ここ最近、全国各地で激しい災害が相次いでいます。
特に豪雨災害が顕著で、常襲地域のみならず、これまで水害を経験したことのない地域でも被害が発生しています。
過去にも何度か触れていますが、僕の初任の配属先は防災部局でした。
当時(10年ちょっと前)は、豪雨シーズンといえば「7月~9月」の3か月間であり、6月の議会が終わった直後に「気合い入れ式」、10月に入ったら「お疲れさん会」などと称して、職場で焼肉に行った記憶があります。
今はいつ豪雨に見舞われるかわからず、このような精神的な区切りも無いので、すっかり廃れてしまったとのことでした。
災害が頻発・激甚化するのに対し、防災や災害復旧に対する制度や財政措置も拡充されています。
特に、被災した個人や民間企業を直接支援する制度が、令和に入ったあたりから急速に充実してきていると思います。
しかし、支援制度が拡充されたとしても、その分だけ復旧復興が加速するわけではありません。
むしろ「どうしてカネはあるのに遅いのか」「地方公務員の仕事の遅さがボトルネックだ」という形で、地方公務員叩きの材料にされているのが現状です。
まず、最近の被災者支援制度がいかに充実してきているか、よく話題に上るものを紹介します。
ひとつは住宅の再建支援です。
現在(令和8年春)、能登半島地震の被災者で、住宅が全壊した人の場合、総額1,000万円を超える支援が受けれられるとのこと。
このうち500万円は、この地震に際して新たに創設された国の制度です。
直近の大地震である平成28年熊本地震の際は、僕が調べた範囲では500万円にも届いておらず、大幅に拡充されていることがわかります。
<石川県の資料>
<熊本県の資料>
もうひとつは民間企業向けの「なりわい再建支援補助金」です。
被災した民間企業を直接支援する制度としては、東日本大震災の際に創設された「中小企業等グループ補助金」がありました。
民間企業の財産再取得に公金を支出するという前代未聞の制度で、当時はすさまじい大盤振る舞いだと話題になっていましたが、制度の利用にあたっては地域の中小企業で「グループ」を組成して、地域の復興を民間企業集団としてどのように進めていくのか計画策定する必要がありました。
要するに企業単体では利用できず、自社事業の都合だけを盛り込むわけにもいきませんでした。
しかし現在は、個社・個人でも申請できる「なりわい再建支援補助金」が創設されて、自社都合最優先での補助金利用が可能となっています。
このほか、地方自治体に対する財政支援も大幅に拡充されており、災害を原因に財政が急激に悪化するような事態は激減しています。
一方、このように支援制度が年々拡充されていることは、報道ではほとんど取り上げられません。
地方公務員であっても、災害復旧の実務に携わったことがない人であれば、現在の制度がどうなっているかは知っていても、拡充の過程までは把握していないかもしれません(僕も厚生労働省関係の施策はよくわかりません)。
むしろ近年は、「お金が足りない」という声よりも、「役所の対応が遅い」という苦情・苦言が激増しているように感じています。
実際、僕が防災部局にいた頃と比べて、復旧が遅くなったとは思いません。
とはいえ早くなったかと言われると……大して変わっていないと思います。
世論が主張するとおり、「どれだけ予算があっても、地方公務員の仕事が遅いから復旧復興が進まない」というのも、一理あると思います。
復旧復興に予算はもちろん必要ですが、同じくマンパワーが必要です。 いくらお金が増えようとも、マンパワーも増えなければ、執行できずにお金を滞留させてしまうのは間違いありません。
とはいえ、応援派遣などで被災自治体の地方公務員数を頭数を揃えれば万事解決するわけでもありません。
復旧復興には、多数の民間事業者も携わっており、民間事業者のマンパワーが不足しているために復旧復興が進まないという実態もあります。
さらに、復旧復興には被災者のマンパワーも必要です。
各種インフラの復旧工事や、公共施設を再建、災害公営住宅の建設には、その前提として、被災者との合意が必要です。
ただでさえ被災して自分のことだけで精一杯なところ、役所からの説明を聞いて意思決定をするには、大変なエネルギーが必要です。
地域としての意見をまとめるとなるとますます大変です。
災害のせいで疲弊してストレスが溜まっている状況下では、なかなかうまくコミュニケーションがとれず、協議の場を設けることすら困難なケースも散見されます。
役所側ではいつでも事業開始できるよう準備しているのに、住民側がまとまらないので着手できない……という事例もよくあります。
このような場合、外部から「早くしろ」と叩かれても、正直に「住民側がボトルネックです」などと言うわけにはいかず、役所が矢面に立って批判を受けることになり、何とも言えないやるせなさを感じるものです。
つまるところ、復旧復興の早さを決めるのは、今はマンパワーなのだろうと思います。
そして、自治体のマンパワーは応援派遣で増やせても、民間事業者や被災者のマンパワーを増やすのは難しく、役所だけではどうしようもない面も多々あるのです。
やや不謹慎かもしれませんが、僕は防災関係の業務が結構好きです。
「人命最優先」という旗印の下、官民が一致団結して仕事に取り組めるからです。
人によって方法論は分かれるにしても大義は同じなので、よくある利害関係の衝突にとどまらない、建設的な議論もできます。
だからこそ、どれだけ頑張っても「遅い」と叩かれざるを得ない昨今の状況には、ほかの公務員批判とは異なり、怒りや呆れというよりは「もどかしさ」を感じます。 被災者が直接非難されるよりは、役所が身代わりになるほうがまだマシだと思って、盾役を務めるしかないのだろうと思います。
特に豪雨災害が顕著で、常襲地域のみならず、これまで水害を経験したことのない地域でも被害が発生しています。
過去にも何度か触れていますが、僕の初任の配属先は防災部局でした。
当時(10年ちょっと前)は、豪雨シーズンといえば「7月~9月」の3か月間であり、6月の議会が終わった直後に「気合い入れ式」、10月に入ったら「お疲れさん会」などと称して、職場で焼肉に行った記憶があります。
今はいつ豪雨に見舞われるかわからず、このような精神的な区切りも無いので、すっかり廃れてしまったとのことでした。
災害が頻発・激甚化するのに対し、防災や災害復旧に対する制度や財政措置も拡充されています。
特に、被災した個人や民間企業を直接支援する制度が、令和に入ったあたりから急速に充実してきていると思います。
しかし、支援制度が拡充されたとしても、その分だけ復旧復興が加速するわけではありません。
むしろ「どうしてカネはあるのに遅いのか」「地方公務員の仕事の遅さがボトルネックだ」という形で、地方公務員叩きの材料にされているのが現状です。
(誰も報じないけど)充実していく被災者支援
まず、最近の被災者支援制度がいかに充実してきているか、よく話題に上るものを紹介します。ひとつは住宅の再建支援です。
現在(令和8年春)、能登半島地震の被災者で、住宅が全壊した人の場合、総額1,000万円を超える支援が受けれられるとのこと。
このうち500万円は、この地震に際して新たに創設された国の制度です。
直近の大地震である平成28年熊本地震の際は、僕が調べた範囲では500万円にも届いておらず、大幅に拡充されていることがわかります。
<石川県の資料>
<熊本県の資料>
もうひとつは民間企業向けの「なりわい再建支援補助金」です。
被災した民間企業を直接支援する制度としては、東日本大震災の際に創設された「中小企業等グループ補助金」がありました。
民間企業の財産再取得に公金を支出するという前代未聞の制度で、当時はすさまじい大盤振る舞いだと話題になっていましたが、制度の利用にあたっては地域の中小企業で「グループ」を組成して、地域の復興を民間企業集団としてどのように進めていくのか計画策定する必要がありました。
要するに企業単体では利用できず、自社事業の都合だけを盛り込むわけにもいきませんでした。
しかし現在は、個社・個人でも申請できる「なりわい再建支援補助金」が創設されて、自社都合最優先での補助金利用が可能となっています。
このほか、地方自治体に対する財政支援も大幅に拡充されており、災害を原因に財政が急激に悪化するような事態は激減しています。
一方、このように支援制度が年々拡充されていることは、報道ではほとんど取り上げられません。
地方公務員であっても、災害復旧の実務に携わったことがない人であれば、現在の制度がどうなっているかは知っていても、拡充の過程までは把握していないかもしれません(僕も厚生労働省関係の施策はよくわかりません)。
むしろ近年は、「お金が足りない」という声よりも、「役所の対応が遅い」という苦情・苦言が激増しているように感じています。
実際、僕が防災部局にいた頃と比べて、復旧が遅くなったとは思いません。
とはいえ早くなったかと言われると……大して変わっていないと思います。
復旧復興の「遅れ」は地方公務員による人災なのか
世論が主張するとおり、「どれだけ予算があっても、地方公務員の仕事が遅いから復旧復興が進まない」というのも、一理あると思います。復旧復興に予算はもちろん必要ですが、同じくマンパワーが必要です。 いくらお金が増えようとも、マンパワーも増えなければ、執行できずにお金を滞留させてしまうのは間違いありません。
とはいえ、応援派遣などで被災自治体の地方公務員数を頭数を揃えれば万事解決するわけでもありません。
復旧復興には、多数の民間事業者も携わっており、民間事業者のマンパワーが不足しているために復旧復興が進まないという実態もあります。
さらに、復旧復興には被災者のマンパワーも必要です。
各種インフラの復旧工事や、公共施設を再建、災害公営住宅の建設には、その前提として、被災者との合意が必要です。
ただでさえ被災して自分のことだけで精一杯なところ、役所からの説明を聞いて意思決定をするには、大変なエネルギーが必要です。
地域としての意見をまとめるとなるとますます大変です。
災害のせいで疲弊してストレスが溜まっている状況下では、なかなかうまくコミュニケーションがとれず、協議の場を設けることすら困難なケースも散見されます。
役所側ではいつでも事業開始できるよう準備しているのに、住民側がまとまらないので着手できない……という事例もよくあります。
このような場合、外部から「早くしろ」と叩かれても、正直に「住民側がボトルネックです」などと言うわけにはいかず、役所が矢面に立って批判を受けることになり、何とも言えないやるせなさを感じるものです。
つまるところ、復旧復興の早さを決めるのは、今はマンパワーなのだろうと思います。
そして、自治体のマンパワーは応援派遣で増やせても、民間事業者や被災者のマンパワーを増やすのは難しく、役所だけではどうしようもない面も多々あるのです。
やや不謹慎かもしれませんが、僕は防災関係の業務が結構好きです。
「人命最優先」という旗印の下、官民が一致団結して仕事に取り組めるからです。
人によって方法論は分かれるにしても大義は同じなので、よくある利害関係の衝突にとどまらない、建設的な議論もできます。
だからこそ、どれだけ頑張っても「遅い」と叩かれざるを得ない昨今の状況には、ほかの公務員批判とは異なり、怒りや呆れというよりは「もどかしさ」を感じます。 被災者が直接非難されるよりは、役所が身代わりになるほうがまだマシだと思って、盾役を務めるしかないのだろうと思います。

