳以上の退職率が3.5倍近くまで伸びています。

職員数の母数も含めて数字をみてみると、20代よりも30代のほうが、退職者数・退職率ともに大きく増加しているといえます。

ただ、10年前と比べて増加しているとはいえ、退職率は依然かなり低いです。
一般的に「3年で3割が退職する」と言われる民間企業と比べれば、地方公務員はまだまだ離職率が低いといえるでしょう。


30代後半は役所を辞めてどこに行く?

改めて数字を見てみると、20代の退職が増えているのは印象どおりなのですが、30代も増えているのは予想外でした。

僕としては、若手よりも、35歳以上の方々が役所を辞めてからどのように生計を立てているのか、興味があります。

今は空前絶後の人材難です。
20代であれば、転職先には困らないと思います。

一方、転職界隈では「地方公務員は30代になると市場価値が落ちて転職できなくなる」のが通説です。
僕自身、転職アドバイザーと以前面談したときに、同じようなことを言われました。

そのため、民間企業に転職するのはなかなか難しいと思われます。

フリーランスになって独立開業するのも難しいと思います。
インターネット上では「公務員からフリーランスになって年収が倍になった」みたいな人がたくさんいますが、本物かどうかよくわかりませんし……

もしかしたら、別の自治体に経験者枠で転職しているのでしょうか?
自治体の経験者枠採用と言えば、これまでは民間大企業か中央省庁でバリバリ働いてきた人しか通過できない難関枠で、元地方公務員なんて(都庁職員を除けば)歯牙にもかからないのが通説でしたが、役所の人材難が深刻になるにつれ、どんどんハードルが下がってきているとか。

転職ではなく、労働市場からリタイアするケースも少なくなさそうです。
僕の勤務先県庁でよく聞くのは、心身を故障してフルタイムで働けなくなってしまうパターン
35歳の退職者が増えている原因が、このような不本意退職の増加でなければいいのですが……

35~39歳の職員は、地方公務員の採用数が特に少なかった平成20年前後に採用された人が多いです。
この時代は景気が悪く、民間採用も低調だったので、役所には本当に優秀な方々が集まりました。
僕の勤務先県庁では「一騎当千の世代」などど呼ぶ人もいます。
この世代が優秀すぎて、財政・人事・企画のような出世コースを独占しており、世代交代が進んでいないことが問題視されるほどです。

もし僕の勤務先県庁でこの世代が相次いで退職したら、相当な大問題になります。
役所の中枢業務のノウハウを持った人材がいきなりいなくなるわけで……少なくとも予算編成は回らなくなると思います。


庶務担当をしているので、よく財政課とやりとりをしています。
去年一昨年の2年間は役所外に出向しており、予算要求とは無関係の生活を送っていたので、財政課に通うのは2年ぶりです。

2年ぶりのはずなのに……財政課の職員の顔ぶれが全然変わらないんですよね。
ちょうど僕の同期より下の世代が全然入ってきていなくて、平均年齢がじわじわ上がってきています。

財政課といえば役所内では王道の出世コースです。
財政課の人事が変調を来しているということは、出世コースにも変調を来していることに他なりません。

同期の財政課職員に状況を聞いてみました。

財政課候補の若手がコロナ対応業務で潰れた

僕の勤務先では、だいたい入庁8年目くらいの若手職員が財政課に抜擢されてきました。
年度末になると、「あの世代からは誰が財政課送りになるのかな〜?」なんて噂話で盛り上がります。
 
少なくとも平成初期頃からこのような流れが長年続いてきたようなのですが……ここ2年ほどは若手が全然財政課に配属されていません。
その代わり、これまで財政課とは無縁だった35歳前後の職員がいきなり配属されるケースが増えています。

このような状況の背景を財政課の同期に聞いたところ……財政課候補だった有望な若手が軒並みコロナ対応業務で「潰れてしまった」せいとのこと。

僕の勤務先県庁では、主に20代後半の職員(採用年次でいえば平成26〜30年あたり)が、コロナ対応の現場最前線(医療系部署)に投じられてきました。
彼ら彼女らが大量の仕事と過酷な住民対応に3年間従事した結果、ハードワークが不可能なほどに「潰れた」という状況のようなのです。

「潰れた」というのが実際どのような状況なのかはわかりませんが、心身を壊したり性格がしまったりして、とにかく財政課のようなハードな部署に配属できる状態ではないのでしょう。

僕自身、令和2年度だけコロナ関係の業務を担当していましたが、本当にひどい仕事でした。
業務量はマシなほうだったものの、とにかく定時内はずっと住民から罵詈雑言電話に耐える日々が続き、ストレスがひどかったです。
これが3年間も続いたら……絶対耐えられません。

治しようのない後遺症

つまるところ、現状の出世ルート界隈は、空前絶後の人手不足なのだと言えるでしょう。
財政課のようなハードワークを任せられる若手職員が組織内からいなくなってしまったのです。

このブログでも何度か触れていますが、国策により採用者数が絞られた結果、地方自治体はどこも40歳前後の職員が極端に少なく、そのせいで組織に歪みが生じています。
この世代は民間採用も不調だったので、採用人数は少なくとも優秀な職員が集まりました。
そのため、出世コースだけを見れば空白は生じていません。

一方、今回の新型コロナウイルス感染症では、職員数自体はさほど減っていないものの、優秀な職員ばかりがダウンしてしまいました。
そのため、頭数は確保できているものの、出世コースだけを見れば空白が生じているのです。

現状、だいたい5年分の優秀な職員を失ったわけで、組織としてはかなり危機的な状況だと思われます。
一方、今現在30代の出世コース入りを逃した職員にとって、今はリベンジを果たす絶好の機会と言えるでしょう。
若手の代わりに出世コース入りするというこれまで無かった臨時ルートが開かれているわけです。

とはいえ、わざわざ出世コース入りしたいと考える地方公務員はごく少数でしょう。
むしろ、望んでもいないのにいきなり出世コースに投入される30代職員が増えている、と捉える方が正しいと思います。

外部団体に出向中の今なら人事課にバレないだろう……という目論見のもと、ここ1年半ほど細々と転職活動をしています。
※今のところ地方公務員を辞めるつもりは一切ありません。単なる社会勉強です。

ここまで、転職サイトに登録してオファーを待ってみたり、転職フェアに参加してみたりしてきたところですが、今回は転職シリーズの総仕上げとして、キャリアアドバイザーと面談してみました。

市場価値の低さに定評のある地方公務員、しかも僕は30歳を超えています。
果たしてどれだけ酷評されてしまうのでしょうか……?
これまで獲得してきた資格たちは、僕を助けてくれるのでしょうか……?


<これまでの転職シリーズ>







準備〜作戦編

僕が今回利用したのは、某大手転職エージェントの無料面談サービスです。
エージェントへの登録自体はだいぶ前に済ませており(求人情報を見るため)、そこで提供されているサービスを利用しました。

このエージェントからは、電話やメールで「面談しませんか?」というお誘いを何度も受けており、「転職するかどうか検討中段階でも是非面談しましょう」とプッシュ営業を仕掛けられています。
向こうから誘ってくるくらいなので、生煮え段階の僕が面談しても怒られはしないだろう……と思い、面談を申し込んでみました。

僕がキャリアアドバイザーから引き出したい情報は、転職市場における地方公務員の位置付けです。
一般論を聞き出すのはもちろんのこと、他の転職事例も聞いてみたいところ。
僕が喋る時間は最小限に抑え、キャリアアドバイザーになるべく話させたいです。

そこで、「これから自分のキャリアやスキルを棚卸しする手がかりにすべく、民間企業は元地方公務員をどう見ているのか把握したい」というスタンスを取ることにしました。
こういう理由であれば、「相談する」というよりは「教えを乞う」感じで進めても自然なはず……。

面談本番

面談はオンライン会議アプリ経由で、30分ほど行いました。
アドバイザーの方は僕と同年代くらいの女性で、新人らしさは全然無く、この道でそれなりに経験を積んでいるオーラが出ています。期待大です。

まずは簡単に自己紹介をした後、履歴書の中身についていくつか先方から質問されました。
具体的には、転職先の条件の優先順位、興味のある業界、転職する場合の就業見込み時期あたりです。

あとは地方公務員としての業務経歴についても色々聞かれました。
特に観光部局での経験を深掘りして尋ねられ、
  • 課内でどういうポジションを務めたのか
  • 特に印象に残っているエピソード
  • 役所外部との折衝経験
このあたりを結構詳しく話しました。
今から思い返してみれば、こちら側の喋りやすい話題を振ることでアイスブレイクする目的だったのかもしれません。

「転職するとしたら来年4月以降」と伝えたところ、先方から「半年以上先となると、現時点で具体的な求人をお示しするのは困難です。志望企業を固められない以上、履歴書の添削もできませんし……今回の面談は、お客様の疑問にお答えして自己分析を深める機会にしたいのですが、よろしいですか?」と提案されました。

こちらとしては願ったり叶ったりの展開です。早速用意しておいた質問を投げかけていきます。
(以下、アドバイザーさんからの回答は 斜字体 で表記します)


地方公務員から民間企業へ転職する場合、どういう業界が人気なのか?

コンサルティングファームシンクタンクを志望する方が多いですし、実際に多くの方が転職に成功しています。
公務員の業務と比較的似ていること、確実に収入アップが見込めることが人気の理由です。

また、こういった企業では、パブリックセクターから業務を受注するケースが近年増えており、「行政組織の内部事情を知っている元公務員を雇用したい」という人材ニーズがあることから、公務員から転職しやすい業界ともいえます。

ここ数年は、うまく需要・供給のマッチングが成立している状況です。


1問目から興味深い回答をいただけました。
コンサル転職といえばキャリア官僚の独壇場かと思っていましたが、地方公務員からでも転職できるんですね……。

「政策立案したくて役所に入ったのに、調整業務や住民対応、肉体労働ばかりやらされて、頭を使わせてもらえない」という不満を抱える若手職員は少なくありません。
こういう不満を解消したくて、バリバリ頭脳労働のコンサルやシンクタンクに光明を見出すのかもしれません。

地方公務員の人材面での強みは何か?

強みとしては、「地頭の良さ」「組織内調整スキル」「セルフマネジメントスキル」が挙げられます。

まず、公務員には地頭の良い方が多く、物事の理解力や論理的思考力に長けています。
たとえ未経験分野であっても、学習が速く早々に戦力化できるという意味で、ポテンシャルが高い人材として認識されています。

また、公務員は日常的に、様々な利害関係者間の調整業務を担っていることから、同年代の民間人材と比べても組織内調整の経験が豊富です。
大規模市役所や県庁クラスであれば、大手民間企業に引けを取らないスケールの組織であり、調整能力に関しては即戦力として期待する企業様もいます。

このほか、公務員は一人あたりの業務量が多く……大変失礼な言い方になりますが上司によるマネジメントが機能していないので、若手であってもしっかり自立している方が多いです。
業務の目的やスケジュールを自力で設定して、自分で進捗管理するというセルフマネジメントの技術は、民間企業ではなかなか身につかない、公務員独特のスキルともいえます。


「ありません」と即断されるかと思いきや、丁寧かつ具体的に教えてくれました。
いずれのポイントも、地方公務員ならではというよりは、国家公務員ともかなり共通します。
転職市場では、地方公務員はキャリア官僚の代用品みたいな扱いなのかもしれません。

若手地方公務員を悩ませる「不毛な調整業務」や「放置系上司」が、まさか人材力向上に資しているとは……


地方公務員の人材面での弱みは何か?

弱みとしては、「利益感覚の欠如」「マネジメント経験の欠如」が挙げられます。

民間企業では、どんな業種であれ「売上を確保する」「利益率を高める」といった観点が不可欠ですが、公務員でこういった感覚をお持ちの方はごく稀です。
また、民間企業と比べて公務員は出世のペースが遅く、部下を持ったりチームを率いたりといったマネジメント経験が不足している傾向にあります。



こちらは予想通りの回答です。納得。

民間転職したい地方公務員が準備すべきポイントは?

企業様が地方公務員に期待しているのは、先にも述べたとおり「地頭の良さ」「組織内調整スキル」「セルフマネジメントスキル」です。
これらのポイントをわかりやすく企業様にアピールできるよう、まずはこれまでの業務経験を棚卸しして、使えそうなエピソードを探してみてはいかがでしょうか。

特におすすめなのが、新規事業の立上げに携わった経験です。
自然と調整能力をアピールでき、かつ企業様としてもイメージしやすく、面接でも高評価を得られています。

また、弱みである「利益感覚の欠如」を補うため、簿記資格の取得を推奨します。
(FPはどうでしょう?という僕の更問いに対し)FPよりも簿記ですね。FPはあくまでも個人資産の運用に関する資格なので、転職ではさほど重視されません。

あとは
MOSITパスポート資格を取得していれば、社会人としての基礎能力を証明できるので、時間があれば取り組んでもよろしいかと思います。
そのほかの資格は……キモオタクさんのようにITストラテジストを取得している地方公務員の方は結構いらっしゃいますね。あとは中小企業診断士も多いかと。
これらの資格、地頭の良さを証明する材料にはなりますが、合否を左右するほど重要というわけでもありません。


ITストラテジスト地方公務員、転職市場では希少価値無いんですね……ショックです。
中小企業診断士も若干興味あったのですが、すでに地方公務員のホルダーがたくさんいると知らされて萎えてしまいました。


「優秀な若手」は民間でも通用しそう

もっとボロクソにこき下ろされるのかと思いきや、地方公務員をそれなりに高く評価しているように思われました。
お世辞も混じっていたのかもしれませんが、ここは全部真実だとして話を進めていきます。

とりあえず簿記

わずかでも転職に関心があるのなら、まずは簿記の勉強をしてみるのが良さそうです。
「簿記は大事」という話は、今回のアドバイザーさんのみならず、以前転職フェアに参加した際にも複数の企業から聞きました。
複数の情報源から推されるということは、かなり重要度が高いと言えるでしょう。


「優秀さ」の物差しは官民でさほど変わらない

地方公務員の強みとして挙げられていた「地頭の良さ」「組織内調整スキル」「セルフマネジメントスキル」は、地方公務員なら誰しもが備えているわけではありません。
この3点を備えた地方公務員は、職員の中でも相当の上位層です。

つまり、役所内で「優秀だ」と高く評価されている職員と、民間企業が求める元地方公務員人材は、かなり共通していると言えるでしょう。
僕はこれまで「公務員らしくない人ほど民間企業では活躍できる」と思っていましたが、どうやらそうとも限らないようです。

逆にいえば、役所内でパッとしない人は、民間企業からも需要が無い……とも言えます。
厳しい現実です。

固有技能よりもポテンシャル

インターネットで地方公務員の転職情報を調べると、「地方公務員は転職市場では無価値」という前置きからの
  • 地方公務員が転職するならプログラミングスキルが必須!
  • ブログを書いて文章力を磨こう!
みたいな、何らかの殊技能を身につけるべきという主張がたくさんヒットします。
しかし今回の面談では、こういう個別具体的なスキルに関しては一切言及されませんでした。

語学に関しても全然触れられませんでした。
(こちらから更問いしようと思っていたのに、すっかり忘れていました……)


アドバイザーさんの回答を余すところなく文章化しようとした結果、弊ブログ最長の約4,400字に到達してしまいました。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。

もし転職を考えている方がいたら、僕みたいにとりあえず無料相談サービスを使ってみればいいと思います。
地方公務員は、引く手数多な「転職強者」ではありませんが、ゴミ扱いもされるわけでもありません。
怯える必要は無いでしょう。 

前回の記事に続き、僕が転職フェアに参加した結果をお届けしていきます。
今回は市役所・町役場ブースの探訪記です。

僕が参加した転職フェアは他県で開催されたもので、出展していたのも他県自治体です。 
さすがに県内市町村の説明会に乗り込む度胸はありません…… 

 

聞いてみたいこと

市役所・町役場ブースを訪問したのは、採用担当者から是非とも聞いてみたい事柄があったからです。

ひとつはアピールポイントです。
自治体の採用説明会や採用パンフレットでは、役所の仕事全体を幅広く取り上げるのではなく、前向きで華々しい仕事を「客寄せ」として紹介するのが通例です。
市町村の場合は、まちづくりや観光、移住定住あたりがよく取り上げられている印象です。

ただ新型コロナウイルス感染症のせいで、このあたりの「花形事業」は現在縮小中です。
そこで、代わりに何を取り上げるのか、気になっていました。

もうひとつは定年延長の影響です。
「定年退職者が減る分だけ採用者数も減るのでは?」という噂の真相を、無邪気に質問できる絶好のチャンスです。

加えて、参加者側からどのような質問が挙がるのかも興味がありました。
ブログのネタにできそうだからです。

捌き方に実力差あり

今回の転職フェアでは、全部で3自治体から説明を伺いました。
いずれのブースも大人気で、ほとんどの民間企業ブースよりも賑わっていました。
一番混んでいた自治体では、20人ほどの待ち行列ができていて、ブースにたどり着くまで小一時間かかりました。

ただ、待ち行列の捌き方には、明らかに自治体ごとに実力差が出ていました。
ひたすら待たせるだけで放置している自治体がある一方で、
  • 待っている人にQRコード付きのチラシを渡して「概要説明は動画でも見られますよ」と案内する
  • 待っている人に対して「質問あったら何なりとどうぞ」と個別に声かけ
など、待ち時間を無駄にさせない工夫をしている自治体もありました。
こういうところで印象が激変するんですよね。勉強になりました。


貴重なお話ありがとうございました

いずれの自治体も、15〜20分ほど採用パンフレットに沿って概要説明した後、質疑応答時間を設けていました。

SDGs激推し

概要説明では、いずれの自治体もSDGsへの取組みにかなり時間を割いていました。
役所自らがSDGsを実践するとか、市民にSDGs意識を浸透させる事業を展開しているとか……
「従来から存在する施策や制度を、SDGsの観点から捉え直して〜」という言い回しも、複数回聞こえてきました。
まちづくりや観光に代わる「花形事業」「客寄せ役」として、SDGsを位置付けているのかもしれません。

定年延長期間中の採用者数減は確実か

定年延長に関しては、いずれの自治体でも、概要説明では言及されませんでした。
そこで、こちらから質疑応答時間に「最近、公務員試験予備校の案内で『これから定年延長が始まると退職者数が減るから採用者数も減り、試験倍率が上がります!』という文句をよく見かけるのですが、実際のところどうなんですか?」と質問してみました。

その結果、いずれの自治体でも、「あくまでも担当の感覚ですが……」という前置きつきで、
  • 退職者数が減るのは確実で、その分だけ採用者数を減らさなければいけないのも確実
  • 退職者数が減るのは2年に一度だが、採用者数も2年に一度のペースで減らすとなると、職員の年齢構成が乱れるので、減少幅は年度間で均したいところ
  • 実際のところ、「フルタイム勤務の再任用職員」が「61歳以上の正規職員」に置き換わるだけなので、組織が急に高齢化することは多分ない

とのことでした。
 やはり、減少幅は未知数ではありますが、採用者数が減るのは間違いないと思われます。

やはり待遇が一番気になるのか

順番待ちをしている間は、ずっと他の参加者がどのような質問をしているのか、耳をそば立てていました。
聞こえてきた範囲では、待遇に関する質問が多かったです。
  • 有給の取りやすさ
  • 残業の有無
  • 休日出勤の有無
このあたりは誰もが尋ねていました。
そして「配属される部署によって様々です」と即答されていました。

全体的に質問をする人が少なく、質問するにしてもホームページを見ればわかるレベルのものばかりで、正直物足りなかったです。
やはり業務内容自体には全然関心がなく、「クビにならないし収入安定している」という理由だけで公務員を目指す方が多い、ということなのでしょうか……


機会があれば、都道府県庁の中途採用説明会にも乗り込んでみたいです。

外部団体に出向中の今なら人事課にバレないだろう……という目論見のもと、ここ1年ほど細々と転職活動をしています。
※今のところ地方公務員を辞めるつもりは一切ありません。単なる社会勉強です。

以前の記事では、転職サイトに登録した結果を紹介しました。
(基本情報技術者の資格を追加した結果を追記しています。)


転職サイトに登録してからそろそろ一年が経ちますが、ずーっと似たような企業からしか案内が来ず、物足りなくなってきました。
そこで、新たな刺激を求め、転職フェアに参加してみました。

ただの説明会ではなく「市場(いちば)」

僕が参加したのは大手人材会社が主催している転職フェアで、だだっ広い会場にたくさんの企業が個々にブース出展して、来場者は気になる企業のブースを訪れて社員から話を聞く……というスタイルです。
形態だけ見れば、新卒採用の合同説明会と同じようなものです。

しかし内容は別物です。
選考とは関係のない説明会ではなく、明らかに採用に直結しています。
我々求職者が企業を「選ぶ」だけでなく、企業側も求職者を「選ぶ」、まさに市場そのものでした。

企業のブースでは、担当者が会社の説明をしてくれるだけでなく、こちらのプロフィールをぐいぐい尋ねてきたり、ことあるごとに「あなたはどう思いますか?」みたいに質問を投げかけてきて、こちらに喋らせようと仕向けてきます。

フェアによっては面接用の専用ブース(試着室みたいなもの)が用意されており、僕の隣で一緒に説明を聞いていた人がそちらへ連れ込まれていく……なんてこともありました。
 

僕は不人気

僕が参加したフェアでは、いずれも「これまで経験した職種」や「希望する職種」のカードを首から下げるルールでした。
「営業」「経理」「人事」「エンジニア」など、いくつかのカードが用意されており、その中から選択します。

僕の場合、消去法で「事務一般」を選ぶしかありません。
カードを下げた途端、一気に自分が「商品化」されたように感じられてテンションが上がります。
ディストピア作品の導入シーンのようです。

企業側はこのカードを見て、自社のターゲットか否かを判断しているのでしょう。
採用したい職種の人には積極的に声をかけ、そうでない人はスルーするのが一般的セオリーのようでした。

会場を見て回った感じ、人気なのはやはり「営業」です。
反対に「事務一般」は人気がなく、「未経験歓迎」を掲げている企業を除き、僕は全然声をかけられませんでした。
そもそも事務職の転職者自体のニーズが少なく、採用するにしても若い人の方がいいのでしょうか……

本日は貴重なお話ありがとうございました

お話を伺った企業の中から、印象に残ったところを紹介していきます。

IT派遣系

最も話を聞きたかったのがIT派遣業界、俗にいうSESです。
今話題の「デジタル人材」市場の動向に興味があり、僕が取得した基本情報技術者の価値も知りたく思っていました。あとは株式投資対象としても興味があります。

どの企業も幸いにも「未経験OK」を堂々と掲げていたので、安心して乗り込めました。

事業内容はどの企業も似通っていて、何ヶ月か研修してからプロジェクトにアサインする……という流れなのですが、業界の捉え方や、IT人材の考え方は、企業ごとに様々でした。

例えば、アサインするプロジェクトなんかだと、
  • みっちり下流工程で経験を積んでからでないと上流工程にはアサインしません、下流工程のスキルのほうが汎用性があるのでその方が社員のためになります
  • 本人の希望に応じて新人でも上流工程にアサインします、上流工程のスキルを異業種へ横展開していくことが今後必要です
こんなふうに綺麗に分かれました。
どちらの考え方も一理あるように思われます。

基本情報技術者資格は、残念ながら全然評価されませんでした。
「基礎知識があるという担保にはなりますが、ある程度年齢を積まれている方の場合、基礎知識よりも専門性のほうが重視されるので、開発経験とかベンダー資格のほうが歓迎されますね」とのこと。

あとは興味本位で「官公庁へ派遣する事例もあるんですか?」と質問してみたところ、今のところ事例は無いもののそういう相談は結構寄せられているらしく、近いうちに実現するかも……とのことでした。

IT派遣企業からは、フェア後のアフターフォローもありました。
「個別面談しませんか?」みたいなメールが送られてきたほか、電話もかかってきました。
30代未経験という市場価値ゼロの人間でも繋ぎ止めようとするあたり、「IT人材の不足」は本当に深刻なのだと思われます。

税務コンサル

税金をたくさん徴収したい役所側からすると、税務系のコンサルは難敵です。
敵の本懐を探るべく、お話を伺いました。

行政の搾取から企業を守る……みたいな「思想」が伺えるかと期待していたところ、「ルールに則って正しく節税提案することで、企業の資金繰りを守り、ひいては不正に走ることを防げます」などなど、非常に誠実に説明していただき、疑ってかかったことを内心深く反省しました。

「スタートアップ企業に積極的に営業を仕掛けて顧問化を狙っている」ことを売りにしていたので、「スタートアップ支援って最近は地銀とか公的機関が乗り込んできて、競争激化してませんか?」と興味本位で質問してみたところ、「スキルに雲泥の差があるので絶対勝てます」と即答されました。かっこいいです。

市役所・町役場

民間企業に紛れて、夏以降に採用試験を行う自治体もいくつか出展していました。
長くなりそうなので、次回記事で改めて紹介します。

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